ポケットモンスター:オーバー・ザ・レジェンド 作:ガチャガチャクツワムシ
マナシロタウンの港に到着したヒビキ、リン、セナの3人は、旅の疲れを癒やす間もなく、そのままマナシロジムへと直行した。
しかし、ジムの門をくぐった3人を迎えたのは、周囲の空気をピリつかせるほどの鋭い眼光を放つ一人の老人だった。
「待っておったぞ。お主がヒビキだな?」
老人は低く重みのある声で不敵に微笑んだ。
「ワシはクスノキ。かつて、このカントーでチャンピオンをしていた者だ。挨拶代わりに、早速だがジム戦を始めようじゃないか」
クスノキに案内されたバトルフィールドには、すでに厳格な面持ちの審判が待機していた。ヒビキとクスノキがそれぞれの白線へと立つと、審判が厳かに旗を掲げる。
「これより、ジムリーダー・クスノキと挑戦者・ヒビキによるジムバトルを行います! ルールは5対5のシングルバトル。挑戦者のみポケモンの交代が可能とします!」
「ふむ、まずはワシから出そう。ゆけ、ハピナス!」
「ハピィー!」
クスノキが呼び出したのは、ピンク色の福々しい身体をしたハピナス。しかし、その佇まいには並のポケモンとは一線を画す風格があった。
「相手がハピナスなら、毒を回して崩す! 行ってこい、スピアー!」
「スピィッ!」
ヒビキの先鋒は、鋭い一撃離脱を得意とするスピアーだ。
「それでは、バトル開始!」
「スピアー! 【毒々】!」
スピアーが鋭い針から猛毒の液を放ち、ハピナスを確実な猛毒状態へと陥れる。しかし、クスノキは慌てる素振りすら見せない。
「ハピナス! 【リフレッシュ】じゃ」
ハピナスが淡い光に包まれると、浸透しかけていた猛毒が瞬時に洗い流されてしまった。回復の隙を突くべく、ヒビキが叫ぶ。
「なら、攪乱しながら【ドリルライナー】!」
スピアーはまるで【影分身】を使っているかのような超高速の変則的な動きでハピナスを翻弄し、鋭い針を回転させながら突撃する。
「ハピナス! 【火炎放射】!」
ハピナスが口から激しい炎を放射するが、縦横無尽に空中を駆けるスピアーの残像を捉えることはできない。スピアーの【ドリルライナー】がハピナスにクリーンヒットする!
しかし、ハピナスの底なしの体力を削りきるには至らない。
「ハピナス! 【卵産み】」
「ハピィ〜」
ハピナスが抱えたタマゴのエネルギーで、スピアーが与えた傷を着実に癒やしていく。じわじわと体力を削られ、じり貧になっていくのはスピアーの方だった。
「ワシのハピナスは持久戦を得意としておる。生半可な攻撃では、倒すことは出来ぬぞ! ──【小さくなる】!」
ハピナスがその身体を急速に縮小させ、さらに回避率を跳ね上げる。このままでは攻撃すら当たらなくなると察したヒビキは、すぐさまボールを構えた。
「戻れ、スピアー! ──一気に踏み潰すぞ、行ってこい、ケンタロス!」
「ブモォォォッ!!」
スピアーを手元に戻し、ヒビキが繰り出したのは、気性の荒い猛牛ケンタロス!
