エンタメデュエリストが幻想入り   作:てんのうみ

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始めは小さな一歩だった
好奇心と感情が思うがままに踏み出した一歩は、二歩、三歩と続き、いつしか振り返れば道ができていた

随分遠くまで来た気がする
でもそれでもまだ道の途中なのだろう

その道を走り続ける少年は、時より振り向いては「ありがとう」と言って、また前を見て走り出すのだ

エンタメデュエリストが幻想入り  第二章《思惑スクランブル》編
第11話『進化する翼』  始まります



進化する翼

 会場に溢れる歓声。観客席の出入り口の壁に寄り掛かって試合を見る僕は、こんな大歓声を受けたことはないけど────なぜかそれはひどく懐かしく聞こえる。

 デュエルは序盤が終わり、ライフ的には遊矢君が、フィールド的には相手の方が有利かな。それに相手の子が持っている《No.》はすべて【《No.》以外との戦闘では破壊されない】って効果があるみたいだし、《No.》を一枚しか持っていない遊矢君には少しキツい展開だけど……きっと君なら大丈夫だよね?

 

「あっ!道化師君こんなところにいたんだ!」

 

 僕の呼び名を口に出しながら、向こうから走ってくる遊矢君が肩に羽織っているのと同じ制服を来た、黒髪の女の子────錬金術師。

 

「あれ?どうしたの?」

「……今日はこの大会……一緒に見に行く約束だった……はずだよ」

 

 ────ああ、やっちゃった。遊矢君と話すことで頭が一杯になってたや。

 錬金術師に一言謝罪をいれると、「次からは気を付けてね?」と返して、僕の隣に来た。どうやら許して貰えたみたいだ。

 

「それにしても遊矢君の方キツいね……相手は《No.》を三体も使ってるのに、遊矢君は《ホープ》一体だけ……」

「────大丈夫だよ」

 

 不安そうにバトルフィールドを見つめる錬金術師の肩を軽く叩く。そしてもう片方の手でフードと仮面を外して、笑って見せた。

 

「こんなところで終わる遊矢君じゃない……僕はそう確信してるんだ」

 

 僕の言葉に彼女は笑いながら大きく頷くと、バトルフィールドに向かって「がんばれー」と声をかけ始めた。

 ────そうだ、僕にもっと見せてよ……君の本気……本気のエンタメデュエルを。

 

「あっ、そういえば道化師君の素顔久しぶりに見た気がするよ」

「まあ……あまり人には見せないからね。それに嫌いなんだ……僕の顔」

 

 

     ◆◇

 

 

「揺れろ!魂のペンデュラム!天空に描け光のアーク!ペンデュラム召喚!現れろ《EMカレード・スコーピオン》!」

 

レベル6 光属性 昆虫族 攻100 守2300(守備表示)

 

 大輔のフィールドには3体の《No.》モンスター……それを攻略するには、このコンボを使うしかない!

 

「俺は《ホープ》を対象に《カレード・スコーピオン》の効果を発動!このターンの間、効果を受けた《ホープ》は相手フィールドに存在する特殊召喚されたモンスターすべてに、1回ずつ攻撃できる!」

 

 俺が効果発動を宣言すると、《カレイド・スコーピオン》のしっぽの先の針が発光し始める。その光を《ホープ》が受けると、光によって作られた透明な《ホープ》が2体、俺のフィールドに現れた。

 

「バトルだ!《希望皇ホープ》で《デッドリー・シン》を攻撃!カレイド・ミラージュ!」

 

 前のターンの《ダーク・リベリオン》の効果で攻撃力が半分────1625になっていた《デッドリー・シン》は光の《ホープ》によって切り倒される。与えられるダメージは875で少ないけど、まずは一体!

