エンタメデュエリストが幻想入り   作:てんのうみ

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燃える闘志

 テーブルの上に広がっているカードを綺麗に集めて、一つため息をつく。

 

「ついに……できた!!」

 

 早朝、誰もいない店内に私の歓喜の声が響く。

 苦節一週間────キツい特訓を乗り越えて、新しく作り上げたこのデッキ……今までの私のデッキより数段上手く出来上がってる気がする。

 本当に辛かった────と思い出して遠くを見つめていると、さっきの私の声を聞き付けたのか店の奥から蓮子さんが顔を出した。

 

「おっ、ついにできたの?」

「はい!蓮子さんから頂いたカードも入ってるんですよ!」

「え?本当に!」

 

 それは戦ってみたいんだけどな────と蓮子さんは残念そうに店の奥に戻っていった。 

 本当はテストプレイも兼て蓮子さんとデュエルしたかったんだけど、どうも最近デュエルして怪我が悪化したとかで、師匠にデッキとデュエルディスクを没収されたみたいだし……このままでお店で誰か来るのを待とうかな?

 そんなことを思いながら待っていると、不意に扉に付いているお客さんが来たことを知らせるベルが店内に響き渡った。

 たまには知らない人とデュエルしてみるのもいいかも────扉の方を見てみると、そこには予想外の人物が立っていた。

 無表情で綺麗な顔に、暗めの茶髪、青い瞳。そして何より白と黒のウエイトレス姿。間違いない、この人は前に行った『月時計』の店員さんだ。どうしてこんなところに……。

 店員さんは店内を見渡して私以外誰もいないとわかると、私のところに歩いてきた。

 

「すみません。この店にいるレンコという店員をご存知ないでしょうか?」

 

 どうやらこの店員さんは蓮子さんを探しているらしい。

 この人と蓮子さんどういう関係なんだろう……そう思いながら、「店の奥にいますよ」と教えてあげた。店員さんは「ありがとうございます」とスカートの両端をつまんで持ちあげて、深く頭を下げられた。そんな大したことはしてないんだけどな……。

 呆気にとられる私を置いて、店員さんは店の奥の方を覗いた。

 

「来ましたよレンコ」

「おお!ひかるん!」

 

 店員さんが呼びかけると、店員さんが来たことに気づいた蓮子さんが店の奥から飛び出して、店員さんに飛びついた。満面の笑顔で頬を擦りつける蓮子さんに対して、店員さんは無表情のまま引きはがそうとしている。

 二人は……友達なのかな?

 

「久しぶり!元気にしてた?今日お店は?」

「お久しぶりですね。健康は維持していますし、今日のお店は午後からです」

 

 楽しそうに訪ねる蓮子さんに店員さんは落ち着いて的確に返答する。この二人は対照的に見えるけど、二人から感じるほんわかした雰囲気からして、とても仲がいいのがわかった。

 

「それはそうとレンコの方は大丈夫なのですか?」

「実はあんまり大丈夫じゃなくて……デッキとかも取り上げられちゃって今療養中」

「そうですか……。レンコとのデュエルを心待ちにしていたのですが……残念です」

 

 ため息をつき、落ち込む店員さん。でも蓮子さんは「大丈夫、大丈夫!」っと笑って私の方へ駆け寄ってきた。

 

「デュエルならこの子が相手するから!」

 

 そう言いながら、蓮子さんは両手で私の肩を叩いた。 

 初耳なんですけど……。目で蓮子さんに訴えるも、逆に笑いながらウインクされた。まあ、新しいデッキのテストプレイがしたかったから、問題はないんだけど。

 

「私の教え子なんだ。まだ特訓中だけど、日に日に順調成長中だよ」

「レンコの教え子ですか……なるほど、それは面白そうです」

 

 ほんの少し笑って、店の外へ出ていった。やっぱり外でやるんだ……。

 私も蓮子さんに背中を押されながら、店員さんを追って店の外へ出た。

 

 屈伸とか軽い準備運動をして、店員さんの目の前に立つ。

 蓮子さんの知り合いなんだから、きっと強い。この一週間の特訓の成果を見るには十分な相手のはずだ。

 左手に装着したデュエルディスクに、新しいデッキをセットする。────行きなりの初陣だけど、おっかなびっくりじゃなくて、精一杯、全力でぶつかって行こう!

