ポケットモンスター:オーバー・ザ・レジェンド   作:ガチャガチャクツワムシ

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静かなる1番道路

「……なんか結局、誰とも出会わずに着いてしまったなぁ」

 トキワシティの入り口に立つ門をくぐりながら、ヒビキは思わず天を仰いだ。

 背後のマサラタウンの方角を見れば、まだ昼時ですらない。1番道路を抜けるのに要した時間は、これまでの新人トレーナーたちの記録を大幅に更新するレベルだろう。

「クマァ……」

「ニドォ……」

 足元のヒメグマとニドランも、期待していた「初陣」がお預けを食らったことで、どこか手持ち無沙汰な様子で肩を落としている。

 道中、少しは草むらを散策してみたのだ。しかし、草一本、影一つ動く気配がなかった。まるで一帯の野生ポケモンたちが、示し合わせたように土の奥深くに引きこもってしまったかのようだった。

「とりあえず、ポケモンセンターに向かうか。博士に連絡もしなきゃだしな」

 ヒビキは赤い屋根の建物に入ると、受付のジョーイさんに軽く挨拶を済ませ、ビデオ電話の受話器を取った。

『おぉ、ヒビキ! やはりもうトキワシティにたどり着いたか!』

 画面に映ったオーキド博士は、驚きよりも「やっぱりか」という納得の表情を浮かべていた。

「博士……実は、1番道路に一匹もポケモンがいなかったんですけど。これって僕が運が悪いだけですか?」

『フォッフォッフォ、すまんのう。実はな……』

 そこで語られたのは、出発の際に見送られた「あの咆哮」の影響だった。ジストの手持ちたちの殺気にあてられた野生ポケモンたちが、パニックを起こして隠れてしまっていたのだという。

「……マジっすか!?」

「クマッ!?」

「ニドッ!?」

 一人と二匹が完璧にシンクロしたリアクションで絶叫する。

 つまり、あの猛烈すぎる手持ちたちのエールのせいで、弟の記念すべき「初ゲット」のチャンスは物理的に消滅していたわけだ。

『まぁ、トキワシティ周辺ならばそろそろポケモンたちも顔を出し始めるであろう。少し休んだら、改めて探してみなさい』

「わかりました……。はぁ、やってくれるよ、本当に」

 通話を終え、ヒビキはどっと溢れ出た疲れと共に椅子に深く腰掛けた。

 バトルしたわけでもないのに、この疲労感。原因が兄にあるというのがまた、なんともヒビキたちらしい旅の始まりだった。

「……よし、気を取り直して探しに行くかぁ。一匹も捕まえずにニビジムに行くわけにもいかないしな」

 若干、目の下に隈を作りながら立ち上がると、足元の二匹も「やれやれ」といった様子で、しかしどこか期待を込めて頷き返した。

 そうして三人は元来た道を戻り、改めて1番道路の散策を開始した。

 しばらく草むらをかき分けて進んでいると、ふと、本来ならこの近辺で見かけるのが珍しいポケモンの姿が目に入った。

「あれって……ドードー? この近くだと確か、セキエイ高原とかに生息しているはずだけど」

 二つの首を交互に動かし、周囲を警戒している鳥ポケモン。ヒビキは記憶の端にある知識を引っ張り出す。

「──あぁ、そうか。マサラでもドードリオは朝を告げる役で飼われてるし、その野生化した個体がこの辺りに定着してるって聞いたことがあるな」

 本来の生息地からは外れているが、マサラタウンに縁のある個体の子孫。

 他のポケモンたちが兄貴の咆哮に怯えて隠れる中、このドードーだけは毅然と、あるいはふてぶてしくそこに立っていた。その度胸の良さが、ヒビキの心に火をつける。

「いい度胸だ。兄貴の連中の殺気を受けて、まだ戦う気が残ってるんだな。……よし! アイツを捕まえよう!」

 ヒビキが不敵に笑うと、足元の二匹も獲物を見定めた鋭い眼光に変わった。

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