 

「2回目の攻撃!《希望皇ホープ》で《プレイン・コート》を攻撃!」

「くっ……だがこの瞬間!破壊された《プレイン・コート》の効果発動!デッキから《紋章獣》モンスター2体を墓地に送る。《紋章獣レオ》と《紋章獣アバコーン・ウェイ》を墓地に。

 墓地に送られた《レオ》の効果で《紋章獣アンフィスバエナ》を手札に加える!」

 

 二回目のまでの攻撃が終わって、大輔の残りライフは4325。《ホープ》にはもう一回攻撃が残っているけど、大輔のフィールドにいるのは攻撃力4225の《トレスラグーン》だ。

 だけど────俺は手札に残った1枚のカードに視線を落とす。この局面でこのカード……なんだか考え深い。このカードを文から貰ったのも、あの日不思議なデュエリストに《ホープ》をもらったのも、きっと偶然じゃない────そんなふうに思えた。

 

「3回目の攻撃!《希望皇ホープ》で《トレスラグーン》に攻撃!」

「攻撃力の劣る《ホープ》の攻撃……はっ!」

「俺はこの瞬間《希望皇ホープ》の効果発動!エクシーズ素材を1つ使って、攻撃を無効にする!」

 

 《ホープ》が《トレスラグーン》に切りかかる直前で、《ホープ》の持つ剣が光になって消える。でも、それこそ俺の狙い。このカード発動のトリガーは【攻撃を無効にする】こと。

 

「手札から速攻魔法《ダブル・アップ・チャンス》発動!モンスターの攻撃が無効になった時、そのモンスターはもう一度だけ攻撃ができる!さらにダメージステップ開始時に攻撃力が2倍になる!」

 

 消えた剣が光によって再構築され、攻撃力5000となった《ホープ》が今度こそ《トレスラグーン》を破壊した。

 これで大輔のフィールドからモンスターはいなくなった。本当に1ターンで《No.》を3体倒しきったんだ!

 だが喜びもつかの間、次のターンのことを考えると少しつらい。確かに《No.》は倒しきったものの、カードたくさん消費してしまって、俺の手札は0。大輔の手札も2枚と少ないけど、墓地に送られることでデッキから《紋章獣》をサーチできる《紋章獣レオ》の効果で、《紋章獣》を手札に加えている。

────次のターンは厳しくなりそうだ。

 

「俺はこれでターンエンドだ」

「やるな……本当にあの布陣を突破してくるなんて。だが!俺はまだ全力じゃない!俺のターン、ドロー!

 俺は墓地の《紋章獣アバコーンウェイ》の効果発動!自分墓地の他の《アバコーンウェイ》を除外することで、墓地から《紋章獣》モンスターを手札に戻すことができる。《紋章獣レオ》を手札に」

 

 また手札が4枚に……大輔のデッキは本当に手札が尽きない。俺のデッキには手札を伏せるカードは多いけど、それはほとんどがカード同士の連携によるもの。手札が尽きてしまった今だと、効果が十分に発揮できない。このアドバンテージの差をどうやって埋めるか……。

 

「今手札に加えた《レオ》を捨てて、《紋章獣アンフィスバエナ》を特殊召喚!」

 

レベル4 風属性 ドラゴン族 攻1700 守1100(攻撃表示)

 

「再び《レオ》が墓地に送られたので、デッキから《紋章獣ツインヘッド・イーグル》を手札に加え、そのまま召喚!」

 

レベル4 風属性 鳥獣族 攻1200 守1400(攻撃表示)

 

「俺はレベル4のモンスター2体でオーバーレイ!2体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築、エクシーズ召喚!

こい、その能力を天に委ね、発揮せん!《No.85クレイジー・ボックス》!!」

 

ランク4 闇属性 悪魔族 攻3000 守300(攻撃表示)

 

 天空から現れた不気味な立方体の形をしたモンスター。まだ《No.》を────だけど俺は運よくこの《No.》のことを知っている。この85番は早苗が持っているのと同じ《No.》。能力は霊夢とのデュエルを見ていたから、その能力も知っていた。

 

「《クレイジー・ボックス》効果発動!エクシーズ素材を1つ使い、ダイスを振る。そして出た面の数によって効果が適用される!」

 

 《クレイジー・ボックス》の効果によって大輔の目の前に現れるダイス。ソリッドビジョンで映し出されたそれを手に掴み、大輔は勢いよく振り下ろす。投げ放たれたダイスは宙を舞い、地面に落下すると、その面を変えながら二転三転を繰り返す。

 そしてついにダイスが止まった。出た目は────。

 

「”4”!その効果はフィールド上のカード1枚の効果をターン終了まで無効にする!俺は《クレイジー・ボックス》自身の効果を無効にする!」

 

