ド直球な陵辱エロゲ世界で何も知らずニチアサやってる奴 作:らっこ
日夜は学校ではどのような人物か?と聞かれれば……ほとんどの生徒は「知らない」とか「誰それ」と言った反応になるだろう。
彼には父はおらず母親も数年前に他界した……父の友人が資金面で援助してくれているが、それでも稼げる分は自分で稼がねばとバイトに明け暮れている。
故に学校では周りにあまり友達がいない……言ってしまえばボッチである。最近はイグナイトとしての戦いもあるからか余計にとっつきにくくなっている。
隙あらば机に伏せて眠る姿は「友達いないわけじゃねぇから!寝てるだけだから!」的なアピールと何も変わらなく映るだろう。その意図がないかと言われれば……まぁ、嘘になる。
言ってしまえば陰キャである。誰とも関われずに高校生活2年目に入ったそう言う状態の至って何処にでもいる普通の少年だ。
例えば、彼の隣の席にいる金髪の少女……名前は雷蔵夢見。厳つい苗字とは裏腹に、見た目はかなりギャルっぽい姿形をしている。そんな彼女は今日もクラスメイトと仲よさげに話している。
「マジ?エナってばあの彼氏と別れたの?」
「そーそー、なんか意気地なしなところがあってぇ私じゃ支えてあげらんないなぁって……」
「うわっ流石にモテる子はそんな服みたいな感覚で……」
傍から見ては上品な会話ではないが、年頃の娘の会話なんて大抵こんな物だ。少し場所を選んでない感じはするが……それを求める人間はこの教室には居ないだろう。
「えぇ、マジィ〜?」
雷蔵夢見……討魔士の中でも一大の規模を誇る一家であり、夢見はその当主でもある。まだ若いが、実力も十分……学校でのこのふしだらな姿を見てそう思うものはいないだろう。
優秀だったが亡くなった彼女の姉の代わりと言われもするが、彼女を討魔士と見る者にそんな事を考える者は居ない。
そしてそんな彼女も、まさか自分たちの追っている仮面の戦士が同じクラスにいる基本寝てるかバイトしてるような人間だとは、思ってもいないだろう。
「そう言えばさぁ、この間見つけたカフェのケーキがほんっとに……!!」
そんな会話の最中、夢見の笑顔がほんの一瞬だけ……止まった。
誰も気付かない。コンマ一秒にも満たない変化だ。クラスメイトには「ちょっとぼーっとした」程度にしか映らないだろう。
だが夢見の内側では、全ての感覚が別の方向を向いていた。
(……魔獣の気配……!)
薄い。ごく薄い。だが確かにある。鼻腔の奥を、血に似た何かがかすめていった。討魔士として研ぎ澄まされた感覚が、静かに警鐘を鳴らしている。
場所は近い。校舎の中、あるいはすぐ隣……或いは………
「ごめん、ちょっとトイレ!」
夢見は笑顔のまま立ち上がる、声のトーンも、表情も、さっきと何も変わらない。
それが夢見の討魔士としての訓練の実力の一端だった。日常と戦場を顔一つ変えずに切り替えられること、それは人の世に紛れる討魔士として必要なスキルだ。
そのまま廊下に出てしばらく歩き、人目が消えた瞬間、笑顔が消えた。
人目のない角に滑り込み、制服の袖に仕込んでいた術符を一枚、素早く起動する。認識阻害——周囲からの存在感が薄れる。これで多少動き回っても目立たない。
魔獣の気配の濃い方角へ意識を向ける。まるで痕跡をたどるように頭のなかで意識を集中させる……
(体育館……か)
昼休みの体育館は、基本的に無人だ。魔獣が身を潜めるには好都合な場所とも言える。夢見は小走りで廊下を進みながら、頭の中で状況を整理した。