「ケンタロス! 【踏みつけ】だ!!」
ハピナスが【小さくなる】を使用していたため、必中かつ威力が2倍に跳ね上がったケンタロスの巨大な蹄が、容赦なくハピナスへと迫る。
ドスゥゥン! と重い衝撃音が響き、小さくなっていたハピナスをケンタロスが容赦なく何度も踏みつけると さすがの超耐久を誇るハピナスも、相性最悪の連続攻撃には耐えきれず、そのまま戦闘不能となった。
「ハピナス戦闘不能! ケンタロスの勝ち!」
「ふむ、【小さくなる】の特性を逆手に取ったか。よく考えたな……」
クスノキは感心したようにハピナスを戻すと、2匹目のボールを投げた。
「では、次じゃ。ゆけ、ポリゴン2!」
「リリリリッ」
現れたのは、滑らかな曲線を持つピンクと青の体躯──ポリゴン2だった。
「ポリゴン2! 【スピードスワップ】からの、【怪電波】じゃ!」
ポリゴン2の放った奇妙な光線がケンタロスを包み込む。瞬時にケンタロスの自慢の素早さがポリゴン2と入れ替えわり、さらに強力な電波によって特攻を大幅に下げられてしまう。
「ケンタロス! 【怖い顔】!」
ケンタロスが凄まじい形相でポリゴン2を睨みつけ、入れ替えられた分の素早さを強引に引き下げて対抗する。
「【トライアタック】!」
「【踏みつけ】だ!」
お互いに攻撃の指示が飛ぶ。しかし、僅かにポリゴン2の行動の方が早く、ケンタロスの重い足さばきはいなされ、逆に3つのエネルギーの光線がケンタロスを直撃した。
「怯むな! 【レイジングブル】!!」
ケンタロスが怒りの形相で猛突進を仕掛けるが、クスノキは不敵に目を細めた。
「そこを狙う。【イカサマ】じゃ」
ポリゴン2はケンタロスの凄まじい攻撃力をそのまま利用し、カウンターのような一撃を叩き込んだ。自分の力をそのまま跳ね返された衝撃に、ケンタロスは耐えきれずその場に倒れ伏した。
「ケンタロス戦闘不能! ポリゴン2の勝ち!」
「よく頑張ってくれた、ゆっくり休んでくれ」
ヒビキはケンタロスを労いながらボールへ戻すと、フッと笑って、腰の特別なボールを手に取った。
「お待たせ。行ってこい、ケーキ!」
「ライラァァァイ!」
光の中から飛び出してきたのは、相棒爺さんと共にアローラ地方へと赴き、そこで見事にアローラライチュウへと進化を遂げて帰ってきたケーキだった!
超能力で自身の尻尾を浮かせ、波乗りのように空中を浮遊する姿に、クスノキの目がわずかに見開かれる。
「まずは先手必勝だ! 【ばちばちアクセル】!」
ケーキが電撃を纏い、神速に近いスピードでポリゴン2に体当たりを敢行する。先制の一撃が確実にヒットした。──しかし、ポリゴン2は驚くほど削れていない。
「……硬すぎる。もしかして、『進化の輝石』を持たせてるのか!?」
「その通りじゃ!」
クスノキが誇らしげに声を響かせる。
「進化の余地を残したこのポリゴン2に『進化の輝石』を持たせることで、防御と特防が跳ね上がる。並の攻撃では、傷一つ付けることも叶わぬぞ!」
「だったら、絡め手で行くしかない! ケーキ! 【ボルトチェンジ】だ!」
ケーキが強力な電撃をポリゴン2に浴びせると同時に、その反動を利用して光の速さでヒビキの手元へと戻る。吸引されるように戻ったボールと入れ替わりで飛び出してきたのは、闘志を剥き出しにしたオコリザルだった!
「そのまま【インファイト】!!」
「プギィィィッ!!」
ポリゴン2が電撃に怯んだわずかな隙を見逃さず、オコリザルが超高火力の拳と蹴りの嵐を叩き込む! 『進化の輝石』による強固な防御力を誇っていたポリゴン2だったが、格闘タイプの【インファイト】による猛攻をまともに浴び、ついにその硬い肉体を砕かれ、機能停止するように崩れ落ちた。
「ポリゴン2戦闘不能! オコリザルの勝ち!」
「よし!」
激しい連撃でポリゴン2を突破したヒビキとオコリザル。しかし、元チャンピオンのクスノキの表情には、まだまだ深い余裕が残されていた。激化するマナシロジムの戦いは、ここからさらに加速していく。