ポケットモンスター:オーバー・ザ・レジェンド 作:ガチャガチャクツワムシ
「時折ポケモンは送ってくれるが、どうにもタイプが偏っておるのぉ」
セキチクシティのポケモンセンター。モニター越しのオーキド博士は、苦笑交じりにヒビキへ告げた。
「地面にノーマル、毒……。サトシも最近ベトベトンを送ってきてな、研究所がえらい臭いになっておる。ヒビキ、お前はもう少しバランスを考えんか」
「……善処します。それより博士、ブースターとフシギソウを一旦送るので、サイドンたちを転送してください」
ヒビキは手に入れたばかりのプロテクターをサイドンに装着させ、ユンゲラーと共に通信装置へセットした。電子の渦を通り、再び戻ってきたボールの中には、岩の要塞の如きドサイドンと、知性の塊となったフーディンの姿があった。さらに、クサイハナもリーフの石でラフレシアへと進化を遂げる。
「よし。実戦で動きを確認するぞ」
リンとセナが見守る中、ヒビキはセンターにいたトレーナーたちと数戦交え、進化した相棒たちの実力を完璧に把握した。
「ここがセキチクジム……。ホンマに忍者屋敷やなぁ」
リンが呆れたように壁を叩く。入り口だと思った場所が壁だったり、隠し扉があったりと、ジムそのものが一つの巨大な罠となっていた。
「地味にめんどくさいな……。ジム戦じゃなければ楽しめたんだが」
毒づきながら仕掛けを解き、最奥の広間へと辿り着くと、そこには一人のくノ一が待ち構えていた。
「ようこそ! 待っていたわよ、ヒビキ君」
「……なんで俺の名前を?」
「ファッファッファ! それは、拙者がジストに頼まれているからだ!」
煙と共に現れたのは、毒のスペシャリストにして現職の四天王でもあるキョウ。その忍びらしい登場に、3人は思わず拍手を送る。
「これしきの術、称賛には及ばぬ。……さて、ヒビキ殿。貴殿の兄であるジストから、直々に言伝を預かっている」
キョウの目が、獲物を狙う鷹のように鋭くなった。
「『本気で相手をしてやってくれ』とな。拙者も四天王としての全力は出さぬが、これまでのジムリーダーとは次元が違うと心得よ!」
キョウが放ったのは、本来ならジム戦には出さないであろう高速移動の残像すら見えないほどに鍛え上げられたクロバット。
「望むところです……! 行ってこい、コッペ!」
「ライラァーイ!!」
ヒビキは一番手として、ライチュウのコッペを出すとコッペは頬の電気袋を激しく火花させ、フィールドに躍り出た。
ジョウト四天王同士の「信頼」が結んだ、最高難度の試練。
セキチクジムの静寂が、一瞬にして殺気混じりの熱気に包まれた。
「コッペ! 【挑発】! 【毒々】を打たせるな!」
「ほお、【猫騙し】対策していたが、読まれていたか……ならば【クロスポイズン】!」
一瞬の判断が勝敗を分ける、毒と雷の死闘が今、幕を開ける。
序盤からバトルは苛烈を極める。
ヒビキのライチュウ『コッペ』が【挑発】を決めるが、キョウのクロバットはまるで変化技を織り交ぜているかのような変幻自在の機動力でコッペを翻弄し、着実にダメージを蓄積させていく。
(やりにくいな……。流石は四天王だ)
焦りを見せず、ヒビキは好機を待った。
「コッペ! 【電撃波】!」
必中技で強引に一撃を見舞うが、同時に【挑発】が切れる。
「これは僥倖! クロバット、【追い風】!」
「一か八かだ! 【ばちばちアクセル】!!」
追い風を吹かせるため、一瞬だけ静止したクロバットの隙を逃さない。相棒技の超加速が激突し、クロバットを戦闘不能に追い込む。だが、戦場には既に凄まじい「風」が吹き荒れていた。
続くキョウのアーボックによる【ふいうち】を受け、コッペが沈む。
ヒビキが二番手に繰り出したのは、進化したばかりの重戦車──ドサイドン。
「ほう、兄と同じポケモンを持つか」
キョウの指示が飛ぶ。
「アーボック! 【とぐろを巻く】から【アクアテール】!」
「耐えろ、ドサイドン! 【地震】だ!」
攻撃力を高めた水の連撃がドサイドンの岩肌を叩く。だが、ドサイドンはそれを正面から受け止め、大地を揺らす一撃を返した。アーボックの【痛み分け】によって限界まで削られたが、最後はドサイドンの地力が勝り、二体目を突破する。
しかし、キョウが最後に放ったのは、誰もが予想だにしない「異形」であった。
「ゆけ! ハリーマン!」
「……え!? あれ、もう絶滅したと言われているハリーマンじゃないですか!」
知識豊富なセナが驚愕の声を上げる。ヒスイ地方に生息していたとされる、毒・悪タイプの進化形。
「毒・悪か……フーディンじゃ分が悪いな」
ヒビキは冷静にドサイドンに最後の一撃を託すが、ハリーマンの【どくどく】と【毒針千本】の猛攻の前にドサイドンは崩れ去った。
「ドサイドン、ありがとう。……最後はお前だ、ニドキング!」
ヒビキが最後に選んだのは、長く苦楽を共にしてきた相棒であった。
「ほぅ、この毒使いにあえて毒タイプを出すか……面白い! 【アクアブレイク】!」
「ニドキング! 【
激突の瞬間、フィールドに青白い火花と凍てつく冷気が爆ぜた。
「なんと!? 冷気の中に電撃を内包させておるのか!」
キョウが驚愕するのも無理はない。それは、冷気で水の動きを鈍らせ、内包した電撃で内部から破壊する、ヒビキが独自に編み出した属性融合技の一端。
「これが俺の隠し札の一つだ! 両腕でいけ! 【冷雷の拳】連撃!!」
「ならば【地獄突き】と【毒針千本】だ!」
刺と拳が複雑に交差する乱打戦。毒の針がニドキングの皮膚を焼き、氷の拳がハリーマンの肉体を削る。一歩も引かない死闘の中、ヒビキが勝負を仕掛けた。
「ニドキング! 尻尾で【大地の力】だ!!」
至近距離での爆破。自分さえも巻き込むその一撃が、砂塵を巻き上げる。
沈黙が流れる中、煙の向こうで最後に立っていたのは──。
「ニドォォォッ!!」
ボロボロになりながらも、勝利の咆哮を上げたニドキングの姿に、ヒビキは堪らず駆け寄りその巨体を抱きしめた。
「見事だ、ヒビキ! よくぞ本気の拙者を打ち倒した!」
キョウは潔く敗北を認め、忍びらしい所作で「ピンクバッジ」を差し出した。
「ありがとな、ニドキング。……最高のバトルだったよ」
手にしたバッジの重みは、四天王という壁を一つ越えた証。ヒビキの眼差しには、リーグ制覇を見据えた真の強者の光が宿っていた。
ポケスペで似たような描写を見た気がするので真似してみました。