三か月間お休みを頂いた甲斐あって、大学進学が決まりました。
大学に進学したら、本格的に同人活動していきたいと思っているので、今作の方のクオリティを上げていきたいと思います。
それでは三か月ぶりの「エンタメデュエリストが幻想入り」
お楽しみは、私からです。
私は強くなる。
どんなに敵が強くても、どんな困難にぶつかったとしても。
平穏を、大切な居場所を、誰かを守れる──悲しい今を変える力で。
「私のターン、ドロー」
お互いのライフは5000対5600、大した差はない。手札は私のほうが多いけど、ボードアドバンテージは相手にある。けど引っくり返せない盤面じゃない。相手の場にいるモンスターは破壊されれば効果が発動するモンスターだけど、フィールドから消さなきゃ勝ちはない。
「スタンバイフェイズにリバースカードを発動させる。トラップカード《レッドアイズ・スピリッツ》……墓地の【レッドアイズ】モンスターを特殊召喚する。蘇れ《レッドアイズ・ダークネスメタル・ドラゴン》」
レベル10 ATK:2800
「ダークネスの効果で墓地から《真紅眼の黒竜》を特殊召喚!」
レベル7 ATK:2400
場に出揃った二体のレッドアイズ。
このままバトルに入っても、相手のモンスターを一掃できる。けど、それだと後に出て来る後続や、次の自分のターンの動きも単調になってしまう。
一呼吸おいて手札にある二枚の魔法カードに視線を落とす。体力は既に底をついているこの状況。使うのを躊躇う余裕もない。二つに一つ、選ばなきゃいけないのなら──私は迷わない。
「手札からマジックカード《ギャラクシー・クィーンズ・ライト》を発動。自分フィールのレベル7以上のモンスターを対象とし、対象モンスター以外のレベルを、対象モンスターのレベルに合わせる。私が選ぶのは真紅眼の黒竜」
「レベル7が二体……さっきのコントロール奪取モンスター?」
「どうかな……オーバーレイ! ランク7《真紅眼の鋼炎竜》」
ランク7 ATK:2800
「攻撃力はさっきより高くなったけど、それじゃあんまり解決になってないよね~」
若干呆れたように両手を上げ、首を横に振るクラウンピースを無視して、三枚ある手札の内一枚を引き抜く。相手がどう思おうと関係ない。私は私のプレイを貫いていけばいい。
「手札から《RUM―アストラル・フォース》を発動。真紅眼の鋼炎竜をランクが二つ高いエクシーズモンスターにランクアップさせる」
発動と同時に、デュエルディスクのエクストラエリアが開き、中からカードが一枚飛び出す。カードは黒いオーラを纏いながら私の周りを回り始め、その色を濃くしていく。
「えっ……ちょっ……何それ……」
さっきの呆れ顔が嘘のように、その表情が強張る。次第にカードが私のもとへオーラがモンスターの所へ分離して、カードをディスクのモンスターゾーンに出す。オーラを纏った鋼炎竜は、その鉄の装甲が剥がれていき、その姿が少しずつ闇に溶けてゆく。そして完全に闇に染まると、そこに居たのは──まるで影のように形はなく、宇宙の黒天を体に写し取ったような姿をした──龍。
「暗黒銀河龍、《No.95 ギャラクシーアイズ・ダークマタードラゴン》を召喚っ!」
強さを教えてくれた人から譲り受けた一枚。
守られる側から守る側へ変わると決めた一枚。
「デッキから三種類のドラゴン族カードを墓地に送ることで、召喚時効果が発動」
デッキを引き抜き、中から三枚のカードを選んで墓地に送る。これは伏線。このターンでは相手のライフを削りきることができない。そして同時にデュエルディスクの
それにしても今の私はいつになく冷静だ。負けられない勝負では、よく熱くなって空回りしてしまうのに。今は頭の中が妙に冷めているというか、思考速度が上がっているというか。悲しみも苦い過去もすべて飲み込んで、体が熱くなってゆく。これをなんて形容すればいいだろう。例えるなら──本能が疾走する。
「相手は自分のデッキからモンスターカードを三枚除外しなければならない」
「それぐらい大した被害じゃないね。はい三枚」
