ポケットモンスター:オーバー・ザ・レジェンド 作:ガチャガチャクツワムシ
『おおっと! 今のは【道連れ】か!? ゲンガーが倒れると同時にクロバットも力尽きたー!』
ベカンが絶叫する中、シアンがモニターをスロー再生しながら冷静に分析する。
『どうやらクロバットの攻撃が直撃した瞬間、ちょうど【挑発】の効果が切れたのでしょうね。ゲンガーが最後に一瞬の隙を突いて呪いを残した、執念の相打ちです』
張り詰めた空気の中、2人は無言でポケモンをボールへと戻した。
セナは手元のボールを見つめ、小さく息を吐く。
(ここは、ジスト君もまだ知らないであろうエビワラーを出すのが正解なんでしょうけど……ううん、この子に託します!)
「お願いしますねぇ! キュウコン!」
「コォンッ!」
セナが次に繰り出したのは、美しく尾をなびかせるキュウコンだった。
「なら此方は、行ってこい! ブースター!」
「ブースッ!」
ヒビキが選んだのは、ふさふさの毛並みを持つブースターだった。
『おおっと、どちらも炎タイプを選出した! これは両者、何か深い考えがあるのか!?』
「ブースター! 【どばどばオーラ】!」
「キュウコン! 【悪巧み】からの【高速移動】!」
キュウコンがその場で知恵を巡らせて特攻を高め、さらに鋭いステップで速度を上げていく中、ブースターの身体から濃密なエネルギーが放たれる。新たに習得した相棒技【どばどばオーラ】だ。水タイプの濁流のようなオーラがキュウコンを襲うと同時に、ヒビキ側のフィールドに【光の壁】が展開される。
ヒビキは間髪入れずに追撃を命じた。
「次は、【わるわるゾーン】!」
今度は悪タイプの不気味な衝撃波がキュウコンを捉え、同時に【リフレクター】が展開される。これで両壁が揃った。
「耐えて、【悪巧み】! からの──【バトンタッチ】!」
セナのキュウコンは攻撃を耐え抜くと、能力上昇の赤いオーラを全身に纏ったまま光となって手元に戻った。代わってステージに現れたのは、巨大な花を背負ったフシギバナだ。
「そうきたかよ! だが関係ねぇ! ブースター、【めらめらバーン】!」
「フシギバナ! 【大地の力】!」
ブースターが放った必中の炎【めらめらバーン】がフシギバナを包み込み、激しい火傷状態へと陥れる。しかし、キュウコンから4段階もの特攻上昇を引き継いだフシギバナの【大地の力】が足元から炸裂。両壁でダメージを半減させているとはいえ、凄まじい衝撃がブースターを襲う。
「ある程度の仕事はしたんだ。相打ち覚悟で行くぞ! 【フレアドライブ】!」
「【ヘドロウェーブ】で迎撃して!」
押し寄せる紫色の毒の波を、ブースターは強靭な跳躍で回避。そのまま空中からフシギバナの背中の花弁めがけて、炎を纏った弾丸となり突撃した。
「蔓に気を付けろよ! そのまま【フレアドライブ】!」
「振り払って!」
至近距離での猛攻撃。フシギバナは巨体を震わせ、何本もの蔓を伸ばしてブースターを叩き落とそうとする。しかし、ブースターは持ち前の根性で激しい抵抗を避け続け、フシギバナの身体を至近距離から激しく燃やし続けた。
じわじわと火傷のダメージも蓄積し、ついに限界を迎えたフシギバナが地響きを立てて倒れ込んだ。
「よくやった! ブースター!」
「ブゥウスゥタァァァッ!」
ヒビキが力強く声をかけると、ブースターは満身創痍の身体を起こし、客席のどこかで見届けているであろう、かつて生き別れることになってしまった家族たちに向かって、勝利の雄叫びを轟かせた。そして、やり切ったように満足げな顔のまま、自身もその場に崩れ落ちた。
「ブースター、フシギバナ、共に戦闘不能!」
「本当だったら、これで3体目を出させたかったんですが……やっぱりヒビキ君は強いですねぇ。お願いしますね、キュウコン」「コォォォンッ!」
セナは、再び最後の1体となったキュウコンをフィールドへ送り出す。
「行ってこい! スピアー!」「スピィッ!」
ヒビキが最後にすべてを託したのは、両腕に巨大な針を持つスピアーだった。
「キュウコン、もう一度【悪巧み】からの【神通力】!」
「【影分身】しながら【ドリルライナー】!」
キュウコンの目が怪しく光り、見えないサイコパワーの圧がスピアーを襲う。しかし、スピアーは残像を残すほどの凄まじいスピードで【影分身】を誘発。実体の掴めない無数の分身と共に【神通力】の網の目をすり抜け、螺旋の回転を伴う【ドリルライナー】をキュウコンのボディへ激しく叩き込んだ。
衝撃で大きく吹き飛ぶキュウコン。ヒビキはその隙を見逃さず、一気に勝負を決めにかかる。
「トドメだ! 【逆鱗】!」
スピアーの目が血走るような怒りのエネルギーに染まる。理性を捨て、圧倒的な破壊衝動に任せた怒濤の連撃がキュウコンを襲った。目にも留まらぬ連続の刺突が炸裂し、ついにキュウコンはその場に崩れ落ちて目を回した。
「キュウコン、戦闘不能! スピアーの勝ち! よって勝者、マサラタウンのヒビキ!」
『決まったァ──ー!!! 同郷対決を制したのはヒビキ選手だ! 壁を用いた緻密な戦術と、最後の圧倒的な一撃! 見事な勝利です!』
ベカンの絶叫と、割れんばかりの歓声がセキエイ高原を包み込む。
互いの手の内を尽くした激闘の末、セナの想いをも背負ったヒビキは、堂々と準々決勝への進出を決めたのだった。