ポケットモンスター:オーバー・ザ・レジェンド 作:ガチャガチャクツワムシ
ニビシティに到着したヒビキは、まずポケモンセンターへと駆け込んだ。
朝早い時間ではあったが、センターは既に稼働している。しかし、一晩中森を駆け回った疲労は隠せない。ヒビキは最低限の回復を済ませると、部屋を借りて数時間の仮眠を取ることにした。
──数時間後。
泥のような眠りから覚め、すっかり元気を取り戻したヒビキは、オーキド博士へ連絡を入れた。
『ヒビキ、ポケモンを送ってくれるのはいいが、余り夜遅く(あるいは早すぎ)はやめてくれんか……』
画面越しの博士は、心なしか眠そうに目を擦っている。
「すみません、つい……。ピカチュウたちはどうですか?」
『まだボールの中じゃ。転送するか?』
「はい。その代わり、回復が終わったらドードーとオニドリルを預けます。あいつら、かなり血気盛んなので」
転送システムを介し、二匹をマサラへと送る。
「ドードー、オニドリル。研究所には俺の兄貴たちのポケモンもいる。向こうでしっかり鍛えてもらってこい」
二匹の鳥ポケモンは、主の言葉に力強く頷き、電子の光となって消えていった。
入れ替わりで手元に届いた二つのボール。中から出てきたのは、例のピカチュウ兄弟だ。
「改めてよろしくな。お前らにはニックネームをつける。兄貴のお前は『コッペ』。弟のお前は『ケーキ』だ」
「ピカッ!」
「ピッカチュウ!」
自分の好物の名前をつけられた二匹は、嬉しそうにヒビキの肩と膝に飛び乗った。
「よし、まずは小慣らしだ。誰かとバトルしたいな」
ヒビキはセンター内のフリーバトルスペースへ向かい、そこにいたトレーナーたちに次々と勝負を挑んだ。
「ニドラン、【二度蹴り】!」
「コッペ、【電光石火】!」
「ケーキ、【電気ショック】!」
「ナゾノクサ、【メガドレイン】!」
一晩の強行軍を経て、さらに連携に磨きがかかったヒビキの指示。
コラッタ、ポッポ、バタフリー……そして岩タイプのイシツブテまでもが、ヒビキのポケモンたちの圧倒的な練度の前に沈んでいく。
「凄いな、アイツ……」
「あのニドラン、サイズも強さも別格だぞ。一体どんな育て方をしてるんだ?」
周囲のざわめきを背に、ヒビキは対戦相手と握手を交わすと、目的の場所──ニビジムへと足を向けた。
その道中だった。
「おや、ヒビキじゃないか。一番にマサラを出たくせに、まだジムバッジも持っていないのかい?」
聞き慣れた不遜な声。振り返れば、派手なスポーツカーに応援団の女の子たちを引き連れたシゲルが、勝ち誇った顔で立っていた。
「シゲル……。そういうお前は、もう取ったのか?」
「当然さ」
シゲルがジャケットの内側から見せびらかしたのは、ニビジムの証・グレーバッジ。応援団から黄色い声援が飛び交う。
「僕はこれからハナダシティに向かう。せいぜい僕に追いつけるよう、頑張ることだね。行こう、みんな!」
砂煙を上げ、去っていくスポーツカー。ヒビキはその背中を指差しながら、ポツリと呟いた。
「……あいつ、いつ免許取ったんだ? そもそもあの人数、定員オーバーで違法じゃないのか?」
幼馴染のあまりに自由すぎる振る舞いに呆れつつも、ヒビキは気持ちを切り替える。
目の前には、巨大な岩石で造られたジムの建物。
ヒビキは力強く、ジムの扉を叩いた。