真インフィニット・ストラトス~学園最後の……日?~   作:バルバトスルプスレクス

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虚無の皇帝~ゲッターエンペラー~

 

 人類が母なる惑星・地球を飛び出してから火星を開拓し、木星や土星、天王星だけでなく更には海王星へと徐々に開拓先を広げ、ついにかつて太陽系の一つであった冥王星だけでは飽き足らず、さらに太陽系を離れ大宇宙の遥か彼方へと人類が飛び出していったが、一つの障害が人類を待ち受けていた。

 それは異なる種族同士の、それも人類の想像を遥かに越えた者達による種の存続をかけた大宇宙戦争だ。その戦火に巻き込まれた人類は、その高次元且つ絶望的な科学力の差に、その軍事力の差に為す術もなく最早これまでかと思われていた。だがその矢先に“それ”は突如としてその姿を現した。その名も、ゲッターエンペラー。

 人類は虚無の皇帝の二つ名を有するゲッターエンペラーとその配下たるゲッター艦隊の庇護下に付き、他種族の艦隊はゲッターエンペラーのその強大な力で未知の敵達を葬り去ったのだ。

 ゲッターエンペラーは今も尚進化し続ける。戦うたびに進化し続け、その度に新たな敵を探し続け、その度にゲッター艦隊は増え続けるのだ。

 先の第五次オリオン大戦もまさにこちら側の大勝利に終わったのだ。

 それが、ゲッターエンペラー。それこそが、ゲッターエンペラーなのだ。

 何を目指しているのか。その終着を我々は知らない。ゲッター線の、ゲッターエンペラーの行きつく先は未だ誰も感知することはできない。だがしかし、これだけは言える。

 

 

***

 

 

「見てみたいと思わないか?ゲッターの、ゲッター線の行き着く先を!そこに結論が待っているやもしれぬのだ!そもそも何故我ら人類が存在するのか、そもそも宇宙はゲッターに一体何を求めているのか!かつて我々人類がそうであったように!!!」

 

 黄色い安全ヘルメットに剣道の胴着、赤いマントに日本刀を背負った小太りの男から熱く語られた話の内容はSF作品か何かの様だ。一夏は勿論ラウラでさえ、到底信じられないと言いたげな反応ではあるが龍馬だけは違う。彼だけは目の前の男の語った内容に耳を傾けていた。最後に彼は「これ以上を知る必要はなく、知りすぎる危険もある」と締めくくる。

 今彼らがいるのはゲッター艦隊と呼ばれる艦隊の内の一隻。琥珀色した龍馬のゲッターの分離形態の一つ、ベアー号に似た巨大な宇宙船のブリッジにて巴武蔵と名乗る司令官らしい男はゲッターについてを龍馬達に説明していた。

 

「最前線はここからたかだか2万光年先だ。なに、我々からしたらそんな大した距離じゃあないが、その最前線の映像を見てもらおう」

 

 程なくして先ほどまで何も無かった一夏達の頭上に投影型のモニターが出現し、彼の言う最前線の様子を映し出していた。

 

『ゲッタァァァァァ、ビィィィィィィッム!!』

 

『プラズマぁ……ノヴァー!!』

 

 映し出されたのは二機の巨大ロボ。一機は龍馬のISであるに酷似しており、もう一機は例えるならば生物と機械を融合したかのような巨大ロボ。ISという一つの括りには収まり切れない、大型の機動兵器が生物とも機械とも分からない醜悪な存在(バ ケ モ ノ)を嬲り殺していく。トマホークで、ビームで、或いは拳を突き立てながら戦い続けていく様は圧巻だ。

 龍馬はそれらが別次元とは言え自分と同じ存在であると本能的に理解できた。

 異なる宇宙、異なる次元、異なる世界線のゲッターが今同じ宇宙にいるのだ。何も感じられないわけがない。

 

「あの二機のゲッターはそれぞれ違う宇宙からここに来た。 ゲッター線を貪る地球外生命体インベーダーが蔓延る世界から来た真ゲッターロボ。 ある科学者が生み出した植物兵器によって支配された世界から来たゲッターロボ飛焔。彼らはそれぞれ別々の世界線からこの宇宙に辿り着き、今もあのように戦い続けている」

 

 映像には徐々に追い詰められていた敵勢力が為す術もなくこちら側の艦隊に一個大隊単位で排除されていく。そこに慈悲も情けもない。これははたして戦争なのだろうか。映像にくぎ付けになっていく一夏の心には複雑な気持ちが生まれていた。

 ――巴武蔵はこの戦いを戦争だと言っていた。だけどこれじゃあ虐殺と変わらないじゃないか!

