未来のゴブ太、過去に逆行する!   作:ポップ

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【第1話】目覚めたら太古の森。そして最強の魔王に絡まれたっす

「……ふごっ!? ふわぁ〜……よく寝たっす」

 

ゴブ太が目を覚ますと、そこは鬱蒼とした森の中だった。

最後に記憶にあるのは、魔国連邦(テンペスト)の会議室。リムルたちが何やら難しい顔で『時空の歪み』について話し合っていた横で、ついウトウトしてしまった……ところまでは覚えている。

 

「やべっ! またハクロウの爺ちゃんに木刀でボコボコにされるっす! ……あれ?」

 

飛び起きて周囲を見渡したゴブ太は、首を傾げた。

舗装された綺麗な道路も、立ち並ぶ立派な建物も、美味しそうな匂いが漂う食堂もない。あるのは、異常なほど巨大な樹木と、むせ返るような濃密な魔素(マ素)だけだった。

 

「ここ、どこっすか……?」

 

ゴブ太が首をポリポリと掻いていると、目の前に巨大な影が落ちた。

見上げると、そこには体長50メートルはあろうかという、禍々しいオーラを放つ古代の恐竜のような魔物が涎を垂らして見下ろしていた。現代のジュラの大森林では絶対に見かけない、特A級の災害級魔物(カラミティ)に匹敵するであろう原始の獣だ。

 

『GYAAAAROOOOO!!』

 

「うひゃあっ!? な、なんすかお前! テンペストの周辺で暴れたら、第一秘書のシオンさんに消し炭にされるっすよ!?」

 

古代の獣はゴブ太の警告など聞く耳を持たず、巨大な顎を開いて丸呑みにしようと襲いかかってきた。

 

「しょうがないっすね……ちょっと大人しくしてもらうっすよ」

 

ゴブ太は腰に帯びた刀の柄に手をかけた。

普段なら逃げ回るところだが、相手の動きが、未来で散々やり合ったヒナタやハクロウに比べて、あまりにも遅く、隙だらけに見えた。過去の魔素が濃いから強くなったわけではない。未来のテンペストで死線(主に幹部たちのしごき)を潜り抜け続けた結果、純粋な戦闘力がこれ程までにとんでもない次元に到達してしまっていたのだ。

 

「――朧・流水斬っす」

 

チャキッ、と刀を少しだけ鞘から抜き、また戻す。

その瞬間。

 

ズパァァァァァァァァンッ!!

 

古代の巨大獣は、何が起きたかも理解できないまま、その巨体を真っ二つに両断されていた。それどころか、ゴブ太の剣圧は背後の山脈をも切り裂き、地形を完全に変えてしまっていた。

 

「……え? 山が真っ二つになったっす。いやいやいや、いくら俺でも普通に振っただけっすよ!?」

 

ゴブ太は冷や汗をかきながら周囲を見渡した。

空には見たこともない星座。存在しないはずの古代の魔物たち。どうやら、とんでもない昔に飛ばされてしまったらしい。

 

「とりあえず、腹が減ったっす。シュナ様の弁当でも食べるっすかね」

 

ゴブ太が『胃袋(収納スキル)』からおにぎりを取り出して頬張っていると、不意に背後から声がした。

 

「おい。お前、面白い力を持っているな。ゴブリン……いや、ホブゴブリンか?」

 

振り返ったゴブ太の目に飛び込んできたのは、燃えるような真紅の髪を持つ美しい男。そして、その後ろに控えるメイド服の二人の女性だった。

ゴブ太はその顔に強烈に見覚えがあった。未来のテンペストで何度も見かけた顔だ。

 

「あれっ? ギィさんじゃないっすか! 奇遇っすね、こんな森の奥で。そっちにいるのはミザリーさんとレインさんっすよね。いつも美味しいお茶、あざっす!」

 

ゴブ太は呑気におにぎりを咀嚼しながら、ペコリと頭を下げた。

 

「……は?」

 

その瞬間、ギィ・クリムゾンの顔に明らかな動揺が走った。

背後のミザリーとレインも、普段の無表情を崩して目を見開いている。彼らはまだこの時代において、人前に姿を現すことすら稀な存在だったからだ。

 

「お前……なぜ俺の名を? いや、それ以上に、その後ろの二人の名を知っている奴など、この世に数えるほどしかいないはずだが」

 

ギィの赤い瞳が、スッと細められる。一歩間違えれば即座に首が飛ぶような威圧感。だが、ゴブ太はあっけらかんと答えた。

 

「いや〜、実は俺、未来から来ちゃったみたいなんすよ! ギィさんがいるならテンペストの場所くらい分かるっすよね?」

 

「未来から……? テンペスト……?」

 

「俺の主は『リムル様』っていうスライムで、めっちゃくちゃ強くて優しくて最高なんすよ! ギィさんも未来じゃリムル様と仲良しで、よくうちの国に遊びに来てケーキ食ってるっすよね」

 

普通なら狂人の寝言と切り捨てるが、ギィは目の前のゴブリンが自分たちの名を知っている事実を無視できなかった。

 

「……お前からは嘘の匂いがしないな」

 

「嘘なんてつかないっすよ! あ、そうだ。そっちにはヴェルザードさんもいるんすよね? ヴェルザードさんが凍らせるから、未来じゃギィさんの領土はずーっと氷点下で寒くてたまらないっすよ」

 

「——ッ!」

 

その言葉で、ギィはゴブ太の話を完全に信じた。

『白氷竜』ヴェルザードが今、自分の城に居候していることなど、世界で誰も知るはずがないのだ。

 

「クハハッ! アハハハハハハッ!! スライムが俺と同格の魔王になるだと? しかも、こんなふざけたゴブリンを従えるような化け物が誕生するのか! 傑作だ!」

 

ギィは面白そうに口角を上げた。退屈していた太古の時代に現れた、未来からのイレギュラー。

 

「いいだろう、お前の話は信じてやる。お前のその『リムル』とやら、ひどく興味が湧いたぜ。帰る方法が分かるまで、俺の城で面倒を見てやろうじゃないか」

 

「本当っすか!? さすがギィさん、太っ腹っす! あ、ご飯は三食お肉つきでお願いしたいっす!」

 

こうして、太古の時代に迷い込んだゴブ太は、最古の魔王ギィ・クリムゾンの城に居候することになったのだった。

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