ポケットモンスター:オーバー・ザ・レジェンド 作:ガチャガチャクツワムシ
両親との会話を終えたヒビキがオーキド博士の研究所に向かうと、一足先に戻っていたリンとセナは既に中へと降りており、そこにはサトシ達やシゲルの姿もあった。
「おや、ヒビキが最後のようだね」
シゲルがそう声をかける。
「色々積もる話があったからね。みんな、何の話をしてるんだ?」
ヒビキが部屋を見回すと、リンがニシシと笑って答えた。
「旅先の話をしてたんよ。みんなあちこちで色んな経験してきとるからな!」
「へぇ~、やっぱり旅の仕方は違うんだな」
「おぉ、そうじゃ、忘れておった! サトシ、コウメから預かっておったものがあるんじゃ。ブラックフォッグの件でのお礼とのことじゃよ」
オーキド博士が差し出したのは、深い青色に輝くコバルトバッジだった。
「わあ、ジムバッジだ! ありがとうございます!」
サトシが目を輝かせて受け取ると、博士は少し申し訳なさそうに眉を下げた。
「あの件は、ワシも当事者の1人だから直接対応したかったんじゃが……他地方の学会に行っておったから、お主たちに任せきりになってしまったのう。すまんかったな」
「しょうがないですよ。クスノキさん達も、本当に突然の出来事だったって仰ってましたからね」
セナがふんわりとした口調でフォローを挟む。
「そういえば、ヒビキよ。まさかお主、クスノキの奴に勝つとはのう!」
博士がポンと手を叩き、驚きを露わにする。
「元とはいえ元カントーチャンピオンに勝てたのじゃ。この調子なら、リーグでもかなり上位にいけるのではないか?」
「さぁ、そこまでは……。クスノキさんも本気だったけど全力じゃなかったし、次はどうなるか分かりませんよ」
ヒビキが少し照れくさそうに頭を掻いていると、話題は自然とお互いの手持ちポケモンのことへと移っていった。
一同が研究所のボール保管場所に移動すると、そこにはずらりとシステムに登録されたモンスターボールが並んでいた。
「現時点でのデータを見ると、捕まえた数はシゲルが一番で、出会った数はサトシが一番じゃったのぉ。その次にヒビキ、リン、セナと続いておる」
「へえ、さすがシゲルだな!」
ヒビキが感心したように言うがふと、ある一角を見て怪訝な顔をした。
「……なぁサトシ、その棚にある大量のサファリボールは何なんだ?」
「あ、それ? 全部ケンタロス!」
「はぁ!? ケンタロスだけって、お前、サファリゾーンで群れでも丸ごと捕まえたのかよ!」
シゲルとヒビキが呆れるなか、セナがふと何かに気づいたようにヒビキの顔を見た。
「……待って下さい? もしかして、ヒビキ君が前に捕まえたあのケンタロスって……」
オーキド博士がうむと頷く。
「その通り。ヒビキのケンタロスは、サトシが捕まえた群れの『ボス』じゃったようじゃな」
これには一同が大爆笑し、リンがサトシの肩をバシバシと叩いた。
「なんやそれ! なんでボスだけヒビキに捕まって、子分だけサトシに捕まっとんねん! 綺麗にオチがついとるがな!」
「俺に聞かないでくれよ〜! 俺だって必死にボール投げたらこうなっちゃったんだからさ!」
サトシが頭を抱えて苦笑いする。
そんな賑やかな会話を聞いていたタケシとカスミが、保管室の奥にある、一段と広い別の保管スペースに目を留めた。
「博士、あそこの広いスペースって……?」
「あそこかい? あそこはジストやアオバがこれまでに捕まえたポケモンのボールスペースじゃよ」
そこには、カントーのものだけでなく、ジョウトやガラル、他地方のポケモンの名前が表記されているボールがかなりの数が整然と並べられていた。
「やっぱジスト兄ちゃんやアオバ姉ちゃんは凄いな……圧倒的だよ」
サトシがしみじみと呟くと、シゲルも腕を組んでそれを見つめる。
「フン、さすが四天王と言われるだけはあるね。いい刺激になるじゃないか」
「そういえばヒビキよ、お主がマサラに帰ってきたのを感じ取ったのか、普段は広大な裏庭で姿を隠しているジストのポケモン達も、先ほどから顔を出し始めておったな」
オーキド博士の言葉に、ヒビキは目を丸くした。
「えっ? アイツらが?」
「アイツら?」
カスミが不思議そうに聞き返そうとした、その時だった。
「ドッ、ドォォォォーッ!!」
「ブルルルルッ!!」
突然、研究所の外から地響きのような足音と、激しい鳴き声が聞こえてきた。尋常ではない騒ぎに、一同が慌てて外の庭へと様子を見に行くと、そこにはヒビキのドードリオとケンタロスが、息を切らせて立っていた。
「どうしたんだ? ケンタロス、ドードリオ!」
ヒビキが駆け寄る。
「ヒビキのポケモンかい? なんだか、凄く慌てているように見えるな……」
シゲルとタケシが鋭い目で2匹を観察する。何かを必死に伝えようとしているドードリオは、3つの頭を激しく振りながら、長い首を器用に使ってヒビキの身体をひょいと自身の背中へと乗せた。
そして、ヒビキが体勢を整える間もなく、猛烈な勢いで広大な裏庭の奥へと駆け出したのだ。
「おい!? どこへ行くんだ、ドードリオ!?」
引きずられるようにして走るヒビキの背中を見送りながら、オーキド博士がハッと顔を険しくした。
「ムッ!? あの方向は……ジストやアオバのポケモンたちが、普段過ごしている専用の区画じゃぞ!」
「ジストさん達のポケモンがいる場所に……!? 何かあったんかな?」
リンが顔をこわばらせ、セナも拳を握りしめる。
「行ってみましょう、私達も!」
みんなで後を追おうとしたその時、残されたヒビキのケンタロスが天に向かって高く咆哮した。すると、その声に応じるように、サトシが捕まえたあの大量のケンタロスの群れが一斉に集結する。
「モーッ!!」というボスの合図一発で、群れはサトシやシゲル、リン、セナ、タケシ、カスミをそれぞれ器用に背中に乗せると、主のピンチを察したかのように、ドードリオの後を追って一斉に爆走を開始したのだった。