問題児たちが異世界から来るそうですよ? ~ラスト・アーク~   作:三島溪山

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第八話

 飛鳥達のギフトゲーム終了を待っていた俺達に獣の咆哮が届く。多分ガルドの鳴き声だろう。

 

 「今のは一体……?」

 「虎のギフトを使った春日部だな」

 「な、成程……って違うに決まってるでしょう!?このお馬鹿様!」

 

 目の前で漫才を繰り広げる二人。

 

 「夫婦漫才とかいいから。他所でやれ」

 「め、夫婦!?」

 「いや~それほどでも~」

 「褒められてないデスよ!?」

 

 この二人は放っておこう。また言い争ってもイチャイチャするようにしか見えないし。問題は何が起こっているかだ。多分ガルドの身に何かが起こっている。飛鳥達は無事だろうか……。

 

 

 

 *

 

 

 

 目の前の怪物が猛然と突進を仕掛けてくる。辛うじて避けた私は態勢を整えて春日部さんに耳打ちする。

 

 「どうしましょうか?」

 「背中のあれが指定武具だと思うけど……あれを取らないと始まらない」

 

 具体的な案は出ない。けれど役割は決まったわね。

 

 「春日部さん、貴方はあの剣を取りなさい。グリフォンのギフトならすぐに取れる筈よ」

 「でも……飛鳥は……」

 「大丈夫……なんてとてもじゃないけど言えないわ。だけど私は勝ちたいの(・・・・・)

 「……うん」

 

 私の意思を汲み取ってくれたのか春日部さんは宙を舞い、ガルドの視界から外れる。ガルドは私に狙いを定めて突進し、爪を振り下ろしてくる。

 

 「くっ……!」

 

 直線的な軌道で読みやすいが何しろスピードが段違いだ。黒ウサギから貰った服が切り裂かれる。お腹まで掠って少し鋭い痛みがする。

 

 「飛鳥!」

 「!!」

 

 春日部さんは無事に剣を取ってくれた。こっちに近付いて来ようとするけどガルドが春日部さんに標的を変えた―――!!

 

 「危ない!!」

 「えっ……」

 

 私の身体は私の意思より早く動き、そして切り裂かれた。

 

 

 

 *

 

 

 

 私の目の前で飛鳥が鮮血を晒した。一瞬何をされたか理解出来なかった。だけど理解したん途端、途轍もない怒りが湧いた。

 

 「よくも飛鳥を!!」

 

 ガルドの横腹を思いっきり斬り付ける。指定武具のおかげなのかガルドの痛がり方は尋常ではないように見えた。

 

 「GEEEYAAAAAAAAAAAAAAAAAaaaaaaa!!?」

 

 のた打ち回るガルドを余所に急いで飛鳥の下に駆け寄る。

 

 「飛鳥!!」

 「だ、大丈夫よ……掠り傷だから……」

 「全然そんなふうに見えないよ……!」

 「……血よ止まりなさい(・・・・・・・・)

 

 飛鳥の言葉は飛鳥の身体を支配した。血は瞬く間に止まり、飛鳥はふらふらと立ち上がる。

 

 「ガルドはどこ……?」

 「あ、あそこだけど……」

 「さっさとけりをつけましょう……失われた血まで戻る訳じゃないから……」

 

 飛鳥は私から剣を取ってガルドに近付く。何を言っても聞かない事を察した私はせめてガルドが反撃しないように身動きを封じる。ダメージは喰らわないらしいけど圧力から逃れられる訳じゃないだろうから象の体重で思いっきり圧し掛かる。

 

 「GEEEEYAAAAaaaaaaa!!!」

 「良いアシストね……」

 

 立ち上がれないほどの圧力を受けたガルドに飛鳥は剣を構える。

 

 「今更だけど……虎の方がカッコいいわよ貴方……」

 

 そう言って飛鳥は十字剣を脳天に突き刺した。

 

 

 

 *

 

 

 

 ゲームの終了を告げる様に木々は一気に根を引っ込める。さっきまであったジャングルの光景は消えてなくなり、建物が倒壊していく。その中で黒ウサギは一目散に走り出す。それに釣られて俺達も走り出す。

 

 「おい、そんなに急ぐ必要ないだろ?」

 「大ありです。飛鳥さんが重傷を負っています……!!」

 「飛鳥が!?」

 

 風を置き去りする速さでジンの下に駆けつける。俺達は飛鳥の容体を見て背筋が凍った。

 

 「出血が多すぎる……最初っからこうだったのか?」

 「飛鳥さんの意識があった時はそれほどでもなかったんですが……」

 「飛鳥が無理矢理ギフトで血を抑えてた」

 

 成程、意識が堕ちた後に今までギフトで塞き止めてた血が一気に出て来たんだな。とにかく塞がないと不味い……!

 

 「すぐにコミュニティの工房に運びます!」

 「それじゃあ間に合わん。すぐに処置を施す!黒ウサギは担架を持ってきてくれ!十六夜とジンは向こう向いてろ!」

 

 冒険者の袋(ハンター・バッグ)からすぐに医療道具を取り出す。

 

 「謹臣、一体何を……!」

 

 飛鳥のドレスをナイフで切り裂き、患部を露わにさせる。上半身が裸になるがそんなこと気にしてる場合じゃない。すぐに天然素材のテーピングを巻いて出血を塞ぐ。大量出血による貧血対策に造血剤を手慣れた手つきで注射器で打ち込む。

 

 「凄い……」

 「まあ手術が出来る程じゃないけどな。血液型分かんねえから輸血できねえし」

 

 冒険者(ハンター)には応急処置が必須スキルとなる。回復魔法が使えない奴にとっては生死に関わるからな。

 

