問題児たちが異世界から来るそうですよ? ~ラスト・アーク~   作:三島溪山

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第七話

 水門での出来事の後、女性陣は風呂に入ってしまった。俺は上がるまでリリと広場でコミュニティの話をしていた。十六夜はどこか外に出て行った。

 

 「農園まであるのか」

 「はい。今は荒れてますけど……」

 「……」

 「わ、わわっ!?くすぐったいですよ~!」

 

 悲しそうな顔をするから頭を撫でる。

 

 「俺達が何とかする」

 「……はい!」

 

 その時、外から爆破音が響く。建物が音の波動で揺れて、リリは態勢を崩す。

 

 「おっと……大丈夫か?」

 「は、はい……」

 「しかし、どこのどい……」

 

 言いかけた所で止めた。あいつしかいない。十六夜しかいない。

 

 「十六夜め……コミュニティ破壊か?」

 「えっ!?」

 「一日が終わりそうな時にもう……」

 

 つい眉間を抑えてしまう。もう少し静かに出来ないのか。

 

 「謹臣君上がったわよ」

 「ああ……」

 「何してるの?」

 「さっきまでリリと話してたんだが十六夜が……」

 「十六夜さんがまた何かしでかしたんですか!?」

 「……今日はもう寝る。説明は本人から聞いてくれ」

 

 早く微睡にこの身を捧げてしまいたい。

 

 「じゃあな……」

 「ちょ、ちょっと!リリまで引き摺ってるわよ!?」

 「あ、すまん……」

 「だ、大丈夫です~……」

 

 疲れてやがる……もう遅すぎたんだ……。

 

 

 

 *

 

 

 

 翌日、昨日と同じ噴水広場に俺達はいた。ガルドとのギフトゲームに向かう為だ。今、黒ウサギの案内でジン、飛鳥、春日部、三毛猫、十六夜、俺の順に並んでいる。

 

 「ここから“フォレス・ガロ”の舞台区画へ向かいましょう」

 「舞台区画って?」

 「ギフトゲームを行う為の専用区画でございますよ」

 

 ふむ……白夜叉みたいにゲーム盤は容易に所有できるものではないみたいだ。

 

 「あー!昨日のお客さんじゃないですか!?」

 「誰だ?」

 「貴方達が世界の果てに行っている間、私達がいた店の店員さんよ」

 「へぇ……」

 

 三毛猫は何かウェイトレスと話している。話が通じるのだろう。あの尻尾は伊達じゃ無い様だ。

 

 「そういえば聞いてくださいよ!“フォレス・ガロ”の連中、配下のコミュニティをほっぽり出して居住区画でギフトゲームを行うらしいんですよ!」

 「黒ウサギ?」

 「少しおかしいですね。何かあるかもしれません」

 「皆さん頑張ってくださいね!」

 

 熱烈なエールを受けながら、“フォレス・ガロ”の居住区画へ向かう。すると前方には緑が生い茂った光景が見える。

 

 「森だな」

 「いや、ジャングルだろ。獣人とはいえここまで動物っぽいのか」

 「いえ、“フォレス・ガロ”の居住区画は普通の住居が並んでました。それもこの木々は……」

 

 ジンは木を見る。脈を打つ木……人間みたいだな。

 

 「鬼化している……?」

 「ジン君、契約書類(ギアスロール)があるわ」

 

 門に張り出されていた契約書類(ギアスロール)は次のように書かれていた。

 

 『ギフトネーム名“ハンティング”

 

 ・プレイヤー一覧 久遠飛鳥

          春日部耀

          ジン=ラッセル

 

 ・クリア条件 ホストの本拠内に潜むガルド=ガスパーの討伐。

 ・クリア方法 ホスト側が指定した特定の武具でのみ討伐可能。指定武具以外は“契約(ギアス)”によってガルド=ガスパーを傷つける事は不可能。

 ・敗北条件  降参か、プレイヤー側が上記の勝利条件を満たせなくなった場合。

 ・指定武具  ゲームテリトリーにて配置。

 

 宣誓 上記を尊重し、誇りと御旗の下、“ノーネーム”はギフトゲームに参加します。

 “フォレス・ガロ”印』

 

 「これは……!?」

 「まずいです。まずいデスよ!」

 「何が不味いの?」

 

 黒ウサギの態度に不思議そうに聞く飛鳥。

 

 「ゲームのルールでございますよ。このルール上、どんなギフトでもガルドを傷つける事は出来ないのデス!」

 「どういうこと?」

 「命を対価に絶対的なルールを作ったってとこだろ。やるじゃねえか」

 「十六夜さん!」

 

 声を荒げるジン。まあ十六夜の態度はふざけているようにしか見えない。だが、プレイヤー一覧にいない以上、俺達は参加出来ないのだ。三人で勝ってもらうしかない。

 

