「はぁ……ダメだ……眠れない」
時間は深夜一時を過ぎているというのに妙に目が覚めて寝付けない。無理に寝ようと目を瞑っても、頭の中がモヤモヤしてしまう。
このままではいつまで経っても寝付けそうになし、少し夜風に当たろうと思って部屋をでだ。夜の永遠亭はとても静かで物音一つしない。まるで世界に私しかいないみたいだ。永遠亭の廊下は外と隣接してるから、この季節になると少し肌寒いけど、今の私には廊下を吹き抜ける夜風が心地よく感じた。
縁側に腰を下ろして夜空を見上げると、満月と目が会った。私は気持ちの整理を付けたときは、よく月を見る。月を見ていると、とても落ち着いて物事を考えられるから。
眠れないのは、たぶんお昼に射命丸と話して、道化師のことを思い出したからだ。
私は……何もすることができなかった。手も足も出なくて、遊矢と妖夢に助けてもらって────結果的に遊矢が怪我をした。
悔しい……情けない……頭に来る……自分の弱さが初めて嫌になった。自分の行動で、誰かが傷付くことを知った。射命丸も……こんなふうに苦しかったのかな?お店にいたときは、射命丸の話に驚いてわからなかったけど────。
「結構辛いんだね」
誰に話している訳でもないのに言葉が漏れてしまった。溜め込むより、口に出した方が楽になる。無意識にそう思ったのかもしれない。
「って、いけない、いけない」
両手で頬を軽く叩く。
そうだ、今私にできることは弱音を吐くことじゃない。二度とああならないように強くなることだ。
あ、でもどうやったら強くなれるのかな?今まで通りじゃダメだろうし……。
そう頭を悩ませていると、廊下の向こうから足音が近づいて来た。こんな時間に誰だろう────私はとっさに柱の裏に隠れて様子を見る。歩いて来たのは────師匠と……蓮子さん!?
「師匠ならわかるけど、どうしてこんな時間に蓮子さんが……」
二人がある行って行った方向にあるのは────診察室。
何か嫌な予感がした私は、二人の後を追った。
◇
「状態は悪くなる一方ね」
診察書を見ながら永琳さんがため息をつく。
大会が終わってから数週間立っているのに、体の痛みが抜けない。原因は決勝トーナメントでの遊矢君の暴走を止めようとして、
「もう使っちゃだめって言ったでしょ?死ぬかもしれないってことがわかってないのかしら?貴女といい、遊矢君といい、どうして医者泣かせの患者が多過ぎよ」
「あははは、非常事態でしたから」
「貴女に死なれると私が紫に殺されてしまうわ。いい?誰か後継者を見つけておきなさいね」
定期検診はこれで終わりよ。────立ち上がる永琳さん一緒に立ち上がって、お気に入りの帽子を被る。
「私もまだメリーや後輩たちと別れたくないですから死ぬつもりはありません。ですが────信じるもののためなら躊躇無く使います」
それだけ言い残して診察室を出た。
「はぁ……だから貴女は強いんでしょうね。けど、その強すぎる信念が貴女自身を滅ぼさないといいけど」
「あれ?鈴仙ちゃん?」
診察室を出ると、扉の前で鈴仙ちゃんが立ってた。ま、不味い。回りの人に張れないようにするために、この時間帯に診察受けてるのに……。
「あの……だ、大丈夫なんですか?」
あちゃ~やっぱり聞かれちゃったか。
「大丈夫だよ。みんなの蓮子さんは無敵だからね」
不安そうに見つめてくる鈴仙ちゃんを安心させるように頭を撫でる。幸い細部までは聞こえてなかったらしい。
「れ、蓮子さん。少しお話いいですか?」
さっきまでの不安そうな顔とは違って何か強い意思を感じる赤い瞳に、私は「歩きながらでいいなら」と了承した。
永遠亭を出て、月明かりに照らされる竹林を二人で歩く。
「それで話って?」
そう切り出すと、鈴仙ちゃんは私の前に回り込んで、深く頭を下げた。
「お願いします!私を強くしてください!」
鈴仙ちゃんの声が無音の竹林に響く。
ど、どうしよう……私、人に物を教えるとか柄じゃないんだけどな……
