義体の少女と勝利の名 -プロト:ワールド- 作:mikadzuki
[①-5]2059.4/9.11:45”Shopping Mall“
あれから1時間と少し。未だ動きは無い。
「Order」からの連絡は2つ。
1つめ、「応援を向かわせる。無理はするな。」
2つめ、これは直属の上司からなのだが、
「なんでお前はすぐ厄介事に巻き込まれるんだ?」とのこと。私だって巻き込まれたくて巻き込まれてるワケじゃない。
そんなわけで、私の強制休暇は意外な形で一時中断された。それより、一時的とはいえ出勤が許可されたということは、犯人に対しての発砲、武力行使が許可されたというわけだ。
「フォー、左腕を戦闘モードに移行しておいて。」
「了解しました。」
フォーの短い返事の直後、過去の負傷により義手となった左腕が機械音を上げる。
「各部関節アクチュエータ稼働上限解放。 腕部格納兵装、オンライン。
痛覚リミッター、正常に作動中。
戦闘モード、移行完了。」
私が「フォー」を開発した理由の1つとして、義手となった左腕の管理がある。
普段から思いっきり動かしていると消耗が激しくてすぐに壊れる。でも犯罪者と戦う時はどうしても激しく動かす必要がある。そこで「フォー」の出番というわけだ。
「…フォー、これ、もう犯人が中に入ってるなんてことは…」
私がそう言い終わると同時、いや少し前に、目の前の商業施設の内部から炸裂音がした。
「やっぱりか!」
私はすぐさま愛用している拳銃を引き抜き、施設の内部に突入する。
「フォー、内部のカメラをハックして。犯人の居場所を突き止める。」
「確認しました。7階の雑貨店内に人影があります。」
一般人はすでに退避している。おそらく、その人影が犯人だろう。
なら、7階を目指して移動する他ないだろう。
「チッ、エスカレーターがやられてる。フォー、この施設の間取りを。」
スマートフォンの画面に、商業施設の間取りが表示される。
「マスター、非常用階段の使用をおすすめします。」
「生きてるのか?」
「外部のカメラを確認した結果、一部損傷がありますが、7階までは到達することは可能です。」
ひとまず非常用階段を使用し、上階に上がる。これだけ丁寧に昇降機設備が破壊されているということは、7階の人影がやはり犯人なのだろうか?
「…罠じゃないといいんだけど。」
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[①-6]プロテリウムは、様々な分野で技術の革新を促した。
電子機器、自動車、建築、医療、軍事。
特に医療分野での活躍には目を見張るものがあった。
人口臓器や、義体化技術の発展により、人類種は、今までよりもさらに長く生きる事が可能となった。重大な事故にあって、内臓が破壊されようとも、身体を重篤な病に侵されてしまい、生命の危機だとしても、その部位を義体化してしまえば良いのだから。
一部企業の富裕層などは脳だけを残し、全身を義体化するという選択を取る事で、末永い命を手に入れようとした。
自らの、権力のためだけに…
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[①-7]2059.4/9.12:20.”Go loud“
「フォー、7階に到着した。」
「ここからは、監視カメラが破壊されています。周囲に警戒してください。」
「了解。」
監視カメラが破壊されている…つまり「フォー」からの索敵支援が受けられないということ。死角には注意が必要だろう。
それにしたって…
「静かですね。」
そう。静かすぎるのだ。もしや本当に罠なのか?
「もしや犯人はもう移動したんじゃ…ッ!?」
人の気配。おそらく、いやほぼ確定で犯人と見ていいだろう。
武装は…ナイフ一本と…あれは、起爆装置?
「…マズイ!」
足音を消しつつ犯人の背後に急接近する。まだバレてないといいが。
「動くな!手に持ってる物を地面に置いて、両手を頭の後ろに!」
「……断る!」
容疑者が私の方に走って来る。右手にはナイフ、左手には起爆装置。
「死ね!女ァ!」
ナイフを振り上げ、私目掛けて振り下ろしてくる。
「なっ!?お前、何を考えて…うおぉ!?」
私はナイフを義体化した左手の手のひらで受け止め、そのまま犯人の足を払う。バランスを崩された犯人は盛大に地面に転がる。
「…痛覚リミッターがあって良かった。」
手のひらに刺さったナイフを抜きつつ、私は犯人から起爆装置のようなものを奪い取り、犯人を拘束する。
「ハッ、案外マヌケなんだな。あんた。」
「…どういうことだ?」
「俺が一人だと思ったか?コッチにゃ仲間がいるんだよ!」
仲間?道中、人の気配はなかった。コイツの話が本当なら…
突如、施設全体を包み込むような爆音が響き渡る。
「なっ!?クソ!」
建物全体が揺れ、崩落し始める。
「これで道連れだな!クソ女!」
「チッ!」
私は傾いた床に流され、建物の端まで流される。
「マズイ!」
咄嗟に壁にしがみついたが、長くは持たないだろう。何とかしなければ。
「あ…」
掴んでいた窪みが外れ、私は地上に落下する。
体制を変えようとしても間に合わない。
「グゥ…クソ…」
何とか落下の衝撃には耐えた。だが、追い打ちをかけるように壁面の破片が真上に落下してくる。
「マズイマズ…」
瞬間、私の意識は途切れた。