問題児たちが異世界から来るそうですよ? ~ラスト・アーク~   作:三島溪山

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第十二話

 アルゴールによって生み出された蛇蠍擬きの魔物が数多の徒党を組んで十六夜に襲い掛かる。

 

 「十六夜さん!」

 「はーーーはっはっはっ!“ノーネーム”如きが調子に乗るからだ」

 

 黒く染まった十六夜に悲痛の声を上げる黒ウサギ。すると突然右手が振り上がる。

 

 「―――宮殿を壊せばこの邪魔な蛇は消えるよな?」

 「ハハハハハ―――……はっ?」

 

 ルイオスの馬鹿笑いが止まると十六夜の右手が振り下ろされる。黒き魔物は霧散し、宮殿全体の罅が一気に大きくなる。宮殿は地震で崩れる建物の様に無残な姿と成り果てた。五階建てが三階建てになってやがる。

 

 「ば、馬鹿な……宮殿内と違って防御用の結界が張られてたんだぞ……奴の拳はサンガを打ち砕くのか!?」

 

 同じく空を飛んで難を逃れたルイオスが呟く。まあ敵だと恐ろしい事この上ないよね。

 

 「ネタはこれだけか?」

 「……もういい。終わらせろアルゴール」

 

 屈辱に塗れていた顔が真顔に戻り呟く。アルゴールはその呟きで再び褐色の光を開放する。あれが怪物・メドゥーサの目と同じ効果を持つ石化の光。俺はかき消せるが十六夜は……?

 

 「―――……カッ、今更しゃらくせえ真似してんじゃねえ!!」

 

 石化の光を踏み潰した。そりゃもうバリバリと。地面に出来た霜を踏み潰すように簡単にだ。しかし、あれはギフトから生成されたから出来たものか?なら十六夜の“正体不明(コード・アンノウン)”はギフトを破壊できて身体能力を上げる二つの能力が両立したギフト……?滅茶苦茶だなおい。

 

 「馬鹿な!?」

 「星霊のギフトを、破壊した―――!!??」

 「ねえジン君。ちょっと疲れたから下降りるね」

 「あ、はい」

 

 驚いてる二人を余所に下降していく俺。一週間これの練習していたからばっちりだぜ。

 

 「さあ、続けようぜゲームマスター。“星霊”の力もっと見せてみろよ」

 

 元気があっていいですねえ。お兄さん(22歳)もう疲れましたよ。

 

 「フフフ……ハハハ……」

 「……ルイオス様?」

 「あいつの言う通りだな……アルゴールがここまでやられるなんて……」

 

 ルイオスの様子がおかしい。さっきから俯いてブツブツと呟いている。キメてるの?

 

 「フフフ……」

 「何か様子がおかしいな……」

 「もう、いいや。吸血鬼なんかどうでもいい……けどお前等は殺す……!アルゴール、開放しろ!」

 

 ルイオスが叫ぶとアルゴールの拘束具が解ける。瞬間、俺の肌は危険を察知した。

 

 「ジン!黒ウサギ!」

 「え、ちょ……!」

 「きゃあっ!」

 「マジックシールド!」

 

 ジンと近くにいた黒ウサギを抱えて魔法の膜を何重にも前方に張る。一週間前に防いだ光より何倍もの濃度を持つ石化の波動がゲームフィールド全体を包み込む。

 

 「なっ……はな……!?」

 「くっ……!?」

 

  魔法の膜の周りは瞬く間に石化していった。発光が止むまで気が気でなかった。耳は心臓の音だけが占領している。

 

 「はあ……はあ……」

 「謹臣さん……?これは一体……」

 「アルゴールの石化、だろうな。拘束具が外れた瞬間走馬灯とか見えそうだったぞ」

 「拘束具……まさか!」

 

 魔法の膜が消える。眼前には一人の石像と倒れた十六夜、叫ぶアルゴール、ゲームクリアを示す周囲の変化だった。ズタボロになった白亜の宮殿の跡が無くなっている。多分あのステージはゲーム時のみに顕現させているのだろう。

 

 「アルゴールの反乱?しかし、何故拘束具が……」

 「多分だが、拘束具自体はルイオスの意思で外されたのだろう。無理矢理引き千切ったのならアルゴールの身には跡が付く筈だ」

 「そんな馬鹿な!?ルイオス様の実力では拘束具なしでアルゴールを制御出来ない筈です!」

 「ルイオスは制御できる自信があったようだな。それか……」

 

 誰かに教唆されたか。ボンボンなんて世間知らずのアホだから乗せ易いもんな。だが、何故十六夜は倒れているのか。アルゴールの身体能力は十六夜を越えている……?