 自身の効果で能力()を失った《クレイジー・ボックス》だったが、次の瞬間にはさっきまで微動だにしなかったその体が動き始めた。

 《クレイジー・ボックス》は攻撃力3000でありながら、自身の効果のせいで攻撃ができないモンスター。けど、その効果が無効になってことは……攻撃が可能になったってことだ。

 

「バトル!《クレイジー・ボックス》で《希望皇ホープ》に攻撃!」

 

 俺の《ホープ》に《クレイジー・ボックス》の攻撃が迫る中、俺は《ホープ》のカード下にエクシーズ素材として残っていた《ライトフェニックス》のカードを引き抜いて、尽かさず墓地に送る。

 

「そうはさせない!《希望皇ホープ》の効果発動!エクシーズ素材を1つ使って、攻撃を無効にする!ムーン・バリア!!」

 

 突撃してくる《クレイジー・ボックス》を《ホープ》はその白い翼を変形させて、楯のようにして防ぐ。

 俺の《ホープ》は大輔の《No.》みたいな戦闘耐性はないけど、向こうの《No.》を倒せるのは《ホープ》しかいない。それを簡単に失わせやしない!

 

「これで《ホープ》のエクシーズ素材はもうない。俺はターンエンドだ」

「俺のターン、ドロー!」

 

 引いたカードは────魔法カードか。でもこのカードは1枚じゃ使うことができない。手札はこの1枚だけ、フィールドには発動できるカードもないし、今のペンデュラムスケールじゃエクストラデッキのペンデュラムモンスターはペンデュラム召喚できない。

 

「……ターンエンドだ」

「もう手詰まりか?それでも容赦はしない!俺のターン、ドロー!」

 

 厳しい状態だけど、俺には守備力2300の《カレイド・スコーピオン》と、ここまで守ってきた8000ポイントのライフがある。それに《クレイジー・ボックス》の【効果を無効にする】効果は、前の大輔のターンで終了していて今は攻撃でないはず。

 

「俺は魔法カード《貪欲な壺》を発動!墓地の《No.70》《No.57》と、《紋章獣アンフィスバエナ》《紋章獣レオ》2体の合計5枚のモンスターカードをデッキ戻して、カードを2枚ドローする!────いい引きだ。2体目の《ゾンビ・マスター》を召喚!」

 

レベル4 闇属性 アンデット族 攻1800 守0(攻撃表示)

 

「手札を一枚捨てることで、レベル4以下のアンデット族モンスターを墓地から特殊召喚できる!来い!《ゴブリン・ゾンビ》!」

 

レベル4 闇属性 アンデット族 攻1100 守1050(攻撃表示)

 

「続けて墓地の《馬頭鬼》の効果発動!」

「《馬頭鬼》!?そんなモンスター墓地には……まさか今の《ゾンビ・マスター》で!?」

「そのまさかだ!墓地からこのカードを除外することで、墓地のアンデット族モンスターを特殊召喚できる!蘇れ《ゾンビ・マスター》!」

 

レベル4 闇属性 アンデット族 攻1800 守0(攻撃表示)

 

「あっという間にレベル4のモンスターが3体……《トレスラグーン》か!?」

「それはどうかな?レベル4のモンスター3体でオーバーレイ!3体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築!エクシーズ召喚!現れろ《No.91サンダー・スパーク・ドラゴン》!!」

 

ランク4 光属性 ドラゴン族 攻2400 守2000(攻撃表示)

 

 大輔が呼び出したのは《トレスラグーン》とは別の数字を持つ、細長く水色のドラゴン。その体にはバチバチと電気が帯びていた。

 

「そして《クレイジー・ボックス》の効果発動!再びダイスを振る。出た目は────”2”!よってカードを1枚ドローする!」

 

 効果の処理が終わって、俺は目を瞑って「ふぅ……」っと胸を撫で落とす。手札は一枚増えちゃったけど、このターン《クレイジーボックス》で攻撃されることはなさそうだ。

 

 一安心して目を開くと、突然突風が巻き起こり、電撃がフィールドを襲う。正体不明の突風でペンデュラムスケールにセッティングされていた《ビッグバイトタートル》と《キングベアー》は破壊され、《ホープ》と《カレイド・スコーピオン》は電撃に貫かれて消えてしまい────俺のフィールドからカードがなくなった。

 