けど、彼女が────一人のデュエリストが私を頼ってきている。それに答えてあげるのが、デュエルモンスターズ関わった者の務めってやつかな?けどその前に────。
「ねえ、どうして強くなりたいの?今のままでも十分強いと思うけど?」
「今のままじゃダメなんです!今の私じゃ……大切なものを守れないんです。もう守られるだけは嫌なんです!大切な人たちを守れるくらい強くなりたいんです!」
その言葉を聞いたとき、私は決めた。私の力を渡すとしたらこの子だ────と。
私が力を求めたのは、居なくなってしまった親友を取り戻したかったから。かけがえのないものを失ったときの言葉にできない喪失感と、なにもできなかった自分の無力さ……あんな思いは誰にもしてほしくない。
私の願いはもう叶った……この力はもう必要ない。なら大切なものを守りたいと願うこの子に託そう────そう思った。
「私の特訓は厳しいよ?着いてこれる?」
「ッ!はい!頑張ります!」
ゆっくり療養でもしようかと思っていたげど……これはたま忙しくなりそうだ。
◇
そして翌日、私は蓮子さんの店に呼ばれた。店の扉には『本日臨時休業』の立て札がかかっている。
「何もそこまでしなくても……」
蓮子さんの行動にはいつも驚かされるけど、その行動力等によってできた特訓はどんな物なんだろう?私ちゃんと着いて行けるかな?────不安は数え切れないほどあるけど、それに負けないくらいやる気と強い意思は持ってきた。だからきっと────大丈夫!
意を決して店の扉を開くと、対戦テーブルの上に座りながら、いつも被っている帽子を指先でくるくる回している蓮子さんがいた。
「来たね……それじゃあ早速始めようか」
「な、何をするんですか?」
恐る恐る聞いてみると、蓮子さんは猫のように微笑むと回していた帽子を被り直し、真っ直ぐに私を指差した。
「まず、どうにかしないといけないのは……鈴仙ちゃん自身」
「私……自身……」
「知識とかはやってれば身に付くけど、プレイングやデッキ構築は意識しないと変わらない。とりあえずそこから始めようか」
────ま、まともだ。決して蓮子さんのことをそういうふうに思ってたわけじゃないけど、いつもの蓮子さんからは出てこない言葉が一気に出てきたことに驚きを隠せない。それだけ本気になってくれてる────そう思うと嬉しくて、それに答えたくて、手に力が入る。
「まあ、デッキ構築はプレイングが伴えばわかるようになってくる。というわけで、プレイングからやっていくよ!」
そういうと、何故か蓮子さんはカウンターの方にまわって、何か準備をし始めた。
「鈴仙ちゃん、あと右に三歩、前に二歩動いて」
「あ、はい」
言われた通りに移動すると、一枚だけ色が違うタイルの上に立っていた。一枚だけ違うってことは何かの目印?でもこの感じどこかで……あっ。
この仕掛けが何かを察して、蓮子さんの方を見ると、満面の笑みで私にグットポーズを送りながら、何かのボタンを押していた。
逃げようとも思ったが、動くための足場は既になく、重力に足を引っ張られて、床に出現した穴に吸い込まれるように落ちていった。
バフっと、何か柔らかい物上に落ちた。てゐの落とし穴によく引っ掛かってるから、こういうのには慣れてはいるけど……クッションを用意してくれるやさしさがあるんなら、普通に案内してくれればいいいのに……。
まあ、蓮子さんならやりそうだけど────そう飲み込んで、起き上がって辺りを見渡す。見た感じは、まるでどこかの遺跡のような雰囲気で、一応明かりはついてるけど、薄暗い。空間はそれほど広くなくて、横幅は私が両手を広げたくらい、天井は低くジャンプすれば手が届きそうだった。
「落ちてきた位置からして、店の地下だろうけど……まさかこんなふうになってるなんて……」
『おーい、大丈夫だった?』
頭の上の方から蓮子さんの声が聞こえる。どうやら天井にスピーカーのようなものがついているらしい。
「もう驚かせないでくださいよ……」
『いや~鈴仙ちゃん飛べるから、大丈夫だと思ったけど……』
「ま、まあ確かにそうですけど……一言言ってほしかったです」
