(再編集の再投稿です)
看守に案内される形で地下の牢屋から地上の建物へと上がってきた椎名は、視線一杯に広がる広々とした空間を目の当たりにし、驚きの表情を露にしていた。
ー広い…、地下とは全然雰囲気が違うっていうか…まあ当たり前のことではあるんだけど…ー
ぱっと見所々汚れていたり埃っぽいぐらいで、それなりに管理自体はされているらしく、部屋の雰囲気からして恐らくこの建物はお屋敷といったところだろう。
そんなことを思いながら視線をとある壁に向けると、そこには屋敷のものだろうか?ボウガンと矢が立てかけていることに気づく。
本物のようにも見えるが直接触ったりしていないためなんとも言えないが、今はそれより気になることがあるようで……
ー所々汚れたり埃っぽい…でも管理はそれなりにされてるっぽい…、…ん?あれはボウガンに矢?…本物なのかな……まあまだなんとも言えないけどー
「でもそれより…」チラッ
部屋には看守によって牢屋から連れてこられた14人(椎名を含めて)の多種多様な服装に身を包んだ少女達の姿があり、各々様々な反応を浮かべているのが確認出来た。
自分以外にこんなにも少女達がこの屋敷に集められているのか…そんなことを呟きながら、誰が何の目的で…と看守を横目に1人呟いていく。
「ちょうちょ〜♪ちょうちょ〜」
「ざけんじゃねぇぞ!!ぶっ殺してやる!!」
「…ここ、臭くね?」
「おこったのですわー!!」
「おやおやー?」
「ううう…」
「…」ニコッ
「うーん…やりづらいな」
「…」ギュ
「うふふ…♪」
「…」ジッ
ー自分含めてこの部屋に14人…、みんな多種多様な格好させられてるっぽい…、……一体なんの目的でこんなことを…そもそもこれは誘拐事件…なのか?ー
そんなことを1人つぶやいている椎名の隣、先ほどヒロと名乗る少女に突き飛ばされ椎名に当たってしまった少女、桜羽エマはぱっと見この中に中学時代の同級生がいないことに安堵していた。
だが1人先ほど突き飛ばされた際にぶつかってしまった椎名にだけは、なんとなく何処かで会ったことがあるようで…そう言えば…という表情になる。
「…全員中学の同級生だったらどうしようかと……ってそう言えばあの子……、今思えば何処かで会ったことがあるような…」
しかしそんなことを考えようとした矢先、椎名と同じ探偵衣装に身を包み、青いリボンを境に、左が紺、右が青と水色のチェック柄のシャーロックハット(探偵の帽子)を被った、水色の髪にオレンジの瞳に三つ編みでドーナツヘアの少女、橘シェリーに話しかけられてしまう。
普通に考えれば目覚めたらいきなりやべー場所に来たことを考えると未成年である少女たちにとって平然を保つことは不可能に近い…のだが、シェリーはむしろ興奮すると言わんばかりにエマの手を握りながらブンブンと握手を交わしていく。
「…うーん、思い出せそうで思い出せn…」
「いやーすごいですねっ!」
「…ほへ?」
「牢屋で目覚め!化け物に見張られていて!なんだかすごいことが起こっているのを感じます!高まっちゃいますね〜♪」ブンブン
ムードメーカーキャラ…というよりかは状況があまり飲み込めていない能天気キャラといったほうがいいだろうか…、そんなシェリーがエマに質問攻めをしていると1人の少女が突っ込みを入れるように話しかけた。
「ちなみに後ろの黒髪美人さんとのご関係は!?」
「あつえっと…幼なじみで…」アワアワ
「なあにが高まっちゃいますね〜ですわ…!!」
金髪のロングツインテールにお嬢様を思わせる豪華なヘッドドレスをあごの下で留めて、緑と黒の豪華なドレスとケープや黄色と白のバラが特徴的な少女、遠野ハンナはなんちゃってお嬢様口調でシェリーに対し、危機感をもう少し持ったほうがいいと指摘していく。
その様子を話し声で我に返り聞いていた椎名は、同じ探偵被りのシェリーに気づきライバル心を燃やしていると、あることに気づいたのかハッとした表情になる。
「やべーことになってるんですわ!もっと危機感を持ったほうがいいんじゃないかしら!?」
ー……なんか探偵被りしてるんだけど…あの青髪の子……ってこんな時になに対抗心燃やしt…!?ー
先ほどまでは気づかなかったが、3人がわちゃわちゃしている頭上にそれぞれぼんやりしながらもはっきりと読める文字が浮かび上がっているのだ。
…いや3人だけじゃない、この部屋にいる少女達のほとんどにその文字が浮かび上がっており、なんなら手鏡で自分の頭上を映した際にも、同様の文字が浮かび上がっていることに気づく。
桜羽エマ『忌み嫌われるもの』
橘シェリー『破戒探偵(クラッシャー)』
遠野ハンナ『空想令嬢』
ー何…あの文字……ってかこの部屋にいる人の頭上に……まさか私も…!?
