ポケットモンスター:オーバー・ザ・レジェンド   作:ガチャガチャクツワムシ

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ダークジム2

「ふふ、さすがに大技の反動ダメージを使い過ぎちゃったわね……。おゆき、ベトベトン!」

 クロバネが次に繰り出したのは、お馴染みの泥のようなポケモン──いや、その体色はカントーで見られる紫色ではなく、緑や黄色、ピンクが混ざり合った、まるでサイケデリックな極彩色にギラギラと輝くものだった。

 「ベトォ……ッ」

 「あのベトベトン、兄貴も持ってたな……。 行ってこい、ニドキング!」

 ヒビキが放ったボールから、紫色の硬質な皮膚を持つ大柄なニドキングが「ニドォッ!」と地響きを立てて現れる。

 「うわぁっ、またものごっつい色したベトベトンやな!?」

 リンが驚いて身を乗り出すと、セナが不思議そうに鼻をひくつかせた。

「でも、ベトベトン特有のあの強烈な匂いがしませんねぇ……?」

 「その通り、よく気づいたわね」

 クロバネは艶然と微笑み、二人に解説を向ける。

「この子はアローラ地方の固有種、通称アローラベトベトン。タイプは毒に加えて『悪タイプ』が追加されているの。リージョンフォームには、さっきのケンタロスようにタイプがガラッと変わったり、ベトベトンのように新しく追加されたりする子が確認されているわ。ちなみに、アローラベトベトンは体内で多様な毒が混ざり合って結晶化しているから、外には悪臭を放たないのよ」

 説明を終えたクロバネが、不敵にヒビキを見据える。

 ヒビキとニドキングは数々の修羅場をくぐり抜けてきた経験からか、不用意に動かず、アローラベトベトンの出方を慎重に伺っていた。

 (当然『ふいうち』があるよな……。なら、ここは出し惜しみなしだ!)

 「藪をつつくぞ! ニドキング、【地震】!!」

「流石、対策は知られているわね。──ベトベトン、【不意打ち】よ!」

 ニドキングが地面を叩きつける寸前、アローラベトベトンが影のように鋭く飛び込み、先制の一撃を叩き込む。「ニドッ!?」と一瞬体勢を崩すニドキング。しかし、直後に繰り出された本命の【地震】による凄まじい地割れと振動が、アローラベトベトンの巨体を激しく打ちのめした。効果は抜群、凄まじい大ダメージだ。

 「よし、もう一度【地震】だ!」

「させないわ、ベトベトン、【とける】!」

 アローラベトベトンが自らの体を完全に液状化させ、フィールドの地面と同化するように広がっていく。これにより【地震】の猛烈な振動を受け流し、ダメージを最小限に抑え込んだ。

 「そのままの状態で、【冷凍パンチ】と【思念の頭突き】を叩き込みなさい!」

 ニドキングがハッと足元を見た時には、すでに手遅れだった。液状化して足元まで広がっていたアローラベトベトンが、逃げ場のないゼロ距離から、凍てつく拳とサイコパワーを纏った一撃を立て続けに突き上げる! 

 「くっ、マズい……! 一旦戻れ、ニドキング!」

 効果抜群の連続攻撃に大ダメージを負ったニドキングを素早くボールに回収し、ヒビキは次のボールを掴んだ。

「頼んだぞ、ブースター!!」

 「ブースターッ!」

 もふもふとした立派な毛並みのブースターが気合十分に飛び出す。クロバネはそれを待っていたとばかりに口角を上げた。

 「あら、炎タイプならこちらの毒技が通るわね! 【毒々】よ!」

「──それを待ってたんだ! ブースター、わざと【毒々】を受けろ!」

 紫色の毒液がブースターの体を蝕み、ブースターは激しい猛毒状態に陥る。リンとセナが「えっ!?」と息を呑む中、ヒビキの鋭い声が響いた。

 「そのままの威力をぶつけろ、【空元気】!!」

「ブゥゥ──スタァァ──ッ!!」

 状態異常の時に威力が跳ね上がる、捨て身の特攻。猛毒の痛みを爆発的なパワーに変えたブースターが、光の弾丸と化して突撃する。その凄まじい一撃を正面から浴びたアローラベトベトンは、ひとたまりもなく目を回し、そのまま戦闘不能となった。

 クロバネはパチパチと拍手をしながら、ベトベトンをボールへ戻す。

「肉を切らせて骨を断つ、ね。この緊迫した場面でそんな博打を打ってくるなんて、流石はジスト先生の弟さんだわ」

 楽しげに笑うと、クロバネは腰のホルダーから最後のボールを抜き放った。

「さあ、私の最後のポケモンよ! お行き、ニャイキング!」

 「ニャイキ──ング!!」

 現れたのは、まるでヴァイキングの兜を被ったような、獰猛で硬質な毛並みを持つニャースに似たポケモンだった。

 「この子はニャイキング。ガラル地方の固有のニャースだけが進化できる姿よ。リージョンフォームには、こうして独自の進化先を持つポケモンもいるの。ちなみにタイプは『鋼』ね!」

「鋼タイプなら、こっちの炎技が刺さる! 毒で倒れる前にダメージを稼ぐぞ、ブースター、【ニトロチャージ】!」

 ブースターが炎を纏って加速するが、クロバネの指示は一瞬早かった。

「甘いわ! 【猫騙し】!」

 ニャイキングが素早い平手打ちを放ち、パンッと小気味いい音が響く。その衝撃に、ブースターは思わず怯んで動きを止められてしまった。

 「なら、これでどうだ! 【すくすくボンバー】!」

 ストンタウンでの特訓で習得した、イーブイ系統の特別な相棒技。ブースターが放った不思議な植物の爆弾がニャイキングの足元で弾け、その体に「やどりぎのタネ」のツルが瞬時に巻き付いた。ニャイキングの体力が吸い取られ、ブースターへと還元される。

 「小細工を! ニャイキング、【辻斬り】よ!」

 ツルに動きを制限されながらも、ニャイキングは悪のエネルギーを宿した鋭い爪を伸ばし、ブースターを深く切り裂いた。

 「負けるか! 今度は【わるわるゾーン】!」

 ブースターがもう一つの相棒技を放ち、ダメージを与えると同時に、味方の防御を高めるオーラ──【リフレクター】をフィールドに展開する。しかし、じわじわと蝕む猛毒のダメージと、先ほどの強力な攻撃により、ブースターの体力はすでに限界が近づいていた。

 「これでトドメよ、最高速の【ジャイロボール】!!」

 ニャイキングが鋼の弾丸となり、猛烈な回転を伴って突撃してくる。リフレクター越しとはいえ、まともに喰らえばひとたまりもない。

 「ブースター、最後の一撃だ! 【ニトロチャージ】で迎え撃てぇ!!」

 極限状態の中、ブースターは全身に最後の炎を燃え上がらせ、真っ向からニャイキングへと突っ込んでいく。

 激しい金属音と炎の爆風が吹き荒れ──衝撃のあと、ブースターはその場に力尽きて倒れた。

 「ブースター、戦闘不能!」

 だが、その執念の【ニトロチャージ】は、確実にニャイキングの鋼の体に深い爪痕を残していた。ヒビキの残る手持ちは、傷ついたニドキング。そしてクロバネのニャイキングもまた、【すくすくボンバー】の宿り木に体力を吸われ、確実に消耗している。

 いよいよ、ダークジムの戦いは最終局面へと突入しようとしていた。

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