『ごめん、ごめん。それじゃ特訓を始めていくよ!まずはそのまま真っ直ぐ突き当りまで進んでみて』
蓮子さんに言われた通り進んでみると、一枚の扉に突き当たった。
『その扉の向こうには立体迷路が広がってる。今から鈴仙ちゃんのデュエルディスクに迷路の図面を送るから、それを十秒間だけ見て、最短ルートを見つけ出し、一分で迷路を突破してもらうよ。ちなみに迷路は挑戦する度に変わるよ』
「わ、わかりました」
『行くよ……スタート!』
蓮子さんの掛け声とともに、ポケットに入っているデュエルディスクの通知音が響いた。
デュエルディスクの画面には迷路の図面と十秒間のカウントダウンが表示されている。たった十秒間で初めてみる迷路の図面を頭に入れて、最短ルートを見つけ出さなきゃいけないなんて……。
初めての作業に悪戦苦闘している間に十秒という短い時間は過ぎ去ってしまった。すると目の前の扉が開き、迷路の入口が現れる。図面はなんとなく頭に入ったけど、まだ最短ルートが見つけ出せてない……こうなったら、走りながら最短ルートを導き出す!
頭の中がこんがらがりそうになりながら、迷路に足を踏み入れた。
「だ、だめか……」
そんな甘い考えじゃ迷路を突破できるわけもなく、途中で迷ってしまい、制限時間が過ぎると迷路の床が動き出して扉の前まで強制的に戻されてしまった。
それから何回かチャレンジするも結果は同じくダメだった。
このままじゃダメだ、どうにかしないと……。悩んだすえ私は一つの考えにたどり着く。
「────よし、考え方を変えよう」
どうしても上手くいかないなら、今までの考え方を変えるしかない。
図面をすべて頭に叩き込む時間がないなら、要らない情報をすべて切り捨てて、必要なものだけを覚えるしかない。最短ルートを見つけられないなら、明らかに行き止まりなルートを潰していけばいい。
「やるんだ、誰のためでもない……自分のために」
軽く頬を叩いて気合いをいれる。────次は行ける気がする!
◇
『────蓮子、貴女も私に似てこれからたくさんの無茶をするんでしょうね。だから
────────。貴女は────のために────さい。
忘れちゃダメよ?次に会うときは帽子が似合う女になってなさいね?』
「────なんだ……夢か……」
いつの間にか寝てしまったみたいだ。それにしても懐かしい夢だな……たしかお婆ちゃんの所に行って、この形見の帽子を貰ったときの……
「って、いけない。鈴仙ちゃんが頑張ってるのに私が居眠りなんて」
状況確認のためにデュエルディスクを除き混む。
どれどれ……おっ、初めのやつは突破したみたいだね。今何ができて、何ができないのか。それを瞬時に判断することが伝わったかな?次も大変だろうけど、それらを乗り越えた後に手に入れられるものは大きい。
君がどこまで強くなるか、ここで見させてもらうよ。
「────困るんだよね、余計なことされると」
閉めたはずの扉から吹き込んだ風で髪が靡く。扉の方を見るとフードを被り、仮面を着けた少年が扉に寄りかかっていた。
「お店の前の臨時休業の立て札見えなかった?」
「いや休業中悪いんだけど、できればウサギさんの居場所を教えてくれると嬉しいんだけどな」
鈴仙ちゃんの居場所?コイツ確か大会では遊矢君に固執してたはず。それなのになんで急に……
「どうしてって顔してるね。簡単に言うとウサギさんは僕たちに必要なものを持ってる。だから盗りに来たってわけ。別に今じゃなくてもいいんだけど、君レベルに強くなられると反って面倒だからね」
肝心なところは簿かしてくる。でもまあ、鈴仙ちゃんを狙ってることだけわかればいいか。今の私にできることはたった一つ。
「表に出なよ。私が相手だ」
「君と戦えるなんて光栄だな……想像しただけでゾクゾクするよ!」
店の外へ出て、デュエルディスクを腕につける。
今地下で鈴仙ちゃんは変わろうと頑張ってる。だったら私も頑張らなきゃ……本当は鈴仙ちゃんの卒業までとっておきたかったけど、ここで使わなきゃこの力を手にいれた意味がない!
