ポケットモンスター:オーバー・ザ・レジェンド   作:ガチャガチャクツワムシ

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怒れる炎鳥

「兄たちの五人のバトルスタイルを組み合わせ、相手の動きを観察し、そこを突くという戦法を生み出したのだな。それを評して、このホワイトバッジを渡そう」

 クスノキの手から、眩い純白の輝きを放つホワイトバッジがヒビキへと手渡された。

 「ありがとうございます!」

 しっかりとバッジを握りしめ、満面の笑みでお礼を言うヒビキ。その隣へ、セナやリン、そしてシオリたちが歩み寄ってくる。

 「そのホワイトバッジを持っている人は、今シーズンは貴方達だけじゃないかしら? それくらい貰うのに大変なバッジだから、ポケモンリーグでも一目置かれると思うわよ」

 シオリが少し誇らしげに言うと、祖母のコウメも満足げに頷いて、リンとセナの前に立った。

 「それに、今回のブラックフォッグの件を解決するのにも一役買ってくれたからの。サトシ君には渡しそびれてしまったが、お嬢ちゃんたちにはこれを渡しておこう。これはカンザキジムのバッジ──コバルトバッジじゃ! サトシ君の分は、後でユキナリを通じて渡しておくとしよう」

 そう言って手渡された青いバッジを、リンとセナは両手で大切に受け止めた。

 「これでウチらも、検定試験以外で正式にポケモンリーグに参加できるようになるんやな!」

「そうですねぇ、嬉しいです!」

 「あと二ヶ月から三ヶ月ほどで、いよいよポケモンリーグが開催されるじゃろう。しっかり鍛錬をして頑張るんじゃぞ」

 クスノキとコウメからの温かい激励を受けた三人は、これまでの成果を報告するため、一度マサラタウンへと戻ることにした。

 帰り道、緑豊かな街道を歩きながら、三人はこれからのリーグに思いを馳せていた。

 「サトシやシゲルも、もうバッジを集め終えているだろうから……同期の全員がリーグに参加できるなんて、マサラタウンの歴史が始まって以来の快挙じゃないか?」

「そうですねぇ~。例年なら、良くて一人か二人程度ですもんねぇ」

「ウチも実家の親戚一同に自慢できるわ! ──でも、リーグまでの特訓、これからどうしよっか?」

 リンの問いかけに、ヒビキは顎に手を当てて考える。

「うーん、キクコさんか、それかジストの兄貴に頼み込んでみようかな……」

 そんな未来の特訓計画を話し合っていると、ふと、遠くの空が一瞬、不自然に赤く跳ね上がるように光った。

 「……? 何か、あそこの山の向こう、光ってないか?」

「ほんまやね! 夕焼けとは違う感じの光やわ」

「何でしょう……? 妙に熱気を感じますぅ」

 気になった三人がその光の方角へと足を進めると、いつの間にか道は険しい岩肌が剥き出しになった山岳地帯へと入っていった。

 「うわ、だんだん道が険しくなってきたやん……」

「ですね。あっ、あそこにポケモンセンターがありますよ! 一端休みましょう」

 セナが指差した先にあるポケモンセンターの自動ドアをくぐると、ロビーはこれまでに見たことがないほど、大勢のトレーナーや怪我をしたポケモン達でごった返していた。

 「なんやこれ……何かイベントでもあるんかいな?」

 リンの素直な呟きに、近くのベンチで包帯を巻いていた一人のトレーナーが声をかけてきた。

 「君たち、知らないのか? ──この山の頂上に、『ファイヤー』がいるんだよ!」

 「マジ!? あの伝説の鳥ポケモンのか!?」

 ヒビキが驚愕の声を上げると、そのトレーナーは痛そうに顔をしかめながら首を振った。

「そうだ。だから、腕に覚えのあるトレーナー達が捕まえようと集まっているんだが……ご覧の通り、ファイヤーの圧倒的な力に返り討ちにされて、怪我人が続出しているんだ」

 「このセンターにいる人達、みんなファイヤーの怪我人なんですか……?」

 セナが青ざめるなか、トレーナーはさらに声を潜める。

「あぁ。おまけに、何度も何度も人間に襲われたせいで、ファイヤー自身もかなりご立腹でな。今は近づくことさえ不可能な、極めて危険な状態さ」

 「なるほど……さっき見えたあの光は、ファイヤーの攻撃の輝きだったのか」

「流石にこれは危険すぎるなぁ。ウチらは大人しく離れた方がええんちゃう?」

 リンの懸念に、怪我をしたトレーナーも強く同意した。

「それがいい。悪いことは言わない、キレ散らかしてるファイヤーに焼き尽くされたくなければ、今すぐここから離れな」

 そう言い残して治療のために奥へと向かったトレーナーの背中を見送りながら、ヒビキは少しだけ悔しそうに拳を握った。

「……挑んでみたい気持ちはあるけど、流石にこの状況じゃ危ないか」

「そうですね。わざわざ危険を冒してまで首を突っ込むのは、今はやめておきましょう」

 そう話し合い、ひとまずポケモンセンターから出てこの山岳地帯を離れようと、三人が一歩を踏み出した、その瞬間だった。

 ヒュオォォォッ──!! 

 突如、不気味な風切り音と共に、頭上から激しい爆炎の塊が三人めがけて真っ直ぐに降り注いできた。

 「危ないっ!! ──出てこい、ドサイドン!!」

 ヒビキは反射的に腰のボールからドサイドンを解き放つ! 

 ドゴォォォン!! と自慢の頑丈な岩の肉体で炎の弾丸を受け止め、周囲に爆炎が飛び散った。

 激しい爆煙を払いながら、ヒビキが炎の飛んできた遥か上空をキッと睨みつける。そこには、赤々と燃え盛る美しい翼を広げ、怒りに狂った眼光でこちらを見下ろしている伝説の火の鳥──ファイヤーが、悠然と滞空していた。

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