問題児たちが異世界から来るそうですよ? ~ラスト・アーク~ 作:三島溪山
黒ウサギは勢いそのまま街道の向こうにある浅い水道に突っ込んでしまった。悲鳴が遠くなっていく様を見る店員と俺達。水飛沫が上がった後、白髪の少女が黒ウサギに抱き着いているのが分かった。
「……おい、この店にはドッキリサービスがあるのか?流石超大手の商業コミュニティだな」
「ありません」
「……違うのか?」
「違います」
真剣な表情で返す店員と真剣な表情で聞く十六夜。割とマジだから困る。
「……箱庭って凄いね」
『お嬢!?』
「春日部さん!?」
「……箱庭の名誉の為に言っておくがもっと凄いものはある。このようなもので感心するのは止めよ」
春日部は感心するが久遠と猫はそれに驚嘆する。そこを白雪姫が訂正するがあまり効果はなさそうだな。しっかりと毒されている。
三人と一匹の戯れを余所に何故か白髪の少女が十六夜へ飛んでいく。十六夜はそれを足裏で踏みつける。
「てい」
「ゴブッ!お、おんし、飛んできた初対面の美少女を足で踏みつけるとは何様だ!」
「十六夜様だぜ?以後よろしく和装ロリ」
踏みつけられた美少女(自称)に自己紹介する十六夜。呆気にとられた久遠だが気を取り直して美少女(自称)に話しかける。
「貴女がこの店の人?」
「おお、そうだとも。この“サウザンドアイズ”の幹部様である白夜叉様だよご令嬢。仕事の依頼ならその発育の良い胸一揉みで引き受けるぞ」
「オーナー、ボスが怒りますよ」
店員さんは額に筋が浮かぶまで怒っている。分かり易い『怒ってますよ』アピールだ。
黒ウサギは水路から出て濡れた服を絞りながらふと呟く。
「うぅ……まさか私が濡れる事になるなんて」
「……あほ」
「馬鹿」
『まぬけですぜ』
哀れ黒ウサギ。
反対に濡れても気にしない白夜叉は俺達を見渡して笑う。
「ほほう、お主達が黒ウサギの新しい同士か。白雪もいるではないか……という事は黒ウサギが私のペットに」
「なりません!どういう起承転結でそういう事になるのですか!」
ピンクになりかけているウサ耳を逆立てて起こる黒ウサギ。白夜叉はそれを軽く流して店に入ろうとする。
「私に話があって来たのだろう?なら続きは店の中で聞こうではないか」
「オーナーよろしいのですか?規定では“ノーネーム”お断りの筈」
「知人ぐらい招いてもよかろう。責任は私がとるから入れてやってくれ」
そう言われ、不承不承と戸を開く店員。彼女からすれば規則を守っているだけなのにこの扱い。不機嫌になるのも仕方がない。ぞろぞろと白夜叉に連れられていく五人と一匹の後ろの位置していた俺はいったん立ち止まる。
「……何でしょう?」
「まあ……何だ。あんたも大変だな」
「……早く、慣れたいものです」
その声は酷く切実なものだった。
*
その後は二言ぐらいで会話が終わり、店前を後にする。何事もなかったかの様に後ろで合流し、五人と一匹と一緒に和室に案内される。
「店は生憎閉めたのでな。ちと狭いが勘弁してくれ」
戸を開けるお香の匂いが漂い、鼻孔をくすぐる。白夜叉が腰を下ろしたのを見て俺達も一斉に腰かける。
「まだ正式な自己紹介はしてなかったの。私は四桁の門、三三四五外門に本拠を構える“サウザンドアイズ”幹部の白夜叉だ。黒ウサギとは“ノーネーム”になった後にちょくちょく手を貸した縁で知り合った。まあ器の大きい超絶美少女だと思ってくれ」
「はいはい、そうですね~……」
適当に返す黒ウサギ。春日部は何か引っかかったのか首を傾げている。
「その、外門って何?」
「まだ説明していませんでしたネ。外門とは箱庭の階層を示す示す外壁にある門の事です。数字が若い程都市の中心部に近く、個人の強さやコミュニティの強さもその数字に比例して強くなっていきます。特に三桁台は文字通り桁違いなのですヨ」
そう言って上空から見た箱庭の地図を見せられる。箱庭は七つの層に分けられていて内側に行くほど数字が若くなっているのが分かる。
「タマネギ、かな?」
「いえ、これはバームクーヘンではないかしら?」
「そうだな。バームクーヘンに見える」
真面目な話だというのにボケる三人の言動に肩を落とす黒ウサギ。白夜叉はその言動を聞いて笑みを浮かべている。
「私もどちらかと言えばバームクーヘンじゃな。今いる所はその一番薄い皮に当たる。更に東西南北に分けるとここは東側の薄い皮の場所であり、世界の果てに面しておるの。世界の果てにはコミュニティに属していない強大な力を持つ幻獣が住んでおる―――白雪の様にな」