「「デュエル!!」」
相手は異質なカードを使ってくる上、神のカードまで使ってる。長期戦はデッキ相性的にも、私の体的にもキツくなる可能性がある。できることなら短期決戦で!
「私のターン、自分フィールドにモンスターがいない場合、《フォトン・スラッシャー》を手札から特殊召喚できる!」
レベル4 光属性 攻2100 守0(攻撃表示)
「さらに《フォトン・クラッシャー》を召喚して、レベル4のモンスター2体でオーバーレイ!エクシーズ召喚!《輝光帝ギャラクシオン》!」
ランク4 光属性 戦士族 攻2000 守2100(守備表示)
「《輝光帝ギャラクシオン》の効果発動!エクシーズ素材を二つ使って、デッキから特定のモンスターを特殊召喚する!」
デュエルディスクからデッキを抜き取り、一枚のカードを手に取った。
大切な後輩のためだ。今日も頼むよ相棒!
「希望の光、黒天に輝く星となれ!光の化身、ここに降臨!《
レベル8 光属性 ドラゴン族 攻3000 守2500(攻撃表示)
先攻じゃこれくらいか。様子見には十分だと思うけど、相手のデッキは得たいが知れない。気は抜かずに堅実に行けるところは堅実に行こう。
「カードを一枚伏せてターンエンド」
「それじゃ僕のターン、ドロー」
さて、どんな動きをしてくるかお手並み拝見だね。
「僕は《Emトリック・クラウン》を召喚。さらにフィールドにモンスターが2体以上いることで、手札から《Emハット・トリッカー》を特殊召喚」
レベル4のモンスターを2体並べて来た。でもどっちのモンスターも私のモンスターを突破することはできない……来るかな?
「それじゃ君のモンスターにも僕のショーを手伝って貰おうかな。速攻魔法《エネミーコントローラー》発動。《トリック・クラウン》をリリースして、このターンの間、君のモンスターをお借りするよ」
すると私の《
「成る程……コントロール奪取か」
「《トリック・クラウン》のカードが墓地に送られたことで効果発動、一ターンに一度墓地から《Em》モンスターを攻守を0にして特殊召喚できる。その後で1000ポイントのダメージを受ける」
あっちの墓地には《トリック・クラウン》の一体のみ、特殊召喚されるのは当然《トリック・クラウン》だ。ターンに一回の制限はあるけど、かなり協力な効果だね。
「レベル4の《トリック・クラウン》と《ハット・トリッカー》でオーバーレイ、エクシーズ召喚。出番だよ《Emトラピーズ・マジシャン》」
ランク4 光属性 魔法使い族 攻2500 守2000(攻撃表示)
攻撃力2500のモンスター……《輝光帝ギャラクシオン》の守備力を越えられたか。ここはリバースカードじゃなくて、手札のこのカードで防ごうかな?
