ポケットモンスター:オーバー・ザ・レジェンド   作:ガチャガチャクツワムシ

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セキエイリーグ3回戦

 セキエイリーグ3回戦の幕が上がった。

 しかし、フィールドへ向かう通路を歩きながら、ヒビキの頭の中はとある驚きの対戦カードのことで占められていた。

 「まさか、ここでリンとシゲルが当たっちまうなんてな……」

 そう、3回戦の組み合わせ発表で、同じマサラの同期であるシゲルと、悪友のリンの直接対決が決まったのだ。どちらの実力もよく知っているだけに、ヒビキは複雑な心境だった。

「……いや、どうなることやら。今は自分の試合に集中しねぇとな」

 ヒビキは頭を振って雑念を隅に追いやると、手元の端末で対戦相手のデータを再確認する。

「次の相手の手持ちタイプは綺麗にバラけているな……。多分、ここまでの戦いぶりからしてポリゴンZは確実に警戒されてる。なら、先発は──お前だ」

 作戦を決め、選出したモンスターボールをベルトにセットしたところで開始の時間となった。ヒビキは決意を胸に、白い光が満ちるフィールドへと足を踏み出した。

 『さぁ、3回戦第1試合の開始となります! 今回のフィールドは、足元が全て滑る氷のフィールド! それでは赤コーナー、マサラタウンのヒビキ選手! 緑コーナー、クチバシティのヨシタカ選手!』

 実況のベカンの声に背中を押され、両者が氷のステージを挟んで対峙する。

 「行ってこい! フーディン!」

「ディン!」

「いけ! ペルシアン!」

「ニャー!」

 ヒビキが繰り出したのは高い特攻を誇るフーディン、対するヨシタカは鋭い爪を持つペルシアンだった。

 「試合開始!」

 審判の合図と同時に、両者が叫ぶ。

「フーディン! 【瞑想】!」

「フーディンッ!」

「ペルシアン! 【猫騙し】だ!」

「ニャー!」

 ペルシアンが目にも留まらぬ速さで肉薄し、フーディンの目の前で激しく手を打ち鳴らす。【猫騙し】の衝撃が直撃し、フーディンは精神統一を乱され、その場で激しく怯んでしまった。

 「畳み掛けろ! 【辻斬り】!」

 ヨシタカの容赦ない指示が飛ぶ。ペルシアンは前足の爪を鋭く突き出し、それをスパイク代わりにすることで、滑るはずの氷のフィールドを縦横無尽に、かつ凄まじい速度で駆け抜けた。死角からフーディンへ迫る必殺の刃。

 「フーディン、焦るな! 【瞑想】だ!」

 ヒビキの無茶とも思える指示に、ペルシアンの鋭い爪がフーディンの身体を捉えた──かに見えた。しかし、その刹那、フーディンの姿が掻き消えるようにその場から消え去り、少し離れた安全な位置に忽然と現れたのだ。

 『な、なんと! フーディン、攻撃を完全に避けてみせました! 今のは技の【テレポート】でしょうか!?』

 ベカンが驚愕の声をあげる中、解説席のジストがすぐにマイクを掴んだ。

 『いや、あれは技としての【テレポート】の挙動じゃないな……。恐らく、ケーシィ時代の野生の避難方法やクセをそのまま実戦の回避戦法に取り入れたんでしょう。技の枠を使わずに、身体能力としての瞬間移動で避けている。見事な教育ですね』

 その後もペルシアンが鋭い氷上ステップで襲いかかるが、フーディンはその全てを幻惑の移動でかわし続け、淡々と【瞑想】を重ねて自身の能力を爆発的に引き上げていく。

 その圧倒的な精神エネルギーの膨張を肌で感じ取り、ヨシタカの顔色が変わった。

「まずい! ペルシアン、一旦離れろ!」

 「もう遅い! フーディン、【アシストパワー】!」

 フーディンがその長いスプーンを掲げると、溜め込まれた凄まじいサイコパワーが一条の巨大な光線となって解き放たれた。自身の能力が上がれば上がるほど威力を増すその一撃は、逃げようとしたペルシアンの背中に直撃。ペルシアンは一切の抵抗もできず、そのまま氷の上に倒れ伏した。

