ポケットモンスター:オーバー・ザ・レジェンド   作:ガチャガチャクツワムシ

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第67話

「進化したのか……?」

 タケシが呆然と呟くなか、周囲の仲間たちも目を見開いていた。

 「オコリザルって、まだ進化するのか!?」

「聞いたことが無いで!?」

「私も知りません!?」

 サトシ、リン、セナが困惑の声を上げる。

「オコリザル……大丈夫か?」

 ヒビキが恐る恐る声をかけると、その怨念の炎を纏った異形の戦士は、不敵にニィと口元を歪め、ヒビキに向けて力強く親指を立ててみせた。その仕草に、姿が変わっても中身は自分のポケモンのままだと確信し、ヒビキはホッと胸を撫で下ろす。

 その時、凄まじい駆動音とともに、巨大な捕獲装置を牽引したクスノキたちが戦場へと滑り込んできた。

 「すまん、遅れた! ユキナリがコイツを用意してくれたおかげで、ようやく対策が立てられた!」

 クスノキが叫ぶと、随行していたキクコがコノヨザルの姿を見て鋭く目を見開いた。

「何と! コノヨザルじゃないかい!」

 「キクコさん! 知っているの!?」

 シオリが尋ねるが、隣のコウメが杖を激しく地面に打ち鳴らす。

「詳しい話は後じゃ! クスノキ、キクコ、頼むぞ!」

 「おう!」

 2人が即座に装置のレバーを操作すると、超巨大なカプセル状の機構が作動し、ブラックフォッグの巨軀を強引にその内部へと吸い込み、完全に密閉した。

 「クスノキさん、これは一体……?」

 ヒビキの問いに、クスノキは額の汗を拭いながら説明した。

 「コイツは『ビッグモンスターボールX1』じゃ。ブラックフォッグを捕獲するには、通常のボールでは耐久力が足りん。これは、並のポケモンならエネルギーが消滅してしまうほど強力な、特製の超巨大モンスターボールなんじゃよ。そのために、ユキナリを通して特注で作ってもらったのじゃ」

 一同が安堵した、その瞬間だった。

 ガチリとロックされたはずの巨大なボールの隙間から、不気味な赤黒い光が漏れ出し、戦慄のブザー音が鳴り響く。

 「な、何じゃと!? 内部エネルギーが急上昇して──」

 ドグォォォォォォン!!! 

 説明が終わるより早く、ボールの内部から凄まじい衝撃波が炸裂した。あまりの至近距離での大爆発に、たまたま離れた位置にいたサトシとピカチュウ以外の全員が、爆風に巻き込まれて地面へと叩きつけられた。

 「みんな! 大丈夫か!?」

 サトシの声が響くなか、ヒビキは何とか上体を起こす。

「なんとか……。まさか、ボールの中で【大爆発】を使って、強引に破壊して脱出するなんて……!」

 「しかも、どうやらそのまま逃げたようじゃな。クスノキ、どうする?」

 キクコが顔をしかめると、コウメが自身のフーディンを前に進めさせた。

 「安心しろ、ワシのフーディンが奴の微弱な精神波を探知した。……しかし、ワシらは今の爆発の衝撃で体が動かせん。すまんがサトシ君、頼めるか? 【大爆発】の反動で奴の体力は限界のはず、今なら通常のボールでも捕獲は可能じゃ!」

 「分かった! 任せてくれ! 行こう、ピカチュウ!」

 サトシは力強く頷くと、コウメのフーディンを先頭に、暗い森の奥へと猛然と走っていった。

 しばらくして、ようやく動けるようになったヒビキたちもサトシの後を追って森を進む。すると、突如として足元からズズズ……と不気味な地響きが伝わってきた。

 「地下で何か起こったみたいね……」

 シオリが呟くと、タケシが険しい表情で叫んだ。

「サトシが危ない! 急ぐぞ!」

 タケシの号令で先を急ぐと、開けた洞窟の崩落跡に、衣服をボロボロに汚したサトシとピカチュウ、そしてコウメのフーディンが力なく佇んでいた。

 「サトシ君! 無事か!? 奴はどうした!?」

 クスノキが駆け寄って尋ねる。サトシはゆっくりと振り返り、どこか哀しげな、しかし敬意を孕んだ瞳で静かに語り出した。

 「それが……捕まえようとしたら、最後に【自爆】して、そのまま消滅しちゃったんだ……」

 「【自爆】……だと?」

 ヒビキが息を呑む。サトシは、ブラックフォッグが消え去った空間を見つめながら言葉を続けた。

 「まるで……『絶対に人間に捕まるものか!!』って、最後まで抗い続けてさ。自分の意地と執念を俺たちに見せつけるようにして、自ら消滅の道を選んだみたいだった……」

 サトシの言葉に、その場に深い沈黙が流れた。

 「そうか……奴め……。最期まで人間を拒み、誇り高く消え去ったか」

 コウメが静かに目を閉じ、三十年以上に及ぶ因縁の終止符を噛みしめるように呟いた。

 多くの犠牲を出し、数多の生命を脅かした恐怖の象徴「ブラックフォッグ」。しかし、その最期は、一匹の孤高のポケモンとしての、絶対に譲れない凄まじい尊厳と執念に満ちたものだった。

 その様子を静かに見届けていたヒビキの横では、新しき姿となったコノヨザルが、自らの引き締まった拳を見つめながら、静かに佇んでいた。

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