「エクシーズ素材を一つ使うことで、ダークマター・ドラゴンはモンスターに二回の攻撃ができる。バトル、パラディオスに攻撃っ!」
宣言と同時に、ダークマター・ドラゴンの体の一部が一瞬で伸び、その暗闇がパラディオスの体を掻き切った。その衝撃が辺りを襲う。
「くっ……2000ダメージだけど、トラピーズ・マジシャンがいる限り2500以下のダメージは0になる! さらに破壊されたパラディオスの効果で一枚ドロー」
「二回目の攻撃、トラピーズ・マジシャンを消し去れ──クリムゾン・スマッシュ!」
瞬間、私の背後からダークマター・ドラゴンの姿が消え、気付けばトラピーズの背後へ。無形の体がトラピーズ・マジシャンに絡みつき、動きを封じる。身動きが取れなくなったトラピーズ・マジシャンの頭上から鎌のような形に変化した腕が振り下ろされ──斬。
「ダメージ発生しない! そして破壊されたトラピーズ・マジシャンの効果で、デッキから《Em ミラー・コンダクター》を特殊召喚!」
レベル4 ATK:600
バトル終了時点で相手フィールドにモンスターが一体、手札は一枚増えて二枚。
「カードを一枚伏せてターンエンド。そしてこのとき墓地の《真紅眼の翼竜》の効果を発動させる。召喚権を行使していないターンの終わりに、このカードを墓地から除外することで、【レッドアイズ】モンスターを墓地から特殊召喚する。三度舞い戻れ《レッドアイズ・ダークネスメタル・ドラゴン》」
レベル10 ATK:2800
「面倒なのがまた復活してきた……アタイのターン!」
「このスタンバイフェイズ、墓地の《アークブレイブ・ドラゴン》の効果を発動。同じく墓地の《巨神竜フェルグラント》を特殊召喚する!」
レベル8 ATK:2800
突然現れた新たなドラゴンにクラウンピースは目を白黒させるが、すぐに理解する。この二体が、デュエル中に使っていない──すなわち、ダークマター・ドラゴンの効果発動の時に墓地に送られた三枚のカードの中の二枚だということを。
「フェルグラントは墓地から復活した場合、相手のフィールドか墓地のモンスター一体を除外できる。ミラー・コンダクターを除外する!」
「次から次へと……ミラー・コンダクターの効果をチェーンして発動! レッドアイズの攻守を反転させる。その後で500ポイントのダメージを受ける……うっ」
代償によってライフは5100となり、ミラー・コンダクターもフィールドから消えていったが、ダークネスメタルの攻撃力が2400に下がった。
フェルグランドは、除外したモンスターのレベルまたはランクの数一つにつき攻撃力を100ポイント上げるため、その攻撃力を3400となる。
だがクラウンピースは同様の色を見せることなく、手札から一枚のカードを発動させる。
「手札から《貪欲な壺》を発動。墓地のスティルス・シューター以外のモンスター五体をデッキに戻して二枚ドロー。
よし、マジックカード《地割れ》を発動! フィールドで一番攻撃力が低いレッドアイズを破壊するよ。
そしてモンスターをセット。カードを一枚伏せて、マジックカード《命削りの宝札》を発動!手札が3枚になるようにドローする! ……カードをもう二枚伏せてターンエンド。命削りの宝札のデメリットで、手札をすべて墓地送るよ。といっても手札に残った《Em フレイム・イーター》だけなんだけどね」
攻め込んでは来なかったけど、ドラゴンを呼べるダークネスメタルを潰されたのは大きい。しかも伏せカードが三枚。前のターンより断然責めずらくなった。けど止まらない。
どれだけ罠が張り巡らされていたとしても、それらすべてを振り切るスピードで走り抜ける。それが私の見つけたスタイルだ。
「私のターン、ドロー。──バトル、フェルグラントでセットモンスターに攻撃!」
「させない! 永続トラップ《アストラル・バリア》を発動! モンスターへの攻撃を、アタイへのダイレクトアタックに変更する!」
地面を蹴ってセットモンスターへ飛んでいくフェイルグラントの進路を強引に変え、ダイレクトアタックがヒットする。ライフを1900に削ったのは良かったけど、モンスターを破壊した時に、墓地からドラゴンを出すフェルグラントの効果を見事に躱された。