「《Emトラピーズ・マジシャン》の効果を発動。エクシーズ素材を一つ使って、君のドラゴンの攻撃回数を二回に増やす」
「攻撃力3000の二回攻撃……」
「バトル。《トラピーズ・マジシャン》で《輝光帝ギャラクシオン》に攻撃」
くっ……壁モンスターがやられちゃったけど、このターンのダメージを最小限で押さえる。
「《
「私は手札から《クリフォトン》の効果発動!ライフ2000を払って、このターンすべてのダメージを0する!」
ふう……2000のダメージは受けたけど、6000ダメージ受けるの回避できた。
「バトルフェイズ終了時、《トラピーズ・マジシャン》の効果を受けたモンスターは破壊される。僕もカードを一枚伏せてターンを終了するよ」
うまい。《エネミー・コントローラー》でコントロール奪取したモンスターはターンのエンドフェイズに私のフィールドに返ってくる。それを《トラピーズ・マジシャン》の効果と合わせたいいコンボだ。
「そういえばさ、どうして君はあのウサギさんにそこまで肩入れするの?」
どうしてか……簡単に言えば昔の自分に似ているから。力を求める理由も状況も違うけど、目的は同じ。大切なものを守りたいから。
「ちょっとした親切だよ。できれば君みたいなやつらとは関係のないところで笑っていて欲しかったけど」
「これも運命ってやつなのか?」
「そんな運命なんか私がぶっ壊して見せるよ。ドロー!」
手札は二枚。状況は厳しいけど、突破できないわけじゃない!
「魔法カード《死者蘇生》を発動!墓地に眠る《
レベル8 光属性 ドラゴン族 攻3000 守2500(攻撃表示)
「さらに手札から《
これでレベル8のモンスターが二体揃った。体が持つかわかんないけど、可愛い後輩のためなら体張ってみせる。
「レベル8の《
ランク8 光属性 ドラゴン族 攻4000 守3000(攻撃表示)
「────ッ!」
新たな《
やっぱりこの体じゃこっち系のカードを扱うのは少し無理があるな……。
「まずは一体目。君の体がどれだけ持つのかな?」
「ハァ……ハァ……どうしてそれを……」
私と永琳さん、そして鈴仙ちゃんしか知らないはずなのに。にしても私の体の事情を知った上でデュエルしてるなら、結構たち悪いかも。
「バトル!《プライムフォトン・ドラゴン》で《トラピーズ・マジシャン》に攻撃!この瞬間、《
フィールドのランクの合計は14、これで《
「エタニティー・フォトン・ストリーム!!」
攻撃力が上昇した《
「こんなにライフを削られるなんて思ってなかったよ。でも素材として墓地に送られた《トリック・クラウン》の効果で墓地から再び《トリック・クラウン》を特殊召喚。《トラピーズ・マジシャン》の効果でデッキから《Emミラー・コンダクター》を特殊召喚」
つかさずモンスターを二体も揃えるなんてね。モンスターが途切れないのはさすがかな。だけど今の《トリック・クラウン》の効果でさらに1000ポイントのダメージを受けて残りライフは1700ポイント……もう相手にあとはないはず。
「私はこれでターンエンド」
「僕のターン、ドロー」
道化師の手札は3枚、フィールドには2体のモンスター。対する私は手札は0枚、フィールドは《
冷静に盤面を分析しながら額の汗を拭う。これはデュエルが終わる前に私がバテちゃうかも……いや、ここで踏ん張らないと。
「そろそろ本番だよ。フィールド魔法《神縛りの塚》を発動」
フィールド魔法の発動と同時に辺りの風景が一瞬で変わた。荒れた大地、回りには鎖がついた柱が数本出現してる。これは確かコイツの仲間がキングくんたちと戦った時に使っていたダメージが実体化するフィールド魔法。これは神のカードが……来る!
