問題児たちが異世界から来るそうですよ? ~ラスト・アーク~   作:三島溪山

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この物語は基本シリアスはありません。


第五話

 春日部が例の試練を受けている隅っこで俺は戦闘の準備をしていた。すると十六夜と白雪がこっちに寄ってくる。

 

 「春日部の方は見なくていいのか?」

 「お嬢様が見てるから大丈夫だろ」

 

 十六夜はいつもの軽口だが、白雪は少し震えている。

 

 「……勝てるのか?」

 「まあ……相手がどこまで抑えられているか、だろう」

 「?」

 「太陽だけで最強の地位をあずかれるのに夜叉と言う余計な要素を持っている白夜叉は多分弱体化していると思う」

 「星霊の格を神格で落としてるって事か?」

 「そういう事。本気でも全力じゃないのさ」

 「へえ……」

 

 それで地力の差は多少埋まる。ただ、正攻法ではまだ勝てない相手だ。

 

 「……」

 「どうした白雪?」

 「……私がまだ一介の蛇だった頃、主神(しろやしゃさま)に喧嘩をふっかけた事がある」

 「ヤハハ、命知らずだ」

 「さっきまでの小僧達と一緒で血気盛んなお年頃でな。結果の方は勝負にすらならなかったが。確かに主の言う通り、主神(しろやしゃさま)は仏門に下る事で力を抑えている。本来この階層で“階層支配者(フロアマスター)”なんぞしている実力の持ち主ではないのだ」

 「……まあ、そうだろうな」

 

 理由は知らんが彼女なりの理由があるんだろうな。

 

 「油断なんてものは一切持たない方が良い。それが敗北に繋がりましょう」

 「分かってる……十六夜」

 「あ?」

 「俺が右手を振り上げたら暫く鼻を押さえて息をするな。久遠や春日部にもそう言っとけ」

 

 十六夜は首を傾げるが、了解の意思を示す。白雪も首を縦に振る。

 ふと、久遠の方を見るとグリフォンがゴールしている。どうやら春日部はクリアしたみたいだ。次は俺の番だな。

 

 「―――さて、次はお主の番じゃの。ほれ」

 

 『ギフトネーム名“太陽の導き”

 

 ・プレイヤー一覧 蘭 謹臣

 

 ・クリア条件 白夜叉を打倒する。

 ・クリア方法 白夜叉の気絶、殺害、降参の何れかを満たす。

 ・敗北条件  降参か、プレイヤーが上記の勝利条件を満たせなくなった場合。

 

 宣誓 上記を尊重し、誇りと御旗とホストマスターの名の下、ギフトゲームを開催します

 “サウザンドアイズ”印』

 

 「先手は譲ってやるぞ」

 

 白夜叉の心優しいお気遣い(ちょうはつ)にあえて乗る。素早く印を結び、魔法を唱える。まずは白雪には使わなかった魔法を味わってもらおうか。

 

 「アースクエイク!」

 「む!?」

 

 地面が隆起し、鋭く尖った複数の岩が白夜叉を貫こうとするが余裕なのか舞う様に避けている。

 

 「ほほう……魔法か。練度はある」

 「避けておいてよく言う」

 「カカ!さて、こちらからも仕掛けるとしよう」

 

 白夜叉が軽く左手を払う。払った手から出た巨大な火球が俺に向かってくる。視界いっぱいに入る火球を避ける。同時に腰の剣を抜き払うと甲高い音が鳴り響く。

 

 「読んでいたか」

 「おい、何だその扇子。激突音がおかしいぞ」

 「それは秘密だよ!」

 

 今度は右手で火球を繰り出してくる。至近距離での火球をすれすれで避けて後方に下がると同時に魔法を唱える。

 

 「ダイヤモンドダスト!」

 

 巨大な氷柱が白夜叉の頭上へ降り頻る。四方八方から襲い掛かるが炎の膜で溶かされてしまう。こりゃ長期戦になりそうだな。

 

 

 

 *

 

 

 

 俺が予期した通り、ギフトゲームは長丁場になった。炎の膜で軽減された魔法では大したダメージにはならない。こっちは何とか相手の攻撃を避けているだけだ。

 それにこんなに戦った経験がない。数時間を体感したような戦いで確実に俺の体力は未知の領域に入っていた。

 

 「この程度かの?威勢がよかったのは最初だけか」

 「……その言葉後悔するなよ!」

 

 今、白夜叉は余裕気に笑う。両者目立った外傷はないが、息が上がってる俺に対して白夜叉は涼しい顔をしている。余裕なのもしょうがない事だ。だが、その余裕が命取りだ!

 

 「エアブラスト!」

 

 俺は白夜叉を中心に竜巻を発生させる。暴風の壁で炎の膜を取り払い、視界を封じる。白夜叉に接近した後、十六夜への合図に右手を振り上げ、左手で袋からある物を取り出す。

 

 「喰らえ!」

 「ん……!?」

 

 竜巻の終わり時を狙って白夜叉の顔面に取り出した花を押し付ける。その衝撃で花は花粉を吐き出す。すると白夜叉の顔から花粉症の症状が現れ出す。

 

 「う……うぇあああああああ……!!」

 「……花粉症に酷似したアレルギー疾患だ。数秒で全水分を排出させるぞ」

 

 すると白夜の世界が崩壊する。白夜叉の力が限界なのか負けを認めたのか分からないがすぐに処方しなければならないな。

 

 「白夜叉様!?」

 「蘭君!?」

 「十六夜、水樹を貸してくれ」

 「主……?」

 