 握りこぶしを作っていたのは一夏だけではない。龍馬以外皆目の前の光景に疑問を抱いていた。

 疑問に思う彼だったが、突如艦内にけたたましいほどに鳴り響く警報に周囲が何かを口々に話していた。だがしかし、誰一人として慌てる様子もなく、淡々と指示を交わすだけだ。

 

「司令、やられました。たった今帰投した機体にインベーダーが寄生していた模様です」

 

 乗組員の一人が武蔵に報告した内容を裏付けるように先ほどまで戦闘宙域を映し出していたモニター画面が、醜悪な形相の怪物が艦内を突き進む様子を映し出していた。道中で銃火器で対処する乗組員たちを両断するか己の肉体に取り込むかをして隔壁を破壊していた。

 

「奴の狙いはおそらくここだ」

 

「どうしてわかる。あのバケモンの狙いはゲッター線、つまりはこの艦の動力炉じゃなかったのか?」

 

 ゲッター線を貪ろうとするインベーダーの目的地を予め知っていたかのように語る武蔵に疑問を持つ龍馬は、彼が銃器で武装した様子を見てそれが嘘ではないことが理解できた。

 程なくして壁を突き破って姿を現した侵入者はこの艦の長たる武蔵目掛けて牙をむく。対する武蔵は極めて冷静にトリガーを引き、ありったけの鉛球をインベーダーに打ち込んだ。頭部は潰れ、四肢が飛び散り、ついにはインベーダーは絶命した。

 

「あ、危なかったー…!」

 

「だが、倒すのが0.21秒遅かった…」

 

「それってどういう……っ!」

 

 振り向いた先、一番先に武蔵の異変に気が付いたのは鈴音だった。インベーダーの鉤爪が武蔵の胸部を刺し貫いていたのだ。

 誰がどう見ても手遅れの武蔵は、間もなく息を引き取った。立ったまま亡くなった彼を見ていた職員の一人が淡々とした表情のままで己の業務を全うしている。

 

「次の武蔵司令官を起動します」

 

 その職員が発した言葉の意味を完全に理解する前に武蔵の亡骸を別の職員が片付け、どういうわけか先ほど絶命したはずの武蔵がその職員と入れ替わるように龍馬達の目の前に姿を現した。

 

「お待たせ!前任の俺の間違いは二度とせぬ!!」

 

「二度とせぬって、アンタ一体…」

 

「クローン……なのか!」

 

「いや、正確にはゲッターエンペラーの一号機の記憶に基づいて作られた人造人間だ。デザインベイビーと言えば分かり易いかな?それにだ、先ほどのインベーダーは恐らく俺だけを殺すために送られた尖兵だろう。小賢しいにもほどがある」

 

 更に前任の自分自身から記憶も引き継いでいると言う。

 次第に艦は戦闘が激化する宙域に突入し、スクリーンに映し出される映像も敵味方が入り乱れながら漆黒の宇宙に爆炎の華を開かせていた。敵も味方も関係なく散っていく。これがこの大戦の日常なのだ。いくら一夏が何度「間違っている」と思っていても、この宇宙ではこれが「日常」であり「当たり前」なのだ。

 

「さて、そろそろ諸君らの帰る時間だ。ここは君達が来るにはあまりにも早すぎる」

 

「武蔵って言ったな。どうやって俺たちをもとの場所に帰すってんだ?」

 

 龍馬の問いに武蔵は短く、「簡単なこと」と付け足して答える。

 

「ストナーサンシャインによるゲッター線の高エネルギーを用いて君達はここに来たのなら、それと同じかそれ以上のゲッター線を使う必要がある」

 

 そして武蔵が龍馬達に説明した内容はあまりにも荒唐無稽なもので、それでいてそれだけしか手立ては無い。

 実行に移すため職員に連れられ、ブリッジを後にする龍馬達だったが思い出したかのように武蔵が彼らを引き留め、また別の職員が持ってきたあるものを見せつける。それは一基のカプセルだ。大きさは一般的な成人程の大きさと幅を有しているが、問題はその中身だった。興味本位で中身を見たシャルロットが、突如声をあげて驚き一夏たちに中身を見せつけた。