 

「それでは始めましょうか」

「よろしくお願いします!えっと……」

 

 そういえば名前を聞いてない。たしか蓮子さんが「ひかるん」って呼んでたけど、本名ではないだろうし……。

 

赤星光(あかぼしひかる)と申します。貴女は?」

「れ、鈴仙・優曇華院・イナバです」

「良き名ですね。それではレイセン、参りますよ!」

「「デュエル!!」」

 

 先攻が私に決まり、手札五枚を確認する。

 この手札じゃ、そこまで硬い陣形は作れないかな?でもまずは手札交換と墓地肥しから!

 

「手札のレベル8モンスターを捨てることで、魔法カード《トレード・イン》を発動!カードを二枚ドローする」

 

 ドローカードを見て、また一つ考える。このカードが来たなら……いや、相手のデッキがわからない上に、初めのターンだ。返しのターンに一掃されて、戦えなくなったら手詰まりだ。ここは準備とワンキルされない程度に防衛線を張ろう。

 

「さらに魔法カード《竜の霊廟》を発動。デッキからドラゴン族モンスター一体を墓地に送る。私が送るのは《真紅眼の黒炎竜(レッドアイズ・ブラックフレアドラゴン)》。デュアルモンスターである《真紅眼の黒炎竜(レッドアイズ・ブラックフレアドラゴン)》を墓地に送ったことで《竜の霊廟》の追加効果が発動!通常モンスターを墓地に送ったことで、さらにもう一体、デッキからドラゴン族モンスターを墓地に送る!《アークブレイブ・ドラゴン》を墓地へ!」

 

 よし、これでできることは全部終わった。

 私はそのままターンを光さんに渡した。

 

「私のターンですね、ドロー」

「この瞬間、墓地の《アークブレイブ・ドラゴン》の効果が発動!墓地に送られた次のターンのスタンバイフェイズに、墓地のレベル7・8のドラゴン族モンスターを特殊召喚する!」

 

 私の墓地にあるドラゴン族カードは、《アークブレイブ》を除いて二枚。《真紅眼》を出しても大した防御にはならない。ここはもう片方を出す!

 

「希望の光、黒天に輝く星となれ!」

「この口上は……まさか」

「光の化身ここに降臨!《銀河眼の光子竜(ギャラクシーアイズ・フォトン・ドラゴン)》!」

 

レベル8 光属性 ドラゴン族 攻3000 守2500(攻撃表示)

 

 蓮子さんから渡されたカード、《銀河眼の光子竜(ギャラクシーアイズ・フォトン・ドラゴン)》……攻撃力も高く、効果も強力で、そう簡単に抜くことはできないモンスターだ。

 

「なるほど……レンコの教え子というのは本当のようですね。ですがそのドラゴン、戦闘ではかなり有利ですが攻略法は見えています。魔法カード《真紅眼融合(レッドアイズ・フュージョン)》発動」

 

 なっ……《真紅眼融合(レッドアイズ・フュージョン)》!?ってことはまさかこの人も────《真紅眼(レッドアイズ)》使い!?

 不味い、あのカードはデッキからも融合召喚を行える強力なカード。そして出てくるモンスターといえば……。

 

「デッキの《デーモンの召喚》と《真紅眼の黒竜(レッドアイズ・ブラックドラゴン)》で融合召喚、現れろ《悪魔竜ブラック・デーモンズ・ドラゴン》」

 

レベル9 闇属性 ドラゴン族 攻3200 守2500(攻撃表示)

 

「やっぱり出てきた……悪魔竜」

「行きます。《悪魔竜》で《銀河眼の光子竜(ギャラクシーアイズ・フォトン・ドラゴン)》に攻撃。能力の確認は必要ですか?」

 

 私も使っていたからその能力はいやというほど知っている。《悪魔竜》が戦闘を行うとき、ダメージステップ終了まで、私は一切のカード効果を発動できない。つまりそれは《銀河眼の光子竜(ギャラクシーアイズ・フォトン・ドラゴン)》の【戦闘をする際、バトルする相手と一緒に除外して、バトルフェイズ終了時にフィールドに戻ってくる】という効果が使えないことを意味する。

 逃げ場を失った《銀河眼の光子竜(ギャラクシーアイズ・フォトン・ドラゴン)》は《悪魔竜》の攻撃を受けて破壊され、私も攻撃力の差、200ポイントのダメージを受けた。

 でも《悪魔竜》の効果はまだ終わらない!

