神子とのデュエルから数日たった今日、俺は人里で開かれた小さな大会に参加している。小さな子供からおじいちゃんとかもいてとてもフレンドリーな物で、俺も今回は完全にエンタメデュエルを目的に参加して、今決勝戦を戦っているところだ。
「バトル!《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》で攻撃だ!」
神子のデュエルを終えてから俺なりにいろいろ考えた。俺が求める強さとエンタメの両立はかなり難しい。強さを求めるとエンタメから、エンタメを求めると強さから離れていってしまう。正反対の二つを合わせ持つためには、神子や妖夢と戦った時のあの力を自分の意思でコントロールできるようにならなきゃ……一歩間違えれば道化師とのデュエルみたいになるわけにもいかないからな。
「課題は山積みか……」
「どうしたの?」
対戦相手の男の子の言葉で我に返る。
おっといけない。自分のことは後にして、今はこのデュエルに集中しないと。楽しめるデュエルは全力で楽しんで、楽しませる!
「《EMファイヤ・マフライオ》の効果発動!ペンデュラムモンスターの《オッドアイズ》が戦闘でモンスターを破壊したことで、《オッドアイズ》の攻撃力を200上げて、もう一度攻撃ができる!これで終わりだ!」
オッドアイズの攻撃を受けて男の子のライフが0になり、デュエルが終わる。観客から沢山の拍手を貰いながら、俺は対戦相手の男の子の所へ向かい「ありがとうございました、いいデュエルでした」と言って握手をした。
このデュエルで、見てる人たちも、対戦する人も、みんな笑顔にできた。やっぱりデュエルはこうでなくっちゃダメだ。これが俺の目指すエンタメデュエルなんだって改めて思っう。
「さてと、これからどうしようかな」
とくにやることもないし、たまにはこのまま帰ってゆっくりしようかな?
「あ、あの!榊遊矢……さんですよね?」
家に帰ろうと歩き始めたその時、後ろから誰かに呼び止められた。
聞きたことない声だな…誰だろう?
振り向いてみると、そこには肩まである水色の髪に右は青、左は赤、二色の瞳を持った女の子が立っている。
「私、多々良小傘って言います!私にエンタメデュエルを教えてください!」
「……え?」
「あっ!あの……えっと……ご、ごめんなさい!いきなり言われても迷惑ですよね」
いきなりのことでビックリしている俺を見て、女の子は急にあたふたし初めた。突然のことで結構驚いたけど、自分より動揺してるこの子を見てるとなんだか落ち着けた。
「あははは、とりあえず何処か座れる場所でゆっくり話そうか」
「は、はい!」
ここら辺で座って話ができる場所ってどこだろう…あ、そうだ。きっとこの子もデュエリストなんだしここは。
そうして俺たちはいつものカードショップまで移動した。
人里から歩いて数分でカードショップに到着。カウンターに座ってる蓮子さんに挨拶してデュエルスペースにある椅子に座った。小傘も机を挟んで向かい側に座る。
店内には俺たち以外にも数人のお客さんも少しいるけど、誰もいないとかえって話しづらいし、人が沢山いても落ち着いてゆっくりは話せないからこのくらいがちょうどいい。
「えっと……小傘だっけ?どうしてエンタメデュエルを教えてほしいんだ?」
とりあえず俺が一番気になることをぶつける。
エンタメデュエルは相手や見ている人を楽しませるための物で、必ず勝てるものじゃない。まあ俺は楽しませたうえで勝ちたいんだけどね?
