ポケットモンスター:オーバー・ザ・レジェンド 作:ガチャガチャクツワムシ
フシギバナ達の神秘的な出会いを経て、ヒビキ達はついに目的の港町へとたどり着いた。──しかし。
「いやぁ〜……海が青くて綺麗だねぇ〜……」
「そうですねぇ〜、潮風が心地いいですぅ〜……」
「せやなぁ〜……ずっとこうしてたいわぁ〜……」
港のベンチに腰掛け、死んだような目で現実逃避気味に海を眺める3人の姿があった。
それもそのはず、駅の掲示板には【グレンタウン行き定期便:機材トラブルのため急遽運休。再開まで約1ヶ月を要します】という、絶望的な張り紙が叩きつけられていたのだ。
リンが首を回しながら、重い口を開く。
「ほんで……ぶっちゃけどうするぅ〜? 他に定期便が出とる町へ移動するとなると、ここに来るまでの倍以上の時間がかかるで?」
「どうしましょうねぇ。最悪、セキエイリーグへの参加手続きがかなりギリギリになりますねぇ。かといって、ここから他のジムを目指すのも結構な距離ですからねぇ……」
セナが困ったように眉を下げると、ヒビキは意を決してポケットから電話を取り出した。
「う〜ん……しょうがない、最後の手段だ。兄貴に頼る!」
ピピッ、と発信音の後、画面に向かってヒビキが事情を説明する。
「──ってことでさ、兄貴。ここから空を飛んで海を渡る場合、どれくらいかかるかな?」
画面の向こうで、ジストがやれやれと肩をすくめた。
『お前、本当に運が悪いな……。そうだなぁ、一応途中にいくつか休憩できる無人の小島がある。お前のプテラやクロバット、セナのモルフォンやプクリン、リンのリザードン等を総動員して、交代しながら飛ばせば3日から4日ってところか』
「定期便とほぼ同じくらいのスピードか! わかった、サンキュー、兄貴!」
通話を終えてバッと振り返ると、ヒビキの顔にはいつもの不敵な笑みが戻っていた。
「兄貴に相談したら、空路でなんとかなりそう! セナ、急で悪いんだけど、モルフォンとプクリンを手持ちに入れてくれないか?」
「お安い御用ですよぉ」
セナが朗らかに頷くと、リンも頼もしくニカッと笑う。
「ウチはリザードンとカモネギでお出迎え体制バッチリや!」
こうして3人は、空を飛べるポケモンたちを一斉に繰り出し、グレンタウンを目指して大空へと飛び立った。
しばらくの間、広大な海の上を飛び続けていると、ジストの言っていた通りの小さな島が見えてきた。
空も少しずつ茜色に染まり始めている。3人は暗くなる前に、その小島へ降りて休憩することにした。
「みんな、ありがとうな。ゆっくり休んでくれ。明日早めに出れば、もう少し大きめの島に行けそうだな」
ヒビキがプテラたちを労っていると、セナが辺りを見回しながら呟いた。
「この辺りは、あまり野生のポケモンが来なさそうな静かな場所ですねぇ」
「ほんなら、キャンプの準備しよか!」
リンの掛け声でテントを広げようとしたその時、ヒビキは海岸線からの強い視線に気がついた。
岩陰からひょっこりと顔を出し、不思議そうにこちらを覗き込んでいる白い影──野生のジュゴンだった。
「あっ、ジュゴンだ! ……ちょうどいいや、これからの海の旅のためにも、氷と水タイプのポケモンが欲しかったんだ。──行け、コッペ!!」
ヒビキの合図で飛び出したのは、原種ライチュウ・コッペ!
「ライチュッ!」
コッペは長い尻尾を鋭く振って地面を蹴ると、ジュゴンに向けて電電とした素早い突撃を仕掛ける! タイプ相性も抜群の電撃交じりの一撃が見事に決まり、ジュゴンの動きが鈍った瞬間を逃さず、ヒビキがモンスターボールを投げつけた。
カチリ、と小気味よい音が響く。
「よし、ジュゴンゲット! これで海で何かあった時に、波乗りで泳げるポケモンが手に入ったぞ」
ヒビキが嬉しそうにボールを回収していると、少し離れた浜辺からリンとセナの弾んだ声が聞こえてきた。どうやら2人も、キャンプの準備がてら釣りをしていたらしい。
「ヒビキく〜ん、私も可愛いタッツーを捕まえちゃいましたぁ!」
「ウチも負けてへんで! 立派なシェルダーを捕まえたわ!」
これで水タイプの手持ちは、セナが以前捕まえたコダック、リンがスターミーやドククラゲ、ヒビキがニョロボンに加えて新入りのジュゴンが加わり、3人とも海を渡るには十分すぎるほど充実した布陣となった。
新しい仲間たちとささやかな歓迎の夕食を楽しんだ3人は、明日に備えて早めに眠りについた。
翌朝。
朝露が消えるのと同時に、3人は早速捕まえたばかりのジュゴンや、リンのドククラゲを海へと繰り出した。
「いくぞ、みんな!」
水ポケモンたちの背中に分乗し、海を滑るように進んでいく。運が良いことに、ジストから教えてもらったルートは絶好の海流に乗ることができ、予想以上のハイスピードで距離を稼ぐことができた。
海の旅を十二分に満喫した3人は、最終行程として再び飛行ポケモンたちの背へと飛び移り、ラストスパートをかける。
正式な強行軍を始めて3日目の夕方。
赤く燃えるような夕日に照らされた、激しい火山活動の形跡を残す常夏の島──『グレンタウン』が、ついにその壮大な姿を目の前に現した。
「「「着いたぁぁぁ──!!」」」
海風を浴びながら叫ぶヒビキの視線の先には、次なる強敵、カツラが待つグレンジムがそびえ立っていた。