「まだダークマター・ドラゴンの攻撃が残ってる。行け! セットモンスターに攻撃っ!」
「アタイは再度アストラル・バリアの効果を適用! その攻撃、アタイへのダイレクトアタックへ変更だ!」
馬鹿な──思わず目を白黒させる。
相手のライフは残り1900。ダークマター・ドラゴンの攻撃力4000を受けきることはできない。ならば何故──その答えは残り二枚の伏せカードにあるのか。
「畳みかけるよ! ダブルトラップ《門前払い》を発動! フィールドのモンスターがプレイヤーにダメージを与えた場合、そのモンスターは持ち主の手札に戻る!」
「でもそれだけじゃ、負けは免れない」
「ここから! トリプルトラップ《ディメンション・ウォール》発動! この戦闘によってアタイが受ける戦闘ダメージは相手が受ける!」
やられた、攻撃はもう止めることができない。
攻撃を仕掛けたダークマター・ドラゴンの手は、攻撃対象をセットモンスターからクラウンピースに変更。振りかざした手は次元の渦に飲み込まれ私の背後へ。攻撃は私の背中に直撃、肉が裂ける感覚が、その痛みに拍車をかける。
衝撃は凄まじいもので、抗う力のない体は宙を舞う。
姿が消えていくダークマター・ドラゴンを見ている視線は次第にぼやけ、音が少しずつ聞こえなくなっていく。
今までの疲労、負担が積もり積もって、投げ出された私の手の中から意識という綱が抜けていく感覚が、よくわかった。
◇◆
無人の廊下を駆ける少女は、その表情を険しくした。少年は言った、自分が友達だと思えば友達なのだと。
では自分にとって鈴仙とはなんだ?
鈴仙にとって自分はなんだ?
うまい答えが見つけられない。でも、ただ一つ、わかることがある。
あの時、突然と姿を消した鈴仙。確かに数回言葉を交わしただけ、特別仲が良かったわけじゃない。思い出は片手で数える程しかない。でも、ユキにとっては初めて普通に話してくれた存在だった。自分のことは余り話さなかったが、鈴仙はたまに永琳の研究の手伝いをしている話をしてくれた。普段からは考えられないような明るい声で、楽しそう話す鈴仙の、あの笑顔が忘れられなかった。
そして今日、鈴仙は再びユキの前に現れた。動揺した。怒った。でも何より──嬉しかった。久しぶり見た鈴仙は見違えるようで。──自分はなんだか置いてきぼりで。
角を曲がり放送で聞いた区間に着く。放送から既に数分が経過している。一体現場はどうなったのか。ユキは壁から恐る恐る顔を出す。どうやらここにまで被害は届いていないようだ。だが、皆かなりの怪我を負っているのか、手当てをする者、される者が殆どだ。
「あ、ユキ!」
「セイラン……リンゴ……」
隔壁の動作スイッチの前でこちらに手を振る玉兎が二人。名前を知っている二人を見つけ、傍まで駆け寄る。どうやら二人とも怪我は無いようで、鈴瑚に至ってはこの状況でもお団子を口にしている。
「状況は?」
「今のところは……ってとこかな。今隔壁の向こうでレイセンが戦ってる」
「レ、レイセンが?」
「うん、さっきリンゴと一緒に此処に来て、何とかするから誰も此処を通すなって」
ユキの背中に冷たい汗が伝う。
彼女がどうやって戦っているかは、想像できた。ユキと鉢合わせになった時に捕縛を解いた
「……開けて」
「駄目だよ! レイセンが誰も入れるなって──」
「いいよ~ポチッとな」
ユキを止めようとする清蘭に反して、鈴瑚は軽々しく隔壁の開閉スイッチを押した。
「ちょ、ちょっと!」
「リンゴ……」
「いや~実は私もレイセンには用事があってさ。地上のお土産話聞かないといけないだよ。そろそろ終わってる頃だろうし、レイセンだってきっと疲れて昼寝でもしてるだろうさ。起こしてきてくれない?」
小さくウインクする鈴瑚に、ユキは小さく頷く。
「もうどうなっても知らないからね!」
「大丈夫だって、行ってらっしゃい」
「えっと……あ、ありがとう」