 「ペルシアン、戦闘不能!」

 「クソッ……ならば、いけ! ニョロトノ!」

「ニョロト!」

 ヨシタカが次に送り出したのは、ニョロトノだった。

 「ニョロトノ! 【自己暗示】だ!」

「ニョロ~!」

 ニョロトノが妖しい光を放つと、フーディンがこれまでに【瞑想】で引き上げた圧倒的なステータス上昇が、そのままニョロトノの身体へとコピーされてしまった。

 「チッ、能力をコピーされたか……不味いな。フーディン、先手必勝だ! 【10万ボルト】!」

「ニョロトノ! 【ハイパーボイス】で迎え撃て!」

 フーディンが放つ強力な電撃と、ニョロトノが口から放つ破壊的な音波の衝撃波。二つの超火力がフィールドの中央で激突し、激しい爆発を引き起こした。氷の破片が飛び散る中、両者は構うことなく技を放ち続ける。

 特性の相性もあり、最終的にはフーディンの電撃が競り勝つ形でニョロトノを撃破した。

 しかし、ニョロトノが戦闘不能の判定を受けたその直後、なぜかフーディンも突然力尽き、その場に崩れ落ちてしまったのだ。

 「何だ!? まさか【みちづれ】か!?」

 ヒビキが驚く中、実況席のベカンも声を張り上げる。

『なんと、ニョロトノが倒れると同時にフーディンも戦闘不能に! 一体今のはどういうことでしょうか、ジストさん!?』

 ジストは神妙な面持ちでフィールドを凝視し、感心したように解説した。

『いや、【道連れ】じゃない。恐らくあのニョロトノ、【ハイパーボイス】の大音量の中に、ごく小さな音で【ほろびのうた】を混ぜ込んで歌っていたんでしょう。爆音に紛れさせていたからフーディンも気づけなかった。それによるカウントダウンのタイムアップだ。相手のトレーナー、かなりの高等テクニックを使ってきますね』

 「……やるな。だが、次が最後だ! 任せるぞ、ラフレシア!」

「ラフレッ!」

「こっちも最後だ、いけ! シードラ!」

「シーッ!」

 ヒビキの3体目はラフレシア、ヨシタカの最後はシードラ。

 「一気に決めるぞ! 【日本晴】からの──【ソーラービーム】!」

「させるか! 【吹雪】で凍りつけ!」

 ラフレシアが天に向けて放った光球により、氷のフィールドに一瞬にして強烈な陽光が降り注ぐ。溜めなしで放たれた超高熱の【ソーラービーム】がシードラへ向かって一閃。シードラも負けじと、猛烈な大雪の嵐【ふぶき】を吹き付けて対抗する。

 熱線と極寒の嵐が激しく激突し、凄まじい水蒸気がフィールドを覆い尽くした。拮抗する二つの大技。しかし、晴れ状態によって極限まで威力を増した【ソーラービーム】の熱量が次第に氷の嵐を押し始め、ついにシードラの身体を完全に飲み込んだ。

 水蒸気が晴れた時、そこには目を回して倒れているシードラの姿があった。

 「シードラ、戦闘不能! ラフレシアの勝ち! よって勝者、マサラタウンのヒビキ!」

 『ヒビキ選手、見事な技の応酬を制して3回戦を突破したァー! 凄まじいハイレベルな強さです!』

 地鳴りのような歓声が響く中、ヒビキは深く息を吐き、無事に勝てたことに心から安堵していた。

 試合終了後、ポケモンセンターで手持ちを完全に回復させたヒビキは、急いでシゲルとリンの試合が行われているフィールドへと向かった。

 観客席の隙間から滑り込み、フィールドに目を向ける。

 そこでは、リンが持ち前の明るさとメカニック仕込みの緻密な戦術で、あのシゲルを相手に凄まじい粘りを見せて食らいついていた。

 「いけぇ! リザードン! 【大文字】!!」

 リンの絶叫とともに放たれた炎の連撃。しかし、シゲルの前に立ちはだかる巨大な壁が、それを冷徹に遮る。

 「甘いよ、リン。カメックス──【ハイドロポンプ】!」

 咆哮とともにカメックスの巨大な2門の砲台から放たれた圧倒的な濁流が、満身創痍だったリンのリザードンを正面から完璧に押し潰した。激しい衝撃と共にリザードンが崩れ落ち、戦闘不能のサインが出される。

 「リザードン戦闘不能! カメックスの勝ち! よって勝者、シゲル!」

 「あちゃー……やっぱシゲルは強いなぁ。ウチの負けや!」

 リンはサバサバとした様子でリザードンをボールに戻すと、悔しそうに、しかしどこか晴れやかな笑顔でシゲルに手を振った。シゲルもまた、フッと不敵な笑みを浮かべてそれに応える。

 その様子を上から見つめながら、ヒビキは改めてシゲルの強さを実感すると同時に、明日の4回戦へ向けて静かに闘志を燃やすのだった。

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