 十六夜から水樹を借りる。白夜叉に抗体を撃ち込み、水樹が生み出す水を白夜叉に飲ます。

 

 「和装ロリに何をしたんだ?」

 「花粉を移した。ただ、全水分を数秒で排出させる恐ろしいアレルギー疾患になる」

 「全水分って……」

 「気が付いたか春日部?人間は体内水分の20%を失うと死ぬ。人型である星霊も同じ体をしているなら例外じゃない」

 

 驚愕する久遠と春日部。対照的に十六夜と俺は淡々としている。何故そんな態度が取れるのか分からないのか久遠が声を上げる。

 

 「何でそんなに平気そうなの……?」

 「俺の周りは命の取り合いなんて日常茶飯事だった。要は慣れだ、慣れ。人間はどんな劣悪な環境にも順応出来るもんだ」

 「だからってこれはやりすぎです!」

 「……止めよ黒ウサギ」

 「白夜叉様!?」

 

 死の彷徨いから帰ってきた白夜叉が起き上がる。

 

 「これは決闘、それにギフトゲームだ。プレイヤーの力、知恵不足は勘定に入らない。逆もまた然り。黒ウサギもそれくらい知っているだろう?」

 「う……」

 「負けを認めるのか?」

 「まああのような失態を犯して負けを認めぬほど強情ではないぞ」

 

 胸を張る白夜叉だが全身水だらけで汚いからな?

 

 「取り敢えず着替えさしてくれ。こんな格好では尊厳が成り立たぬ」

 

 俺と十六夜は和室を出る。白夜叉は気にしてなかったが他の女性陣の目が気になるので仕方なくな。まあ暫く待つとしよう。

 

 

 

 *

 

 

 

 入室を促され入るとギフトゲームをする前の白夜叉が立っていた。勿論比喩なのだが……同じ着物二枚持っているのか。

 

 「ギフトゲームも終わった所で……黒ウサギ、今日は何様で来たのか?」

 「鑑定のお願いをしに来たのです」

 「……よりによってギフト鑑定か。専門外どころか無関係もいい所なのだか」

 

 頭を掻いて困った顔をする白夜叉。渋々と俺達の顔を見るが厳しい顔は戻らなかった。

 

 「……おんしらはどれだけ自身のギフトを把握している?」

 「企業秘密」

 「右に同じ」

 「以下同文」

 「どれがギフトか分からん」

 「……まあ真面目に答えないことは分かっておった」

 

 一度溜息を吐いてパンパンと柏手を打つ。すると俺達の眼前に光り輝くカードが下りてきた。カードにはそれぞれの名前とギフトが記されていた。

 

 コバルトブルーのカードに逆廻十六夜・ギフトネーム“正体不明(コード・アンノウン)

 ワインレッドのカードに久遠飛鳥・ギフトネーム“威光”

 パールエメラルドのカードに春日部耀・ギフトネーム“生命の目録(ゲノム・ツリー)”“ノーフォーマー”

 シルバーホワイトのカードに蘭謹臣/???・ギフトネーム“精霊の加護(ライジング・ホープ)(未)”“ロマンシングストーン”“冒険家の袋(ハンター・バッグ)”“勇者の剣”“翔光熱(フラッシュ・ライン)”“隷属・白雪姫”“隷属・白夜叉”

 

 名前欄が二つ……?それに身に覚えのないのうりょ……ギフトがある。隷属はギフト扱いされるのか。何故か白夜叉の名前もあるが。

 

 「これはギフトカードという代物だ。本来ならコミュニティの名と旗印も記されるが、おんしらは“ノーネーム”故に少々寂しい感じがするのう」

 「ふぅん……もしかして水樹って奴も収納できるのか?」

 

 十六夜が此方に向けてギフトカードを向けてくる。すると手に持っていた水樹は十六夜のカードに吸い込まれ、新たに水樹の苗の名がカードに刻まれる。

 

 「おっ?面白いなこれ。このまま水も出せるのか?」

 「試してみるか?」

 「だ、駄目です!水の無駄遣い反対!」

 「……そのような事で枯れる樹ではないぞ」

 

 誤魔化す様に十六夜は笑う。黒ウサギはまだ安心出来ない様で十六夜の方をチラチラ見る。白夜叉はそれを見て高らかに笑うだけだ。

 

 「ギフトカードは“ラプラスの紙片”と言って全知の一端を示す。そこに刻まれるギフトネームはおんしらの魂と繋がったギフトの名称。ギフトネームを見れば大体は分かるというもの」

 「へぇ?じゃあ俺のはレアケースって訳だな」

 

 十六夜は白夜叉に己のギフトカードを見せる。すると白夜叉の顔が曇る。

 

 「“正体不明(コード・アンノウン)”だと……ありえん。“ラプラスの紙片”がエラーを起こすなど」

 「何にせよ、解析出来てないならこっちの方が面白い」

 

 カードを引っ手繰る十六夜。白夜叉は未だに怪訝な顔を崩さない。

 

 「さて、用事も終わったんだろ黒ウサギ」

 「YES。では、白夜叉様そろそろ……」

 「分かった。ただ、お主は残ってもらえるかの?」

 「俺?」

 

 チラッと黒ウサギの方を見る。俺は“ノーネーム”の場所知らないんだが。

 

 「謹臣さんを?……分かりました。後で迎えをよこしますのでその子に付いて行ってくださいね」

 「分かった」

 「ではここで待ってくれ。黒ウサギ達を見送ってくる」

 

 白夜叉が俺だけを残した。何か理由があるんだろうか……。

 




書いてるうちに白夜叉が隷属することになってる……謎だ。無理やりだったかも?
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