ド直球な陵辱エロゲ世界で何も知らずニチアサやってる奴   作:らっこ

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変身中は攻撃されても効かないお約束

 

 

 水無月家の奥座敷に、人が集まるのは珍しいことではない。

 だが今夜集まった面々は……実に珍しかった。普段はこうして表立って集まることすらないような、討魔士達の重鎮たちだ。

 

 上座に座るのは水無月昴。その左右に、討魔士の各家から選ばれた重鎮が二名ずつ。合計五名が、円を描くように膝を折って座っている。

 

 部屋の隅には結界符が新たに三枚追加で貼られ、窓の外には使い魔の鴉が輪を描いていた。盗聴も、覗きも、魔力による干渉も全て遮断した上での会合だ。

 

 これほどの準備をするということは、それだけの話をするということだ。

 

 昴が静かに口を開いた。

 

「お集まりいただきありがとうございます。早速ですが本題に入らせて頂きます。」

 

 誰も頷かない。だが全員の目が昴へ向いた。

 

「議題は二つ。一つは最近各地で確認されている高精度の結界について。二つ目は――――」

 

 昴は一拍置いた。

 

「討魔士でも霊術師でもない、未知の対魔の戦士の存在について。」

 

 昴以外の4人が息を継いだ……すると、最初に口を開いたのは、昴の右斜め前に座る老爺だった。

 

 白髪を短く刈り込み、顔中に刻まれた皺の一本一本が、それぞれ別の戦場の記憶を持っているような顔をしている。

 (オボロ)家現当主、朧源十郎。討魔士の世界では知らぬ者のいない、若き討魔士の良き相談相手でもある古参の好々爺だ。

 

「結界の件から話そうか」

 

 しかし今日に限ってはその声は低く、静かな声だった。

 

「先月だけで、確認された高精度結界は七件。そのいずれもが、我々討魔士の技術とは異なる術式で構成されておった。魔界の術式にも似ておるが――――完全には一致しない。恐らくは魔獣側に与する何者かの仕業だろう。」

「二件は明確に討魔士の孤立を目的としたものだった……おそらくは作為的な物ね。」

 

 その次に口を開いたのは、昴の左側に座る女だった。鬼切(オニキリ)家の当主、鬼切酒鬼。

 三十前後、討魔士の装束を崩した格好で座っており、その手には扇が握られている。口元には常に笑みがあるが、その目は笑っていない。

 

 彼女の臣下の内のものがその結界の罠にかかり一人行方不明になっているのだ、気が立つのも当然だろう。この討魔士の世界において、行方不明は=死、もしくは裏切りを意味するのだから。昴だって妹が被害にあったのだ。心中穏やかではない。

 

「それこそ、件の何処にも属さない謎の対魔の戦士が関連しているのでは?」

 

 そう言葉をあげるのは、黄色の髪を編んだ少し若めの少女……雷蔵(ライゾウ)家の若大将、雷蔵夢見だ。若いながらも、その胆力は1家をまとめるに相応しい物がある。

 

 「関連……か」

 

 源十郎が顎を撫でながら繰り返した。

 

「可能性としては否定できんな。結界が張られた現場に、その戦士が現れている。偶然と呼ぶには、回数が多い」

「偶然ではないとすれば、二通りの解釈ができます」

 

 昴が静かに話題の主導権を引き取る。

 

「一つにはその戦士が結界を察知して駆けつけているか、二つには………その戦士が、結界を張った側と何らかの繋がりを持っている」

 座に沈黙が落ちた。

 酒鬼の扇が、ゆっくりと閉じられた。その目が、笑みを保ったまま昴を見る。

 

「水無月の当主は、どちらだと思う?」

「……現時点では、判断できません」

 

 昴は正直に答えた。実際に出会った彼女からすれば、確かに胡散臭いところはあれど、そう悪事を働くようなものにも見えなかったからだ。

 

「私自身が一度、その戦士と遭遇しています。妹の志保も一度。そのいずれも魔獣と戦っていた。ただ——」

「ただ?」

「私達の問いかけに対して、素性を明かさない。力の出所を聞いても、曖昧に濁す。そして必ず、話の途中で立ち去る」

「逃げる、ということ?なら余計に……」

 

 夢見が目を丸くしたが、それを遮るように昴は小さく頷いた。

 

「おそらく何かを知っている可能性は高いかと………ですが、相当な機動力を持っています。追うことが、現状では難しい」

「水無月の当主が、追えない……ねぇ。」

 

 酒鬼がゆったりと呟いた。笑みの質が、少し変わった。揶揄でも嘲りでもない――――純粋な驚きが、笑みの奥に滲んでいた。

 

「それは確かに、厄介ね」

 

 それまで黙っていた残りの一人が、静かに口を開いた。

 日金(ヒガネ)家の長子、皆月透夜。昴と近い年齢だが、物静かで言葉が少ない。その分、口を開く時の言葉には重さがあった。切れ長の目が、静かに座全体を見回す。

 

「一つ確認させてくれ。」

「どうぞ」

「その戦士は魔獣を、確実に仕留めていたか?」

「はい。私が目にした限りでは」

「では、仮に敵でないとした場合」

 

 透夜は静かに続けた。

 

「我々にとって、その存在は利になりうる。魔力を持たない対魔の戦士が、なぜ魔獣を屠れるのかその仕組みが解明できれば、討魔士の戦力を補う新たな手段になりえます」

「甘い考えじゃないかしら」

 

 酒鬼がすかさず言った。扇を口元に当てながら、透夜へ視線を向ける。

 

「得体の知れない力を持つ人間を、素性も分からないうちから味方扱いするのは危険でしょう?」

「危険は承知の上です。ただ、排除することも同様に危険だと言いたい」

「何故?」

 

