ポケットモンスター:オーバー・ザ・レジェンド 作:ガチャガチャクツワムシ
タマムシゲームセンターの喧騒は、一人の男によって支配されていた。
「ソウマさん、凄いですね……!」
ヒビキが驚くのも無理はない。ソウマの座るスロット台からは、吐き出されるコインが滝のように溢れ続けているのだ。
「ヒビキ君か。結構目が良くてね、スロットは得意なんだよ」
ソウマは事もなき表情でビタ打ちを続けながら、コインの山を指差した。
「手が離せないから換金してくれないか? 好きなものを取っていい。頼んだ分の礼だ、気にしなくていいよ」
押し問答の末、ヒビキは欲しかった「プロテクター」や各種進化アイテムを交換した。だがその直後、ソウマはスタッフによって奥の部屋へと案内されてしまう。
心配したヒビキがスタッフに確認すると、「より難しいゲームへの招待だ」と言われ、案内された先には驚きの光景があった。
そこでは、ソウマが涼しい顔でカードゲームに興じていた。対照的に、周りのディーラーたちは顔を真っ青にして震えている。
「ん? ヒビキ君か。どうしたんだい?」
「いや、換金したものを渡そうと思って……」
「それは君に上げたものだよ。俺には必要ないから。大抵のものは持っているからね」
ソウマはそのまま勝ち続け、場にいた全員を完膚なきまでに叩きのめした。だが、目当てのものはなかったのか、少し残念そうな表情を浮かべる。
「全部いらないから返却するよ。コインも返す」
ヒビキに譲った分以外の景品をすべて店に戻すと、彼は悠然と店を後にした。
「じゃあな、ヒビキ君。またどこかで」
ヒビキと別れ、一人になったソウマの目が鋭く、冷徹なものへと変わる。
「やはり、この店の地下か」
そう呟いた瞬間、彼の姿は空間に溶けるようにかき消えた。
その後、国際警察に引き入れられた警察が「ゲームセンターの地下に巨大な空洞がある」との通報で乗り込んだ際、目にしたのは地獄絵図だった。
ロケット団の秘密支部は、まるで巨大な重機で蹂躙されたかのように破壊し尽くされていた。支部に居たものは、手足が変な方向に曲がっており、死んでも可笑しくない重傷をおったものしかおらず、戦意すら残っていない惨状だった。監視カメラの映像にはそこにいた構成員たちは、フルフェイスヘルメットを被った人間と、[ドドゲザンの姿をした何か]によってポケモンや人が紙のように切り裂かれたり殴り飛ばされる映像が残されていた。その映像を見た捜査員は言葉を失っていた。
「……
暗がりのなか、ソウマの手には奇妙な模様が描かれたSDカードのような物体が握られていた。それを懐に仕舞うと、彼は闇へと消えていく。
一方、何も知らずに別れた後のヒビキの手元には、ソウマのおかげで手に入れた大量の進化アイテムが残されていた。
「……あの人、結局何者だったんだろう」
手に入れたばかりの「プロテクター」を見つめながら、ヒビキはタマムシの夜風に身を震わせる。