ポケットモンスター:オーバー・ザ・レジェンド   作:ガチャガチャクツワムシ

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ダークシティの騒乱

 カントー地方の片隅に位置する街、ダークシティ。

 どこか陰鬱でピリピリとした空気が漂うその街にたどり着いたヒビキ、リン、セナの3人は、さっそく街のジムへと足を運んでいた。しかし、重い扉を開けた先にあったのは、歓迎とは程遠い緊迫感だった。

 「あの~、すみません……」

 ヒビキが恐る恐る声をかけると、奥から鋭い眼光を向けたジムトレーナーらしき男たちが現れた。

 「何だお前たちは! ……って、旅のトレーナーか。用件は何だ?」

「えっと、ここのジムリーダーのクロバネさんに会いに来たのですが……」

「クロバネさんの知り合いか? ……あぁいや、見たところ『奴ら』の仲間ではなさそうだな。すまない、少々気が立っていてね」

 あからさまにホッとした様子を見せた男に、リンが小首を傾げて尋ねる。

 「何かあったん? めっちゃ空気ピリピリしとるけど」

「実はな……クロバネさんがポケモンリーグからの要請で遠征に出ている隙を狙って、このジムを乗っ取ろうとしている不届きなチンピラどもがいるんだ」

「それ、すぐにポケモンリーグに連絡して対応してもらうべき案件じゃないですかぁ?」

 セナがのんびりとした口調ながらも核心を突くと、トレーナーの男は深いため息をついた。

 「それが、リーグに何度も緊急の連絡を入れているんだが、一向に返信が返ってこないんだ。幸い、自分たちの力だけでも防戦はできているが、これじゃあ完全にオタチごっこさ」

「困りましたねぇ……」

 セナが眉をひそめて考え込む。その横で、ヒビキは少しだけ考えた後、そっとポケットから電話を取り出した。

 「……あの、一応、俺の方からポケモンリーグに伝てがあるので、直接連絡してみましょうか?」

「えっ!? 本当かい! 頼む、藁にもすがる思いだ!」

 男の必死な訴えに頷き、ヒビキは兄であるジストの番号を呼び出した。数回のコールの後、電話から聞き慣れた声が響く。

 『おう、ヒビキか。どうした?』

「あっ、兄貴! 実は今ダークシティのジムにいるんだけど、ちょっとおかしなことになってて……」

 ヒビキが現在の状況を簡潔に伝えると、電話の向こうでジストの声のトーンが、スッと一段低くなった。

 『……そんな話、リーグのこちら側には一切入ってきてないぞ。というか本来なら、クロバネの遠征はもう終わって、今頃はそっちに戻っているはずだと遠征先から連絡を受けている』

「え? そうなの?」

『あぁ、間違いない。……おい、そっちのジムでリーグへの連絡を受け取った奴の名前を確認してみてくれ』

 ヒビキが視線で促すと、傍で聞いていたジムトレーナーが慌てて「ヤバシ、という男です!」と告げた。それをヒビキがそのままジストに伝える。

 「ヤバシって名乗ってたみたい」

『……ヤバシ、だな。わかった、こっちで裏を洗ってみる。ついでにクロバネ本人にも連絡して、大至急ジムへ戻るように言っておくわ。じゃあな』

 ブツリ、と電話が切れる。一連の手際の良いやり取りを目の当たりにしたジムトレーナーたちは、一様に安堵の表情を浮かべた。

 「あ、ありがとうございます……! 君たち一体何者なんだ……」

 そうこうしていると、突然ジムの外から怒号と騒がしい足音が響いてきた。

 「チッ、また奴らか……!」

「またって、さっき言ってたジムを乗っ取ろうとしてる人たちですか?」

「あぁ。ヤスジム、カズジムっていう非公認ジムを名乗っている質の悪い連中だ。危ないから、君たちは奥の窓際で待っていてくれ!」

 男たちに促され、ヒビキたち3人は窓の外を覗き込んだ。外では非公認ジムのトレーナーたちがポケモンを繰り出し、小競り合いから激しいポケモンバトルへと発展しようとしていた。

 その時、緊迫する戦場の上空から、一筋の影が鮮やかに舞い降りた。

 「あッ! クロバネさんだ!」

 ヒビキの声と同時に、華麗に着地したその人物がモンスターボールを投じる。圧倒的な実力差。クロバネは一瞬のうちにカズジム、ヤスジムの連中を文字通り叩き潰し、逃げ惑うチンピラたちを一瞥すると、悠然とジムの中へと戻ってきた。

 「ハァ……全く、留守の間に羽虫が湧くなんて鬱陶しいわね」

 息一つ乱さず髪をかきあげたクロバネは、ロビーに佇むヒビキの姿を見つけると、その表情を一変させて大げさに両手を広げた。

 「あらァッ! ヒビキちゃんじゃなぁーい! 久しぶりねぇ!」

「お久しぶりです、クロバネさん! 元気そうですね」

「ええ、元気よォ! 相変わらず可愛いわねぇ!」

 親しげに、そしてどこか妖艶に笑うクロバネを見て、後ろにいたセナとリンは完全に硬直していた。驚きから復活したリンが、ヒビキの耳元でボソッと囁く。

 「……なぁ、ヒビキ。あのクロバネさんって人、メッチャ、イケメンな綺麗なお姉さんやん?」

「ですねぇ……見惚れてしまいそうです」

 セナも同意するように頷くが、そんな二人の様子に気づいたクロバネは、フッと悪戯っぽく微笑んだ。

 「あら、驚かせちゃったかしら? ちなみに私は、今は女よ。元・男だけどね?」

「「……えっ!?」」

 リンとセナの声がきれいにハモる。

「どういうこっちゃ!?」と大混乱に陥るリンの肩を叩きながら、ヒビキが苦笑交じりに解説を入れた。

 「クロバネさんはね、自分の性自認が女性だからって、わざわざ伝説のポケモン『ジラーチ』を探し出して、その願いの力で自分の身体を本当に女性に変えてもらったんだよ」

「ええ、本当に楽しかったわよぉ。あの時はジスト先生にも色々と手伝ってもらってね。良い旅の思い出だわ」

 クロバネがウインクをしながら放ったその爆弾発言に、リンとセナは、ダークシティの騒動すら吹き飛ぶほどの驚愕の声をジム内に響かせるのだった。




町の被害はかなり防がれているからか住人はそこまで悪感情を持っていない感じです。
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