「私は人の心を食べる妖怪で、とくに驚きの感情を食べるんです。でも私驚かすのとか、怖いのとか苦手で…」
そう話す小傘は「はぁ……」とため息をこぼす。
妖怪なのに怖いの苦手なんだ…とは言えないな。なんだか本人も気にしてるみたいだし。見た目も普通の女の子だから、きっと中身だって普通の女の子と何も変わらないんだ。
「その日もお腹を空かせてふらついてたら、そこでちょうど遊矢さんのデュエルを見たんです!びっくりしました!デュエルを見た人たち、戦ってる相手までみんな笑顔で遊矢さんのデュエルに驚いてるんです!私も遊矢さんみたいなデュエルがしたい。そうやって生きていけたら素敵だなって!」
目を輝かせながら話す小傘を見て、俺は泣きそうになってた。いや、半分ぐらいは泣いてたかもしれない。
自分のエンタメデュエルを見て、同じくエンタメデュエリストになろうって子が出てくるなんて……
「俺も誰かの目標になれたんだ」とこれまでにない喜びを感じてると、「大丈夫ですか?」と心配そうに俺の顔を見てくるから「大丈夫」と答えて目に溜まってた涙を拭って笑った。
「そういう事なら俺も協力するよ。一緒に頑張ろうな!」
「はい!頑張ります!」
さて、本格的に教えることになったけど……まずは何をすべきなんだろうな?エンタメデュエルは基本的に十人十色。正解がないものだ。けど、全部に共通してることだってある。それは
「それじゃ、まずはデッキ作りからだな」
「デッキ作り……ですか?」
俺の言葉に小傘は首をかしげる。
マジックだってなんだって、まずは種を仕込まないと始まらない。エンタメデュエルも同じ。デッキの中に奇跡を起こすための布石がないと、奇跡は起こらない。たくさんの複線をデッキに仕込んでおくことで、いざというときにそれを回収できる。
俺がそう説明すると小傘は「なるほど!」と言って納得してくれた。
「ちなみに小傘はどんなデッキを使ってるんだ?」
俺が聞くと小傘は少しだけ得意げになって「じゃーん!」と言わんばかりに一枚のカードを取り出して、俺に見せてきた。けど、そのカードを見た瞬間、俺は自分の目を疑った。
「こ、このカードって………」
「私のお気に入りで、私と同じオッドアイなんです!」
小傘が俺に見せてきたカードは、俺がペンデュラムカードを手にする前に使っていたエースモンスター《オッドアイズ・ドラゴン》だった。このカードは俺が初めてペンデュラムカードを手にしたときに《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》に書き換わったはずなのに、どうして小傘が……
「小傘はどこでこのカードを?」
「えっとですね……たまたま無縁塚を散歩していたら道端に落ちてたんですよ!これも運命かな~って」
「ま、まあいいか。それじゃ《オッドアイズ・ドラゴン》を主軸に魅せるデュエルのためのデッキを作っていこう」
小傘のデッキを見る限り、このままじゃオッドアイズは輝けない。デッキの主役に選ぶんだから、その能力を最大限に、それもここぞと言うときに使えなきゃ意味がない。
「あ、でも具体的にどうすればいいんですか?」
「まずはオッドアイズを出すためのギミックが必要だ。あとはオッドアイズを守るカードや、能力を活かすためのカードなんかも」
俺の話を聞きながら必死にカードとにらめっこする小傘を見て、うれしい反面、外の世界のことを思い出していた。小傘のように水色の髪で元気で、ちょっと不思議な友だちのことを。
そういえばアイツも初めは俺のこと師匠とか言ってたっけ。今、どうしてるのかな?他のみんなは?
「────今さら……だよな」
そう呟いた俺の声は、小傘にはもちろん他の誰にも聞こえなかったと思う。
それから数時間後、小傘の新しいデッキは完成したけど、夕暮れ時ということで実践練習はしたからということになった。
「また明日ね!師匠!」
「師匠って……また明日な」
俺に手を振って笑って帰っていく小傘の姿を見送る。
それにしても師匠か……本当にそっくりだ。
俺はある場所に向かうために歩き出す。そこは人里からほんの少し離れた場所にある古ぼけた木製の橋。
「いつも人がいなくて助かるな」
橋の塀の真ん中に外へ足を出すようにして座り込む。この時間帯だと沈みかけている夕日の光が反射して、橋の下に流れている川も赤くなっている。
この景色を見ていると何だか落ち着く……舞網市似たような場所があったからかもな。