 

「融合召喚した《悪魔竜》がバトルを行ったバトルフェイズ終了時、更なる効果を発動します。墓地の《真紅眼(レッドアイズ)》通常モンスターをデッキに戻すことで、戻したカードの攻撃力分のダメージをレイセンに与えます」

 

 光さんが墓地から選んだのは、さっきの《真紅眼融合(レッドアイズ・フュージョン)》で墓地に送った《真紅眼の黒竜(レッドアイズ・ブラックドラゴン)》。その攻撃力2400のダメージを受けて、私のライフは5400まで削られた。

 

「このままターンを終了します」

「私のターン、ドロー!」

 

 う~ん《闇の誘惑》か……今手札に闇属性モンスターいないんだけどな……。

 このターン動けないかもと思ったとき、蓮子さんの言葉を思い出した。

 

『カードにはメリットとデメリットがあるけどさ、使い方次第でデメリットもメリットに変えられると思うんだよね』

 

「デメリットをメリットに……」

 

 今この状況で動けないなら、この選択にかけてもいいかもしれない。あの《悪魔竜》をなんとかしないと、次のターンで私が負ける可能性が高い。大事なのは勝負に出るタイミングだ!

 

「カードを二枚伏せて、魔法カード《闇の誘惑》を発動!カードを二枚ドローして、その後に手札から闇属性モンスターを一枚除外する!除外できない場合はすべての手札を墓地に送る!」

 

 ────よし!来た!

 

「私の手札に闇属性モンスターはない。よって手札四枚全てを墓地に送る!」

「……思いきった戦術をとりますね。そう言うところレンコに似てる気がします」

「私はこれでターンエンドです!」

 

 ここまでは思惑通りにいってる。ドローだっていい感じだ。後は光さんの出方と、私のプレイング次第。とくに伏せカード二枚のうちの一枚……このカードの発動タイミングが勝負の鍵だ。

 

「私のターン、ドロー……」

 

 私の手札は0枚だけど、光さんの手札は今のドローを合わせて六枚。《真紅眼(レッドアイズ)》は効果ダメージを狙っていくデッキ。でも効果ダメージが発生するのは攻撃の後が殆どだ。攻撃を封じれば、効果ダメージは防げる!

 

「私も魂を燃やして参りましょう。手札から魔法カード《儀式の準備》を発動。デッキから儀式魔法カードを手札に加え、その魔法カードに記されている儀式モンスターも手札に加えることができます」

 

 あれ?儀式魔法?《真紅眼(レッドアイズ)》に儀式のギミックなんてあったっけ?それともハイブリット型かな?

 

「私が手札に加えるのは《黒竜降臨》。さらにそれに記されている《黒竜の聖騎士(ナイト・オブ・ブラックドラゴン)》を手札に加えます。

 そして儀式魔法《黒竜降臨》発動。手札にあるレベル7の《真紅眼の黒炎竜(レッドアイズ・ブラックフレアドラゴン)》を生け贄に、先ほど手札に加えた《黒竜の聖騎士(ナイト・オブ・ブラックドラゴン)》を儀式召喚」

 

レベル4 闇属性 ドラゴン族 攻1900 守1200(攻撃表示)

 

「《黒竜の聖騎士(ナイト・オブ・ブラックドラゴン)》はその効果で自身をリリースすることで、デッキ・手札から《レッドアイズ》モンスターを一体特殊召喚します」

 

 デッキから直接《レッドアイズ》モンスターを特殊召喚!?しかもさっきの説明だとレベルの制限がない……ここで呼ぶとしたら間違いなくあのモンスターだ!

