ド直球な陵辱エロゲ世界で何も知らずニチアサやってる奴   作:らっこ

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戦うたび強くなる。

 

「やぁやぁ!ようこそ我がラボへ!」

 

 朧家のとある一角……その地下に用意された研究施設。そこには討魔士の使う幾千の武具が保管されている。今日この場に立ち寄ったのは、水無月の昴と志保の二人だ。

 

 出迎えるのは朧九郎その人だ。志保の愛刀がへし折れたと聞いてすぐに新たなる武器を準備してくれた……らしい。彼はいつものような薄らかな微笑みで二人を出迎えた。

 

「お願いします、九郎さん。」

「お、お願いします!」

「いやぁまさかこんなにも早くアレを扱ってくれる子が出てくるなんて思わなかったなぁ!」

 

 ラボの通路を歩きながら、九郎は独り言のようにそう呟いた。白衣の裾を翻しながら先を行く足取りは軽い。仕事の話になると、この男は少しだけ表情が変わる……飄々とした笑みの奥に、研究者としての熱が滲む。

 

「どんな武器なんですか?」

 

 志保は通路を歩きながら問いかけた。ずらりと並んだ棚には刀剣類から符術用の道具まで、雑多に並んでいる。どれも一目で業物と分かる代物ばかりだ。

 

「んー、説明するよりまず見てもらった方が早いかなぁ。」

 

 九郎はそう言いながら、通路の奥の扉を開けた。

 広い部屋だった。中央に大きな作業台があり、その上に黒い布がかかっている。布の下に何か横たわっているのが分かった。

 

 志保の目がそれを捉えた瞬間、僅かに形が見えた。細長い。刀だ。

 

「まず聞いてほしいんだけどね。」

 

 九郎は作業台の前に立ちながら、こちらを振り返った。

 

「あのイグナイトって戦士……みんなから話を聞けば聞くほど、面白いことが分かってきてさ。ブースターを各所に配置って面白いこと考えるよね。」

 

 昴が静かに続きを促した。

 

「あの加速機構のですか?。」

「そうそう。魔力じゃなくて純粋な科学の力で加速を作り出してる。なんでそれが魔獣に通じるかは……まぁ今は置いといて。」

 

 九郎は指先で作業台をとんと叩いた。

 

「あの原理をね、刀に応用できないかなって思ったんだよ。それこそ、イグナイトの持つ武器……ブーストイグニッシャーだっけ?アレを参考にね。でも扱える人間がいると思ってなかったんだわ。あの加速に振り回されないほどの膂力と技術を持ってる討魔士が……ね。」

 

 志保の背筋が、すっと伸びた。

 

「まさか……。」

「うん。」

 

 九郎はにこりと笑って、布に手をかけた。

 

「今回のイグナイトの件で、考え方が変わった。イグナイトの持つブーストイグニッシャーを志保ちゃんが実際に扱えたって聞いてね。それなら……使えるんじゃないかって。」

 

 詳しい戦闘の経緯は確かに報告した覚えが志保にはあるが……それにしてもよく用器していたものだ。準備がいいと言うかなんというか。

 

 そんな事を考えていると、布がするりと取り除かれた……そこにあったのは……刀だった。

 

 刀身は通常のものより僅かに短い。だが鞘は黒く、鍔の部分に細かな機構が組み込まれているのが一目で分かった。

 

 金属と何か別の素材が複合されたような質感で、光の当たり方によって青みがかって見える。刀全体のラインは滑らかで……どこか、ブーストイグニッシャーの意匠に似た雰囲気があった。アレよりもよほど実用的ににはな、っているが

 

「……いいなぁ、これ……!!」

 

 志保は思わず呟いた。九郎は嬉しそうに目を細めた。

「でしょ。自信作……これが君の新しい剣。『進爆刀(シンバクトウ)』」

「進爆刀……!!」

「どういう仕組みなんですか。」

 感激する志保に代わって昴が静かに問いかけた。

 九郎は刀を手に取り、鍔の部分を指で示した。

 

「鍔の内部に加速機構を組み込んである。魔力を刀に流すと同時に、この機構が起動して……斬撃の初速に爆発的な加速をかける。要は、振り始めの速度が段違いになる。」

「ブーストイグニッシャーと同じ原理を……刀に。」

「そういうこと。ただし。」

 

 九郎は志保へ刀を向けた。目が、少しだけ真剣になる。

 

「この加速は、扱いを間違えると自分の腕ごと持っていかれる。振り始めに加速がかかる分……止める力が要る。腕の強度と、魔力による身体強化の精度が足りない人間が振ったら……まぁ、洒落にならないことになるね。」

「振り回されないように、ということですね。」

「そういうことり」

 

 九郎は刀を作業台に戻した。

 

「でも志保ちゃんなら扱える。今回の件で確信した。ブーストイグニッシャーを二刀で御してたって聞いたからね。」

 

 志保は刀を見つめた。黒い鞘。鍔に組み込まれた機構。折れた愛刀とは、似ても似つかない。だが……なぜか、惹かれるものがあった。

 

「一度、持ってみていいですか。」

「どうぞどうぞ、そのためにわざわざ来てもらったんだから。」

 

 志保は刀に手を伸ばした。柄を握る。

 重い、と思った。愛刀よりも確かに重い。だが……手に馴染む重さだった。不思議と、しっくりくる。

 

「抜いてみて。ゆっくりね、いきなり魔力は流さないで。」

 

 志保はゆっくりと刀を抜いた。

 刀身が、光の下に現れる……青みがかった銀色だ。

 刃紋が細かく、均一に入っている。これだけでも十分な業物だと、志保には分かった。

 

「……すごい。」

「でしょ。」

 