 「取り敢えず『指定』武具を探してガルドを殺せば終わりだ。任せろと言った以上、勝て」

 「気軽に言ってくれるわね……でも言う通りね。あの外道に引導を渡してやるわ」

 「飛鳥さん!」

 「大丈夫。私達は勝ってくる」

 

 気合十分。さて虎狩へといってらっしゃい。

 

 

 

 *

 

 

 

 さて、意気揚々とジャングルに踏み込んだのは良いけど何も考えてなかったわね。

 

 「飛鳥」

 「な、何かしら?」

 「取り敢えず進もう。近くには生物の臭いはしないから」

 「犬にもお友達がいるの?」

 「二十匹くらいね」

 

 なら安心ね。犬の嗅覚は人間の何倍も優れている。その嗅覚で何もいないのだと言うのなら信じよう。

 

 「ガルドはどこにいると思う?」

 「ガルドは言ってみれば獣人です。そのメリットを生かすなら屋外にいると思うのですが……耀さん?」

 「風下にいるのに匂いが微かにもしない。建築物の中にいる可能性が高い」

 「では片っ端から当たっていきましょう」

 

 私達は森をかき分けながら探索をする。人がいたであろう住居も木々に蝕まれて立派な廃墟と化している。ガルドの隠し玉かしら……中々に油断出来ないわね。

 

 「……ガルドも武器もいないわね。どこに隠してるのかしら?」

 「もしかしたらガルドの傍にあるのかもしれません。目の届くところに置いて武器を守れば勝率は上がるでしょうから」

 

 確かにその可能性は考えてなかったわね。指定武具以外では傷つけられないのだから自分の力に自信があればその方が勝てる。ならばと思い、急いで春日部さんに声をかける。

 

 「……春日部さん!」

 「見つけた……本拠の中にいる」

 

 木から降りてきた春日部さんの目は猛禽類と同じような目をしていた。今の彼女は抜群に視力が高い。この程度の距離など造作もないみたいだ。

 

 「行きましょうか」

 

 本拠まで足を進める。その間にジン君に聞いておきたい事がある。

 

 「ジン君、何か気付いた事があるのではないのかしら?」

 「え?」

 「さっきから気味が悪い蔦ばかり見てるけど何かあるの?私達は箱庭に来て二日目……貴方達が思っている以上に分かっていないわ。一人で納得するのは止めて」

 「そ、そうですね。配慮が足りませんでした……僕の見立てならガルドは鬼化していると思います」

 「鬼化?」

 「今回は吸血鬼の属性を得たと思ってください。この樹も鬼化していますので吸血鬼によってこのゲームが作られたという事でしょう」

 

 吸血鬼、人間の血をすする怪物。西洋の鬼とは聞いた事はあるけど実物が牙をむいているなんて……。

 

 「指定武具は吸血鬼の弱点である銀に十字架、流水などに関係した物だと思います。それに急造なので弱点に対する普通より耐性は低いでしょう」

 「当たれば大ダメージ……まずは武器から奪わなければね」

 「うん……あっ、見えた」

 

 春日部さんが指差した向こうにはやはり木々に浸食された館の姿があった。

 

 「人っ子一人いなさそうね」

 「ここにガルドがいる」

 

 狂気に侵されているのだろう。そんな生物の棲む館に入って大丈夫かしら。

 

 「ガルドは二階にいた」

 「そう……罠はどうかしら?」

 「罠の心配はありません。多分裏で糸を引いてる吸血鬼が知っている人物だとしたら純粋な力を試しているだけだと思いますから」

 「……分かったわ。ならその期待に応えなければね。入りましょう」

 

 吸血鬼が誰なのかは後で聞けばいい。今はガルドを倒す事だけに集中しましょう。

 

 「家具が散乱しているわ。自己顕示欲の強い奴の仕業とは思えない位に」

 「鬼種のギフトは元々の霊格が高くないと理性を失うデメリットがありますから。いくらガルドと言えど、純血には勝てないでしょう」

 「厄介かも……追い詰められた獣ほど予測し辛い」

 

 入ってみるとあちこちに爪痕がくっきりと残っている。それは彼が正気じゃないかもしれないという不安を覗かせるに十分なものだった。

 

 「二階に行きましょう。ジン君はここで待ってなさい」

 「え?ぼ、僕も戦えます!ギフトだって……」

 「退路は確保しておかなくちゃいけないわ。皆仲良くGAMEOVERなんて私嫌よ」

 

 ジン君は不満気だったが、渋々と了承してくれた。私と春日部さんは足音を消して二階に上がる。階段の先にある扉を勢いよく開けるとそこには一匹の獣がいた。

 

 「GEEEEEYAAAAAAAAAAAAAAAAAaaaa!!」

 

 白い剣を背負った虎の咆哮が私達の前に立ち塞がった。これが鬼化というものなの……!?

 




飛鳥の勘が少し良くなっています。原作カンコピは消されるので色々と省略&独自解釈で潰しています。飛鳥がヒロインに昇格しそうです。黒ウサギは十六夜の嫁!耀は永遠のアイドル!
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