 

「《黒竜の聖騎士(ナイト・オブ・ブラックドラゴン)》をリリースし、デッキより《レッドアイズ・ダークネス・メタルドラゴン》を特殊召喚」

 

レベル10 闇属性 ドラゴン族 攻2800 守2400(攻撃表示)

 

 私の予想通り、光さんは《レッドアイズ・ダークネス・メタルドラゴン》を呼び出して来た。あのモンスターは墓地・手札からドラゴン族モンスターを特殊召喚できる、ドラゴン族最強クラスのモンスター。このターン光さんはこのターンまだ召喚権を使っていないし、儀式召喚のコストで《真紅眼の黒炎竜(レッドアイズ・ブラックフレアドラゴン)》が墓地に行ってる。

 今の状況下ならいろいろな戦術が取られるけど、それは《レッドアイズ・ダークネス・メタルドラゴン》の効果があってこそ。

 これから起こりうる大体の状況を想像したのち、私は伏せてあるカードを1枚発動させた。

 

「永続罠《リビングデッドの呼び声》発動!墓地のモンスター一体を攻撃表示で特殊召喚する!」

「私が確認しているモンスターは三体、そのうちのどれかでしょうか?それとも……」

「私が特殊召喚するのは……《巨神竜フェルグラント》!!」

 

レベル8 光属性 ドラゴン族 攻2800 守2800(攻撃表示)

 

 新しいデッキから入れてみた《巨神竜フェルグラント》。金色の体もカッコいいし、高いステータスに強力な除去と展開効果。私のデッキをこれまで以上に動かすためのエンジンになってくれるはず!

 

「墓地から蘇った《巨神竜フェルグラント》の効果が発動!相手フィールドまたは墓地のモンスターを一体除外して、除外したモンスターのレベルまたはランクの数×100ポイント攻撃力・守備力をアップさせる!《レッドアイズ・ダークネス・メタルドラゴン》を除外!」

 

 《フェルグランド》の咆哮で《レッドアイズ・ダークネス・メタルドラゴン》はフィールドから消え去った。

 これで《フェルグランド》の攻守は3800。そう簡単に戦闘破壊は狙える数値じゃなし、《悪魔竜》でも突破できない。《レッドアイズ・ダークネス・メタルドラゴン》を除外して、回転力も削げたはずだ。

 

「先ほどの《闇の誘惑》は、そのドラゴンを墓地に送るためだったのですね。通常の使い方に縛られない良き発想です。私はこれでターン終了です」

 

 よし!ターンが回ってきた!《フェルグラント》も残ってるし、このターンで一気に攻める!

 

「私のターン、ドロー!」

 

 攻撃のチャンスだけど、手札がないこの状況だ。何か一枚で機能できるカードが来れば────このカードならこのターンで終わりにできる!

 

「魔法カード《復活の福音》発動!墓地のレベル7または8のドラゴン族モンスターを特殊召喚する!蘇れ!《真紅眼の黒炎竜(レッドアイズ・ブラックフレアドラゴン)》」

 

レベル7 闇属性 ドラゴン族 攻2400 守2000(攻撃表示)

 

「さらにこのターンの召喚権を放棄することで、《真紅眼の黒炎竜(レッドアイズ・ブラックフレアドラゴン)》のデュアルを宣言!この瞬間から《真紅眼の黒炎竜(レッドアイズ・ブラックフレアドラゴン)》は通常モンスターから効果モンスター扱いになり、さらなる効果を得る!」

 

 追加される効果は【このカードが戦闘を行ったバトルフェイズ終了時に、このカードのもともとの攻撃力分のダメージを相手に与える】というもの。《フェルグラント》の効果と合わせればこのターンで、光さんのライフを0にできる!

 

「その効果は通せませんね。手札の《エフェクト・ヴェーラー》の効果を使います。相手メインフェイズにこのカードを墓地に送ることで、相手モンスター一体の効果を無効にします。対象は────《フェルグラント》の方で」

 

 そっちの効果を無効にしてきた?……そっか!《フェルグラント》の効果を無効にすることでステータスを元の2800に戻せば《悪魔竜》の攻撃力3200は突破できなくなる。そうなれば攻撃力の劣る《真紅眼の黒炎竜(レッドアイズ・ブラックフレアドラゴン)》では攻撃できない。

 でもそっち系の対策はしっかり用意してある!

 

「《フェルグラント》を対象に、罠カード《スキル・プリズナー》を発動!このターン、対象カードを対象に発動されたモンスター効果は無効になる!」

「さすがに躱して来ますか」

「バトル!《フェルグランド》で《悪魔竜》に攻撃!」

 

 攻撃力3800となっている《フェルグラント》で《悪魔竜》の撃破に成功し、光さんのライフを600削った。

 《悪魔竜》の効果は強力だけど、攻撃力を上回っていれば勝てない敵じゃない!