「僕はフィールドの2体のモンスターを生け贄に……《地縛神 Ccapac Apu》を召喚」
レベル10 闇属性 悪魔族 攻3000 守2000(攻撃表示)
フィールドに出現した黒い巨人。そのモンスターから感じるのは、今までに感じたことのない威圧感。見てるだけで鳥肌がたってきそうだ。
「バトル、君も見たことあるとは思うけど、《地縛神 Ccapac Apu》は相手プレイヤーに直接攻撃ができる」
黒い巨人は道化師の攻撃命令を受けてその拳を大きく振りかぶる。そして一気に振り下ろされた拳は私の目の前の地面を殴りつけた。攻撃の衝撃波だけで私の体は宙を舞い、そのまま地面に叩き付けられる。
痛い────すでに限界に近い私の体にとっては本気のデュエルをするだけでも辛いのに、ダメージが実体化するとなればどこまで持つか────。
「大丈夫?まだ続ける?」
「もちろん……続ける。まだデュエルは終わってない」
しっかりしろ宇佐美蓮子────意識が朦朧とする中どうにか立ち上がる。
ライフ残り3000。ここで私が負けたら、次は鈴仙ちゃんがコイツと戦うことに……それだけはダメだ。コイツは私がここで倒す!
「私のターン、ドロー!」
手に力が入らなかったけど、何とかカードを引くことはできた。
「わ、私は《銀河眼の光子竜皇》でオーバーレイ!来い!《ギャラクシーアイズ FA・フォトン・ドラゴン》!」
ランク8 光属性 ドラゴン族 攻4000 守3500(攻撃表示)
「《 FA・フォトン・ドラゴン》の効果発動!一ターンに一度、エクシーズ素材を1つ使って、フィールド上の表側表示のカード一枚を破壊する!」
神のカードはフィールド魔法《神縛りの塚》の効果で対象にはできないけど、あの《地縛神》はフィールド魔法がなければ存在できない!
「フィールド魔法を狙う気だね。永続罠《デモンズ・チェーン》発動。対象モンスターの効果を無効にして、攻撃を封じる。残念だったね」
「────いや、それでいい」
この効果が通ってもよかったけど、神のカードは相手にとって切り札。そう簡単に通るわけがない。ここからは勝負を運に任せる!
「魔法カード《貪欲な壺》を発動!墓地からモンスターカードを五枚、デッキに戻してカードを二枚ドローする」
墓地から《
このドローで《地縛神》が効力できるカードが引けなきゃ私は────。
これほどドローの瞬間に緊張したのはいつ振りだろうか。このデュエルが決して楽しいわけでじゃない。けど、デュエリストとして実力が有る者との戦いで高揚しないわけがない!!
「ドロー!」
引いたカードは────来た……うまくいけばこのターンで!
「自分フィールドに《フォトン》モンスターが存在することで《銀河騎士》はリリースなしで召喚できる!」
レベル8 光属性 戦士族 攻2800 守2600(攻撃表示)
「この方法で召喚に成功した時、自身の攻撃力を1000ポイント下げることで、デッキから《
レベル8 光属性 ドラゴン族 攻3000 守2500(守備表示)
「私はレベル8のモンスター二体でオーバーレイ……はぁ……はぁ……エクシーズ召喚!遥かなる時をさかのぼり銀河の源よりよみがえれ!《No107
ランク8 光属性 ドラゴン族 攻3000 守2500(攻撃表示)
「ハァ……ハァ……」
「これで2体目。そろそろきついんじゃない?」
《
「バト────」
「メインフェイズ、手札の《エフェクト・ヴェーラー》の効果発動。手札から墓地に送ることで、モンスターの効果を無効にする」
しまった……《
「魔法カード《エクシーズ・ギフト》。自分フィールドにエクシーズモンスターが二体以上存在するとき、エクシーズ素材を二つ使って二枚ドローする!」
コストに《
