ポケットモンスター:オーバー・ザ・レジェンド 作:ガチャガチャクツワムシ
ダークシティへの道中、一行は進化の石の産地として名高い「ストンタウン」へと立ち寄った。
「確か、この町は進化の石が多く採掘される場所だったな」
「それなら、ここで石を購入した方がいくぶんか安そうですねぇ」
「ほんまやね。今後のために、あんま無駄遣いはしたくないし助かるわ」
物価の安さにセナとリンが目を輝かせていると、町の一角で催されているパーティー会場が騒がしくなっているのに気づいた。覗いてみれば、イーブイとその進化形を連れた四兄弟が、サトシたちと何やら揉めている。
「……またサトシが何かに巻き込まれてるぞ」
「ですねぇ」「どうする、ヒビキ?」
「ほっとこう」
厄介事の予感に、三人は足音を殺してその場を離れようとした──が。
「あっ! ヒビキ、リン、セナ! 丁度良かった!」
運悪く、鋭い観察眼を持つタケシに見つかってしまった。
「チッ、気づかれたか」「仕方ありませんね」「せやな……」
観念して話を聞けば、末っ子のタイチが連れるイーブイを、三人の兄たちがそれぞれ「サンダース」「ブースター」「シャワーズ」のどれに進化させるかで揉めているのだという。
「他の進化形じゃ駄目なのか?」
ヒビキがふと口にすると、四兄弟とサトシたちが不思議そうに首を傾げた。
「氷の石でグレイシア、リーフの石でリーフィア。他にも懐き具合でニンフィアやブラッキー、エーフィ……。候補は他にもあるだろ?」
「えっ!? ニンフィアとかリーフィアって、イーブイの進化形なのか!?」
他地方の最新情報に疎いカントーのトレーナーたちがざわつき始める。そこへ、一人の中老人が悠然と近づいてきた。
「ヒョッヒョッ、確かに今はその八体が確認されておるが、イーブイの遺伝子は不安定じゃ。もしかしたら、未だ発見されておらん進化形がおるかもしれんのじゃよ」
「あっ、相棒爺さん!」
現れたのは、ピカチュウやイーブイの潜在能力を引き出す達人、通称・相棒爺さんだった。
「久しぶりじゃのう、ヒビキ! お主のコッペやケーキの双子は、相棒技を極めておるか?」
周囲の「誰だこの老人は」という視線に対し、爺さんは朗らかに笑って自己紹介を済ませる。その傍らには、カントーではお目にかかれないアローラライチュウやニンフィアをはじめとする希少なポケモンたちが勢揃いしており、周囲のざわめきはさらに強まった。
「さて少年よ。本当はお主、イーブイのままで強くなりたいのじゃろう?」
爺さんがタイチに問いかけると、少年は気まずそうに、しかし真っ直ぐに頷いた。
「なら、まずは『相棒技』を習得するとよい」
爺さんの合図と共に、連れていたイーブイを含めた進化形たちが次々と技を披露する。
激しい炎を纏う「めらめらバーン」、癒やしの泡が舞う「いきいきバブル」、闇を切り裂く「わるわるゾーン」、そしてイーブイ自身の全力をぶつける全力の「ブイブイブレイク」──。
「今のがイーブイ系列が使える相棒技じゃ。これらを使いこなせば、進化せずとも一線で戦うことは十分に可能。可能性を狭める必要はないのじゃよ」
目の前で繰り広げられた幻想的かつ強力な技の数々に、タイチの目が希望に輝く。
「じゃがのう」
相棒爺さんは一度言葉を区切ると、真剣な目をタイチに向けた。
「イーブイのままで強くなるというのは、並大抵の苦労ではない。きちんと考え、鍛え上げねばならん。……それを完全に成し遂げたのは、現在確認されている中ではシンオウの『カナタ』の特殊なイーブイぐらいじゃろうな」
「カナタ兄が……?」
ヒビキが目を見開く。幼い頃から自分を可愛がってくれた伝説の5人のうち、最強のレンジャーにしてオールラウンダーと呼ばれる、あのカナタのことだ。
「特殊って、どういうことだ?」
サトシが身を乗り出して質問する。爺さんは「ヒョッヒョッ」と笑いながら、世界でも最先端とされる研究内容を語り出した。
「進化を研究するナナカマド博士の論文にも記載されておるがの、ポケモンには『進化した姿を固定化する遺伝子』というものがある。じゃが、生まれつきそれを欠いた特殊な個体が稀に存在するのじゃ。その個体は、進化しても一時的なもので、また元の姿へと戻ってしまう」
「じゃあ、ずっとイーブイのままってことですか?」
セナが驚きを露わにする。だが、爺さんの口から語られたのは、さらなる規格外の事実だった。