 中に入っていたのは長身の二十代半ばほどの女性だった。

 

「彼女は君たちの世界で銀の福音とやらを纏っていたが、暴走した後ストナーサンシャインに君たちと同じように飲み込まれたようだ。心配せずとも死んではいない、眠っているだけだ。彼女もこの宇宙に来るにはとても早すぎる」

 

 武蔵からナターシャが寝かされているカプセルを受け取った龍馬達は職員に連れられブリッジを後にした。

 

 

 

 

 ISは元々宇宙空間での作業を視野に入れたパワードスーツである。今や競技形式とは言え戦うことにその方向性をシフトされたマシーンは、ゲッター艦隊が存在するこの宇宙空間で役目を果たしていた。真ゲッター、白式、紅椿、ブルー・ティアーズ、甲龍、ラファールリバイブ、シュヴァルツェア・レーゲンの七機は今、真ゲッターをセンターにカプセルを囲むように編隊を組んでいた。

 龍馬達がそろって先ほどまで自分たちが乗船していた、さしずめエンペラーベアー号というべき艦の甲板から飛び立った。

 

「ね、ねぇ……本当にやるの?」

 

 顔中に冷や汗を流し始めたシャルロットが恐る恐る龍馬に尋ねた。しかし、当の本人は彼女の問いなど聞き入れていない様子で背面のバトルウィングを目一杯広げていた。

 武蔵が提案した作戦はある意味シンプルなものだった。

 龍馬の真ゲッターにゲッター艦隊が一斉にゲッター線高エネルギーを照射する。

 とてつもない衝撃がバトルウィングを通して龍馬に襲い掛かる。更にその衝撃は一夏たちをも巻き込んでいき、彼らは程なくして光の繭となり巨大化していった。輝きの中では尚も意識を手放さず、気力で踏ん張っている龍馬たちは今、集まりに集まったゲッター線を大解放する。

 今は前だけ進む。そのことだけに心を一つに。

 

「行くぞお前ら!シャぁぁぁぁぁインっ…!」

 

『スパぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁク!!』

 

 刹那、繭は光の龍と化し、一直線に脇目も振らずただひたすらに亜光速で進み続ける。下手に近づこうとしたインベーダーたちが跡形もなく塵と化して絶命する。それでも未だに衰えを見せないどころか、更に速度を増していく光の龍はやがて、皇帝の名を冠したゲッターに並び立つ。

 

――リョウマの名を持つ子よ。ゲッターを、ゲッター線を信じろ……――

 

 そんな声が聞こえた気がした。声の主は分からずとも、それが誰の声か頭で理解できなくとも心で理解できる。だが今は目の前だけしか見ない。目の前にしか進まない。やがて周囲が光の筋にしか見えなくなったころ、彼らの脳裏に平行世界のゲッターの記憶が流れ込んできた。

 かつて地上を支配していた『恐竜帝国』、角を持った亜人『百鬼帝国』、メタルビースト軍団を率いて世界征服に乗り出した『プロフェッサーランドウ』、ゲッター線で進化した植物獣を操る『プロフェッサージャコフ』、宇宙空間を漂流しながらゲッター線に寄生して生き続けるバクテリア状の生命体『インベーダー』、『多聞天』『広目天』『増長天』『持国天』の四天王から力を受け取り鬼を率いた『安倍晴明』、ゲッター線によって進化した新人類『イデア』、仮想世界においてゲッターを模倣した『不進化体』。それらとの戦いに身を投じたゲッターの数もまた少なくない。

 ゲッター線あるところゲッターロボあり。ゲッター線が存在する宇宙においてゲッターロボは必ず存在する。ゲッターの歴史が急流のように龍馬たちの頭の中を流れていく。とめどなく流れ続けるのは戦いの記憶、闘い続けた男女たちの記憶。

 そしていつしか、龍馬達の意識は途切れた。

 

 

***

 

 

 気が付いた時には旅館のすぐ近くの海岸で立ち尽くしていた龍馬たちは、カプセルは見当たりはしないものの、中身のナターシャも気を失った状態で保護して旅館を目指してその玄関先で千冬に見つかるとそのまま会議室へと向かわされた。