「魔法カード《ソウル・チャージ》発動!バトルフェイズを放棄して、墓地から《銀河騎士》と《
レベル8 光属性 戦士族 攻2800 守2600(守備表示)
レベル8 光属性 ドラゴン族 攻3000 守2500(攻撃表示)
「も、もう一度……レベル8のモンスター二体でオーバーレイ!我が記憶に眠る二つの希望!その希望を隔てし闇の大河を貫き今その力が一つとなる!エクシーズ召喚!!!現れろ《No.38希望魁竜タイタニック・ギャラクシー》!!」
ランク8 光属性 ドラゴン族 攻3000 守2500(攻撃表示)
「わ、私はこれでターンエンド……」
ダメだ……ここで気を失うわけには……
ぼやける視界に目を擦る。ライフはたった1000ポイントしか残ってないけど、ここまで来たら1残ってればいい。次のターンに繋がれば……
「僕のターン、ドロー。特にやることもないからバトルに入っちゃうけど大丈夫?」
「やれるもんならね」
「《地縛神 Ccapac Apu》で直接攻撃!」
「《希望魁竜タイタニック・ギャラクシー》の効果発動!エクシーズ素材を一つ使って、攻撃対象をこのカードに移し替える!《タイタニック・ギャラクシー》と《地縛神 Ccapac Apu》の攻撃力は互角!」
「相討ち狙いか……それならメイン2に入って、カードを一枚セット。ターンエンド」
ターンが……回ってきた……カードを引かな────。
私はカードを引くことなく、その場に倒れてしまった。手だけじゃない、全身に力が入らない。なんだか目もよく見えない。もう限界か────だめだ、立たないと……。
「もうやめなよ。僕は別に君に死んで欲しいわけじゃない。命は大切にしなきゃ」
「まだ……勝負はついてない。まだ戦う……」
「どうして君はそこまでして戦うの?命をかける必要はないんじゃないの?」
「私のお婆ちゃん、宇佐美董子は言ってることはよくわからないし、秘密を暴くためなら命も賭けるとても滅茶苦茶な人だった。私が小さいころに死んじゃって思い出とかあんまりないけど、一つだけ正しいと思える教えがあった」
何とか立ち上がって、落ちている帽子を拾い上げ、胸に当てる。
「ノブレス・オブリージュ────私は私の信じるもののために……この命を賭ける!!」
私は鈴仙ちゃんを信じてる。それだけで命を賭けるには十分だ!
「私は《ギャラクシーアイズ FA・フォトン・ドラゴン》でオーバーレイ!現れろ暗黒銀河竜《No.95》!全てを飲み込む暗黒の闇……《ギャラクシーアイズ・ダークマター・ドラゴン》!!」
ランク9 闇属性 ドラゴン族 攻4000 守0(攻撃表示)
「これが《No.95》……なんて素晴らしいんだ……」
「《ダークマター・ドラゴン》で攻撃!壊滅のフォトンストリーム!!」
「罠カード《聖なるバリア──ミラーフォース──》発動。攻撃表示の相手モンスター全て破壊する!」
「手札からカウンター罠《タキオン・トランス・ミグレイション》を発動!《
ダークマター・ドラゴンの一撃で道化師のライフは0になった。デュエルに勝ったことで緊張の糸が切れたのか、それとも体が限界だったのか、その場に倒れこむ。
それにしても無茶したな……あとで永琳さんやメリーとかに怒られちゃうかも……まあ理由を話せばわかってくれなくもないと思うけど。
仰向けになって空を見ていると、道化師がこちらによって来て、手を差し伸べてきた。少し不本意だったけど、一人じゃ立ち上がれないので、その手を掴んだ。
「君……強いね」
「みんなの蓮子さんは最強だからね、負けはしないよ」
そう言うと、そうだね────と言ってどこかへ消えてしまった。
さて、私も鈴仙ちゃんのところに戻ろうかな?まあ、その前に着替えないとだけど。