ポケットモンスター:オーバー・ザ・レジェンド   作:ガチャガチャクツワムシ

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セキエイリーグ5回戦

 サトシの激闘の余韻が残る中、決勝リーグ第5回戦は順調に進行していた。

 準決勝への進出を決めたのは、ヒビキやマサトシに勝るとも劣らない実力を秘めた少女ナツミ、そしてマサトシ。そこへもう一人、サトシとの死闘を制したヒロシという少年が名を連ねていた。

 控室のモニターを見上げながら、ヒビキは先ほどの試合を頭の中で反芻していた。

「サトシのあの時の判断……あれは、絶対に間違ってなかったな」

 サトシとヒロシの試合は、まさに一進一退の互角の勝負だった。そして互いに最後の一体となり、フィールドに残ったのはリザードン同士。息を呑むような激突が続く中、突如としてヒロシのリザードン『ジッポ』の尻尾の炎が、爆発的な狂暴さで燃え上がったのだ。

 『こ、これは一体……!? まさか特性の【猛火】でしょうか! しかし今大会は、特殊なフィールド効果によって本来なら特性の発動は制限されているはずです! シアンさん、これはどういう現象なのでしょうか!?』

 決勝リーグの解説席に座るのは、ジストから引き継いだシアンだった。マイクを握るシアンの表情も険しい。

『恐らく、ヒロシ選手のリザードンの【猛火】は、通常の個体よりも遥かに強力な血統か、あるいは規格外の感情の爆発によるものでしょう。フィールドの抑制効果を力技で突き破って発動してしまったんだと思います。しかし、ああなっては暴走の危険が伴う。注意深く見守る必要がありますね……』

 シアンが警告を発したその直後、ジッポの放つ圧倒的な熱量に触発されるように、サトシのリザードンまでもがリミッターの外れたような獰猛な唸り声を上げ始めた。

 そこからの展開は凄惨だった。もはやトレーナーの声など届いていない。互いが互いの命を奪いかねない、野生の肉弾戦へと変貌していく。

 これ以上は一線を越える──それを本能的に察知したサトシは、声を振り絞って叫んだ。

「もういい! 戻れ、リザードン!」

 サトシは自らリザードンをボールへと回収した。これによりサトシの棄権(ギブアップ)が成立し、ヒロシの勝利が確定した。

 『サトシ選手のあの判断は、トレーナーとして完全に正しかったですね。あのまま感情に任せて続けていたら、どちらかのリザードンが命を落とす結果になっていたでしょう。素晴らしい決断です』

『私もシアンさんに全面的に同意します。命を最優先にした英断です。これを批判する者がいるとすれば、それはトレーナーよりも人としてどうかと思いますね』

 解説のシアンがサトシの選択を強く評価すると、実況のベカンも深く同意した。サトシとヒロシは、駆けつけた係員の誘導によってすぐさまポケモンセンターへと向かっていった。

 「よし……。あいつの分も、俺が上へ行く」

 ヒビキは静かに目を閉じ、一気に自分の試合へと意識を切り替えた。

「悪いがセナ、勝たせて貰うぞ!」

 選出したボールを握り締め、ヒビキは歓声が渦巻くフィールドへと足を踏み出した。

 『さぁ、続いての試合は同郷対決! 緑コーナー、マサラタウンのヒビキ選手! 対する赤コーナー、同じくマサラタウンのセナ選手!』

 「お互い、悔いのないように戦いましょうねぇ!」

 セナがいつものおっとりとした口調ながらも、真剣な目を向けてくる。

 「行ってこい、クロバット!」

「クロバッ!」

「お願いしますねぇ! ゲンガー!」

「ゲンゲロゲッ!」

 ヒビキの先発は俊足のクロバット。セナはトリッキーなゲンガーを繰り出してきた。

 「試合開始!」

 「クロバット! 【挑発】を仕掛けながら【アクロバット】!」

「クロバッ!」

 クロバットはゲンガーの補助技を封じるべく鋭く睨みつけ、狙いを絞らせない不規則な軌道で突撃する。しかし、セナも戦術眼に狂いはない。

「ゲンガー! 懐に入られる前に【凍える風】!」

 ゲンガーはクロバットを直接狙うのではなく、自身の周囲に強烈な冷気の嵐を展開した。突っ込んだクロバットに冷気が直撃し、アクロバットの一撃がゲンガーの身体を捉える。初手から、互いに手痛いダメージを負う肉を切らせて骨を断つ展開。

「【噛み砕く】だ!」

「【サイコキネシス】で迎え撃って!」

 間髪入れずに放たれた互いの弱点技。クロバットの鋭い牙がゲンガーに突き刺さると同時に、ゲンガーの放つ強力な念動力がクロバットの巨体を激しく打ちのめす。両者ともに満身創痍、次の一撃が命取りになる。

 「【挑発】の効果がもうすぐ切れる……! 【追い風】を混ぜつつ、もう一発【噛み砕く】!」

「そうはさせませんよぉ! ゲンガー、【凍える風】!」

 【凍える風】の追加効果で素早さが下がっていたクロバットだったが、土壇場で放った【追い風】の爆風、そして元の圧倒的なスピードが勝った。ほんの僅かに早く動いたクロバットの牙がゲンガーを捉え、ついにその巨体を戦闘不能へと追い込む。

 しかし、勝負が決したと思ったその瞬間。

 倒れゆくゲンガーの身体から、どす黒い怨念のような靄がブワリと噴き出し、勝利の声を上げようとしたクロバットの全身を包み込んだ。すると糸が切れたようにその場に崩れ落ちてしまった。

 「ゲンガー、クロバット、共に戦闘不能!」

 審判の旗が両方に上がる。初戦から一歩も引かない、壮絶な相打ちからの幕開けとなった。

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