首から掛けているペンデュラムを外して、目の前で揺らし初める。ペンデュラムは少しずつ振り幅を増していく。俺はそれを何も考えなくなるまでただ見続けた。
◇
「今日はあんまりいいネタがありませんでしたね……」
空を飛びながらそんな愚痴をこぼす。
確かに毎日毎日いいネタが転がってるわけではないのですが、新聞書くこっちからすれば何かないと失業してしまうので、定期的に何か起こって欲しいです。でもまあ、それだけ幻想郷が平和という捉え方もできるんですけどね。
そんなことを考えていると、もう沈みかけている夕日とその光によって赤くなっている川が見えた。
「あや?もうこんな時間ですか」
季節の変わり目は夜になるのが早いですね。今日のところはこれで帰るとしましょう。
進路を妖怪の山に戻ろうと思ったその時、さっき見えた川に架かっている橋の塀に誰かが座っているのが見えた。あそこは普段人も妖怪も行かない場所なので、私には誰がいるのかはすぐにわかった。
「遊矢さん……」
私は進路を変更して、その橋に向かった。
橋の真ん中に着地すると、遊矢さんも私に気づいたみたいで「文か?」と声をかけてくれた。でもその声はいつもみたいな明るい声じゃなくて、すごく暗くて沈んだような声だった。
遊矢さんがここに来てるってことは、きっと何かあったんですね。
「どうかしましたか?」
話しかけながら遊矢さんの隣に座る。
「ちょっとな」という遊矢さんの横顔はとても辛そうで、その瞳は目の前の夕日じゃなくて、もっと遠くを……いや、ここじゃない何処かを見ているみたいです。
「今日、外の世界のことを思い出したんだ。……正直怖かった。思い出すまで忘れてたんだ。絶対に忘れたくない、忘れちゃいけないことなのに」
そう言った遊矢さんは頭につけているゴーグルをつけてうつ向いた。
なんて声をかければいいんでしょうか……こんなに辛そうにしているのに私には……
「外の世界を忘れてしまうのは、そんなに……そんなに許されないことなんでしょうか?」
私にはもうかけられる言葉がこれくらいしかなかった。
訳も分からずに幻想入りしてしまって、今まで大切にしていたものをすべて置いてきてしまった遊矢さんの気持ちが、何も失って来なかった私にわかる訳がない。
「幻想郷にいればいるほど外の世界からは忘れられてしまう。遊矢さんだって知ってるはずです。もう外の世界で遊矢さんを覚えてる人はいないのに……」
「それでも」
うつ向いていた遊矢さんは顔をあげて、私の目を真っ直ぐ見る。ゴーグル越しに見えるその瞳はさっきまでの物とはとは違い、とても力強かった。
「それでも……俺は忘れない。俺が俺である限り、忘れることなんて許さない」
「そう……ですよね。遊矢さんならそう言うと思ってました。変なこと言ってすみません」
遊矢さんは「そんなことないよ、ありがとう」と最後に笑ってくれました。
私には……私が遊矢さんから奪ってしまった物でできた心の穴を埋めてあげることはできないんでしょうか?
◇
師匠こと遊矢さんにエンタメデュエルを習い初めてから一週間近くがたった。魅せるデュエルのやり方とか、見ている人や対戦相手を騙したりするためのプレイングとか、覚えなきゃいけないことは沢山あったけど、一生懸命それを覚えて、エンタメデュエルも形になってきた……と思う。
そして今日、いつものショップで定期的に開かれる大会にでることなった。私は大会に出るのは初めてで、スッゴク緊張していると、師匠が「大丈夫だよ」って声をかけてくれた。
緊張しすぎはダメだ!深呼吸、深呼吸!……それに練習中に師匠の顔が少し曇る時があったし、恩返しもかねて師匠のこころが晴れるようなデュエルをしないと!
店員さんに呼ばれて前に出る。
大丈夫、もう緊張はしてない。むしろドキドキしてる。これが私のデビュー戦、絶対成功させるんだから!
「それじゃ初めるよ!第一回戦、多々良小傘さん対秦こころさん!」
へぇ……相手の人、こころさんって言うんだ……ってあれ?秦こころ?
聞き覚えのありすぎる名前に気づいて目の前を見てみると、そこには腰まであるピンクの長い髪、無表情でこっちを見つめる瞳。私と同じ付喪神の友達、こころがいた。
「こころも大会に出てたの!?」
「うん。でも私は小傘が相手でも容赦はしない。昨日の友は今日の敵って言うから」
い、言わないよ!?ずっと友達でいいよう!?
私がそう言うとこころは無表情ながらに少し笑ったような気がした。
こころが相手でちょっとビックリしたけど、今度はこっちがビックリさせる番。師匠から教えてもらったことも頭に入ってる。あとはこの本番で成功させるだけだ!