「その通りじゃ。しかし、カナタとその相棒はその特異体質を逆手にとり、『自分の意思で自在に任意の進化形へ変身する』という戦術を編み出したのじゃ。戦況に応じてシャワーズにも、ブラッキーにも、ニンフィアにもなれる。普段はリミッターをかけておるが、それを解除した奴らの戦闘力は、現職のチャンピオンすら打ち倒すと言われておる」
「鬼に金棒じゃん」
ヒビキは冷や汗を流した。三手先を読む戦術眼を持つカナタが、自在にタイプを変えるイーブイを使えば、もはや手も足も出ないのは想像に難くない。
そんな衝撃の事実が明かされた直後、突如として上空に不穏な影が差した。見上げれば、巨大なニャースの顔を模した気球が浮遊している。
ロープが投げ落とされ、派手な衣装を纏った男女が降り立ってきた。
「なんだお前達は!?」
四兄弟の長男が叫ぶ。
「何だかんだと聞かれたら!」
「答えてあげるが世の情け!」
「世界の破壊を防ぐ為!」
「世界の平和を守る為!」
「愛と真実の悪を貫く!」
「ラブリー・チャーミーな敵役!」
「ムサシ!」
「コジロウ!」
「銀河を駆けるロケット団の二人には!」
「ホワイトホール、白い明日が待ってるぜ!」
「にゃーんてにゃ!」
いつもの口上。だが、問題なのは三人(二名と一匹)が、パーティーの料理を両手でバクバクと貪り食いながら喋っていることだった。
「汚いな……。せめて食べ終わってから口上を言えよ」
「お行儀悪いですぅ……」
「ってか、あのニャース、普通に人語を喋ってへんか?」
「ある意味、伝説のポケモン並みに珍しいニャースじゃのう……」
ヒビキ、リン、セナ、そして相棒爺さんからの辛辣なツッコミ。しかし、ロケット団はそんな言葉を無視し、機械を起動して会場のポケモンたちと残りの料理を網で一網打尽に奪い去り、気球へと引き上げていく。
「待てーっ! タイチのイーブイを返せ!」
「ピカチュウ、【十万ボルト】だ!」
サトシの叫びと共に電撃が放たれるが、ロケット団の気球は電気対策が施されており通用しない。
「無駄無駄! この気球は電気を通さないのよ!」
「高飛びさせてもらうぜ〜!」
高笑いと共に逃亡を図るロケット団。ヒビキたちがそれを許すはずがなかった。
「サトシ、上空の相手に小細工はいらねえな! リングマ! ピカチュウをあいつらの気球へ投げ飛ばせ!」
リングマの力強い投擲によって、ピカチュウが空高くへと撃ち上げられる。さらに、タイチのイーブイも気球の網の中で必死に抵抗し、先ほど相棒爺さんから見せてもらった【ブイブイブレイク】をイメージした体当たりを敢行。網の結び目を食い破ることに成功した。
「今だ、ピカチュウ! 網の壊れた根元に【アイアンテール】!」
鋭い鋼の尾が気球のバーナー部分を直撃。一瞬にしてガスが漏れ出し、気球は制御を失って激しく回転し始める。
「な、何よこれ〜!?」
「せっかくの料理がぁ〜!」
「最後だ! ピカチュウ、思いっきり【十万ボルト】!!」
「ピカ、ちゅうううううううウウッ!!!」
捕らえられていたポケモンたちが地上へ救出された直後、至近距離から放たれた最大出力の電撃が気球を木っ端微塵に爆破した。
「「「嫌な感じぃぃぃぃ〜〜〜!!!」」」
悲鳴と共に、ロケット団はストンタウンの空の彼方へと吹き飛んでいったのだった。
事件が解決し、タイチのイーブイは無事に少年の元へと戻った。
兄たちも、進化せずともロケット団の罠を打ち破るきっかけを作ったイーブイの可能性を認め、タイチの「イーブイのまま育てる」という決意を応援することを約束した。
「おお! そうじゃ、ヒビキ。わしは此れからアローラ地方に行こうと思っておる。良ければケーキを向こうで進化させようか?」
「良いの!? ありがとう爺さん!」「ピカチュウ!」
「構わんよ。それとサトシ君じゃったな? 君のピカチュウも相棒技を習得する気はあるかのう?」
「教えてくれるの!?」
「もちろんじゃ」
「サンキュー!」「ピッピカチュウ!」
こうしてサトシ達と別れダークシティを目指したのだ。
カントーの生まれでカントーしか旅をしてないトレーナーは、隣のジョウト以外の地方のポケモンは名前や姿しか知らない感じです。
ポケスペのブイを出したくてこのようなオリジナル設定を作りました。
一応ルール違反と言われないように1試合で一回しか進化しないようにしていますが、相手から要請されれば制限なく使って来ます。