「どういう……ことだ……?」

「俺は《サンダー・スパーク・ドラゴン》の【エクシーズ素材を3つ使って、フィールドのこのカード以外のモンスターを全て破壊する】効果と、相手フィールドの魔法・罠カードを全て破壊する《ハーピィの羽箒》を同時に使っただけさ。

 そしてまだ終わりじゃない!魔法カード《死者蘇生》!今破壊された《No.85クレイジー・ボックス》を特殊召喚!」

 

ランク4 闇属性 悪魔族 攻3000 守300(攻撃表示)

 

 どうしてだろう────大輔のプレイングが頭に引っかかる。いくら戦闘耐性があるからって、この場面で攻撃できない《クレイジー・ボックス》を出してくるなんて。

 

「ここで墓地の《紋章獣ツインヘッド・イーグル》の効果発動!墓地のこのカードを除外することで、墓地の《紋章獣》モンスターを2体────《レオ》と《ユニコーン》をエクシーズ素材のないエクシーズモンスターのエクシーズ素材にできる!」

「《クレイジー・ボックス》にエクシーズ素材が戻った!?まさか!?」

「そうだ!もう一度《クレイジー・ボックス》の効果発動!素材の《ユニコーン》を使い、ダイスを振る!出た目は────”4”!これでこのターンも自身の効果を無効にする!

 そして今素材として墓地に送られた《紋章獣ユニコーン》の効果発動!このカードを墓地から除外することで、墓地のサイキック族エクシーズモンスターを効果を無効にして特殊召喚する!蘇れ《No.18紋章祖プレイン・コート》!!」

 

ランク4 光属性 サイキック族 攻2200 守2200(攻撃表示)

 

「そんな……また《No.》が場に3体……」

「バトルだ!《プレイン・コート》!《サンダー・スパーク・ドラゴン》!《クレイジー・ボックス》!遊矢にダイレクトアタック!!」

 

 攻撃命令を受けて、俺に襲い掛かってくる三体の《No.》。その迫力と衝撃はソリッドビジョンとは思えないほどのリアルで激しい。そしてついに踏ん張りきりなくなって、吹き飛ばされてしまった。

 

「俺はこれでターンエンドだ」

 

 強い────立ち上がりながら、俺はデッキに指先を添える。

 さっきの攻撃で俺のライフは一気に削られてしまってわずか400。何とか活路を見出したいけど、状況はかなり不味いことになっていた。

 《オッドアイズ》が墓地にいることから、《ルーンアイズ》と《ビーストアイズ》は融合できない。

 《ホープ》と《ダークリベリオン》はすでに墓地に行ってしまっている。

 《クリアウィング》は俺のデッキ構築だと、どこかでペンデュラム召喚を挟まないとできないし、《覚醒の魔導剣士(エンライトメント・パラディン)》の召喚には、どうしても《調律の魔術師》の力が必要だ。でも《調律の魔術師》には召喚した時、相手のライフを400回復する効果と、自分に400ダメージ与える効果がある。────ライフ400の俺にはそれでゲームオーバーだ。

 

「俺のターン……ドロー!」

 

 よし!これなら手札の魔法カードが使える!

 

「俺は手札から魔法カード《EMキャスト・チェンジ》を発動!手札の《EM》モンスターを任意の枚数相手に見せることで、見せたカードをデッキに戻し、戻した枚数より1枚多くドローする!俺は《EMディスカバー・ヒッポ》を見せて、《ヒッポ》をデッキに戻すことで、2枚ドローする!」

 

 ────まだだ、まだ戦える。

 

「俺はこれでターンエンド」

「俺のターン、ドロー!」

 

 このターンだ……このターンを必ず凌ぎ切って、必ず希望を繋げる。俺があきらめない限り、カードはそれに応えてくれるはずだ!

 

「まずは《クレイジー・ボックス》の効果発動!エクシーズ素材を1つ使ってダイスを振る。出目は────”4”。俺は《クレイジー・ボックス》の効果を無効にする。さらにエクシーズ素材として墓地に送られた《紋章獣レオ》の効果で、デッキから《紋章獣ツインヘッド・イーグル》を手札加え、そして3体目の《ゾンビ・マスター》を召喚!」

 

レベル4 闇属性 アンデット族 攻1800 守0(攻撃表示)

 

「今手札に加えた《ツインヘッド・イーグル》を捨てることで、《ゾンビ・マスター》の効果発動!墓地の《ゴブリン・ゾンビ》を特殊召喚!」

 

