ポケットモンスター:オーバー・ザ・レジェンド   作:ガチャガチャクツワムシ

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トキワジム戦2

 メガシンカを遂げたスピアーの4本の針が、獰猛な鋭さを増して輝く。伝説の鳥ポケモン・ファイヤーと、大地を穿つ最強の暗殺者・メガスピアーは、互いのわずかな動きも見逃すまいと、張り詰めた空気の中で睨み合っていた。

 「ファイヤー! 【エアスラッシュ】!!」

「ギュオオオッ!」

 スピアーから引き継いだ爆発的な速度の【エアスラッシュ】が空間を裂く。しかし、メガスピアーはそれをさらに上回る、目にも留まらぬ超スピードで空中を制動し、軽々と回避してみせた。

 「スピアー、【どくづき】」

「スピィーッ!」

 死角からの高速の一刺し。ファイヤーも間一髪のところで羽を翻して紙一重で避けるが、その速度差は歴然だった。

 「ファイヤーを超えるスピードかよ!? ……なら、戻れファイヤー!」

 ヒビキは瞬時にファイヤーをボールへと戻し、腰の別のボールを掴んだ。「お前なら、あのスピードに追い付ける! 行ってこい、コッペ!」

「ライラーイ!」

 軽く飛びはね準備運動を追えるとメガスピアーを睨むコッペ。

 「コッペ! 【ばちばちアクセル】!!」

「スピアー、【ドリルライナー】だ」

 メガスピアーが身体を高速回転させ、一撃必殺のドリルと化して突撃する。だが、電光を纏ったコッペの【ばちばちアクセル】は、その突進を完全に上回る超高速でメガスピアーの背後へと回り込み、その無防備な背中を強烈に殴りつけた! 

 「何っ!?」

 サカキの目が驚きに細められる。

「よし! コッペ、そのままの勢いで一気に押していくぞ!」

「ライラーイ!」

 「スピアー、ライチュウを振り切れ! 【どくづき】で迎え撃て!」

「スピィィィィッ!」

 ここからは、もはや肉眼では追うことのできない「超高速の世界」の戦闘へと突入した。目まぐるしく交錯する閃光と火花。黒服の審判は完全にその動きを見失い、目が左右に泳いでいる。ヒビキ自身もかろうじてコッペの気配を追うのが限界の状態だった。

 だが、サカキだけは違った。彼は腕を組んだまま、その恐るべき動体視線で2体の攻防を完全に捉え、状況を的確に把握していた。

 (まさか、私のメガスピアーと真っ向から速度勝負ができるポケモンを隠し持っていたとはな……。しかし、まだトレーナー自身がこの超高速戦闘の命令速度に慣れていないか……!)

 激しい火花を散らす攻防が数十秒続き、お互いのトレーナーの近くで、2体は同時にピタリと止まった。肩を激しく上下させ、息を整える。

 「これで最後にしよう。スピアー、【ギガインパクト】を纏わせた【ドリルライナー】!」

 サカキが冷徹に、最大火力の指示を飛ばす。

 「負けるかぁ! コッペ、最大出力の『神速』の【ボルテッカー】だ!!」

 凄まじい破壊光線を纏って独楽のように回転するメガスピアーと、限界を超えた神速の雷を全身に纏ったコッペ。両者は文字通り閃光となってフィールド中央で激突した。

 視界を真っ白に染める大爆発のあと、煙の向こうで2体は同時に、バタリと倒れ込んだ。

 「両者、戦闘不能!」

 「サンキュー、コッペ。ゆっくり休んでくれ。あのメガスピアーのスピードに対抗できたのは、お前だけだったよ」

 ヒビキが優しくボールへ戻す。サカキもスピアーを戻し、不敵に笑った。

 「ハハハ、まさか私の真の相棒たるメガスピアーを相打ちにまで持ち込むとはな。だが、次はどうかな? ──ゆけ! ニドキング!」

 サカキが次に繰り出したのは、圧倒的な質量と威厳を誇る紫の巨体、ニドキングだった。

(あのニドキング……サカキさんの本当の切り札の一体だ。なら、こっちも総力戦だ! 頼むぞ、ファイヤー!)

 再び、紅蓮の翼を持つファイヤーがフィールドへと舞い戻る。

 ニドキングは先ほどまでボールの中から試合を見ており、主であるサカキと共に闘志を爆発させていた。対するファイヤーも、以前ヒビキを助けた際にこのニドキングの実力を肌で知っていたため、並大抵の相手ではないと鋭く睨みつける。

 「ニドキング! 【岩雪崩】!」

「ニドォーッ!」

 「ファイヤー! 初手から全開だ、【燃え尽きる】!!」

「ギュオオオッ!」

 炎の神鳥が自身のすべての炎のエネルギーを解き放ち、ニドキングの頭上から降り注ぐ岩石ごと、その巨体を真っ赤な大熱量で包み込んだ。

 その壮絶なバトルの映像を、先程訪れたロケットカンパニーの別室モニターで観戦していたサカキの秘書、マトリがフンと鼻を鳴らした。

「いきなりそんな大技をぶつけるとは、いかにも子供らしい浅はかな戦術ですね。次からは炎タイプを失うというのに」

 「いや、そうではないな、マトリ」

 隣で静かに画面を見つめていたシラサギが、眼鏡の奥の目を光らせてそれを否定した。

「【燃え尽きる】は使用後に自身の炎タイプが消えるデメリットがある。だが、あの少年はここまで【エアスラッシュ】しか飛行技を見せていない。つまり、炎タイプをあえて消すことで、岩や水といった弱点を減らす以外の『明確なメリット』を最初から見越して動いているということだ」

 シラサギの言葉を証明するように、ヒビキの口元が不敵に吊り上がった。炎の衣を失い、純粋な飛行タイプのような状態になったファイヤーへ、ヒビキが次の指示を飛ばす。

 「ファイヤー! 【雨乞い】だ!」

 ファイヤーの咆哮とともに、トキワジムの天井ににわかに雨雲が立ち込め、フィールドに激しい雨が降り注ぎ始めた。

 「ニドキング! 雨を利用される前に【雷】で叩き落とせ!」

 サカキがすかさず吠える。雨状態によって必中となった、逃げ場のない狂気的な雷がファイヤーの巨体を直撃した。凄まじい電撃に苦悶の声をあげるファイヤー。だが、大ダメージを負いながらも、ファイヤーは不気味にニヤリと笑ってみせた。

 その不敵な笑みに、サカキとニドキングは本能的な嫌な予感を察知する。一気に勝負を決めようとニドキングが踏み込んだ瞬間、ヒビキの勝利の咆哮が響き渡った。

 「これで終わりだ! 【ウェザーボール】!!」

 激しい雨を受け、ファイヤーの手元に凝縮されたのは、炎でも飛行でもない──最大威力の『水タイプ』へと変貌を遂げた巨大な水の激流弾だった! 

 弱点を消すために炎タイプをあえて「燃え尽きさせ」、雨を降らせて水威力を倍加させた、ヒビキの計算され尽くした一撃。

 「ニド、ォ……ッ!?」

 最初の【もえつきる】で大きなダメージを負っていたニドキングの巨体に、激流の塊が容赦なく炸裂する。効果は抜群。ニドキングの巨体は豪快に水しぶきをあげて、その場に崩れ落ちたのだった。

 「ニドキング、戦闘不能!」

 「……見事だ、少年」

 サカキの瞳に、激しいトレーナーとしての闘志が完全に全開となる。勝負はこれ以上ない佳境を迎えようとしていた。

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