ポケットモンスター:オーバー・ザ・レジェンド 作:ガチャガチャクツワムシ
トキワジムの様子をモニター越しに見守っていたシラサギは、サカキがかつてないほど楽しそうに強敵と渡り合っている姿を見て、ふっと肩の力を抜いた。
「ボスの機嫌、どうやら最高潮に治りそうだな」
そう安堵の息を漏らした直後、背後から恐る恐る声をかける3つの影があった。ロケット団のムサシ、コジロウ、そしてニャースの3人組である。
「あの~、シラサギ様……」
「俺らを呼んだってことは」
「理由は何ですかニャ?」
シラサギは3人の方へゆっくりと振り返った。その瞳には、組織の幹部としての冷徹な計算と、事業の責任者としての明確な意志が宿っている。
「ふむ、先に用件を片付けよう。お前達は、私の立場を知っていますね?」
3人は顔を見合わせ、畏まった様子で頷いた。
「シラサギ様は、表の顔である『ロケットカンパニー』の幹部として、裏のロケット団に捜査の手が及ばないよう情報を握り潰し、裏と表のバランスを保つ役目……」
「そう、何も知らない一般社員たちを安心させつつ、組織を守る防波堤、ですよね」
「その通り。そして今回、そのロケットカンパニーで新規事業を立ち上げた。内容は新人トレーナーの育成と、その支援だ」
「育成と……支援……ですかニャ?」
3人が首を傾げる中、シラサギは鋭い眼光で告げた。
「この事業が成功すれば、ロケット団の末端を支える団員の質も向上するだろう。そこでだ。ムサシ、コジロウ……お前たちには、これから始まる『セキエイリーグ』に参加してもらう」
「アタシ達が……リーグに?」
「……まさか、悪事をするために?」
「違う。参加トレーナー達や支援させているトレーナーの実力を測るための調査だ。裏工作は一切なし、正々堂々と勝ち上がれ。ニャース、お前は参加者たちの戦術を詳細に記録し、映像を残すように動け」
「わかりましたニャ!」
シラサギは、2つのモンスターボールを放り投げた。
「ポケモンは可能な限り自分の力で捕まえろ。ロケット団で管理しているポケモンは、本来なら別の事業に回す貴重な戦力だ。……とはいえ、テストケースだ。特別に2体だけ貸し出す。それ以外は、お前たちが自分で育てたものを使え」
「「「了解しました!!」」」
3人は期待と緊張が入り混じった顔で敬礼し、即座に手持ち補充の準備へと飛び出していった。
「ああ、そうだ。念のため言っておくが、他のトレーナーのポケモンを奪うような余計な真似は厳禁だ。これは他の団員にも徹底させる。分かったな?」
「「「承知いたしました!」」」
3人が去った後、シラサギは再びモニターへと視線を戻した。画面の中では、伝説のポケモン・ファイヤーが放った一撃により、サカキのガラガラが戦闘不能に追い込まれる瞬間が映し出されていた。
(ハハハ、まさかあのガラガラが一撃でやられるとはな……。まだ付き合いも短いはずなのに、あの少年はファイヤーとこれほど深い信頼を築いているのか)
シラサギは愉悦に顔を歪ませる。
(このような才能を、組織として囲い込むことができれば……。表でも裏でも、最高の駒になるだろう。急がず、だが確実に見つけるとしよう)
画面の中のサカキは、かつて見せたことのないような、若々しく猛々しい笑みを浮かべていた。
「まさか、一撃でやられるとはな! ……ならば、ジム戦用に調整された手持ちでは相手にならぬな。三体目からは、私のプライベートな手持ちを使わせてもらうぞ! ゆけ、スピアー!」
「スピィーッ!」
サカキが繰り出したのは、彼が長年連れ添った古株の相棒だった。その放つ圧倒的なプレッシャーは、先ほどまでのバトルとは次元が違う。肌でそれを感じたヒビキが身構えたその時、サカキがネクタイピンに手を伸ばした。
そこに嵌め込まれた虹色に輝くキーストーンと、スピアーが身に纏うメガストーンが共鳴し合う。
「スピアー、メガシンカだ!」
閃光が弾け、スピアーの姿が変わる。トキワジムを舞台にした、伝説と最強による極限の激戦が幕を開けた。
ムコニャの仕事を完遂してからもサカキの機嫌が悪く団員は、戦々恐々しており今回の件で機嫌が直ったから安堵している。