 そして《フェルグラント》の効果は除外だけじゃない!《悪魔竜》の【ダメージステップ終了まで、カード効果を発動できない】というのは、戦闘破壊が確定した時点で無効。効果は発動できる!

 

「相手モンスターを戦闘で破壊したとき、《フェイルグラント》の効果が発動!自分・相手の墓地に存在するレベル7・8のドラゴン族モンスターを一体特殊召喚できる!

 私の墓地の《銀河眼の光子竜(ギャラクシーアイズ・フォトン・ドラゴン)》を特殊召喚!!」

 

レベル8 光属性 ドラゴン族 攻3000 守2500(攻撃表示)

 

 光さんのフィールドに伏せカードもモンスターもいない。私のモンスターの攻撃と《真紅眼の黒炎竜(レッドアイズ・ブラックフレアドラゴン)》の効果で光さんのライフは0になる!

 

「行け!《銀河眼の光子竜(ギャラクシーアイズ・フォトン・ドラゴン)》の攻撃!破滅のフォトン・ストリーム!!」

「ライフを4400まで削られましたか────ですが一つ読みが甘いですね。私が戦闘ダメージを受け、フィールドにカードがないとき、《冥府の使者ゴーズ》は手札から特殊召喚できます」

 

レベル7 闇属性 悪魔族 攻2700 守2500(攻撃表示)

 

「さらに受けた戦闘ダメージ分の攻撃力・守備力を持った《冥府の使者カイエントークン》を特殊召喚します」

 

レベル7 光属性 天使族 攻3000 守3000(攻撃表示)

 

 しまった!?《ゴーズ》か!?その可能性を忘れてた……。おまけに攻撃表示だから《真紅眼の黒炎竜(レッドアイズ・ブラックフレアドラゴン)》で攻撃しても破壊されるだけだ。

 

「こら!基本的に攻撃力が低い方から攻撃しろって教えたでしょ!」

「す、すみません……」

 

 蓮子さんの声に情景反射で頭を下げる。

 や、やっちゃった……勝てると思って、考えが甘くなってた。

 

「私はこれでターンエンド」

 

 失敗はしちゃったけど、まだ挽回できるはず!

 

「私のターン、ドロー。

 フィールドにはドラゴンが三体ですか……それぞれ強力な効果を持っていますが、その能力は他のカードと連携できるものではありませんし、私も手札三枚で攻略するとしましょう。

 墓地の魔法カード《黒竜降臨》を除外することで、デッキから《レッドアイズ》魔法・罠カードを手札に加えることができます。私が加えるのは《レッドアイズ・トランスマイグレーション》です」

 

 くっ……また私の知らない《レッドアイズ》カード……今度は何を仕掛けてくるつもりなの?

 

「儀式魔法《レッドアイズ・トランスマイグレーション》を発動!フィールドの《カイエン》と手札の《サクリボー》をリリースすることで儀式召喚を執り行う!

 可能性秘めたる真紅の竜よ、我が身に纏え、我が身を大いなる竜に変えよ!《ロード・オブ・ザ・レッド》!!」

 

レベル8 炎属性 ドラゴン族 攻2400 守2000(攻撃表示)

 

 《ロード・オブ・ザ・レッド》……まるで《真紅眼の黒竜(レッドアイズ・ブラックドラゴン)》を見に纏ったようなモンスターだ。そして恐らくあれが光さんのエースモンスター……一体どんな効果で、どんな攻撃を仕掛けてくるか……。

 

「リリースした《サクリボー》の効果で一枚ドローします。

 そして手札から魔法カード《竜の霊廟》を発動、さらにそれにチェーンする形で《ロード・オブ・ザ・レッド》の効果を発動!カード効果が発動したときに、モンスター一体を破壊できる!《フェルグラント》を破壊!」

 

 この効果を通したら、防衛戦が一気に崩される!ここはなんとしても止めないと!