「「デュエル!!」」
小傘VSこころ
「私の先攻!」
まずは始めの手札5枚で何ができるか考える。そして何ができるかわかったら、一番最初にしなきゃいけないことは……ネタの仕込み!!
「まず私は《矮星竜プラネター》を召喚!」
レベル4 光属性 ドラゴン族 攻1700 守1200(攻撃表示)
「さらにいくよ!魔法カード《手札抹殺》!互いのプレイヤーは手札をすべて捨てて、同じ枚数カードをドローする!」
小傘
手札:3→0→3
捨てたカード
ビックバン・シュート
霊廟の守護者
スキル・サクセサー
こころ
手札:5→0→5
捨てたカード
儀式魔人プレサイダー
儀式魔人プレコグスター
儀式魔人ディザーズ
レスキュー・ラビット
弱体化の仮面
「カードを1枚伏せてターンエンド!この瞬間、《矮星竜プラネター》の効果発動!このカードを召喚したターンのエンドフェイズにデッキから闇または光属性レベル7モンスターを手札に加えることができる!加えるのは……《オッドアイズ・ドラゴン》!」
小傘
ライフ:8000
手札:4枚
モンスター
《矮星竜プラネター》
魔法・罠:1枚
「それじゃ私のターン、ドロー」
こころ
手札:5→6
「手札を交換してくれたお陰で随分と動けるぞ。魔法カード《儀式の下準備》発動。デッキから儀式魔法を選択し、そのカードに記してある儀式モンスターと共に手札に加える。私は《仮面魔獣の儀式》と、それに記されている《仮面魔獣マスクド・ヘルレイザー》を手札に加える」
こころ
手札:4→6
儀式モンスター?あまり見ない召喚方だな……でもたしか儀式召喚には召喚する儀式モンスターのレベルと同じレベルになるようにモンスターをリリースしなきゃいけなかったはず。相当なコストがいるんじゃ………
「《仮面魔獣の儀式》発動。レベル合計8になるようにモンスターをリリースしなきゃいけないけど、墓地の《儀式魔人》たちは墓地から除外することでそのレベル分のリリースとして扱える」
「え?ってことは………」
「墓地のレベル1《儀式魔人ディザーズ》、レベル3《儀式魔人プレコグスター》、レベル4《儀式魔人プレサイダー》、合計レベルは8!儀式召喚!いでよ《仮面魔獣マスクド・ヘルレイザー》」
レベル8 闇属性 悪魔族 攻3200 守1800(攻撃表示)
うっ、私の《手札抹殺》が完全に裏目に出ちゃってる……しかも攻撃力3200……私の《オッドアイズ》じゃ倒せないし、これって不味いかも……
「このままバトル。《マスクド・ヘルレイザー》で《矮星竜プラネター》に攻撃」
マスクド・ヘルレイザー 攻:3200
↓
矮星竜プラネター 攻:1800
こころのモンスターの攻撃を受けてライフが6600になる。
ちょっと削られちゃったけど、この程度ならまだまだ大丈夫!
「この瞬間、儀式召喚のコストとして除外した《儀式魔人プレコグスター》《儀式魔人プレサイダー》の効果発動。《儀式魔人プレコグスター》の効果で、相手に戦闘ダメージを与えた時、相手は自分の手札を一枚選んで捨てる」
こころに言われて私は自分の手札を見つめる。
手札破壊効果……このデッキの切り札《オッドアイズ》は捨てられないし、かといって墓地で発動できるカードは手札にない。
私は手札の中で一番発動条件が厳しい《無力の証明》を捨てる。
「次は《儀式魔人プレサイダー》の効果。モンスターを戦闘破壊したことで1枚ドローする」
カードを1枚ドローしてこころの手札が4枚になる。対して私はさっき1枚捨てたから3枚。
手札の枚数に差が出ちゃったな……でもただでは転ばないよ!
「私のドラゴン族モンスターの破壊をトリガーに、墓地の《霊廟の守護者》の効果発動!このカードを特殊召喚する!」
レベル4 闇属性 ドラゴン族 攻0 守2000(守備表示)
「モンスターを残したか……カードを2枚伏せて、ターンを終了する」
こころ
ライフ:8000
手札:3枚
モンスター
《仮面魔獣マスクド・ヘルレイザー》
魔法・罠:2枚
こころがターンを終えて、私のターンになる。今の私の手札のカードじゃ、あのモンスターを倒すことはできない。さらに言えばあのモンスター以上の攻撃力を持つモンスターはデッキに入ってない。
でも、だからって勝てないやけじゃない。カード同士の連携でどんなモンスターだって突破できる。この世界に無敵はない!