白夜叉は白雪姫に視線を向ける。顔は笑っているが何か底知れない迫力がある。
「白雪よ。お主が隷属を選ぶとは、誰と、どんなゲームをしたのか?」
「
「道理じゃな。しかし……直接倒したとなればその二人は神格持ちの神童か何かか?」
「いえ、黒ウサギはそうは思いません。神格持ちなら一目見ただけで分かりますから」
湖で白雪(さっき、廊下で白雪でいいと言われた)に聞くと神格とはその種の成り得る最高ランクにまで存在を成長させるギフトらしい。他のギフトもそれによって強化されるとか。
自分としては神の眷属として個人の強度を上げるギフトだと思っていたんだが間違いだったな。神格ってのは想像を超えたギフトだ。誰もが手に入れたいっていうのも分かる。
「白夜叉様は白雪さんとはお知り合いで?」
「何百年前の話になるがの。神格もその頃与えてやったものじゃが、精進が足らなかったようだの」
「へえ……てことはこいつよりもお前の方が強いのか?」
「当然だ。東側の
「じゃあ貴女のゲームをクリアすれば私達のコミュニティは東側最強の称号を手に入れられるのね」
「無論、そうなるのう」
久遠と白夜叉の問答に十六夜、久遠、春日部の三人は闘争心をむき出しにする。気付いているのか白夜叉は声高らかに笑う。
「抜け目ない童達だ」
「え、ちょ、ちょっと御三人様!?」
慌てる黒ウサギを制する白夜叉。
「最強の名を恐れぬ精神は称賛に値する。だがのう―――勝負の前に確認しておく事がある」
「何だ?」
着物の裾からカード状の何かを取りだし俺達の前に掲げる。カードに印された双女神の紋章が目立ち、全体的に輝く。
「お主らが挑むのは“試練”か―――それとも、“決闘”か?」
一瞬、世界の壁が引き離されたように感じ、眩い光につい目を閉じてしまった。
*
次に目を開けた時、そこには通された和室じゃなく、白い雪原と凍る湖畔が広がる風景が目の前に映っていた。
「なっ……!?」
……箱庭に来た時も驚いたがこれはその比じゃない。人が理解できる範疇を越えている!
「ここは私が持つゲーム盤の一つ。“白き夜の魔王”の名を持つ太陽と白夜の星霊である私に相応しい場所だろう?」
「水平に回る太陽とこの景色がお前の力、正体を現しているって事か……!」
白夜叉……白夜と夜叉か。永遠に照らす太陽と森林に棲む神霊でもある鬼神。星と神の力を併せ持つ魔王。しかし、星霊としか言ってないのは神霊が星霊より劣るという事か……となると夜叉という神格の部分で力を制御している可能性もある。
「さて、もう一度問おうかの。遊び程度の“挑戦”か?それとも命を懸けた“決闘”か?」
「……っ」
三人は即答出来ないだろう。勝ち目がなくとも簡単に負けを認めるなんてプライドが許さない。
静寂が続く中、それを破ったのは十六夜だった。
「参った。降参だ白夜叉。大人しく試練を受けてやるよ」
「ふむ、賢明な判断かの。他の童達も同じか?」
「……ええ、今回はそうしましょうか」
「私も同じ」
「……“決闘”だ」
俺も十六夜達に続いて答えを出す。
実は十六夜達が躊躇う中、俺もこの答えを出すのに散々迷っていた。勝てない訳ではない。星霊と言えど人型なればいくつでも攻略法が存在する。ただ強度が違うだけに過ぎないのだから。ただ、不安なのが地力と経験の差だ。
「ほう……本気か?」
「謹臣さん!?」
「主!?」
「ここまで来て引き下がるのは性に合わないっしょ。それに……負ける気なんてないから」
「ほう……面白い事を言う。だが、先にこやつら三人の試練を始めさせてもらおうかのう」
白夜叉が再びカードを取り出す。すると虚空から輝いた羊皮紙が現れる。
『ギフトネーム名“鷲獅子の手綱”
・プレイヤー一覧 逆廻 十六夜
久遠 飛鳥
春日部 耀
・クリア条件 グリフォンの背に跨り、湖畔を舞う。
・クリア方法 “力”“知恵”“勇気”の何れかでグリフォンに認められる。
・敗北条件 降参か、プレイヤーが上記の勝利条件を満たせなくなった場合。
宣誓 上記を尊重し、誇りと御旗とホストマスターの名の下、ギフトゲームを開催します
“サウザンドアイズ”印』
以上の文が十六夜達の試練なのだろう。さて、俺の決闘は如何なるものか。
パズドラのアテナ降臨12回くらいコンティニューしてやっとクリアできた(笑)スターバースト?酷過ぎんよ……
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