学校という場所は最悪だ。一般人が多い。
逃げ場が少なく、万が一生徒や先生に目撃されれば、記憶阻害の術式を別途展開しなければならない……それは一般人の脳に負荷をかけることにもなる。
そんな真似をしないためには、できる限り素早く静かに片付ける必要がある。
夢見はすぐさま体育館へと侵入した。
扉が閉まった瞬間、夢見は制服の胸元に手を当てると、指先がそこに仕込まれた術符の束に触れる。
一枚を素早く引き抜き、己の体へ向けて起動させた。
そうすれば制服が溶けるように消え、代わりに現れるのは……白を基調とした薄手の戦闘スーツだ。
胸元は大きく開き、腰から太ももにかけてはほとんど布がない。
手足には軽量の装甲が噛み合わさり、長い金髪は戦闘の邪魔にならないよう、いつの間にか高い位置で結われている。
討魔士の装束だ。露出が多い、傍目には正気を疑う格好だが――――これが力の証であり、戦いの正装だ。
そして両腰のホルスターから、夢見は二丁の銃を引き抜いた。
銃、と呼んでいるが通常の火器ではない。魔力を圧縮して弾丸として射出する、討魔士専用の術式兵装だ。引き金を引くたびに夢見の体内の魔力が銃口へと集束し、雷の如く目に見えない速度で撃ち出される。
近距離の格闘を得意とする討魔士が多い中で、夢見はこの二丁拳銃による中距離の制圧戦を主戦術とする。手数の多さと機動力――――それが雷蔵夢見の戦い方だ。
両手の銃を軽く回転させ、夢見は目の前の魔獣を正面から見据えた。目の前の魔獣は副腕を備えた2m級の魔獣………肌は艷やかに光り、気味が悪く映る。そんな魔獣に、夢見は静かにつぶやく。
「……キモっ……」
その呟きに、恐怖はなかった。
次の瞬間、夢見は動く。
「雷閃連射!!」
両銃が同時に火を噴いた。魔力の弾丸が雷光のように奔り、副腕型の魔獣の胴体へ連続して叩き込まれる。一発、二発、三発……着弾のたびに魔獣の体表が焦げ、黒い煙が上がった。
手応えがある。距離さえ保てば、確実にダメージが通る感じだ。これならいくらでもやりようはある。
(よし……距離を保てば勝てる!)
夢見の戦術はシンプルだ。二丁拳銃の手数と機動力で相手を翻弄し、近づかせない。特にこういう筋力系や物理系統は能力がいくら厄介でも、届かなければ意味がない―――それが夢見の鉄則だった。
距離を詰めようと魔獣が唸りながら前進してくる。夢見は後退しながら撃ち続けた。一歩引いて二発撃つ。また一歩引いて三発撃つ。
常に間合いを計りながら、魔獣の間合いにははいらない……体育館のステージが背後に迫った瞬間、夢見は迷わず跳んだ。
軽やかにステージへ飛び上がり、今度は高所からの角度で弾幕を叩き込む。上からの射角は対処しづらい、魔獣が腕を盾にしようにも、限度が出てくるのだ。
魔獣の腕が弾丸を払おうとするが、追い切れない。複数本の腕で払える速度を、二丁で超えているからだ。文字通り手数が圧倒的に夢見の方が多い。
被弾を重ねた魔獣が、苛立たしげに吠えた。その声には焦りがある。思い通りに動けない苛立ちが、唸り声の質に滲んでいた。
(よしっ!焦ってる!このまま……!!)
夢見は冷静に分析しながら、次の手を打った。
「もっと鋭く……!!雷閃貫通!!」
魔力を一点に極限まで圧縮する。通常の連射とは比べものにならない密度の一発だ。狙いは肩口——腕の付け根、装甲の薄い継ぎ目を正確に射抜く。
副腕の一本がぐらりと揺れた。根元の接合部が焦げ、動きが明らかに鈍くなった。
(よし!!このまま削り切る!)