 九郎は満足そうだ。

 

「試しにちょっとだけ魔力を……ほんの少しだけ、流してみて。」

 

 志保は慎重に魔力を刀へ送った。ほんの薄く、糸一本分ほど。

 次の瞬間、刀身がかすかに震えた。

 

 びりびりと、手の中から伝わってくる振動がある。加速を求めるような、引っ張られるような感覚……ブーストイグニッシャーを握った時に似ていた。

 だがあれより、ずっと自分に近い感覚だ。刀が、自分の魔力に応えている感じがした。

 

「っ……」

 

 思わず志保は息を呑む。

 

「どう?」

 

 九郎が問いかけた。志保はしばらく刀を握ったまま、その感触を確かめた。重い。引っ張られる。だが……これは、振れる。振れると思った。意味もない核心だった。だが……こう、言い切れた。

 

「……扱えます。」

「だと思ってた。」

 

 九郎はアハハと笑った。

 昴はそのやりとりを黙って見ていた。志保の手の中の刀を眺めながら、静かに口を開く。

 

「九郎さん。一つ確認させてください。」

「なんだい?」

「この刀の加速機構は……イグナイトの技術を参考にしたとおっしゃった。」

「そうだね。」

「それは……朔間氏の研究とも、関連するものですか。」

 

 部屋に、わずかな沈黙が落ちた。

 九郎の笑みが、一瞬だけ揺れた。揺れたが……消えなかった。

 

「さあ。どうだろうね。」

 

 いつもの、掴みどころのない返事だ。昴はそれ以上は問わなかった。問わないが……その答えを、心の中にしっかりと刻んだ。

 志保は刀をゆっくりと鞘に納めた。かちり、と音がした。

 折れた愛刀の代わりにはならない。ならないが……これはこれで、自分の愛刀になれる気がした。

 

「大事にしてよ。作るの結構大変だったんだから。」

「分かってます。」

「あと本当に、ゆっくり振り始めること。最初のうちは特にね。じゃないと本当に腕持っていかれるから。」

「しつこいですよ。」

「大事なことだから二回言った。」

 

 昴が小さく息をついた。九郎はまたアハハと笑う。

 地下ラボの灯りが、新しい刀の刀身を静かに照らしていた。

 

―――――――――――――――

 

 

 

 

 丁度その頃、日夜のイグナイトのスーツは自己修復状態に入っていた。正確に言えば……ブレスレットの光が、いつもと違う点滅をしていた。

 

 規則的ではない一定のリズムで明滅を繰り返しながら、腕の上で静かに熱を持っている。熱い、というほどではない。ただ……温かい。まるで何かが内側で動いているような、そういう温度だ。

 

 前日の魔獣との戦いを、まだ引きずっているらしい。今までもこういうことはあったから分かる。

 

 このイグナイトの装甲やスーツには自己修復機能や自己進化機能が付いている。戦えば戦うほど強くなる……それがイグナイトの力の本質だ。

 

 日夜は自分の部屋の床に寝転がりながら、そのブレスレットをぼんやりと眺めた。天井の染みを数えるともなく眺めながら、腕を持ち上げてブレスレットを目の高さに合わせる。

 

 点滅が、ゆっくりと続いている。

 

「……お前も疲れるんだな。」

 

 独り言だった。返事があるわけでもない。ブレスレットは黙ったまま、点滅を続けるだけだ。

 

 右腕の疼きは、昨日よりは引いていた。動かせないほどではない。ただ、無理をすれば響く。このブレスレットが自己修復状態にある間は、変身もできない。

 

 できないというより……すべきではないと、なんとなく分かる。このガジェットが「まだ待て」と言っているような気がした。

 

 父の置き土産は、今日も黙ったまま何も教えてくれない。教えてくれないくせに、妙に意思があるような振る舞いをする。

 

(どういうつもりで作ったんだか。)

 

 苛立ちとも呼べない、ただの呆れのような感情が胸の底をかすめる。日夜は腕を下ろして、また天井を見た。テーブルの上には変わった形のタブレット……この中にはオヤジがこのブレスレットを送ってきたときに見た映像データが入っている。

 

 湯な臭すぎて見直す気にすらなれないが、映像の中のオヤジの言葉がいまだに頭に反射する。

 

『この世界は狙われている。魔獣と呼ばれる存在に!』

『日夜、頼む……私の代わりにお前が戦ってくれ。その為の力をお前に授ける!』

『この力さえあれば……お前はやがて何にも負けない最強の力を手に入れられるぞ!』

『そうすれば……そうすれば……!!』

 

「…………。」

 

 日夜は考えたくないことを考えて思わず飛び起きてしまった。

 体の芯がむずむずするような、このじっとしていられない感覚は、体を動かさないと収まらない。経験上、そう分かっていた。

 

 日夜は立ち上がって、クローゼットを開けた。薄手のウェアを引っ張り出して、着替える。ブレスレットは外さない。外す気にもなれなかった。

 

 玄関で靴を履きながら、日夜はブレスレットを一瞥した。

 

「少し出てくる。」

 

 また独り言だった。誰に言うでもない。ただ……なんとなく、言いたかった。ブレスレットの点滅が、一瞬だけ少し速くなった気がした。

 

 気のせいかもしれない。日夜は特に深く考えないことにして、ドアを開けた。朝の空気が、頬に当たった。

 

 ひんやりと、静かで、まだ人の少ない時間帯の空気だ。日差しは柔らかく、遠くの方から鳥の声がする。悪くない朝だった。

 

 日夜は軽く息を吸って、走り出した。

 行き先は決めていないが……近くに少し広い公園があるからそこに行こう気の向くまま、足の向くまま……ただ走るのだった。

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