ポケットモンスター:オーバー・ザ・レジェンド 作:ガチャガチャクツワムシ
『さぁ、ヒビキ選手はフーディンを、マサトシ選手はゲンガーを選出しました! 互いが互いの弱点を突き合える超攻撃的な相性、一瞬の油断が命取りになります! お互いどう出るでしょうか!?』
ベカンがマイクを握りしめて叫ぶのと同時に、ヒビキの鋭い声が響く。
「フーディン! 壁展開!」
「ゲンガー! 【挑発】で阻止!」
フーディンが素早い身のこなしで【光の壁】の障壁を張ることに成功したものの、続く【リフレクター】の展開はゲンガーの放った邪悪な波動──【挑発】の闇に飲まれて不発に終わった。
「チッ、なんとか片方だけでも張れたのは僥倖か……。フーディン、先手必勝だ! 【サイコキネシス】!」
「ディンッ!」
「ゲンガー、地面に潜航!」
「ゲンッ!」
フーディンの放った強烈な念動の波がゲンガーを捉えるかと思われた瞬間、ゲンガーは自身の影を広げるようにフィールドの地面へと溶け込み、攻撃を完璧に透過して回避した。
『あっと驚く回避劇! ゲンガー、影に潜り込んで【サイコキネシス】を完全に受け流した! フーディン、周囲を激しく警戒しています!』
『これはゴーストタイプ特有の、物質を透過する性質を極限まで生かした避け方ですね。捕らえるのは容易ではありませんよ』
シアンの解説を耳に挟みながら、ヒビキは冷静に次の一手を仕込む。
「警戒を怠るな! そのまま【未来予知】!」
フーディンが目を怪しく光らせ、空間の歪みにエネルギーを仕込んだその瞬間、死角から影が飛び出した。
「ゲンガー! 【シャドーパンチ】!」
フーディンの真横から必中の拳が迫る。しかし、ヒビキの読みが上回った。
「全方位に【サイコキネシス】!」
予測していたフーディンが自身の周囲360度に向けて念動力を爆発させたため、迫り狂う【シャドーパンチ】は直撃する直前に相殺され、霧散した。だが、マサトシの戦術は揺るがない。
「ゲンガー、そのまま【呪い】」
姿を隠した暗闇の中から、ゲンガーは自身の体力を削りながら不気味な怨念をフーディンへと付与した。じわじわと体力を奪っていく削りの戦法。
「炙り出せ! 【サイコキネシス】!」
フーディンは全精力を注いだ【サイコキネシス】の波動を叩き込み、潜んでいたゲンガーに手痛いダメージを負わせる。と同時に、ようやく【挑発】の呪縛が解けた。
「もう一度【光の壁】、そして【リフレクター】!」
「ディンッ!」
「なら、【悪の波動】と【シャドーパンチ】だ」
「ゲンッ!」
フーディンが執念で両方の壁を完成させた瞬間、ゲンガーの怒濤の連続攻撃が襲いかかる。壁によってダメージは軽減されたものの、【呪い】のダメージ蓄積も限界に達しており、フーディンはその場に力尽き倒れた。
「フーディン、戦闘不能! ゲンガーの勝ち……いや、待て!?」
審判が宣言を言いかけたその時、さきほどフーディンが空間に仕込んでいた【未来予知】の時限エネルギーが、突如としてゲンガーの頭上に降り注いだ。凄まじいサイコパワーの圧壊に耐えきれず、ゲンガーもまた悲鳴を上げて消滅するように倒れ伏した。
「ゲンガー、戦闘不能!」
『なんということだ! 両者、ダブルノックアウト!! 壮絶な相打ちです!』
「まさか……このタイミングで仕留めきられるとはね」
マサトシが少し意外そうに呟くと、ヒビキはニヤリと笑ってボールを引いた。
「どんなにうまく隠れても、戦闘不能になれば姿を現すからな」
息を呑む攻防の末、審判から次のポケモンを促された2人が同時に投げ放ったボールから現れたのは──
「頼むよ、ウルガモス!」
「プピィィィッ!」
「行ってこい、プテラ!」
「ギュアアアッ!」
『マサトシ選手は太陽の化身、ウルガモス! ヒビキ選手は化石の覇者、プテラ! タイプ相性は岩4倍を突けるヒビキ選手が圧倒的有利だ!』
「ウルガモス! 【蝶の舞】!」
「プテラ! 【追い風】!」
ウルガモスが華麗に舞って特攻・特防・素早さを引き上げる中、プテラは咆哮と共に強烈な向かい風を巻き起こし、味方の素早さを爆発的に上昇させる。
「ウルガモス! 【ギガドレイン】!」
「プテラ! 【ダブルウィング】!」
プテラが目にも留まらぬ速さで急降下し、抜群の威力を誇る【ダブルウィング】を叩き込む。しかし、ウルガモスは耐え抜いた。それどころか、【蝶の舞】で強化された【ギガドレイン】の触手をプテラに絡みつかせ、その体力を吸い取って強引に傷を癒していく。
(……硬い! 耐えきられたか!?)
ヒビキが冷や汗を流した瞬間、マサトシの口元が不敵に歪んだ。
「今だ、ウルガモス! 【ワイルドボルト】!」
「何っ!?」
炎と虫の化身であるはずのウルガモスが、全身に凄まじい高圧電流を纏って突撃してきた。想定外の電気技が直撃し、飛行タイプのプテラは大ダメージを負った上に、最悪のタイミングで身体に電撃が火花を散らす──「麻痺」状態だ。
「プテラ、動け! 【ストーンエッジ】!!」
「ギュア……!? ッ……」
身体が痺れて技が不発に終わる。ヒビキは唇を噛み締めた。
「しまった……っ!」
「ウルガモス、トドメだ。 【ギガドレイン】」
妖しく光る緑の光線が再びプテラを包み込む。万事休す。しかし、プテラはただでは倒れなかった。戦闘不能になる寸前、その強靭な翼でフィールドの地面を激しく叩きつけ、無数の鋭い岩片を空間に飛び散らせたのだ──執念の【ステルスロック】。
岩の罠を敵陣へ残し、プテラは静かにフィールドへと沈んでいった。
「プテラ、戦闘不能! ウルガモスの勝ち!」
『マサトシ選手のウルガモス、まさかの電気技【ワイルドボルト】を隠し持っていました! 圧倒的有利だったはずのプテラを返り討ち! しかしプテラもただでは倒れず、【ステルスロック】を設置して後続へ繋ぎます!』
相性を覆すマサトシの技のデパートっぷりに会場が戦慄する中、ヒビキは手元に残った4つのボールを見つめ、静かに闘志を燃え上がらせた。