 まずはナターシャを真耶に任せ、一夏たちが主だってストナーサンシャインを放った後を千冬や早乙女たちに語る。

 ゲッターエンペラーが戦う宇宙の事、その宇宙で知り合った巴武蔵司令官の事、そして自分たちが語ることができる事は総て報告し続けた。これまでの流れは最低でも一時間はあったはずだ。だというのに、千冬はおろか敷島に達人、あまつさえ早乙女でさえも信じられないと言いたげに顔を歪ませる。

 

「織斑、それは本当なのか?」

 

「え?あぁ…はい」

 

「信じられんが、流音とお前と篠ノ之の三人がストナーサンシャインを放ってから二秒(・・)と経っていない」

 

 ストナーサンシャインの海面爆発は広範囲に広がり、中心部近くにいた筈の一夏たちのISの反応が一瞬途切れたかと思えば、どういうわけかすぐ近くにまで瞬間移動していたのだ。例え真ゲッター1と紅椿の高速移動能力を以てしても出来て十分近くなのだが、たった二秒間で移動するというのは不可能に近い。

 一昔前に流行った瞬間移動トリックとは比較にならない奇跡だ。

 誰もが夢か現実か分からない事態に、早乙女は一旦冷静になるべく一呼吸整える。

 

「龍馬、改めて一度問う。お前は皇帝に……会ったのか」

 

「……ああ」

 

 短いその答えに一人納得した早乙女は徐々に落ち着きを取り戻す。

 その後は早乙女はデータを確かめるために龍馬から待機状態のゲッターを預かり、近くの機材に取り付けて投影ディスプレイを起動する。表示された文字情報を目で追い、「なるほど」と短く呟いてディスプレイを閉じる。どうやら目当ての情報が見つかったようで、敷島共々ニヤリと笑みを浮かべていた。

 早乙女研究所所属組だけで完結してしまい、取り残され気味の千冬は取り合えず一夏達にメディカルチェックを受けるよう指示して解散させた。

 

 

***

 

 

 その夜、夕食の時間はちょっとした査問会のような事態になっていた。

 今作戦に関わっていない他の生徒達が、己の好奇心を満たすべく事の総てを聞き出すべく続々と押し寄せてくるその時、ラウラが「別に話しても構わないのだが」と前置きながら彼女らを窘める。

 

「その代わり長期間の監視やら何やらで今後の一切の自由が無くなるが、それでもかまわないか?それでも良いと言うなら――」

 

『いいえ、結構です!』

 

 蜘蛛の子を散らすように逃げ惑う彼女らを尻目に、当事者たちは未だにゲッター線がISのエネルギー源であることが信じられずにいた。それ以前に、ゲッター線その物のスケールが余りにも大きすぎていた。

 ゲッター線は進化を促す特殊な宇宙線。それを大量に浴びて漸く一次移行(ファーストシフト)したゲッターもとい真ゲッターのスペックの高さ。そんなISの性能に振り回される事無く、操縦する流音龍馬。そして、彼の所属先である早乙女研究所。

 何もかもが規格外過ぎている。その上自分たちの使っているISの、そのコアが失敗作で、恐らく龍馬の真ゲッターのコアこそが完成品。ゲッターこそが、ISの本来の形。

 当の本人たる龍馬は静かに箸を進めている。何も感じていないのかどうかの真意は不明だが、少なくとも龍馬自身に何か思うことはあったかもしれない。

 

 

***

 

 

 夕食後、露天風呂を堪能した龍馬を待ち構えてきたのは、栗毛のツーサイドアップに半開きな目、ぶかぶかな袖が印象的な少女、布仏本音。彼女は両手にある同じ銘柄の炭酸ジュースを片方差し出した。

 

「餌で釣るつもりか?」

 

 本音もまた福音騒動の顛末を知りたがる一人なのだろうと思い込んでいた龍馬だったが、呆れ顔の彼女の顔からするにそうではないらしい。

 差し出されたジュースを受け取りプルタブを開ける。

 

「ながねんは怪しまないんだねぇ」

 

「少なくともお前だけだよ。お前も物好きだな、俺に興味なんざ持つなんてよ」

 

「んー、何でかな?」

 