 

 「取り敢えずルイオスが石化したから戦闘不能になった。結果“ノーネーム”の勝利になった。やったね、妙ちゃん!」

 「誰ですか妙ちゃんって!」

 「「だが、拘束を解かれたアルゴールの暴走は止まらなWRYYYYYYYYYYYYYYYYY!」」

 「ジン坊っちゃんまで!?」

 

 ちょっ待てよ!

 

 「これは不味いのデス……治療用ギフトと白夜叉様を」

 「それはもう(いろんな意味で)遅いみたいだぜ」

 

 叫びを止めたアルゴールはこちらに上空を見る様に示唆する。つられて上を向くと黒い“契約書類”が一枚だけ落ちて来た。

 

 『ギフトネーム名“ALGOL in STARNIGHT”

 

 ・プレイヤー一覧 蘭 謹臣

          黒ウサギ

          ジン=ラッセル

 ・ホストマスター側 勝利条件 全プレイヤーの殺害、及び石化。

 ・プレイヤー側 勝利条件 一、ホスト側のゲームマスターを打倒する。

              二、アルゴルの星を照らせ。

 

 宣誓 上記を尊重し、誇りと御旗とホストマスターの下、ギフトゲームを開催します

 “アルゴルの悪魔”印』

 

 魔王の印である黒い“契約書類”はこの場を海に囲まれた孤島へと変貌させた。目の前にアルゴールは居ず、圧倒的な存在感を放つ洞窟と一組の武具があった。

 

 「黒く輝く“契約書類”……!!」

 「オワタ\(^o^)/」

 「現実逃避しないでくださいよ!」

 

 えー?だって十六夜がいないじゃんじゃん?

 

 「駄目だ……もうお終いだ……」

 「ジン。一つだけ言っておくが勝利条件を満たす謎はもう解いている」

 「「え?」」

 

 さっきまでの馬鹿顔を消し、真面目顔で説く俺。それにジンと黒ウサギは驚愕に満ちた顔を見せた。

 

 「ただ、それを実行出来るかは別問題なんよね」

 「どういう事ですか?」

 「まず、俺達の勝利条件は二つある。一つは文字の通りだが、二つ目は何かを示唆している」

 「“アルゴルの星を照らせ”ですね」

 「これはそもそも“アルゴルの星とは何ぞや?”という点から解決の糸口が見られる。十六夜に始まる前に聞いたが、アルゴルはペルセウス座のペルセウスが持つゴーゴンの首に位置するらしい」

 

 実際注意深く見た事無いから分からないが、自称知能派の十六夜なら合ってるだろう。

 

 「そう見ると星座と同じ状況にすればいい訳だ」

 「同じ状況?……まさか!」

 「アルゴールの身体と頭を切り離し、首を手に持てばいい。こうする事によって星座と同じ状況が作り出せる。それに上を見てみろ」

 「上……ああ!?ペルセウス座が!」

 「討たれる前の空だからペルセウス座がない事も推測の発端になる。だから俺達がペルセウスになって星座になればいい」

 

 結構はちゃめちゃな推測だが我らの頭脳がいないのでここらが限界となる。元々十六夜がいないから拘束具が取れた元魔王と張り合うなんて無謀!ダメで元々だな!

 

 「問題は出来るかどうかだ。あれを相手取るなんて無理ゲーを通り越してクソゲーだぜ?」

 

 脳裏に浮かぶは先程の石化の波動。十六夜が簡単に踏み潰したとはいえ、自分達にそれが出来るかと言われれば出来ないと返すだろう。それにパワーアップしている節もある。同じ光景を思い浮かべたのかジンも黒ウサギも苦い顔をしている。

 

 「正直な話、十六夜だから圧勝出来た。俺じゃあ強化&狂化のアルゴールに十分持つか」

 「謹臣さん……」

 

 俺に十六夜みたいなずば抜けた身体能力はない。魔法でステータスはあげられるがいつまでも持つという訳ではない。効果の切れ目が怖すぎる。あれは一人用だから却下だし……。

 

 「「う~ん……」」

 

 なにも浮かばない。ただ、制限時間がないのが怖かった。

 

 

 

 *

 

 

 

 何時だろうか、(アルちゃん)が喋らなくなったのは。

 

 何時だろうか、(アルちゃん)が束縛されたのは。

 

 何時だろうか、(アルちゃん)が人間に使役されるようになったのは。

 

 何時だろうか、(アルちゃん)が解き放たれるのは―――

 

 でも、それは(アルちゃん)じゃない

 

 ―――だから、誰か助けて。

 

 

 




一つ言っておきますがアルゴールはまだギリシャ神話に属しています。なのでペルセウスの拘束を取ったとしても本来の8割いけばいい方(という設定)です。まあ星霊の面があるからそんな簡単に殺せるわけではないですが霊格が劣化している以上、まだ楽でしょう。

※四月十七日 大幅改定しました。
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