義体の少女と勝利の名 -プロト:ワールド-   作:mikadzuki

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[②-10],[②-Epilogue]

[②-10]2059.9/22.13:00.“Nīkē”

1週間後、私は「Order」の検査棟に来ていた。理由は何個かあって、1つめが義体の検査、2つめがニケのポートに挿した際の脳の定期検診、3つめがこの1週間様々な検査を受けていたニケの迎え。

この1週間、小さな問題こそあったものの、これと言って大きな問題が起きることは無かった。

「E.PMC」とは密輸プロテリウム製品の事を公表しない代わりに、今回の私達の作戦行動を無かったものとすることで合意している。だが、問題は山積みだ。「E.PMC」で確認した密輸プロテリウム製品の出処に、巨大都市でバレずに地下空間を建造した方法、ニケの製造元・販売元の特定。やることはまだまだある。

思わず「フフ」、と笑いが漏れる。

ドクターには休めと言われているのに、私はずっと仕事のことしか考えてないな。だがまあ、しばらくは休みになりそうだ。

ニケは私が預かることになった。名付けということもあるし、何より本人から強い希望があったからだ。しばらくはニケに様々な事を教える事が、私の仕事になる。

「クレハー!」

そんな思考を巡らせていると、ニケの明るい声が聞こえてくる。

「検査は無事に終わりました。資料を送りますね。」

検査員が端末を操作すると私の義眼にデータを受信したことが表示される。

「…そういうことだったのか。」

「?、どうしたの?クレハ。」

「いや、何でもない。さあ、ニケ。私の家に行こう。」

「うん!」

今、笑顔で私と並んで歩いているニケの姿は年相応に幼く見える。だが…

私は義眼のHUDの隅に表示したデータに目をやる。

『多重人格の疑いあり』

多重人格…それなら、作戦中と今現在のこの違いも説明できる。

人格入れ替わりのトリガーはまだ確定していない。だが、まあ、1週間何も起こらなかったなら、大丈夫だろう。そんな考えを持ったのは、ニケを信頼しているからなのか、脳が軽く焼けていたからなのか。それは分からない。そういえば、何か忘れて…?

「…ああっ!?」

「どうしたの?」

「私の検査、忘れてた…」

「プ、フフフ…アハハ!」

そうだった。私も検査があるんだった。

私達は踵を返し、再び検査棟に向かった。

__________________________________________

[②-Epilogue]2059.12/25.9:10“Christmas”

何事もない、平和な日常。

私一人だけなら退屈で、きっとおかしくなっていただろう。

だけど、今はそこまで退屈していない。

朝少し早めに起きて2人分の朝食を作る。ニケが来てから料理の腕が上がった…気がする。少なくとも少し手の込んだ料理を作れるようになった。

その後、洗濯を済ませ、今日の予定を確認する。

今日は…クリスマス。

今までは一人だったから気にしてこなかったが、一般的な人々にとっては大事な日らしく、どこも忙しそうだ。

まあ私も、今年のクリスマスは忙しくなるのだが。

「おはよぅ…」

今にも寝そうな声を出しながらニケが寝室から出てくる。

「おはよう。よく寝れた?」

「ぅん…」

嘘だな。

ニケが眠い目をこすりながら朝の支度をしているのを見ながら、私は着替えを始める。

今日はニケのクリスマスプレゼントを買いに行くことになっている。おそらく、それで眠れていないのだろう。次の日が楽しみで眠れないというのは、子どもにはよくあることらしい。

支度を終えたニケと一緒に用意しておいた朝食を食べ、出かける準備をする。

そんな光景を見ていると、ふと思う。

こんな日常を、私が過ごすことになるとは。

そして、

この日常を守りたい、と。

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