夢見はステージから飛び降りた。
さすがにこのまま高所に留まり続けるのは的になりやすすぎる。安置にとどまり続ければ隙ができる……動き続けることが夢見の強さだと言うことも彼女は理解している。
床を蹴り、左右に揺さぶりながら撃ち続ける。右へ跳んで三発、左へ転がって二発、再び跳び上がって一発。魔獣は追いきれていない。
四本腕はそれぞれが独立した脅威だが、逆に言えば動かす対象が多い分だけ、意識が分散する。
夢見はそこを突いていた。
右の腕に意識を向けさせながら、左から弾を叩き込む。左に反応した瞬間、今度は正面へ貫通弾を放つ。
「雷閃徹甲!!」
左右の銃を同時に、交差する軌道で放った二発が、魔獣の胸部で重なって炸裂する。
被弾を重ねるたびに魔獣の体が傾き、動きに精彩がなくなってきた。副腕の動きも、最初より明らかに遅い。このまま押し切れる―――――夢見がそう確信する。
魔獣が、動きを止めた……その瞬間だった。
「よし……行け……っ!?」
危機を察知した夢見は咄嗟に身を捩る。
すると魔獣の副腕が、突然伸びたのだ。関節の限界を無視したような、異常な角度からの伸縮だ。それはまるで触手のようにも見えた………他の副腕は躱せたが……もう一本が、既に夢見の首元まで迫っていた。
速い。反応できない。
(捕まる……!!)
夢見が息を呑んだ、その瞬間。
『ブーストイグニッシャー!!』
『マキシングブースト!!GO!GO!』
タイヤのような円形の斬撃が魔獣の副腕を切断した。
床に落ちる肉厚な腕に黒い体液が飛び散る。夢見の首元まで迫っていた魔獣の手が、力なく宙を掴んで文字通りに消えた。
「っ……!」
夢見は咄嗟に後退し銃を構え直す……あの斬撃により舞い上がった砂埃が、ゆっくりと晴れていった。
真正面の扉から入ってきたのか、外の昼の光が流れ込んでくる。そしてその穴の向こうから―――重い足音が、一歩、また一歩と近づいてきた。
鎧が重なり合う、金属の音。
砂埃を割いて姿を現したのは全身を赤と黒の装甲に包んだ戦士だった。
バイザーの付いたヘルメット。腰の複数のホルスター。そして右手に握られているのは、バイクのフロント部分を模した異形の剣。
どこかで見たような、しかしどこで見たのか思い出せない意匠……その戦士は体育館の中を静かに一瞥してから、魔獣へとバイザーを向けた。
夢見は息を呑んだ。魔力がない。霊力でもない。なのにあの斬撃は確かに副腕を断ち切った。
この気配……昴から聞いた。討魔士でも霊術師でもない、正体不明の対魔戦士。何者にも分類できない、仮面の戦士――
「貴方……まさか、イグナイト……!?」
「……その名で呼ばれるなんて、俺も漸く名が売れてきたのかねぇ」
低く、くぐもった声がバイザーの内側から響いた。どこか気の抜けた、しかし妙に落ち着いた声だ。
「なんてな」
剣を軽く構え直し、イグナイトは魔獣へと真っすぐ向き直った。副腕を一本失った魔獣は、それでも残る三本の腕を広げて威嚇している。
体中に夢見の銃撃の跡が刻まれているが、戦意はまだ折れていない……それどころか、切断された副腕はすぐさま再生し元に戻ろうとしているではないか。
すると、イグナイトは夢見にそっと問いかけた。
「折角だ、ここは助け合いの精神で行くとしねぇか?再生持ちは流石にお互いに荷が重いだろ?」
「っ!……得体の知れないやつと組む気はないわよ……お互い勝手にやりましょ」
それは、夢見流の強がりだ。イグナイトはそれならそれでいいというように頷く………もっとも、その内心日夜は……
(またあの2人よりも露出高い変態が出てきたなあ……つか、クラスメイトじゃんかよ……)
なんてことを考えていたのは……墓場まで持っておくべき秘密だろう。