 「謹臣さん持ってきましたよ!」

 「耀と黒ウサギは飛鳥を担架に乗せてコミュニティに戻って飛鳥をベッドに寝かせろ」

 「分かった」

 

 春日部と黒ウサギは颯爽とコミュニティへの道を駆ける。

 

 「十六夜達は何かあるのか?」

 「おう、ガルドから頂いた旗印を使ってな」

 「……悪巧みは程々にしとけよ?」

 「ヤハハ、悪巧みじゃねえよ。これでもコミュニティの為になる事だぜ?」

 「はいはい、そういう事にしておきましょうかねえ」

 

 俺も颯爽と道を駆ける。ただし、黒ウサギ達との方向とは別方向だがな。さっきから視線が気に食わなかったし、ここらで牽制しておくか。

 

 

 

 *

 

 

 

 ガルドと新生“ノーネーム”との戦いは“ノーネーム”の勝利となって幕を閉じた。結果で彼女達を判断するには至らなかった。私には時間がない……さてどうしようか。

 

 「おじょーちゃん、遊びましょ♪」

 「!?」

 「フフ、ハハハ」

 

 誰だこい……いや、確か黒ウサギと共に観戦していた二人の内の一人か。音もなく私に近付くとは……。

 

 「さっきから俺達を見ていたな。誰だお前は……もしかして黒幕か?」

 「……」

 「ダンマリか。まあお前が誰でもいいか……」

 

 目の前の男の殺気の密度が上がる。飄々と掴み所のない人間だと聞いていたが……こいつは不可解だ。撤退するしかない。

 

 「それは賢い判断だが行動に移すのが遅い」

 「!?」

 

 気が付くといつの間にか腕を掴まれている。いくらギフトを失っていようとも吸血鬼という種族は人間に腕力で負ける筈はない。なのに何故振り解けないんだ!?

 

 「今仲間が傷ついて気が立っているんだ……」

 「……っ!?」

 「もう一回問おう。お前は誰だ?」

 

 やばいやばいやばいやばいやばばばばいやばいやばいやばいやばいやばいやばい!殺されるビジョンが鮮明に頭の中へと入ってくる!!答えないと不味い!!!

 

 「わ、私は、元“ノーネーム”のレ、レティシアと、いう」

 「元、ねえ……このギフトゲームはお前の仕業って事でいいか?」

 「そ、そうだ……」

 

 恐怖で言葉がたどたどしくなる。体の震えが止まらない。何年、何百年も生きて来た。この人間よりの何十倍も長く生きて来たのに……白夜叉に聞いていた情報はこの人間の本性が抜けていたのか!?

 

 「目的は?」

 「“ノーネーム”に来た異世界のギフト保持者……その力は“ノーネーム”を救えるに値するか否かを……」

 「結果は?」

 「ガルドは……当て馬にもならなかった……」

 

 それだけ言うと掴んでいた手が離される。緊張の糸が切れたのか地面に座り込んでしまう。足が痙攣しているかのように自分では立てないまで筋肉が緩んでしまった。ジョロジョロと何かが流れ出るのも気にならない。それぐらいに恐ろしい思いをした……一体何を隠しているんだ……?

 

 「……ウォータークランブル」

 「わぷっ」

 

 上から水をぶっ掛けられた。失禁など……いつ以来だろうか。物凄く屈辱だが、それより屈辱的なのは黒い笑顔で配慮がされてる所だ。

 

 「取り敢えずお前を“ノーネーム”に連れて行く」

 「好きにしてくれ……」

 

 この状態じゃあ逃げる事も出来ない。びしょ濡れだし……お風呂に入りたい。

 

 「じゃあ行くぞ」

 「……ちょっと待て。これは……恥ずかしい」

 「じゃあ行くぞ」

 「確信犯!?確信犯だろう!?」

 「黙れお漏らし」

 「ぐっ……」

 

 されるがままだ。結局何も言えないままお姫様抱っこで運ばれていった。人の前で粗相を働かした事とお姫様抱っこされている事で真っ赤に染まっていた顔に私は気付いていなかった。

 

 

 

 *

 

 

 

 気が付いたらロリを抱っこしていた。何故と思うがどうでもいいので疑問を頭から放り出した。

 

 「どうする?」

 「どうする、とは?」

 「何がしたい?」

 

 抵抗しない所を見ると“ノーネーム”に縁があるのかそういう性癖があるチビッ子のくせにませた奴なのだろう。

 

 「……お風呂に入りたい」

 「ふーん……それじゃあ一緒に入るか?」

 「うん……」

 「!?」

 

 おかしい……この展開は実におかしい。不審者に「お兄さんと良い事しようか?」と言われているのと同じなのに嫌がるそぶりがないだと……?どういう事なの!?Do you know!?

 

 「……ん?」

 「謹臣様?どうかされましたか?」

 「(よっしゃリリが来た!これで勝つる!)いや、この子がお風呂に入りたいっていうからさ」

 「では、一緒に入りましょう!」

 「よーし、それじゃリリに……ふぁっ!?」

 

 この子何て言った?何て言ったの!?

 

 「俺、男。この子、女。Are you OK?」

 「私も入りますから、ね?」

 「あ、はい」

 

 謹臣 は 混乱 した!

 

 「衣類は私が用意しますので先に入ってください」

 「ハイ、ワカリマシタ」

 

 この後滅茶苦茶セッ……淡淡した。KENZENダッタヨ?

 




恐怖に駆られる顔→めだかボックスのキャラがしていた黒い顔
黒い笑顔→暗殺教室の竹林君が体育祭にしてた笑顔
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