レベル4 闇属性 アンデット族 攻1100 守1050(攻撃表示)

 

「俺はレベル4のモンスター2体でオーバーレイ!2体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築!エクシーズ召喚!現れろ《No.82ハートランドラコ》!!」

 

ランク4 地属性 ドラゴン族 攻2000 守1500(攻撃表示)

 

「エクシーズ素材を1つ使って、《ハートランドラコ》の効果発動!自身に()()()()を与える」

 

 手札を使い切り、大輔もやることはすべて終わったらしい。

 そしてお互いが軽く身構え、俺たちは顔を見合わせて、笑った。

 

「これで終わりじゃないよな?」

「さて、どうかな?」

「────行くぞ!《プレイン・コート》でダイレクトアタック!」

 

 大輔がバトルフェイズに入り、《プレイン・コート》が俺に攻撃をしかける。

 ────これは俺だけのデュエルじゃない。鈴仙、正邪、早苗、妖夢。みんなの思いがこのデュエルにかかってるんだ。ここで俺が負けたら、チームみんなで繋いできたものが途切れてしまう……だから絶対に!このバトルフェイズは凌ぎ切って見せる!それがチームで戦うってことなんだ!

 

────もうライフ1ポイントだってやるもんか!!

 

「ダイレクトアタック宣言時、手札から《EM》モンスター────《EMプラスタートル》を墓地に捨てることで、墓地から《EMバリアバルーンバク》を守備表示で特殊召喚できる!!」

 

レベル6 風属性 獣族 攻1000 守2000(守備表示)

 

「そして手札から《EM》モンスターが墓地に送られたことで、墓地の《EMギッタンバッタ》の効果発動!このカードを特殊召喚できる!」

 

レベル4 地属性 昆虫族 攻100 守1200(守備表示)

 

「だったら攻撃対象を《ギッタンバッタ》に変更!」

「特殊召喚された《ギッタンバッタ》は1ターンに1度、戦闘では破壊されない!」

「そんなことは知っているさ!今度は《ハートランドラコ》で攻撃!」

 

 今度はピンクと白の小さなドラゴンが、その小さな羽を羽ばたかせて、俺に向かってくる。────攻撃力2000ということは、狙いは守備力の低い《ギッタンバッタ》か。

 だが《ハートランドラコ》は俺の予想を裏切り、《ギッタンバッタ》も《バリアバルーンバク》も飛び越えて、直接俺を狙ってきた。

 

「遊矢が即席で壁モンスターを出してくるのは読めていた!俺がさっき使った《ハートランドラコ》の効果は直接攻撃を可能にする効果!これで終わりだ!」

「いいや!まだ終わらせない!俺は手札から《虹クリボー》の効果発動!このカードは攻撃してきたモンスターの装備カードとなり、装備したモンスターは攻撃できない!」

「《虹クリボー》だと!?……俺は残る2体で、遊矢のモンスターに攻撃!」

 

 《クレイジー・ボックス》を《バリアバルーンバク》が、《サンダー・スパーク・ドラゴン》を《ギッタンバッタ》がそれぞれ受け止める。  

 何とか……何とか耐え抜いた!!

 

「まさか本当に耐えられるなんてな……ターンエンドだ」

 

 

 俺のターン……か────ターンが渡ってきたが、俺はすぐターンを始めようとはしなかった。いや、正確に言うとできなかった。体中が刻みに震えてしょうがない。でもこれは緊張とかプレシャーだとか、そういうものじゃなくて。

 

────心の底から、体が震えるほど、このデュエルが楽しいだけなんだ。

 

 

 道化師との一件や、神子とのデュエルを経てからは”みんなを笑顔にして、笑顔を守るためにはどうするか”、いろいろ悩んだ。始めは”負けられないデュエル”と”エンタメデュエル”を両立させるのは難しいとか考えてたけど────そうじゃなかった。

 

 どっちのデュエルだって……いや、いつだって、どんな時だってデュエルは全力でやるものだ。どんなデュエルもそこに違いはない。

 

 それに気づいてからは、”それじゃエンタメデュエルってなんだ?”って思ったけど、考え始めたときの俺は、その答えを持ってなかった。────小傘が俺の所に来るまでは。

 

