義体の少女と勝利の名 -プロト:ワールド-   作:mikadzuki

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[②-3]2059.9/12.14:30“rehabilitation”

あまりに急な義体化宣告を受けてから数十分後、私は新しくなった身体の感覚を掴むため、「Order」の訓練施設に来ていた。

「さて、何から始めるか…」

「義体の機能を確認してみるのはどうでしょう?」

それもそうだな。まずは新しくなった身体の詳細を知ることからだ。

「フォー、義眼から起動して。」

「了解。」

フォーの短い返事と同時に、機械となった両目にあらゆる情報が映し出される。

「HUD搭載型?たしか最新モデルでしょ?完成してたの?」

「はい。5ヶ月前に発表され、9月に入って正式に販売開始されました。」

なるほど…時差ボケを直しておかないと大変なことになりそう…

それにしても、これは便利そうだぞ?

HUDが搭載されているということは、銃火器の残弾数、目標地点の表示、双眼鏡なしでの遠距離偵察、その他あらゆることが可能になる。

「次は…右腕かな。」

右腕は特に左腕と変わりはなく、痛覚リミッターなどを搭載した戦闘モードがある種類の義手だった。もしかしたら、右腕と左腕で種類の違う義手で混乱しないように配慮してくれたのかもしれない。

「脊椎は…フォー、ここに何か特殊な機能はある?」

「はい。ロックされたシステムが1つあります。」

「解除できそう?」

「いえ、あまりにも強固なセキュリティでロックされており、突破は難しいでしょう。」

フォーが突破できないセキュリティ…一体何を守ってあるんだろう?

まあいい、いずれわかることだろう。

この人工脊椎は硬化カーボンで出来ていて、内部にプロテリウムの粒子を配合しているため、軽さと丈夫さを兼ね備えているということをドクターが言っていた。左腕、右手も同様らしい。そのおかげか、半身近くが義体化されているにかかわらず、身体は軽い。

さて、一通りの確認は出来た。出来れば実戦でも確認したいところだが…

「〜♪」

うん?電話?そして、この番号は…

義体化が進んだことで出来るようになったこと、スマートフォン無しで通話が可能になった。詳しい原理はよく分からないが…

「もしもし?」

「よう!起きたか”相棒“!」

「声がデカい!そんな張り上げなくても聞こえてるよ!」

「ハハッ、元気みたいだな!」

「5ヶ月寝てたってのにうるさい電話かけてくる誰かさんのおかげでね!」

「ハハハッ、やっぱりあんたといると退屈しないよ!」

「ハイハイ、そうですか。で、要件は?」

「そうそう、要件だが、司令官殿から直々のお呼び出しだ。」

「どこに行けばいいの?」

「5階、司令室だ。待ってるぜ。」

「え?待って、あんたも一緒な…」

切られた。

…アイツといっしょに呼び出されたということは、十中八九任務だろう。

まだ万全とは言い難いが、アイツは腕だけは確かだ。

「はぁ…まあ、復帰戦と行こうかな。」

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[②-4]プロテリウムが発見されて30年。世界は大きく変わった。

人類種最悪の戦争、「国有化戦争」以来、世界の常識は大きく変わった。プロテリウムを多く保有し、プロテリウム技術をより早く発展させた企業が派遣を握る世界。企業同士で監視し、圧力を掛け合う。まさにそれは「冷戦」と呼ぶにふさわしい状況だった。

そんな世界を変えるために生み出されたのが「Order」である。

世界の治安を維持しつつ、各企業の動向を監視し、「火種」になるものを消していく。

それが「Order」の役目であり、使命である。

“2059年新規入局職員用パンフレット”より

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[②-5]2059.9/12.14: 45“Mission Briefing with buddy”

ゼェ…ゼェ…「Order」の階段…こんな多かったっけ…?

「おう、来たか。ちょっと遅いんじゃないか?」

時刻は14時45分。5ヶ月寝てた患者が5分弱で5階駆け上がれたのだから遅くはないのででは?

「無茶…言うなよ…コッチは…5ヶ月…寝てたんだぞ…?」

「う〜ん、まあ、それもそうかもな。今回は大目に見るよ。」

お前は一体何様だ。

「お前は…一体…何様…だ…」

マズイ、考えたことが口に出てる。

「まったく、変わらないな。君たちは。」

不意に声をかけられる。馴染みのある声だ。

「Order」司令官、エレナ・ヴォルコフ。

指示の的確さ、状況を正確に判断することのできる頭脳。そして局員たちへの柔和な対応で評判が極めて高い人物だ。

「黒瀬、君が無事で良かったよ。」

黒瀬…「黒瀬紅羽(クロセ クレハ)」。それが私の名前だ。

「無事…まあ無事ですかね。」

「右肘から下、両目、脊椎をやっても無事とはよく言ったもんだな。」

私が負傷した箇所を1つ1つ数えながら「アレクセイ・ギルダー」が軽口を叩いている。

「アレックス、その辺にしておけ。刺されるぞ。」

普段と変わりない会話を交わしつつ、ブリーフィング・ルームに入室する。

「それで、私達を呼んだってことは…?」

「任務…だろ?」

「ああ、今回君たちには、諜報作戦に出てもらう。」

諜報作戦、リハビリにはちょうど良いだろう。

「諜報作戦ねぇ…それで?今回のターゲットは?」

「エテルナ中心部に位置する巨大民間軍事会社『Eterna Private Military Company』、通称『E.PMC』。」

通称とは言っているものの頭文字取っただけでしょう、それ。

「この企業が最近、何やら怪しい動きを取っていることが確認された。」

「怪しい動き…ずいぶんと抽象的ですね。」

「実際、詳しいことは何もわかっていないからな。それを調べるのが、お前たちの任務だ。」

なんともまあありがちな話だ。この仕事に就いてれば、さほど珍しい話でもない。

「分かりました。潜入方法は?」

「単純な話だ。身分を偽装し、内部に待機させてある内通者と協力し、噂の真偽を確かめる。それだけだ。」

「なるほど、単純明快いつもの任務だな。で?交戦規定は?」

お前は戦闘狂か?

「真偽が判明するまでは極力殺すな。だがもし、クロだと分かったら…」

「ドンパチ、ですか。」

「そういうことだ。何か質問は?」

いつも通りのミッション。いつも通りやれば、ミスは無いだろう。

「無いようだな。では作戦開始は3日後。それまでしっかり休んでおけ。」

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