ポケットモンスター:オーバー・ザ・レジェンド 作:ガチャガチャクツワムシ
サトシの「爆弾発言」を聞いた瞬間、エリカは数秒間、彫像のように硬直した。
……が、次の瞬間、彼女は見たこともないような満面の笑みを浮かべ、ヒビキの両手をがっしりと握りしめた。
「まあ、まあ! それでは貴方は、私の『義弟』になられる方なのですね!」
「……は!? ぎ、ぎて……っ!?」
今度はヒビキが困惑のあまり固まった。助けを求めるように姉・アオバへ視線を向けると、彼女は苦笑しながら口を開く。
「エリカ、ヒビキが戸惑っているから手を離してあげたら?」
「あら? 私としたことが、はしたない真似を……」
ようやく解放されたヒビキは、乱れた呼吸を整える。
「驚いたでしょう? この子、ジスト兄さんのことが大好きなのよ。数年前、攫われそうになったところを兄さんに助けられてから、ずっと一筋なの」
「そうなのです! あの方は、私の命の恩人。あの方を射止めるのは、ルリナさんではなく、この私です!」
清楚な和服姿からは想像もつかないほどの力強い宣言に、一同は圧倒される。タケシは「ジストさんの噂は本当だったのか……」と遠い目をしていた。
そんな喧騒の中、サトシのポケットから眩い光が漏れ出した。
「何かサトシのポケット、光ってるぞ?」
ソウジの指摘に慌てて取り出したものを見て、アオバの表情が驚愕に染まる。
「虹色の羽根……!? サトシ君、それをどこで!?」
「マサラを出た日に、空を飛んでた金色のポケモンが落としていったんだ」
「あれ、サトシの妄想じゃなかったのか……」
ヒビキが呟く。
アオバは真剣な表情で羽根を見つめ、静かに語り出した。
「これは、ジョウトに伝わる伝説のポケモン、ホウオウの羽根よ。それを持つ者は『虹の勇者』としてホウオウと会う資格があると言われているわ。……テンセイ山の伝説よ。詳しくはボン爺という方の著書に記されているはず」
「ホウオウ……虹の勇者……」
サトシは羽根を見つめ、決意を固めたように拳を握った。
「俺、テンセイ山に行く! 行って、ホウオウに会ってくる!」
「俺もついていくぞ!」「私も!」「同行してもいいかな?」「面白そうね!」
タケシ、カスミに加え、ソウジとマコトも同行を志願する。
一方、ヒビキは首を振った。
「俺はあの日一緒にいたけど、羽根は見てない。資格がないってことだろうから、俺はパスだ」
リンとセナも、自分たちの目的があるため辞退することになった。
「さて、話はまとまったわね」
アオバがパチンと手を叩き、サトシの肩に手を置いた。その笑顔にサトシは、とてつもない悪寒を感じた。
「サトシ君。約束を破ったお仕置きとして、出発の前に私が直々に特訓してあげるわ」
「……え?」
「ご愁傷様、サトシ。姉ちゃんの特訓は、時として兄貴の特訓よりキツイぞ。……まあ、自業自得だな」
ヒビキが憐れみの目を向ける。
「そんなぁぁぁ──っ!!」
タマムシジムに、サトシの悲鳴が虚しく響き渡った。