それだけ言い残して、隔壁の外に飛び出す。其処からはできる限りの速度で廊下を駆け抜ける。過ぎていく景色、そこに点々と倒れいる数十匹の妖精たち。手酷くやられたのか、完全にのびている。
「これだけの数をレイセン一人で……」
賞賛を通り越して恐ろしさまで感じる。一体どれだけ体を酷使すればこんな──。走る速度はさらに上がってゆく。
見違えたと思ったが、あの頃と変わっていないところもあった。
言葉足らずで、
人一倍誰かには気を遣って、
誰にも言わず、なんでも一人でやってしまおうとする。
「秘密主義なのかどうか知らないけど……」
この道の最後の角を回り一本道。
「少しくらい話してよ!」
視線の先。
笑う妖精に、宙を舞う兎。
地面を蹴る。
手を伸ばす。
──届け。
地面に滑り込む。摩擦が膝を焼いていく。
そして体にレイセンの全体重を受け止める。
背中に添えた手は鮮やかな赤で染まった。
「……ど、どうして……?」
虚ろな瞳。黄色く染まったそれは困惑を隠し切れない。
彼女に返す言葉を、ユキは頭の中から探す。彼女を安心させてあげられるような、そんな一言を。そして
「友達を……大事にしてみた」
彼女の瞳から、暖かい涙が零れた。
◇◆
耳に届いた誰かの叫び。
それが放しかけた意識の綱を私の手に再び握らせた。
重力に引っ張られ地面に落ちながら、声のする方に視線を運ぶと、其処にはこっちへ向かって走り込んで来る人影が一つ。
そんな、嘘だ。彼女がどうしてここに……?
私が捉えたもの──それは必死にこちらへ向かって手を伸ばすユキの姿だった。
地面に滑り込む彼女が私を受け止める。私の瞳を真っ直ぐ見つめる彼女の顔が、綻んだのが分かった。
「……ど、どうして……?」
肺に無理やり空気を溜めて、声を絞り出す。自分のために彼女がそこまでしてくれる理由がわからなかった。ユキは一瞬言葉に詰まったものの、すぐに口を開いた。
「友達を……大事にしてみた」
その言葉を聞いた瞬間、自分の瞳から涙が顔を伝っていくのが分かる。私はそんな言葉をかけてもらえる資格なんてないのに。誰にも言わずに逃げ出したのに。それでも彼女は私を友だちと思ってくれているのなんて───溢れ出る涙を止めることができなかった。
言わなきゃ。
あの時伝えられなかった全てを。
言葉を交わしてくれた感謝を。
何も言わず行ってしまった謝罪を。
「……ごっめ……ん……」
色々なものがつっかえて、酷くグチャグチャになったそれを、ユキはただ、私の涙を拭いながら何度も、何度も頷いて──最後に笑ってくれた。
胸の奥に刺さっていた何かが、じわり溶け出す。
やがて止まっていた歯車が、過ぎ去った時間を取り戻そうと、再び時を刻み始める。ゆっくり、でも確実に。
──なんだ。月にだって私の居場所はあったじゃないか。
怖いって殻にこもって、自分が誰かに思われてることに気付かなかった。
今ならわかる。月の狂気に一番呑まれていたのは──私自身だと。
ユキの上から、彼女の手も借りつつ、少しずつ立ち上がる。
──あの日、私は自由を求めて罪を犯した。その行動に後悔はない。でも、誰に許されても、蟠りがなくなっても、犯した罪は消えない。これから先、私がずっと向き合っていかなきゃいけないもの。
だったら……背負っていく。
いつかこの命が消えてなくなるその時まで。
重さに耐えかねて潰れてしまう日がくるかもしれない。
目を逸らしたくなって、投げ出したくなる日が来るかもしれない。
それでも踏ん張って、人生というゲームを戦っていかなきゃいけない──そう思う。
「私は……これでターンエンド」
だからここで終わるわけにはいかない。
まだ依姫様や豊姫様、ユキに話したいこと、聞きたいことがいっぱいあるんだから。
「アタイのターン、ドロー! ……いい雰囲気の所悪いんだけどさ、そういうのは負けてからでも遅くないよって! 《Em フレイム・イーター》を召喚!」
レベル4 ATK:1600
「この子の召喚に成功した時、お互いに500ポイントのダメージを受ける──けど! それにチェーンして墓地の《Em スティルス・シューター》の効果発動! 墓地から除外して、相手に2000ポイントのダメージを与える!」
