ポケットモンスター:オーバー・ザ・レジェンド 作:ガチャガチャクツワムシ
ボロボロのサトシを肩に担ぎ、ようやくトキワシティのポケモンセンターへと滑り込むと、ロビーで一息ついていたセナとリンが椅子を蹴るような勢いで駆け寄ってきた。
「あわわ、サトシくん大丈夫ですかぁ!? 傷だらけですよぉ……」
「どしたん!? サトシ、ボロボロやないか! 喧嘩でもしてきたんか?」
「……色々あったんだよ。とりあえず、ジョーイさん! 全員分の回復をお願いします!」
受付へ預けられたポケモンたちのボールを見送り、ヒビキはソファーに深く沈み込んだ。
「んで、結局何があったん?」
「いや、実は1番道路でオニスズメの大群に……」
ヒビキが事情を説明している最中、自動ドアが勢いよく開き、オレンジ色の髪の少女が「黒焦げの鉄屑」を抱えて乱入してきた。
「ちょっとあんた! 私の自転車、どうしてくれるのよ!!」
少女──カスミの剣幕に気圧されながら事情を聞けば、サトシがピカチュウを助けるために彼女の自転車を借り、あまつさえ雷で消し炭にしたという。それを聞いた三人の視線は、一気に冷ややかな「ジト目」へと変わった。
「お前なぁ……命の恩人相手にそれはないだろ」
「謝った方がいいですよぉ。自転車、可哀想ですよぉ」
「借りパクの上に破壊とか、一番アカンやつやん」
「そ、そんな言い方ないだろーっ!」
サトシが頭を抱えて叫んでいる間に、回復を終えたボールが戻ってきた。ヒビキはサトシの手に、一つのボールを押し付ける。
「あ、そうだサトシ。そのオニドリル、群れのボスだっただけあって相当だぞ。俺のニドランの【電撃波】や【岩石封じ】を、【ドリルライナー】や【鋼の翼】で防ぎながら追ってきてたんだからな。相当な実力者だ、気を付けて扱えよ」
「……えっ、俺、そんな凄い奴捕まえたのか?」
サトシが驚愕していると、突然ヒビキの腰のボールが勝手に開き、ドードーとオニスズメが飛び出した。
バトルの興奮が冷めていないのか、ドードーは器用にヒビキを背中に乗せ、オニスズメが先導するようにセンターのドアを体当たりで開く。
「おい! お前ら、まだ暴れ足りないのか!? もうすぐ夜だぞ!」
ヒビキが制止しようとするが、二匹は聞く耳を持たず、夜の街へと駆け出しそうになる。野生の血が騒いでいるのか、それともヒビキをもっと高みへ連れて行こうとしているのか。
「……はぁ、しょうがねぇなぁ! 付き合ってやるよ!」
諦めたように笑い、ヒビキがドードーの首をしっかり掴むと、鳥ポケモンたちは歓喜の声を上げて爆走を開始した。
「……なんなの、あいつ?」
カスミが呆然と見送る中、リンが苦笑しながら手を振る。
「ヒビキの奴、大丈夫かなぁ……あんな勢いで」
「行っちゃいましたねぇ」
「今からじゃウチら追いつけへんし。明日の朝早くに追いかけよか」
一方、爆走するドードーの背で風を切るヒビキは、既に街を抜け、深い緑の入り口に立っていた。
「このままトキワの森に行くぞ!」
夜のトキワの森は、昼間とは比較にならないほど重苦しい空気に満ちている。あちこちから強力なポケモンの気配と、獲物を狙う鋭い眼光が感じられた。
「まずは、道案内ができるポケモンを捕まえたいな……」
ドードーから降り、手探りで探索を始めると、近くの茂みがガサリと揺れた。瞬時に身構えたヒビキの前に現れたのは、一匹のナゾノクサだった。
「ナゾノクサか……。夜行性だし、丁度いい。こいつに道案内をしてもらおう! よし行け、オニスズメ!」
「ケーン!」
先ほどまで上空を警戒していたオニスズメが、鋭い鳴き声と共に急降下する。
「【燕返し】!」
回避不能の超高速の一撃。野生のナゾノクサが反応する間もなく、オニスズメの翼がその体を捉えた。
「ナゾッ!?」
急所に直撃し、一撃で戦闘不能になるナゾノクサ。ヒビキは流れるような動作でモンスターボールを投じた。
『カチリ』
「よし、ゲットだ。……さあ、悪いけど案内を頼むぜ?」
新たな仲間を加えたヒビキは、暗闇に包まれた森の奥深くへと、さらに足を踏み入れていくのだった。