 私はとっさに墓地から()()()()()を取り除いた。

 

「ドラゴン族モンスターが破壊されるとき、代わりに《復活の福音》を墓地から除外することができる!」

 

 光さんは《フェルグラント》が破壊されなかったことを見ると、《竜の霊廟》の処理で《真紅眼の黒竜(レッドアイズ・ブラックドラゴン)》を、追加効果で《真紅眼の黒炎竜(レッドアイズ・ブラックフレアドラゴン)》を墓地に送った。

 

「レベル8の《ロード・オブ・ザ・レッド》をリリースして、《アドバンス・ドロー》発動。二枚ドローさせていただきます……この勝負も決着ですね」

 

 え?まさか三体のドラゴンを倒して、私の残りライフ5400を0に……たった手札二枚でエースモンスターもなしにそんなことが……。

 

「《龍の鏡(ドラゴンズ・ミラー)》を発動。墓地の《デーモンの召喚》と《真紅眼の黒竜(レッドアイズ・ブラックドラゴン)》を除外!炎は消えません、胸の闘志が燃えている限り。融合召喚《悪魔竜ブラック・デーモンズ・ドラゴン》!」

 

レベル9 闇属性 ドラゴン族 攻3200 守2500(攻撃表示)

 

「最後に魔法カード《受け継がれる力》を発動。私の《ゴーズ》を墓地に送って、その攻撃力分2700ポイントの攻撃力を《悪魔竜》に加えます」

 

 これで《悪魔竜》の攻撃力は5700────あっ。

 

「察しがついたようですね。《悪魔竜》の攻撃!

 走れ赤星────全てを焼き消す炎と変われ!真・ルシフェリオン・ブレイカー!!」

 

 光さんの《悪魔竜》の攻撃によって、私の《真紅眼の黒炎竜(レッドアイズ・ブラックフレアドラゴン)》を焼き消し、ライフを3300削られた。

 残り2100だけど、《悪魔竜》の効果は────。

 

「墓地の《真紅眼の黒炎竜(レッドアイズ・ブラックフレアドラゴン)》をデッキに戻して、レイセンに2400ポイントのダメージを与えます」

「ま、負けました」

 

 

 デュエルが終わりその場に倒れ込む。

 さ、さすがに強い……。

 

「大丈夫ですか?」

 

 向かい側に立っていた光さんが、いつの間にか私の目の前で手を指しのべている。私もその手をつかんで立ち上がった。

 

「まだまだ実践経験が足りませんね。改善の余地に溢れるデュエルでしたが、久しぶりに胸が熱くなりました。お礼をいいます、ありがとうレイセン」

 

 そうして光さんは帰っていった。

 私と同じ系統のデッキと戦うのははじめてだったけど、いい経験になった。私はまだまだ強くなれる!

 

「もっと、もっっっっと!頑張るんだ!」

 

 

    ◇

 

 夜も更けて、そろそろお店を閉める時間になった。

 あの仮面さんは今日も来ていましたが、本当に暇なんでしょうね。

 もうお客さんもいないし、店の扉に鍵をかけようと扉の方へ向かっていると、ふと扉が開いた。

 

「すみません、今日は────っ」

 

 お客さんだと思い、お断りしようとした私の目に飛び込んできたのは意外すぎる人物でした。いえ、厳密に言えば人ではないのですが。

 

「それは参ったな。吸血鬼は招かれない家には入れない……なんて言い伝えがあるんだがな」

 

 小さな背丈にピンクを貴重とした洋服、背中から生えている黒い翼に、紅い瞳。

 

「────お嬢様」

 

 紛れもなく、私が仕えていたレミリア・スカーレットお嬢様その人だった。

 もうお前のお嬢様じゃないだろ────そういいながらお嬢様は店に入ってきて、カウンター席に腰を下ろされる。

 

「それにしても久しぶりだな、メイド長」

「ご無沙汰しております……その呼び名はお止めください。その名前はもう咲夜に預けました」

「そうだったな」

 

 それからは館の皆様の話をされました。皆さんお元気なようで。

 

「それにしてもどうしてこちらに?」

 

 するとお嬢様は少し考えるような仕草をなさったあと、何か閃いたような顔をされた。

 

「風に流れて来たのさ」

「……ようするに暇だったのですね」

「そうとも言うらしいな。さて、久しぶりお前の淹れた紅茶でも貰おうか」

 

 まだ離れて数年しか経っていませんが……やはりこの方は変わりませんね。

 

「かしこまりました」

 

 

 

 

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