「私のターン、ドロー!」
ドローカードを確認して、私は回りに見えないように笑う。引いたのはモンスターカード。これでコストは確保できた。
「お楽しみの始まりだ!《霊廟の守護者》をリリース!」
私の言葉を受けて《霊廟の守護者》が光になって消える。このモンスターはドラゴン族モンスターをアドバンス召喚するとき、2体分のリリースとして扱うことができるカードだ。
────さあ、一緒に戦おう相棒!
「本日の主役!世にも珍しい二色の眼の竜をご覧あれ!《オッドアイズ・ドラゴン》!!」
レベル7 闇属性 ドラゴン族 攻2500 守2000(攻撃表示)
「来た、子傘の《オッドアイズ》……でもそれじゃ私のモンスターは倒せない」
「そうでもないよ!手札のモンスターカード《ADチェンジャー》を捨てて魔法カード《ワン・フォー・ワン》発動!デッキからレベル1モンスター《サクリボー》を特殊召喚!」
レベル1 闇属性 悪魔族 攻300 守200(攻撃表示)
「攻撃力300?狙いが読めない」
確かにこの2体だけじゃこころのモンスターを倒すことはできない。だけど手札に残ったこの1枚のカードを使えば話は別。倒すどころか逆転を通り越してフィニッシュまで行っちゃうんだからね!!
「《サクリボー》をリリースして魔法カード《ミニマム・ガッツ》発動!相手フィールド上のモンスター1体の攻撃力を0にする!」
こころのフィールドには《仮面魔獣マスクド・ヘルレイザー》しかいない。よって必然的に《マスクド・ヘルレイザー》の攻撃力が0になる。さらに《ミニマム・ガッツ》には、この効果を適応したモンスターを戦闘で破壊した場合、そのモンスターの元々の攻撃力分のダメージを与える効果があって、《オッドアイズ》には戦闘で破壊したモンスターの攻撃力の半分の数値を相手のライフに与える効果がある。
「《サクリボー》がリリースされた場合、私はカードを1枚ドローできる!……よし!このままバトル!《オッドアイズ》で《マスクド・ヘルレイザー》に攻撃!」
この戦闘ダメージと効果すべての合計ダメージは7300。そしてさらに────
「私は墓地の罠カード《スキル・サクセサー》を除外して効果発動!《オッドアイズ》の攻撃力を800ポイントアップさせる!」
攻撃力0の《マスクド・ヘルレイザー》に対して私の《オッドアイズ》は攻撃力3300。さっきの計算にアップした攻撃力分のダメージを加算すると8100。
届いた!これでワンショット・キルが成立!!
「いっっっけ!『スパイラル・フレイム』!」
この時、私は気づかなかった。私が攻撃宣言した時、こころが少しだけ笑ったことを。それはデュエルが始まる前に見せてくれた優しい物ではなく、射程内に獲物が入った猫のような表情をしていたことを。
「攻撃宣言時、罠カード《リフレクト・ネイチャー》発動。このターン、相手が発動したカードによって私がダメージを受ける時、そのダメージは相手が受ける」
不味いと思った時にはもう遅かった。《オッドアイズ》も《ミニマム・ガッツ》の追加効果も共に強制効果。しかも私は既に攻撃宣言をしてしまっている。逃れるずべはない。
「くっ」
《オッドアイズ》が放った『スパイラル・フレイム』によって《マスクド・ヘルレイザー》は破壊され、こころに3300ポイントのダメージが入る。
こころのモンスターを戦闘によって破壊したことで2枚のカードの効果が強制的に発動。《ミニマム・ガッツ》の効果を上乗せした《オッドアイズ》が追撃の炎を放つ。
だがその炎はこころに届くことはなく、こころが発動した《リフレクト・ネイチャー》によって出現した黒い板のような物に弾かれ、私の方に返ってくる。
戦闘ダメージを与えられたけど、それ以上にダメージ受けちゃった。勝てるって確信した時が一番危ないって師匠にあれほど言われたのに……
今更悔やんでもどうしようもないので、次の手を考える。お互いのライフは4700対1800。モンスターこそ破壊できたが、失ったライフは大きい。
「私はこれでターンエンド!」
