ポケットモンスター:オーバー・ザ・レジェンド 作:ガチャガチャクツワムシ
「ワシちゃんはマスタード。ヨロピクねぇ!」
伝説のチャンピオンとは思えない軽いノリで挨拶する老人に、一同が唖然とする中、ジストだけは直立不動のままだ。
「師範、何故ここに?」
「いやぁ、懸賞で当たっちゃってねぇ。ハニーや門下生のみんなと遊びに来たのよ」
そんな世間話の最中、ジストの腰のボールが勝手に揺れ、一匹のポケモンが姿を現した。
「ベアクマァ!」
「おぉっ! ウーラオス! 息災じゃのう!」
マスタードが目を細める。サトシが慌てて図鑑を向けるが、『データがありません』という無機質な音声が流れるだけだった。
「こいつはまだカントー図鑑には未登録だぞ」
「この子はウーラオス。マスター道場での修行を終え、免許皆伝を受けた者だけが共に歩むことを許される特別なポケモンなのよ」
ルリナの説明に、サトシは「すっげぇ……」と目を輝かせる。
だが、そんな穏やかな時間は、海の家の主人と「オババ」と呼ばれる老婆の借金トラブルという、世俗的な騒音によって遮られた。ルリナの目配せを受けたジストは、スッと席を立つと、戻ってきた主人にトランクを差し出した。
「爺さん。かき入れ時に店を貸し切りにさせた迷惑料と、礼だ」
トランクの中の大金に主人は目を剥く。
「こ、こんなに……いいのか!?」
「四天王としての端金だ、気にするな。それより、何か面白い催しはないか?」
主人が差し出したのは『水着ミスコン』のポスターだった。賞品はクルーザー。ルリナが参加しようとするも、「プロ(モデル)お断りだろ」というジストの冷静なツッコミに頬を膨らませる一幕もあったが、結局セナやリン、ミツバ(おかみさん)も加わり、会場にはオーキド博士やシゲルおり大会は大いに盛り上がった。
しかし、その熱狂を切り裂くように、巨大なギャラドス型の潜水艦が砂浜を割り、現れた。
「ナッハハハー! ポケモンは全部ロケット団がいただくわよ!」
お馴染みの口上を述べ終えた後にそう叫ぶムサシ、コジロウ、ニャース。だが、彼らは致命的なミスを犯していた。
「……目障りだ。ギャラドス、破壊しろ」
ジストの瞳から感情が消える。彼が投じたモンスターボールから現れたのは、通常の個体を遥かに凌駕する10m超の色違い・親分ギャラドスだった。
「ひえェ~! なんてデカいギャラドスニャ!?」
「っていうか、あそこにいるのジョウト四天王のジストじゃないのぉ!?」
絶望するロケット団を余所に、ジストはキーチェーンに嵌められたキーストーンに指を触れる。
「全てを焦土に変えろ。――メガシンカ!」
眩い光が赤い巨体を包み込み、より凶悪で刺々しい姿へと変貌を遂げる。メガギャラドスの咆哮だけで、周囲の海面が爆ぜた。
「逃げるニャー!!」
「遅い。【ギガインパクト】!」
赤い閃光が潜水艦を貫いた。主犯格のオババごとロケット団は、文字通り空の彼方へと消し飛ばされた。
「「「やな感じ~~!!」」」「ババ~~!」
凄まじい衝撃波が観客席を襲うが、そこにはジストのプライベートの手持ちたちが鉄壁の布陣を敷いていた。エレキブル、ドサイドン、ウーラオス、リザードン、カメックス、フシギバナ、オーロンゲ、メタグロス、ドラパルト。
並み居る強豪ポケモンたちが、完璧な連携で被害をゼロに抑え込んでいたのだ。
「すっげぇ……やっぱ兄ちゃんは格が違うや……」
「あのギャラドスの姿は一体……?」
シゲルの問いに、マスタードがニヤリと笑って答える。
「ホッホ~、あれはメガシンカ。ポケモンとトレーナーの絆を糧にした、進化を超えた進化だよ」
砂煙が収まる中、ルリナがジストの隣に立ち、肩をすくめた。
「お疲れ様。相変わらず、容赦ないわね」
何体かオーキド博士が持ち込んだ感じです。四天王の手持ちはゆっくり休んでいます。