雨宮椎名『終焉の記録係』
ー……やっ…やっぱり……しかも終焉の記録係って……ー
だが他の少女たちには見えていないようで、ハンナのなんちゃってお嬢様口調に気がほぐれたのか、席に座っていた亜麻色の外ハネショートボブ、黄色がかったオレンジ色の瞳の少女『蓮見レイア』
詰襟の亜麻色の衣服に、脛まで届くような黒い上品なアウターを羽織っている。その両肩には金色の肩章(エポレット)。両手首部分には、独特な装飾が施された金色のカフスといったいわば軍服、そして騎士のような服といったほうがいいだろう。
当然彼女の頭上にも『舞台上の偶像《アイドル》』が浮かび上がっており、同時に彼女が芸能事務所に所属し何度かテレビで見たことがあるアイドルであることを思い出す。
「ふふっ」
「今笑ったのは誰でやがりますの!?」
「——いや、すまない。少し変わった喋りかただと思ってね」
ーあの子にも…舞台上の偶像《アイドル》って…でも一体この文字はどういう…、というかテレビで何度か見たことあるよね?あの人…ー
まあ当然芸能事務所に所属している上にテレビに出れるとなればそれなりに顔がいいということであり、女性ながらイケメンな男性風の雰囲気を醸し出しているレイアに対し、エマとシェリーは思わず見惚れてしまう。
しかし当の本人は気にしていないようで、流石というか人前に慣れていることもあって、切り出すように初対面だから自己紹介をしないか…と提案していく。
ほわ~
「…あっそれとみんな初対面だろうと思うから、良かったら自己紹介をしていかないか?」
確かにここにいるほとんどの人はお互いの名前を知らない人がほとんど、そのため特に自己紹介に関しては反対の意見が上がることもなく、レイアを先陣に特に決まってない適当な順番で各々名乗り始める(レイアとハンナのわちゃわちゃも含め)。
「まずは私から先に名乗らせてもらうよ、私の名前は蓮見レイア」
「遠野ハンナですわ、お見知りおきゃ…お見知りあそばせ?」
「—いきなり人のことを笑うなんて失礼じゃなくて!?」
「すまない、そんなに気にしてるなんて思わなかったんだ」
「気にしてないしっ!!」
レイア、ハンナに続く形ではいはい!とアピール全開のシェリーが名乗りを上げ、事件あるところに私あり!というどこぞの探偵みたいな肩書を口にしながら何かあればこの名探偵にお任せくださいと自信満々に口にしていく。
…ちなみに事件を解決したことどころか依頼を解決したことは今までないようで、それを尋ねたレイアは少し頭が痛くなってきた…と苦笑いを浮かべてしまう。
「はいはーい!!橘シェリーって言います!事件あるところに私あり!この名探偵にお任せください!」
「名探偵ぃ?貴方が??」(byハンナ)
「ということは実際に事件を解決した経験があるのかい?」
「それはまだありませんね!」ドンッ
「……少し頭が痛くなってきたな」
もちろん探偵という話になればシェリーと似たような格好をしている椎名にも必然的に意識が向くというもので、レイアがそんなことを口にしながら話題を振ろうとしかけるのだが…
その前に自分が先と言わんばかりにVTuberのような姿に猫耳のヘッドフォンが特徴的な外ハネ黒髪に、前髪にオレンジ色のメッシュが特徴的な少女、沢渡ココが割って入るように名乗りを上げた。
「そう言えば君もシェリー君と同じ格好をしているg…」
「はいはい!あてぃしは沢渡ココ『孤独な配信者(ソロ・ストリーマー)』ね、配信者してんの」
ちなみに配信者であるココも当然というかレイアのことは知っていたようで有名人じゃないのかと指摘すると、彼女も特に隠す素振りを見せることなく自身が芸能事務所に所属し、テレビにも何度か出たことがあると明かしていく。
当然芸能人などそういった人を生で見れることは滅多にないため、少女達の話題はそれで一気に盛り上がり、ココが先に見つけたのは私だと言わんばかりにコラボ依頼を早速申請する。
「でさーアンタ有名人じゃね!テレビで何度か見たことある!」
「…まあ芸能事務所所属してるからね、テレビもよく出るかな」
「すごーい!生芸能人初めて見ました!」
「ちょウゼーなおめぇ!あてぃしが先に見つけたっつの!とりあえずあてぃしとコラボして!」
流石は人気者といった感じではあるが、まだ名を名乗っていない人たちも控えているため、ひとまずコラボなどの話はあとでいいかとレイアが宥めながら、中断していた自己紹介を再会することに。
ヒロを先頭にエマが続く形で挨拶をしていき、椎名も流れに乗る形で名を名乗ろうとした直後、割ってはいる形であたふたした声が周囲に響き渡った。
「その話はまたあとで…、次いいかな?」ははは…
「私の名前は二階堂ヒロ(正義の執行者)」
「おー!さっきの黒髪美人さん!」
「ヒロちゃん……(…大丈夫…、きっと…また仲良くなれるよね)…ぼ…ボクは桜羽エマ!」
