ポケットモンスター:オーバー・ザ・レジェンド   作:ガチャガチャクツワムシ

89 / 91
セキエイリーグ2回戦

『な、なんという威力の【破壊光線】! 草のフィールドが大きく抉り取られている! 観客席はあまりの衝撃に開いた口が塞がらない!!』

 実況のベカンが興奮冷めやらぬ様子で絶叫する中、解説席のジストは頭を抱えて対戦相手のムーシに同情の目を向けた。

『何で初戦のあそこから【破壊光線】を撃つんだよ! 相手の心を完膚なきまでにへし折る気かよ、アイツは……』

『ははは、でもジストさんも昔の現役時代は同じようなことをやってましたよね?』

 ベカンから突っ込まれると、ジョウト四天王は決まずそうに視線を逸らした。

『……あの頃は俺も若くて調子に乗ってたからなぁ。今思うと完全な黒歴史ですよ。ただ、観戦している周りのトレーナーにとっては凄まじい威圧になったでしょうね。それに見てください、あのポリゴンZは【破壊光線】を撃った後も完全に動けていますね。反動を伴う大技も、徹底的に鍛え上げることで反動を耐えきったり、技を放った後のラグを最小限に抑えることができます。ヒビキ選手はそこまでポリゴンZを仕上げてきたんでしょう』

 そんな兄の解説が響き渡る中、当のヒビキはすでにフィールドを後にして控室へと戻っていた。

「ふぅー……緊張したぁ……!」

 ドアを閉めた瞬間、どっと押し寄せた緊張感から解放されるようにパイプ椅子へ深く腰掛け、大きく息を吐き出した。

「まずは無事に1回戦を突破できた。よし、この調子でどんどん進むぞ!」

 すぐに気持ちを切り替えて意気込むと、次なる戦いに備えて他の同期たちの試合を観戦しに行くことにした。

 その後、サトシ、シゲル、リン、セナの4人も、それぞれの特訓の成果を見せつけて順当に1回戦を突破したのを確認したヒビキは、心地よい疲れを感じながら明日に備えて宿舎へと戻った。

 翌日となり、セキエイリーグ2回戦の幕が上がった。

 今回のヒビキの舞台は『水のフィールド』。広大なプールが広がるステージで、ヒビキは相棒の一体であるジュゴンを繰り出し、卓越した水中戦で相手のポケモン2体を鮮やかに下してみせた。

 追い詰められた対戦相手のトレーナーは、悲壮感を漂わせながら最後のモンスターボールを強く握りしめた。

「頼むぞ! ヤドキング!」

「ヤァ……」

 最後に現れたのは、高い知性を持つヤドキングだった。

 「ヤドキングか……。ジュゴン、【クイックターン】!」

「ジュ~ゴッ!」

 ヒビキの指示に、ジュゴンは鋭い身のこなしでヤドキングを小突くように攻撃すると、その勢いのまま自ら光の粒子となってボールへと戻っていった。代わってヒビキがフィールドへ送り出したのは、尻尾をサイキック能力で浮かせたケーキだった。

 『これは珍しいポケモンがお目見えだ! アローラ地方のリージョンフォーム、アローラライチュウだぁー! ……ところでジストさん、今のジュゴンの流れはルール違反ではなかったですよね?』

 ベカンが初歩的な確認を入れると、ジストは丁寧にマイクを引き寄せた。

『ええ、【吠える】や【ドラゴンテール】といった相手を強制的に交代させる技や、今ジュゴンが使った【クイックターン】や【蜻蛉返り】のような[攻撃と同時に手持ちを交代させる技]に関しては、ルール上まったく問題ありません。使用して駄目なのは、正当な技のプロセスを踏まずに、トレーナーの意思だけで戦闘中にボールに戻したり、ポケモン自身が戦意を喪失して勝手に戻ることですね。あとは眠り状態で規定時間内に起きない事くらいです』

 ジストがわかりやすくルールを解説している間、ヤドキングはプールの中へと深く潜り、水中から様子見の構えをとっていた。対するケーキは、水面の上をサイコパワーで軽やかに浮遊している。

 「ケーキ! 【ざぶざぶサーフ】で水をかき回せ!」

 ヒビキの鋭い号令とともに、ケーキは尻尾の波乗りボードで水面を激しく激突させた。プール全体を巻き込む巨大な【うずしお】が発生し、水中に潜んでいたヤドキングを容赦なく水上へと引きずり出す。

 「一気に決めるぞ! 【悪巧み】からの──【ピカピカサンダー】!!」

 ケーキが瞬時に知恵を巡らせて特攻を高めた直後、天から降り注いだのは、視界を真っ白に染め上げるほどの凄まじい大電撃だった。轟音とともにプール中へと電流が走り、ヤドキングはその一撃で完全に戦闘不能となった。

 『ヤドキング、戦闘不能だぁー!! 2回戦もヒビキ選手が圧倒的な強さでねじ伏せました! ……ジストさん、今の驚天動地の技は一体……!?』

 ベカンが身を乗り出して尋ねると、ジストは少し誇らしげに語り始めた。

 『あれは、通称「相棒技」と呼ばれるものです。ピカチュウ種やイーブイ種の中でも、特にトレーナーと深い絆を結んだ個体だけが扱える特別な技となりますね。今見せた【ピカピカサンダー】や【ざぶざぶサーフ】の他に、ピカチュウ種なら【ばちばちアクセル】や【ふわふわフォール】という技が存在します。この技の指導における第一人者、通称「相棒爺さん」の言葉を借りるなら、【ばちばちアクセル】を極限まで鍛え上げれば、後に【ボルテッカー】や【神速】の習得にも繋がるそうです。実際、俺も過去に【神速】を使うピカチュウとバトルしたことがありますよ。ちなみに、イーブイ種の相棒技は進化系列に応じた7タイプの技の他に、【ブイブイブレイク】という強力なノーマルタイプの技を使うことができます』

 四天王直々の、めったに聞けない貴重な相棒技の解説に、セキエイ高原の会場全体のボルテージは最高潮に達し、割れんばかりの大歓声が巻き起こった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。