B銀行における不正融資の告発に関わる文書   作:朝凪小夜

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 これからもう一つ気づいてしまったシステムの有用性を書きたいと思います。

 ただ先に謝罪をさせてください。ここからはどこまでが事実でどこまでが推測になるかわかりません。あくまで私の知っている範囲で考えうる最悪だと思っていただきたく存じます。何より事実と確実に分かることについてはそう書きますので、その前提で読んでいただければと思います。

 まず銀行というものについて、銀行員というものの出世についてどのように考えられているでしょうか。凡そ誰であっても真面目、堅い、減点式というものは頭に浮かぶと思います。最近では最初二つはそう確実なものでもなくなりました。真夏でもネクタイ背広、といういつか聞いた定型文は外れてきています。一方で減点方式は変わっていません。

 銀行員とは如何にミスをしないかで生きている。

 この言葉は私が働いて来た中でも何ら間違っているものではありませんでした。

 そしてこの言葉は銀行員にとって常に付きまといます。

 課長部長と言った役職は当然ですが、銀行にはより細かな課長代理や、代理補佐、係長などと言った役職もあり、逆には支店長代理、支店長、執行役、専務と続いていきます。そうして最後に来るのが頭取ですが、銀行員のこの減点方式とはここまで来る中で外れることはありません。

 役員になったとしてもその中では明確に序列があります。当行以外でも所謂花形の営業、企画や人事は強く多くの頭取がこの領域の出身です。逆に経理やコンプライアンスなどは弱いと言われることが常です。当行ではこちらの領域から頭取が出たのは訊いたことがありません。

 さてこの役員になったとしても、貢献が無ければそこで止まり出世は終わります。しかし特別な貢献があると思われればさらに出世、担当領域を花形に移したり兼務したりさらには明確にはならずとも頭取までの心象としてポイントの様なものが溜まっていきます。

 当然それは逆も然り。やらかせば心象は悪くなり権限は剥され、閑職へと追われていきます。

 銀行員にとって頭取だけが唯一横も上も存在しない減点方式の終焉点なのです。

 随分銀行そのものについて長く書いてしまいましたが、もう一点だけ銀行の内部の話をさせてください。

 銀行でシステムとは色々なものを差しますが、基本的にその寿命は一般企業に比べてかなり長いものです。

 例えば預金の集計管理システム。口座と全国各地のATMとも連携し非常に細かな時間単位でお客様の預金残高も管理していますし、半期で利息の付与もしています。

 こちらのシステムは各種コンピューターの更新への対応こそありますが、本質的なメインの計算システムは25年以上前のシステムを利用しています。

 またほかにも他の銀行との連絡や振込等々に関わるシステムを考えると全てにおいて相当前の時代に作られたシステムが基盤となり、またそのプログラムを元に新たに移植するということが行われています。

 この点において銀行のシステムとはどうあっても寿命が長いということがあります。

 ここで考えると、最近導入された融資審査の自動化はいつまで使われるのでしょうか。

 おそらくは根本的に審査の手法が変わるまで永久に変わらないでしょう。コンピューターの更新や利率計算の短期化など表面的な改修は行われるでしょうが、心臓部である格付け計算周辺が手を付けられることはないはずです。

 どんなに小さく見積もってもこれまでの利用例からすれば10年は持ちます。長ければ20年であっても。

 もし、ですがこのシステム案件に役員まで関わっていたらどうでしょう。

 自分で導入したシステムから齎される結果は少しずつ銀行の収益を上げ、リスク管理の状況も悪くなく、何より自動化による審査短期化と効率化という実績になります。それで大きな案件もさばけるようになれば、これを評価しない人間はいくら銀行といってもありえません。

 するとこの役員は出世、より良い位置に行くことになります。玉突きとして新たな役員の昇格か別の人がこの審査を担当領域に持つでしょう。あるいは少し違う視点も持たなくては、と自分でそのように動いても良いかもしれません。

 そうして新たな人物がこの審査領域に担当であると決まった瞬間、その人物の手には爆弾が手渡されます。

 彼の人物が扱っているはずの審査、その中身にはどうしようもない不正があります。同時に銀行とは減点方式の世界。

 この組み合わせにおいてこれまで担当だった役員は脅迫という強い道具を持って新たな役員に明確な支配関係を与えることができます。最早脅迫すらしないでも良いかもしれません。

そういうシステムの穴がある、調べてみろと言うだけで良い。

 それだけでその人物が銀行内での生存を望む限り、永久に機能する手駒が手に入ったことになります。

 一般に役員であれば、頭取になるなら内は別として10年程度は取締役という中に入り込めます。

 その中で担当領域の変更という異動は短くて2年で起こり得ます。

 最高5人への支配権、そして頭取になればそれを全員に強要することすら可能。

 この絵図を書いた時点で保身という考えがほんの一瞬でも頭に浮かぶ人間であれば、従う以上の行動は出来ません。

 最早このシステムは銀行という組織において核と同等の威力を持った最高の武力となりました。

 ここまで来れば無敵でしょう。知って多大な流血を前提に検査や好評を選択できる役人がどれだけいることかわかりません。聞く限りの組織であれば、誰だって自分の担当時に面倒だけはやってほしくないとそう思うはずです。

 そんな人間にこんな事案を突きつければどうなるか。

 見逃す以外ありません。そうして出来上がるのは誰も知らずに生き続ける最悪の帝国です。

 妄想と思われると思います。

 そこまでして何がしたいのかとも思うでしょう。

 でもそういうものです。出世してどうこうではないのです、出世そのものが意味を持つのです。

 銀行という世界で、出世の道を断たれ左遷、出向という路に移っていった人がどれだけ涙を流したか、その姿を何度も見てきました。決して金銭的に急落するわけではないのです。まして明日から命の危険があるというわけでもないのです。だというのに隠しきれない嗚咽が、当たり前に聞こえてくる環境です。どこか出世とはあって当然の、生きる事そのものですらあります。

 これが私の考えうる問題そのものです。

 強迫的だとか誇大妄想と言ってください。そうであればそれで良いんです。

 でも私には本当にそうなのかはもうわかりません。

 ただこれ以上知っていることを全て書くしかできそうにありません。

 次には気づいた背景を書きたいと思います。

  

 

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