「それじゃ次は私g…「わわわたっわたしっ!」」
心配症の塊のような性格で、常に人のことを気にしている雰囲気全開の修道女のような恰好が特徴的な少女は、自身の名を氷上メルル『怯える天使』と名乗っていく。
その際、恐らくヒロに突き飛ばされたことで出来たものであろう膝の怪我を指摘していき、自分に治させてくれないか…とおどおどしながら頼み込む。
「私の名前はっひっひっひひ氷上メルルです……!そっそれでエマさん、あっあの…けっ…けが…」
「怪我?」
「はっはい…、そっそれで…私にちょっと治させてください…っ!」
だがちょっとした擦り傷程度なので痛くもないエマは気にしないでと口にするが、それよりもメルルが動くのが早かったらしく両手を怪我をした部分に向けた途端、傷口があっという間に消えて無くなってしまう。
それはもう本当に怪我をしたのかと疑いたくなるようなほどであり、手当てを受けたエマ本人も何が起こったたか理解が追いついていないようにも感じる。
「大したことないよ大丈夫——…え?」
「痛くはないですか?」
「あっ…うん…あっありがと…」ピカー
もちろんその様子は他の何人かも目撃しており、シェリーとハンナが詰め寄る勢いで興味を露にしながら、相変わらずおどおどするメルルへと質問攻めを敢行していく。
当然椎名もその光景は目撃しており、非科学的で信じられない光景を目の当たりにしつつも、ハンナが口にした言葉に引っ掛かりを覚えたのか、思わずん?という表情になる。
「え!!メルルさん凄いですね!」
「!あなたも魔法が使えるんですのね!」
「他にも何か出来るんですか?みたいです〜」
「少しお話よろしくて?」グイグイ
「あっあっあっ…あのあの…」アワアワ
ー嘘…擦り傷がまるでなかったみたいに……、信じられないけど……あれを見た以上は……でも、それより…ハンナさんが言ってた貴方も魔法が使えるってのは…ー
だがその疑問を浮かべた瞬間天井に一カ所設けられた鉄柵が開くとともに、先ほど映像に映っていた不気味なフクロウ…ゴクチョーが姿を現し、羽根を広げてパタパタと飛びながら一同の目の前に降り立ちながら改める形で自己紹介を済ませていく。
「…あっ…人がいっぱい、えっと改めまして…。この屋敷の管理を任されております、可愛いフクロウゴクチョーと申します」パタパタ
当然ながら先ほどの映像越しの会話を覚えていた少女達は思わず身構えてしまい、椎名も何があってもいいように臨戦態勢を無意識に取ってしまう。
しかしゴクチョーはそんな少女達に気にする素振りを見せることなく、申し上げにくいですか…と一言添える形で皆さんには魔女になる因子があると説明し始める。
「さっきのフクロウ…」ざわ
「…っ…!」ザッ
「あっと…すごく申し上げにくいんですが…、皆さんは魔女になる因子を持っています」
魔女…アニメや漫画などで使われることの多い魔法少女のようなもので、科学的には証明のつかない魔法が扱えるといったほうがいいだろう。
大々は誰かのためや人の希望となることの多いが、どうやらゴクチョー曰く魔女は国にとって災害をもたらす存在とのこと。
ー…魔女って…アニメとかでよく出てくるあの?(エマ)ー
ーもしかしてさっきメルルさんがやってたアレが……、魔女の因子って奴?ー
「偉い人が決めた話では"魔女"はこの国にとって災害をもたらす悪らしいんです」
当然そんな危険な存在は放っておけない…とのことで世間には公表されてはいないものの法に基づき定期的に魔女の因子を持つ人間を探し出す全国検査を行なっており、この場に集められた少女達はその魔女因子が大きく検出されたらしい。
…がゴクチョー曰く全員がそうではないようで、1人だけ別の事情で魔女ではないのに連れてこられた人もいるようだが…
「わが国の法に基づいた全国検査によって、皆さんはその"魔女因子"が大きく検出された。この国とってあまりにも危険であると判断されたため、この牢屋敷への収容が決まったんですね」
ー……全国検査って…いつの間にそんなものが…ー
「…まあ1人だけ魔女じゃない人も混じってますが、その人は別の意味で危険と判断されたので一緒に連れてきちゃいました」
当然例外があると言われれば少女達が気にしないはずもなく、一体誰が…そんなことを口々に話しながらざわつきを見せる。
するとゴクチョーがそうですよね?と口にしながら視線を向けた先、そこには雨宮椎名の姿があり彼女の名前を言われながらゴクチョーが顔を向けたことで、少女達の注目は一気に集まっていくのであった。
「1人だけ例外って……誰が…」
「魔女の因子を持たないのにこの牢屋敷にって…一体どんなヤバいことを…」
「ですよね?雨宮椎名さん」
「…!?」
ーわっ私!?…それはどういう…ー
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