 夢見の鋭い口調をはね返すように、透夜は静かにつぶやく。

 

「あの規模の力を持つ相手を敵に回した場合、我々の損耗は無視できない。それが今、最も避けるべき事態のはずです。結界の術者の件と共に事態が不明瞭である以上は……」

 

 透夜の言葉に、源十郎が低く唸った。

 

「日金の小僧の言う通りじゃな。今は消耗を避けるべき時期だ。敵でないと断定もできんが、敵と決めつけて動くのも早計……まずは素性の解明を優先すべきだろう」

 

 年の功というよりも、年寄りの説得力というものだろうか。彼の言葉に皆が息を呑み、反対していたものらもその考えを少し変える……確かに、いくら相手が戦士の所属が不明瞭でも魔獣を倒している今のうちは討魔士にとっては利になる。

 

 それをへんにつついて敵を増やすのは得策ではない……そう考えるのは当然の話だ。兎も角、まずはその謎の戦士――――『イグナイト』について知るしか、彼には方法はない。議題はそのような方面で幕を下ろしていくのだった。

 

 

 

―――――――――――――――

 

 

 同時刻の深夜。

 街中のビルとビルの狭間に、空間の割れ目が現れた。

 

 まるで現実の膜を誰かが内側から引き裂いたような、不自然な裂け目だ。端がぐずぐずと溶けるように歪み、そこから滲み出るように異形の影が姿を現す。

 

 魔獣だ。

 

 街灯の光を受けてぬらぬらと光る体表。人間のそれとは似ても似つかない輪郭が、路地の闇にゆっくりと立ち上がる。

 体長は優に二メートルを超える。四肢の先には鉤爪。背中には何枚もの硬質な鱗が重なり合い、まるで生きた要塞のような風貌だ。

 

 低く、腹の底を直接揺さぶるような唸り声が路地に響いてゆく……本来であればここは討魔士が打って出る場面だ。

 

 しかし今宵は少し違った。討魔士よりも早く――――その現場に駆けつけている者がいた。腕に特異なガジェットをつけた、一人の少年。旭野日夜である。

 

 彼はブレスレット型のデバイス――『イグナイターブレス』を軽く小突きながら、目の前の魔獣をぼんやりと眺めた。溜め息とも呼べないような、浅い息を一つ吐く。

 

「ふぅ……()()()()()()()()()()()()()、また魔獣か」

 

 独り言のような声だった。

 しかし目は、真剣だった。それだけは——いつも、そうだった。

 

 このイグナイターブレスは父の忘れ形見であり、日夜の力を制御するための装置だ。

 

 そしてどういう仕組みかは日夜自身にも説明できないのだが……近くに魔獣が現れた時、このブレスレットがじわりと熱を持つ。まるで父に「行け」と急かされるように。

 

 彼の意思なのか、装置の機能なのか。どちらでもいい、と今は思っている。どちらにせよ、何にせよ、日夜の足は、気がつけばいつもその場所へ向かっているのだから。

 

 魔獣がギロリと、その濁った目を日夜へと向けた。

 視線が交わった瞬間、空気が変わる。

 

 日夜はブレスレットのダイヤルに手をかけた。ゆっくりと、大きく回転させる。カチ、カチ、と小気味よい音を立てながらダイヤルが刻みを刻む。そして一周した途端音声が響く。

 

『チェンジ!ブースト!!』

 

 電子音が夜の路地に響き渡った。

 次の瞬間、日夜の周囲に黒い装甲の部品が次々と出現した。

 胸当て、肩甲、腕部、脚部――赤と黒に彩られたイグナイトの鎧の各部品が、まるで最初からそこに存在していたかのように現れ、日夜を中心にぐるぐると旋回し始める。

 

 それを見た魔獣が、雄叫びを上げた。先制を制するように、巨大な鉤爪が振り下ろされる。

 

 しかし旋回する鎧の部品がその一撃を弾いた。

 金属と爪がぶつかり合い、火花が散る。部品は弾かれることなく、なおも旋回を続けた。

 

 まるで盾のように。まるで意思を持つように。主の変身が完了するその瞬間まで、守り続けるように。

 魔獣が怯んだ隙に、日夜は静かに息を吸った。

 

 エンジンを鳴らすような重低音が路地の底から湧き上がる。機械と熱と、戦いの気配。ブレスレットが腕の上で赤く輝き始めた。

 

 変身の合図……体の奥底から何かが目を覚ます感覚…………人間の器に収まりきらない力が、出口を求めて蠢く感覚。少なくとも、心地よくはない感覚だ。

 

 日夜はそれを、いつものように迎え入れた。

 恐怖はない。もう慣れた。ただこれが父の望んだ息子の姿なのかなと……ほんの一瞬だけ考えて、すぐに手放した。今は関係ない。ただ、目の前の敵と戦うだけだ。

 

 そっと、構えを取る。

 そしてキメの一言。

 

「点火」

『イグニッション!!』

 

 変身音が鳴り響いた。

 独特なエンジン音が幾重にも重なり合い、路地の空気を震わせる。旋回していた部品が一斉に日夜へと向かい、機械の部品が次々と身体に吸い付くように纏わりついていく。

 

 赤と黒の装甲が音を立てて噛み合い、バイザーが降り、全身を覆い尽くした。

 

『BOOST! BOOST! イグナイト!! ブースト!!』

 

 路地の闇に、赤と黒の戦士が立った。

 イグナイトはゆっくりと首を巡らせ、魔獣を正面に捉えた。バイザーの奥で、日夜の目が静かに光っている。

 

「……さて」

 

 低く、くぐもった声が装甲の内側から響いた。

 

「速攻で行くかッ!」

 

 戦士、イグナイトの一声が目の前の魔獣に届くより早く……その拳は、魔獣へと撃ち込まれていた。

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