ポケットモンスター:オーバー・ザ・レジェンド 作:ガチャガチャクツワムシ
ナゾノクサを仲間にしたヒビキは、暗闇に沈む森の奥を見据えた。
「ナゾノクサ、この気配の持ち主の所に案内してくれ!」
「ナゾ!」
ナゾノクサが短足で器用に草むらを掻き分けていく。進むにつれ、周囲の羽音や鳴き声が消えていく。野生たちが本能で「その場所」を避けているのだ。
(……かなりの強さを持っているようだな)
たどり着いたのは、森の最深部にある古ぼけた大樹だった。
そこに君臨していたのは、目を赤く輝かせ、通常よりも遥かに巨大な体躯を持つビードル――『親分個体』だった。
「親分個体か! 行け、ヒメグマ!」
「クマァ!」
ヒメグマの登場に、親分ビードルは地を揺らすような咆哮を上げた。
「ヒメグマ、【炎のパンチ】!」
「ビーッ!」
ビードルは無数の【毒針】を発射して牽制するが、ヒメグマは怯まない。炎を纏った拳で針を叩き落とし、そのままビードルの顔面に重い一撃を叩き込んだ。
だが、飛ばされたビードルは空中で姿勢を立て直し、周囲に【エレキネット】を撒き散らす。
「【エレキネット】まで覚えているのか! ……だが、丁度いい。ヒメグマ、【空元気】だ!」
先程の【毒針】を受け、ヒメグマの体は毒に侵されている。だが、ヒビキの瞳に焦りはない。毒の苦痛を怒りに変え、技の威力を倍増させる博打戦術。
網を強引に突き破り、ヒメグマの突撃がビードルを粉砕した。
「ビーッ……!?」
戦闘不能。間髪入れずに投げたボールが、夜の主を飲み込んだ。
「よし!」
ガッツポーズの後、すぐに二匹を回復させる。負けを認めたビードルは、従順に頭を下げた。
「これからよろしくな。……ヒメグマ、無理はさせたくない。ニドランは切り札だ。ここからはドードーとオニスズメをメインで行くぞ」
深夜の強行軍。襲いかかるスピアーやバタフリーをドードーやオニスズメ、そして加わったばかりのビードルで蹴散らしていく。
ふと、腹の虫が鳴った。ヒビキは手頃な広場を見つけると、全員をボールから出し、軽食のコッペパンとパンケーキを広げた。
「いただきます。……ん?」
背後に視線を感じて振り向くと、そこには二匹の野生のピカチュウがいた。尻尾の形からして、どちらもオスの兄弟だろうか。
「食うか?」
「「ピカッ!」」
半分に分けて渡すと、二匹は猛然とパンにかぶりついた。よほど腹が減っていたのか、それともヒビキの持っていた飯が美味そうだったのか。
食べ終えた二匹は、ヒビキの腰にあった2つの空のモンスターボールを見つめると……なんと、自らスイッチを押して光の中に吸い込まれていった。
「……なんか捕まえちゃったけど、まぁいいか」
夜が明け、朝日が森の木々の隙間から差し込み始める頃。
ヒビキたちはついに、トキワの森を抜けて岩の街・ニビシティへとたどり着いた。
一晩中の激闘は、彼らを大きく成長させていた。
「ケーンッ!」
「スピーッ!」
道中、幾多の修羅場を潜り抜けたオニスズメは逞しいオニドリルへ、そして親分ビードルは凶悪な毒針を持つスピアーへと、それぞれ進化を遂げていたのである。
「さて……最初のジムだな」
灰色の街並みを見下ろし、ヒビキは不敵に笑った。
ムコニャのポケモンセンター襲撃はセンとリン、オニドリルのお陰で半壊程度に収まってます。
サトシとの因縁は生まれましたが