せっかく観客が盛り上がってきているのに、ここでデュエルを終わらせるわけにはいかない。────会場が盛り上がってる理由が私がドジを踏んだせいなのはちょっと納得いかないけど。
「私のターン、ドロー」
フィールドにあるカードだけで次のターンを凌げるかどうかは相手次第。相手の手札にモンスターを直接破壊するカードがあれば、私の負けはほぼ確定だ。
「私は《レスキューラビット》を召喚」
レベル4 地属性 獣族 攻300 守100(攻撃表示)
「このモンスターを除外して効果発動。デッキからレベル4以下の同名通常モンスター2体を特殊召喚する。《仮面呪術師カースド・ギュラ》2体を特殊召喚」
レベル4 闇属性 悪魔族 攻1500 守800(攻撃表示)
レベル4 闇属性 悪魔族 攻1500 守800(攻撃表示)
一瞬でフィールドにレベル4のモンスターが2体揃う。同レベルのモンスターが複数揃ったことでエクシーズ召喚の条件が整った。
ここで攻撃力2500以上のモンスターを出されると厳しいくなるから、なんとか妨害したいんだけど、私の伏せカードは《闇よりの罠》。自分ライフが3000ポイント以下の時にライフを1000ポイント払って、墓地の通常罠カードを除外して同じ効果を得るカード。
けど私まだ罠カードなんて1度も使ってないよ!?なんにもできないじゃん!?
「私はレベル4の────」
ああ!何かないか、何か────あっ!そうだ!
私は慌ててデュエルディスクを操作して自分の墓地のカードを確認する。
一度も罠カードを使ってなくったって、私の墓地には罠カードが存在してる。そうあったんだ。一度だけ罠カードを墓地に遅れるタイミングが。
「ライフを1000ポイント払って《闇よりの罠》を発動!墓地から罠カード《無力の証明》を除外して、その効果をコピーする!そしてその効果は────相手フィールドのレベル5以下のモンスターをすべて破壊する!」
こころのモンスターの効果で墓地に捨てざるを得なくなった《無力の証明》が、こんな形で役に立つなんて思ってもみなかった!ギリギリで気づけてよかった!
「ちょっと驚いたけど────まだなんとかなる。罠カード《貪欲な瓶》発動。墓地のカード5枚をデッキ戻して1枚ドロー」
こころは墓地から《レスキューラビット》2枚と《仮面呪術師カースド・ギュラ》2枚、《儀式の下準備》をデッキに戻して1枚ドローする。
カード引いたこころは無表情ながらに嬉しそうな顔をした。恐らくいいカードを引いたらしい。
「面白いカードを引いた。でも今はこっち、フィールド魔法《Sinワールド》を発動」
次の瞬間、回りの風景は紫色の鏡を敷き詰めたような世界に変化する。ソリッドビジョンだとわかっていても、少し気味が悪い。
そこからは何をすることもなく、私のターンを渡した。
こころの場にはモンスターも、伏せカードもない。手札のカードとフィールド魔法の効果は気になるけど、推測の域をでないこと考えてもしかない。ここは攻める!
「私のターン、ドロー!」
引いたカードは罠カード。できればモンスターカードを引いてダメージを稼ぎたかったけど、仕方ないか。
「《オッドアイズ》で直接攻撃!『スパイラル・フレイム』!」
「そこはライフで受ける」
これでこころの残りライフは2200。《オッドアイズ》の一撃でデュエルが決まるラインまで来た。
「私はカードを1枚伏せてターンエンド!」
「このターンが勝負、私のターン。私はドローフェイズを行う代わりに《Sinワールド》の効果発動。デッキから《Sin》モンスター3枚を相手に見せて、相手が選んだカードを手札に加える。はい」
すると私の目の前に3枚のカードが表示される。
────全部同じカードじゃん。
「それじゃ真ん中で」
「残りはデッキに戻す。エクストラデッキの《サイバー・エンド・ドラゴン》を除外して、今手札に加えた《Sinサイバー・エンド・ドラゴン》を特殊召喚」
レベル10 闇属性 機械族 攻4000 守2800(攻撃表示)
「バトル。《Sinサイバー》で《オッドアイズ》に攻撃。『エターナル・エヴォリューション・バースト』!」
2体の攻撃力の差は1500、私の残りライフは800。ギリギリなんとかなる!
