B銀行における不正融資の告発に関わる文書   作:朝凪小夜

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まずここではタイトルの通り、告発を行いたいと思います。

内容は不正融資、それも特定の企業や個人を狙ったものではなくもっと広くどんな相手でも標的になりうるものです。

 やり方は近年導入された融資の審査システムを利用したもので、自動化と業務効率化の方針の下で巧妙に隠された手口での実行です。

 

 先にこれらの具体的な事実を書くより前に経歴と私の事を書かせてください。少しばかりにはなりますが、何故ここまでの事が分かったのかを今後の内容を読む上では知っていただいた方がよいと思いますので。

 

 私は北関東の育ちで、大学は首都圏の国立大学を卒業しています。学部は商学部で会計に関わることを学んでいました。ご想像の通りで東京の大学ではありません。その後4年で卒業し現職の当行に新卒で入社しました。今でもそうですが、おそらく国内に在住の方であれば一度は耳にしたこともCM等で目にしたこともある企業ですし、何より金銭的な話も将来的には相当良いということは知っていたために内定の段階で随分と祝い会の様なものをやりました。最近では金融業界内での優良評価も多く得ており当時を振り返っても慧眼だったのではないかと思ってしまうことがあります。

 初期配属は当然窓口部門に。場所は東北、宮城でした。そこで2年を過ごし異動の辞令が出たのは経理部門に。大変うれしかったことに、大学で商学部であって一部資格も持っていたことから適性アリと評価され都内視点での勤務となりました。

 そこから経理は3年続けました。

 通常の業務としてイメージされる帳簿付けや決算業務もありつつ、昨今のテクノロジーを利用した効率化として自動化ツールや最新システムの導入サポートも行っていました。

 当時は残業規制も厳しくなり初めながら、同時に移行の確認も行うような時期が重なっていたため私もそうですが部署の先輩や課長が如何に時間外労働を上手くやるかという相談をしていたことをよく覚えています。 

 それからはまた異動し、現在の融資審査部に配属となりました。

 おそらく銀行以外の会社員の方からすれば、窓口、経理、審査とあまり一本線ではないキャリアの様な気もしますが銀行においてはこのくらいは普通に存在します。まだ私も30に至っておらず行内では若手の扱いから変わることなく、若手であれば余程の適性か成果を示さない限りは方向が固まることはまずありません。ただし、左遷は別です。どこの部署においてもやらかしてしまう人は居ます。そういう方は少しずつ少しずつ、都市や街から離れた支店への配属となっていきます。さらに言えばそういう方はまずもう都内の支店にも戻れず、出向にすらなりません。わかりやすい島流しで、むしろ辞めて欲しいとすら伺える異動を行うわけです。

 さてこの審査部への異動でまた仕事については一から覚え直すことから始まりました。

 審査の確認の仕方、そもそもの融資書類の種類に、観方。稟議書との突合と、今でこそ紙のやり取りは減っていますがそれでも申請時点では紙も当然存在しそこと画面上を何度も視線を往復させるという流れを教えてもらいました。

 特にはこの時に窓口業務でやっていた融資の説明や書類の種類はまだ少ない方だったのだと気づきました。審査をするにあたっては、まだ異動当初ということもあり領域も特定の場所だけでそう広い案件を見ることはなかったのですが、担当はいつでも変わりうるからと最初に全体観を教えるという風習だそうです。

 それからというもの私の行っていた業務はそう重たいものではありません。

 というのも審査においては審査部での確認は当然行いますが、一番面倒で厄介な計算処理は既に自動化されていたからです。

 まず融資を行うにあたって、当行においては最初にやり取りを行うのは所謂営業部署になります。本当はもう少し名前もありますがわかりやすく営業とさせていただきます。

 この営業がお客様に融資を持ち掛けたり依頼を受けたりしながら、融資案件として具体的な金額、期間、返済のキャッシュフローを決めていきます。

 そうしてこの案件が具体的に固まれば稟議として営業部署内での承認を得、その情報を元にシステムにデータが登録、部署承認アリとして審査の方に連携が行われます。

 ここで重要なのはこの連係が行われる時点で審査の方で通常行われる区分けや計算の処理はほぼ終わっているということです。

 このシステム導入前までは営業から連携された資料を基に、例えば企業であれば、資本金・業界・資産状況・過去の融資実績・過去の返済遅延履歴・行内口座利用履歴などを使い行内の格付けを付与します。この格付けを元に融資可能上限や融資の貸付金利、貸付期間上限と特別条項、さらには決算上の貸倒引当金(通称貸引)の値が求めていました。

 システム導入後は連携された段階でこれらは既に数字としてわかっており、審査部での確認はそれらの入力値が正しいこと、また区分けと格付け、それらに基づく金利等々の計算結果、そして融資可能可否の結果が乖離していないことをみることが主となっています。

 大変ありがたいことに、このシステムによってエクセルやワードでの非常に細かな入力の手間が省け、しかも計算の結果を画面上にすぐにみられることから私としても、聞く限りでは部署の先輩方も、労働時間としても強度としても相当に負担は少ないものとなっているかと思います。

 また、同時にこのシステムによって重要度の高い案件や危険性の高い案件にはより細かな確認と突き返しが出来るようになりました。大規模かつ超長期の案件での合同融資、数回の遅延を起こした融資先の扱いなど、これまで以上に時間を掛けて詳細の検討だったり即座の却下をするというクオリティの高い仕事が出来るようになったかと思います。

 ですがこのシステムが問題でした。

 次章ではこのシステムについて見つけてしまった問題を書いていきたいと思います。

 

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