ポケットモンスター:オーバー・ザ・レジェンド   作:ガチャガチャクツワムシ

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再戦の狼煙

「あ~よく寝た~。さてとっ」

 草原に差し込む夕日に目を細めながら、ヒビキは勢いよく起き上がった。大きく一つ伸びをすると、腰のベルトから先ほどの試合を戦い抜いた相棒たちのボールを取り出し、一斉に投げ放つ。

 「みんな、悪かった! 俺の判断ミスが多かった!」

 勢いよく頭を下げたヒビキ。その姿に、スピアーやケンタロスたちは慌てて首を振り、自分たちが不甲斐なかったからだと言いたげにヒビキに擦り寄った。

 特にオコリザルは、あのガルーラの覇気に気圧されて【ドレインパンチ】を一歩遅らせてしまったことを激しく悔やんでいるようで、今にも土下座をしそうな勢いで拳を地面に打ち付けて悔しがっていた。

 「オコリザル、気にするな。あのガルーラはしょうがない。強烈な経験を積んだ個体だ、俺のどの手持ちを出していても最初は萎縮していたさ」

 ヒビキが優しく諭すと、スピアーたちも「そうだぞ」と鳴き声を上げてフォローに回る。仲間たちの温かい視線に救われたのか、オコリザルはようやく猛省を止めて顔を上げた。

 「とりあえず、クスノキさんへの再戦を考えている。布陣はこのままで行こうと思う。これからしっかり作戦を考えて、それから特訓だな!」

 ヒビキの力強い宣言に、ポケモンたちが一斉に吠えて応える。すると、その熱気に触発されたのか、今回は試合に出ていなかったポリゴンZが自らボールから飛び出し、「自分も混ぜろ」と言わんばかりに不規則な動きで参加を表明した。

 「ハハ、ありがとなポリゴンZ。……対ノーマルタイプで警戒したいのは、ハピナスみたいな耐久自慢な奴や、ポリゴンZやケンタロスみたいな高火力・高耐久の奴だな。その両方を兼ね備えている最悪のパターンを想定するなら……カビゴンあたりか。再戦だとまた違うのを出してきそう」

 そこまで思考を巡らせたところで、急激なバトルの疲労と頭を使った反動で、再び大きなあくびが漏れる。

「……ダメだ、頭が回らん。とりあえず、ポケモンセンターに行ってまた休むか」

 ヒビキは苦笑いしながらみんなをボールに戻すと、すっかり日が落ちかけた道を歩き、街のポケモンセンターへと向かった。

 翌日。すっかり体力を回復したヒビキは、ロビーのテーブルでノートを広げ、再度クスノキ戦の戦略を構築し始めていた。

 「昨日の試合、クスノキさんはわざと付け入る隙を作ってくれていたよなぁ。じゃなきゃ、ハピナスに【火炎放射】を使わせたり、ポリゴン2に【怪電波】を放たせたりして、わざわざこちらの出方を見るような真似はしないよな……」

 以前、兄貴たちから教えてもらったハピナスやポリゴン2の基本スタイルを思い出しながら、ヒビキはペンを走らせる。

 「確か、ああいう高耐久のポケモンは、相手を状態異常にしてじわじわ削るのが常套句ですぅ。その対策としては、補助技を封じる【挑発】が有効の筈ですねぇ」

 「うおっ!?」

 いつの間にか背後に立っていたセナが、ひょっこり覗き込みながら会話に入ってきた。

 「そうなんだよなぁ……。【小さくなる】をされたから、必中になるケンタロスの【踏みつけ】で強引に突破したけど、もし初手をケーキにして【挑発】を撃ち込んでいれば、もっと楽に展開できたのかなって」

 ヒビキが顎に手を当てて唸っていると、隣の席にリンもドサリと腰掛けた。

「なぁなぁヒビキ。あのポリゴン2が持っとった『進化の輝石』って、一体何や?」

 「ああ。進化前のポケモンに持たせると、防御と特防が1.5倍に上がる道具の筈。シアン兄が言うには、チャンピオンリーグクラスからは、ポケモンに道具を持たせるトレーナーがほとんどだそうだぞ」

 「へぇー、そうなんや! クスノキさんが持たせてるんやから、ヒビキも手持ちに何か持たせたらいいんやないか?」

 「なるほど……それもいいかもな」

 リンの真っ直ぐな提案に目から鱗が落ちたヒビキは、さっそく自分の大きなバックパックを開け、中身をジャラジャラとテーブルの上にぶちまけた。

 しかし、旅の途中で拾った実用的な道具はそう多くない。

 「うーん、良さそうなのは少しあるかな……。ほとんどが回復用の木の実くらいだなぁ」

 ヒビキが道具を仕分けしていると、セナがその中から一つの丸い石を拾い上げた。

「あっ、これなんかどうですかぁ? ケーキちゃんに持たせたら面白そうですぅ」

 「お、どれどれ? ──あ、これなら……!」

 さらにリンも、別の怪しげなアイテムを指差す。

「ウチはこれなんかええんやないかと思うで! オコリザルとかにピッタリやん!」

 「なるほど、その組み合わせならクスノキさんの戦術の裏をかけるかもしれない……!」

 幼馴染み2人の的確なアドバイスを受け、ヒビキのノートに新たな戦術の線が次々と繋がっていく。元チャンピオンへの反撃の狼煙は、今、静かに上がり始めていた。

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