 手頃な椅子に並びながら腰かけ、視線を合わさずジュースの缶を傾ける二人に敵対という文字は当てはまらない。かといって龍馬自身本音を疎ましく思えず、それどころか入学当初より好意を徐々にではあるが抱き始めていた。研究所の食堂の看板娘たる巴車マミと言う身近な場所に異性はいたが、マミはどちらかと言えば身内に近い存在で意識すらしていなかった。

 対する本音。彼女の家は戦国時代から現代まで更識家に代々仕える一族である布仏家。その更識家の現当主からIS学園に入学する以前に「流音龍馬を監視せよ」と言った旨の指示を受けてきた。だが、日に日に接触するうちに、いつしか彼女の中で仄かに何かが芽生えてきた。それが恋であると自覚したのは今この瞬間。あまりにも唐突な恋だ。

 特に会話をする必要もなく二人は無言のままジュースの缶を傾ける。

 

 

***

 

 

 最終日の朝。荷物を纏めてバスに乗り込んだIS学園の生徒たちを旅館の二階から眺めるのはナターシャ・ファイルス。彼女は隼人とムサシの二人が宿泊する部屋に訪問していた。

 

「それで、貴女の返事は?」

 

「そうね、OKよ。あなた達について行くわ」

 

「ほぅ、随分思い切ったことをするなこいつは」

 

 思いもよらない返事に驚くムサシではあるが、隼人は予想通りと言わんばかりに口角を釣り上げて不敵な笑みを浮かべる。

 固い握手を交わす隼人とナターシャ。

 

銀の福音(あの子)を良いように利用した連中を私は許さない」

 

「俺達も、俺達を陥れてきた連中を許すことはできない。既に貴女の銀の福音()はこちらが回収を済ませてある」

 

「感謝するわ」

 

 彼女もまた、世界に翻弄された被害者になっていた。隼人ら早乙女研究所の面々から、あの篠ノ之束の掌の上で踊らされたと知ると彼女は大きな屈辱を受けた。

 第四世代という最新鋭機を纏う妹の晴れの舞台の当て馬に選ばれたのが自分と我が子のように可愛がってきた銀の福音だと知ると、ナターシャは屈辱を感じずにはいられなかった。更に彼女の母国では今回の事件を有耶無耶にすると知ると、最早どの身内の言葉も信じられなくなっていた。親友の声すら届かない程に。

 だが、そんな彼女に手を差し伸べたのが早乙女研究所。

 

「言っておくが、俺達は貴女をコマとして見ていない」

 

「一緒に戦う仲間だからな!今度娘の手料理食ってくれよ。どれもうまいんだぞ!」

 

「ええ。貴方達となら、例え親友を敵に回してでも一緒に戦えるわ」

 

 再度固い握手を隼人と交わしたナターシャは故郷と友に袂を分かつ覚悟で、復讐の炎を燃やしていたのだった。

 

 

***

 

 

 流音龍馬。そのネームバリューは既に小さい物ではなくなっていた。

 彼が二年後のIS学園の卒業式に総てのISのコアを破壊すると宣言してから、世論は二つに分かれた。

 冗談と受け止める国と、本気で捉え対策を練る国とで。

 後者に該当する国々は秘密裏に対ゲッター用ISの開発、及び専属の操縦者の育成に力を注ぎ始めていた。その中で選ばれたのはカナダのファニールとオニールのコメット姉妹、タイのヴィシュヌ・イサ・ギャラクシー、台湾の凰乱音、オランダのロランツィーネ・ローランディフィルネィ、ギリシャのベルベット・ヘル、ロシアのクーリェ・ルククシェフカ、そしてブラジルのグリフィン・レッドラムの以上8名。彼女たちにはそれぞれ対ゲッター用のプログラムが組まれた専用機が与えられている。

 だが、そんな時、直ぐにでも彼女たちを編入させようとそれぞれの国家とその軍上層部が画策していたその時、龍馬のゲッターが一次移行を迎えて本来の姿とスペックを目の当たりにしてしまったのだ。

 それが何者からのリークかは不明のままではあるが、今のままでは瞬殺されるのが落ちだと理解せざるを得ず、操縦者の育成計画は期間を延長する方向で変更された。

 だが、彼らは知らない。いや、知らないようにしていたのかもしれない。

 真ゲッターがまだ二次移行(セカンドシフト)を残しているということを。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次回

 

流音龍馬

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