 俺からエンタメデュエルを教わろうとする小傘の姿を見て、俺は思い出した。────ああ、俺もこうだったんだって。

 小さい子供がテレビのヒーローを見て”ごっこ遊び”をするように、俺も初めは父さんの真似をする”ごっこ遊び”だった。それからデュエリストになって、父さんに近づこうと思って歩き出して、父さんのエンタメデュエルをし続けてきた。────でもそれは、父さんが”0”から作ったもので、俺のじゃない。

 

 でも、俺はそれでよかったと思ってる。

 きっと誰でも初めはそうなんだ。誰かに憧れて、いつかそうなりたくて真似て……そしてその積み重ねの上に────本当の自分ができてくるんだと思う。

 

 そして俺はそのスタートラインまで来た。

 もう父さんを模ったテンプレートをなぞる時間は終わったんだ……ここからは────俺が見つけた答えで描いていかなくちゃ!!

 

「俺のターン、ドロー」

 

 震える手で────だけどしっかりカードを引く。

 

「こ、このカードは────」

 

 引いたカードを確認して、俺の脳裏にあの言葉────デュエルが始まる直前に見つけたタロットカード、”死神の正位置”の意味、”分岐点”の言葉が浮かぶ。

 そう、俺の引いたカードは────《シャッフル・リボーン》。

 似てる……道化師とのデュエルのラストターンに。あの時は《ホープ》を特殊召喚して、その後────。

 

 

 道化師とのデュエルを思い出そうとした瞬間────デュエルディスクのエクストラデッキを収納するとこから光が溢れだす。その光は次第に大きくなっていき、そして俺の視界を覆い尽くすと、その光の中に”何か”が見える。

 

「────これは……」

 

 光が収まると、少し体が軽く感じた。気のせいかもしれないけど、なんだか体が温かい。

 一瞬だったし、はっきりと見ることはできなかったけど……俺にはそれが何かがわかった気がした。

 ────今、呼び出してやるからな!

 

「俺は魔法カード《シャッフル・リボーン》を発動!自分フィールドにモンスターが存在しないとき、墓地のモンスターを効果を無効にして特殊召喚する!呼び出すのは────《No.39希望皇ホープ》!!」

 

ランク4 光属性 戦士族 攻2500 守2000(攻撃表示)

 

「そして《シャッフル・リボーン》の更なる効果発動!自分フィールドのカード────《希望皇ホープ》をデッキに戻すことで、カードを1枚ドローする!」

 

 道化師……お前は俺に”エンタメデュエルってなんだと思う”って言ったな。俺は────このデュエルこそが、俺のエンタメデュエルだと思う。

 お互いが全力……それ以上の力を出し合ってするギリギリのデュエル。勝つか負けるかの瀬戸際で繰り出される華麗なコンボ。これ以上ない緊張感の中で、デッキを……自分自身を信じる心と、奇跡のドローによって成り立つ────1ターン1ターンが奇跡の連続、そんなデュエル。

 

 俺も相手も見てる人も、ドキドキしたりワクワクしたり、時にはヒヤヒヤしたりびっくりしたり。でも最後には”いいデュエルだった”って笑い合える。

 

 

────それが俺の目指すエンタメデュエルだ!!

 

 

「行くぞ!俺はこのドロー!…………《EMフレンドンキー》をドローする!」

 

 俺が右手で空を指さしながらそう宣言すると、会場中がざわつき始める。

 今、俺のデッキの中で”あの何か”を呼び出せるとしたら、《フレンドンキー》を引き当てるしかない。

 デッキに1枚しか入ってないカードを残りデッキの中から引ける確率なんて、俺には分からない。でも確かなのは────奇跡は起きるものじゃなくて、起こすものだってことだけ!!

 

 俺がデッキトップに指を添えると、会場を静寂が包み込む。

 俺は一呼吸おいてから、いつも大きく……力強くカードを引いた。

 

「────ドロー!!」

 

 そして俺は引いたカードを見ることなく、デュエルディスクのモンスターゾーンに置いた。

 デュエルディスクがカードを感知して、そのカードをソリッドビジョンに映し出す。映し出されたカードは────。

 

「召喚────《EMフレンドンキー》!!」

 

レベル3 地属性 獣族 攻1600 守600(攻撃表示)

 

 奇跡が起こった────観客がそれを理解した途端、バトルフィールドに大歓声が響く。

 

「《EMフレンドンキー》の効果発動!墓地のレベル4以下の《EM》モンスター────《EMプラスタートル》を特殊召喚!!」

 

レベル4 水属性 水族 攻撃100 守1800(守備表示)

 

「《プラスタートル》の効果発動!自分フィールドモンスター2体まで選んで、レベルを1つ上げることができる!俺は《フレンドンキー》のレベルを1つ上げて”4”にする!!

