ポケットモンスター:オーバー・ザ・レジェンド 作:ガチャガチャクツワムシ
タマムシジムのバトルフィールド。サトシが倒れ込んだ地面には、強烈な冷気が微かに残っていた。
「……姉ちゃん、本当にフリーザーを出すなんて」
ヒビキが呆れ顔で呟くと、アオバは優雅に隣に佇む伝説のポケモンであるフリーザーをモンスターボールを仕舞いながら微笑んだ。
「あら、少しは刺激がないと成長しないでしょう? サトシ君も、これで自分の『甘さ』を思い知ったはずよ」
実際、ボロボロになったサトシの手持ちたちは、この地獄のような特訓を受けたことで、見違えるほど鋭い眼光を宿していた。地獄の特訓は、確実に実を結んだのだ。
その後にエリカと別れた後ポケモンセンターに向かうサトシたちを見送り、ヒビキが次の町へ向かおうとした時。
「なぁ……ヒビキ、ウチらとバトルしてくれへん?」
真剣な眼差しで待っていたのは、リンとセナだった。
二人の悩みは深刻だった。四つ目のバッジを手に入れてから、どのジムに挑んでも壁にぶつかり、連敗が続いているという。アオバに相談した際も「一度別の道へ」と助言されたものの、諦めきれずにいたのだ。
「わかったよ。相手をしてやる」
バトルの結果は、あまりにも残酷で、それでいて鮮やかだった。
「リングマ! 【空元気】!」
「グマアアアッ!!」
「バナァッ!?」
セナのパートナー、フシギバナが一撃でその巨体が吹き飛ぶ。
リンのポケモンもヒビキのニドキング一体に完封され、セナはリングマの圧倒的なパワーの前に膝を突いた。
「……負けたわ。でも、なんやろ。今、すごくスッキリしてるんや」
リンが晴れやかな顔で立ち上がる。セナもまた、倒れたフシギバナを労いながら、何かに気づいたような表情を浮かべた。
「私、決めました。ヒビキ君、私を貴方の旅に同行させてください。……貴方のサポートをしながら、もう一度自分のバトルを見つめ直したいんです!」
「え?」
「おもろそうやな! ウチもついていくわ。ヒビキのガチなバトルを一番近くで見せてもらうで!」
「え、ええっ!?」
困惑するヒビキの背中を、いつの間にか現れたアオバがポンとヒビキの肩を叩いた。
「いいんじゃないかしら? どうせアンタのことだから、この後の旅の順序はノープランでしょうし。しっかりサポートしてもらいなさい」
そう口答えは許さない圧を放つアオバにヒビキは折れ、
「……わかったよ。これからよろしくな、二人とも」
ヒビキ、リン、セナ。
実力派の次男と、壁にぶつかった二人の少女。
奇妙なバランスの三人は、アオバの
「じゃあ、私は明日、エリカと一緒にジスト兄さんへのプレゼントを選びに行くから、ホテルに行くわね」
という言葉に見送られ、タマムシシティを後にした。