効果ダメージ──瞬時にセットカードを発動させる。
さっきのディメンション・ウォールは”戦闘ダメージを相手に押し付ける”効果だったから使えなかったけど、効果ダメージなら発動できる。
「カウンタートラップ《ダメージ・ポラリライザー》発動! ダメージ与える効果が発動した時、その効果を無効にし、互いに一枚ドローする」
2000ポイントのダメージは回避できたけど、お互いが受ける500ポイントのダメージは消すことができない。お互いのライフは1400対500、私に後はない。
「セットしてた《Em ハットトリッカー》を反転召喚! レベル4のモンスター二体で《Em トラピーズ・マジシャン》をエクシーズ召喚!」
ランク4 ATK:2500
「さらにカードを伏せて……ターンエンドだよ」
ターンの終了宣言と同時に、自分のデュエルディスクに視線を落とす。
「──残り二分か」
一秒、また一秒と、過ぎる度に評されている数字は減っていく。ダークマター・ドラゴンを場に出してからもうすぐ三分が過ぎようとしていた。
私が蓮子さんからダークマター・ドラゴンを受け取るときに交わした一つの約束。ダークマター・ドラゴンをデュエルで使用すると、使用者に莫大な負担がかかる。しかも一度出してしまうとデュエルが終わるまで使用者とのリンクが切れない。だから蓮子さんが私の体で耐えられる時間を計算して、その時間内にデュエルを終わらせる。それがダークマター・ドラゴンを使うときの約束だ。
「これがラストターン……ドロー!」
あのセットカードがまた攻撃反射系、もしくは効果ダメージ系だったら私の負けだ。でもこのまま何もしなくても、私の体は限界を迎える。なら、全力で飛び込んでいくしかない!
「マジックカード《思い出のブランコ》を発動! 墓地から通常モンスター一体を特殊召喚する! 可能性の化身《真紅眼の黒竜》!」
レベル7 ATK:2400
「無駄無駄、攻撃力2500以下の攻撃は、直接攻撃に変更できる、フェルグラントの方で攻撃しても私にダメージは入らないし、後続を呼べる。それにもしかしら伏せカードで終わりかもよ?」
「……永続魔法《進撃の帝王》を発動、アドバンス召喚したモンスターは効果で破壊されず、効果の対象にならない」
「だ~か~ら~攻撃力5000以下の攻撃は意味ないって言ってるでしょ? アドバンス召喚でそんなモンスター出せるわけないじゃん」
笑うクラウンピースに、私は手札に残った一枚のモンスターカード突きつける。この状況、私が勝てる唯一の手。
切り札は、常に私の所へやってくる!
「二体のモンスターをリリース! 海王星より巨神をここに《The tyrantNEPTUNE》を召喚!」
レベル10 ATK:0
二体のモンスターが光となって消え、
「こ、攻撃力……0?」
「NEPTUNEの攻撃力は、召喚の際にリリースしたモンスターの攻撃力の合計分アップする。よって攻撃力は──」
「ご、五千……二百……」
「バトルだ! NEPTUNEでトラピーズ・マジシャンに攻撃! 過去の亡霊ごと薙ぎ払え! オーシャンブラスト!」
力強く振りぬかれた鎌から放たれる斬撃、それは水を纏いクラウンピースを飲み込んでいった。
3、2、1──
「タイム……アウト……」
決着と同時に数字の減少が「0」で止まる。
限界か、それとも決着がついたことによる安堵か、膝からその場に倒れ込みそうになるが、ユキが肩を貸してくれた。
「あ、ありがと」
「ううん、何も言わずに行っちゃったのはあれだけど……私も、自分から話そうとしなかったから。そ、その……」
目が合うと逸らす。
言いたそうに口は開くが、うまく出なくて口篭もる。
「?」
私が首を傾げると、ユキは意を決して口を動かす。
小さかったが、確かに聞き取れた。
「うん、こんな私でいいなら」
「ありがとう──鈴仙」
──拝啓、月に居た頃のレイセンへ
何にもない、空っぽの私だったけど、
決断して、
悩んで、
戦って、
泣いて、
笑って、
少しずつ、一つずつ埋めていって、
今ではこの胸の中がいっぱいです。
鈴仙より