 そしてレベル4のモンスター2体でオーバーレイ!!闇を照らす光の翼!!《No.39希望皇ホープ》!!」

 

ランク4 光属性 戦士族 攻2500 守2000(攻撃表示)

 

「本当に宣言したカード引き当てて、《ホープ》まで繋げるなんて────奇跡が起こったのか……?」

 

 驚く大輔に、俺は笑って首を横に振った。

 まだだ、これじゃ大輔には勝てない。ここから逆転して勝つには、さらなる奇跡を起こさないと。

 

 さっきのあの光……俺は感じた、奇跡を起こす新しい力を……だからきっと────。

 

「────────本当の奇跡はここからだ!!」

 

 その瞬間、エクストラデッキが再び光だす。俺がエクストラデッキから光り輝く白紙のカードを取り出すと、その光は《ホープ》の元へ向かい、白紙のカードは色づきはじめる。

 《ホープ》は光の衣に包まれ、その姿を少しずつ変えていき、白紙のカードは名前の部分が何も書いていないカードとなった。

 ────この《ホープ》の名前か……俺が”0”から”1”に踏み出した、その証のカード。その名は────。

 

「現れろ《SNo.39》!!闇を照らす希望の使者、その白き翼────奇跡の光を纏う!《希望皇ホープONE》!!」

 

ランク4 光属性 戦士族 攻2510 守2000(攻撃表示)

 

「これが遊矢の新しい《ホープ》!?」

「《希望皇ホープONE》の効果発動!相手と自分のライフ差が3000以上あるとき、俺のライフを10にして、エクシーズ素材を3つ使い、相手フィールドの特殊召喚されたモンスターすべてを破壊、除外する!そして破壊したモンスター1体につき、300ポイントのダメージを相手に与える!

 俺と大輔のライフ差は3150!放て!パラドックス・フォース!!」

 

 進化した《ホープ》がその眩い光と共に右手に持った剣を振りかざすと、大輔の《No.》をその光で消し去っていく。

 

「破壊したモンスターは4体!よって1200のダメージだ!!」

 

 大輔も光の余波を受けて、ライフが2350に減った。そしてこれがラストアタック!

 

「《希望ホープONE》で大輔にダイレクトアタック!!」

 

 デュエルする相手が俺を見てくれれば────全力で俺に向かってきてくれるなら、誰とでもエンタメデュエルはできる!誰だって笑顔にできる!!

 

「ホープ剣・シャイニング・スラッシュ!!」

 

 

        ◆◇

 

 

「もう行っちゃうのか?」

 

 最後の試合が終わり、異世界交流戦も終わりを告げた。

 観客はもう帰ってしまって、バトルフィールドには今、俺たちしかいない。

 

「俺は俺の世界でやらなきゃいけないことがあるからな」

「そう……だよな。でも!またきっと」

 

 そういうと、大輔は笑って頷く。

 

「俺はこれからもデュエルを続ける。そうすればいつかまた、必ず会えるさ。そしてまた会ったときは────その時は、また戦おう」

 

 今度は大輔の言葉に俺が頷く。

 住む世界は違くても、デュエルが繋いでくれた友情は本物だ。

 お互い話したいこととかたくさんあったけど、もう別れの時間らしく、大輔の後ろに紫さんの隙間────大輔のいる世界に続く道が開く。

 

 またな────っと手を振る大輔に、俺はいつかまた再戦する日を夢見て、右手を差し出した。

 

「ありがとうございました……いいデュエルでした」

 

 

 




今回でコラボ編終了となりました。
いや~長かった。6週間長かったです。

今回の遊矢君の答えには賛否両論あるかもしれません。
ですがこれは私がこの小説を書き始めて、「エンタメデュエルとは何か?」という問題に出した答えでもあります。

そしてコラボしてくださった5人の作家さま。
この場をお借りしてお礼申し上げます。

本当にありがとうございました。
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