ポケットモンスター:オーバー・ザ・レジェンド 作:ガチャガチャクツワムシ
『随分とまぁ、懐の広い人だなぁ、その人は』
ホテルの電話の向こうで、長男ジストが呆れたような声を上げた。
「本当だよ。まさかこれだけのアイテムを全部くれるなんてさ」
ヒビキがベッドの上に広げたのは、プロテクター、マグマブースター、エレキブースター、さらにはホイップポップやガラル地方特有のアメ細工まで。ソウマが「不要だ」と残していったものは、今のカントーでは入手困難な宝の山だった。
「明日はタマムシジムに挑戦するよ」
『頑張れよ。あ、アオバも用事があってタマムシに行くらしいから、会うかもしれないぞ』
翌朝、ジムへ向かおうとするヒビキの前に、聞き慣れた声が響いた。
「あ、ヒビキ!」
サトシ、カスミ、タケシの3人に加え、見慣れない少年と少女が二人。
「よっ、サトシ。そっちは?」
「マコトとソウジっていうんだ。旅の途中で知り合ったんだぜ!」
自己紹介もそこそこに、一行はヒビキのジム戦を見学することになった。
タマムシジムに到着すると、そこにはすでに先客がいた。
「姉ちゃん!? リンにセナもいるのか」
「ハァーイ、久しぶり。友人のエリカに会いに来たのよ」
長女アオバが余裕の笑みで手を振る。マコトやソウジからの「どんな関係?」という問いに、アオバは「親戚よ」と簡潔に答え、ヒビキに対してマコトは親近感の籠もった視線を送った。
「あら? アオバさん、お久しぶりですね」
奥から現れたのは、和服に身を包んだ優雅なジムリーダー・エリカ。
「久しぶりね!エリカ、今日は親戚のジムバトルを見学しに来たのよ。お手柔らかにね」
「そうなのですか。……では、始めましょうか」
審判がルールを告げると、バトルの幕が開く。
「行ってください、モンジャラ!」
「行ってこい! ドードリオ!」
エリカのモンジャラに対し、ヒビキはタイプ相性で有利なドードリオを繰り出した。
「モンジャラ! 【グラスフィールド】!」
「ドードリオ! 左右で【挑発】、真ん中は【追い風】!」
「「「ドドドドッ!!」」」
ドードリオの三つの頭がそれぞれ独立して動き、異なる二つの技を同時に発動させた。フィールド全体に追い風が吹き荒れ、同時にモンジャラの補助技が封じられる。
「随分と上級者のやり方をなさいますね。流石はあの方たちの親戚です」
エリカが感心したように呟く。見学席ではリンが「今の何や!?」と驚き、アオバが解説を入れる。
「複数の頭を持つポケモンは、鍛えれば頭の数だけ別々の技を同時に出せるのよ。ただし、脳への負担と集中力が凄まじいから、並のトレーナーには無理だけどね」
「なるほどぉ~……」
セナが必死にメモを取る中、ヒビキは一気に畳み掛けた。
「今は二つが限界だが、もう少しで三つの技を使えるようになりますよ! ドードリオ、左右で【ドリル嘴】! 真ん中は【飛び掛かる】!」
「モンジャラ! 【原始の力】!」
迎え撃つモンジャラが岩石を放つが、加速したドードリオはそれを紙一重で回避。
真ん中の首がモンジャラを組み伏せ、左右の鋭い嘴が交互に突き刺さる。
「モンジャラ、戦闘不能!」
鮮やかな「同時攻撃」による蹂躙。エリカの一番手は、反撃の隙すら与えられずに沈んだ。