さらに私は墓地から
「罠カード《ダメージ・ダイエット》発動!このターン、私が受けるダメージはすべて半分になる!これで受けるダメージは750!私のライフは50残る!!」
「むっ、でも《オッドアイズ》は破壊でき────あれ?破壊されてない?」
状況がつかめないこころは眉を潜める。実は破壊される瞬間に、モンスターが戦闘破壊されるときに身代わりになってくるれる能力を持つ、《サクリボー》を墓地から除外したのだ。
「まだそんなカードが……カードを伏せてターンエンド」
ふぅ……なんとか凌げた。とは言っても状況がいいわけじゃない。手札の魔法カードじゃこの状況は打開できない。次のドローにこのデュエルの勝敗がかかってる。
「私のターン────ドロー」
いつもよりゆっくりカード引く。こころも、観客のみんなも、今私だけを見てくれてる。ざわつく会場の空気を感じながらドローしたカードを確認して私は笑った。
デッキは答えてくれた。次は────私が答える番だ!!
「行くよ!速攻魔法《旗鼓堂々》!墓地の装備魔法をモンスター1体に装備させる!私の《オッドアイズ》に、墓地の《ビックバン・シュート》を装備する!これにより攻撃力が400ポイントアップし、貫通効果を与える!」
「でも《Sinサイバー》の方が攻撃力が上、しかも攻撃表示なら貫通効果は意味を成さない」
「だったら墓地から《ADチェンジャー》を除外して効果発動!フィールド上のモンスター1体の表示形式を変更する!これで《Sinサイバー》を守備表示に変更する!」
これで攻撃力が2900になった《オッドアイズ》で守備力2800の《Sinサイバー》を倒すことができる。
でもこれだとわずかに足りない。だから────
「これが私のラストスペル!《スマイル・ワールド》発動!お互いのモンスターはフィールド上のモンスターの数×100ポイント攻撃力をアップさせる!」
今お互いのフィールドにはモンスターは2体。お互いに200ポイント攻撃力が上がって意味が無いように見えるけど、相手は守備表示。攻撃力の上昇はダメージ計算には関係ない!
「バトルだ!《オッドアイズ・ドラゴン》で《Sinサイバー》に攻撃!『スパイラル・フレイム』!!」
《オッドアイズ》が放った炎が《Sinサイバー》を襲い、爆発と共に破壊される。爆発によって生まれた爆風がフィールドを駆け巡り、私の髪を靡かせる。
この風が私に勝利を運んでくれる!
「モンスターを戦闘で破壊したことで《オッドアイズ》の効果発動!破壊した相手モンスターの元々の攻撃力の半分のダメージを相手に与える!」
戦闘ダメージを受けて1900になっていたこころのライフに、《Sinサイバー》の攻撃力の半分、2000ポイントのダメージが入る。
「…………参った」
その言葉とともにライフが0になる。
記念すべきデビュー戦は勝利を飾ることができた。
デュエルが終わり観客からの歓声と驚きの感情に、心もお腹も一杯になったところでこころの所へ向かった。
「小傘……強くなった?」
「そこは驚かすのがうまくなったって言って欲しいな~」
だって今日から私もエンタメデュエリストなんだから。
そう告げるとこころは、それじゃこの後も頑張ってね。っと応援の言葉をくれた。私は力強く頷き、右手をこころに差し出した。少しの沈黙の後に、私の意図を察してくれたらしく差し出した私の右手に自分の右手を重ねて、軽く握ってくれた。
師匠から教えてもらった大切なことの1つ。デュエルを一緒に盛り上げてくれた相手にしっかり感謝の言葉伝えること。
「ありがとうございました、いいデュエルでした」
どうもみなさん、空。(てんのうみ)です。
年の変わり目で体調を崩ずしてしまい、更新が遅れてしまいました。
みなさんもお体には気を付けて。
さて、今回のお話、いかがだったでしょうか?
今回はストーリーメイン。段落わけやキャラの視点を意識したり、デュエルパートでは情景描写を増やしたり、数値や手札の枚数の変化をキャラの思考の中で表現してみました。
少し見づらくなったかもしれません。
ご意見お願いします。