ジョウ「ちわーっす、万魔殿でーす。お届け物を持ってきましたー」
フウカ「はーい。ありがとうございます。えっ……屋内にバイク……?」
ジョウ「これをこの『ファイズフォン』っていう端末で操作すると……」ガションッ
フウカ「えっ……オートマタに変形した……?」
ジョウ「これで護衛と移動手段には事足りるかと」
フウカ「あっはい」
ジョウ「ちなみに強さは美食研究会をまとめてぶっ飛ばせるくらいですー」
フウカ「いがいとつよい」
ジョウ「それと、この端末自体が銃になりまして、これをこう操作すると……」
シングルモードッ
バーストモードッ
フウカ「はい。はい。アッハイ」
A01話.アクセルを解き放て:闇の中で見つめてる
今日も今日とて不良たちが暴れ散らかすゲヘナの日常。
そんな中、給食部部長の愛清フウカに先ほど完成したオートバジン*1を納品して
「そうか、シャーレの先生が……」
「はい。以前よりアビドスは連邦生徒会に支援を要請していたようなので、それを受けてのものかと。いかがされますか?」
「そうだなぁ……。明日、俺が様子を見に行ってくるよ」
「よろしいのですか?明日はたしか休日のはずでは……」
「いいのいいの。散歩ついでに見てみるだけだから」
あそこには個人的な用事があるしな。
……というか、先生はこの後遭難するんだよな。
このまま放置してもアビドス砂狼シロコ*2が登校中に見つけるだろうが、この世界は数多の奇跡が起きないと滅びる世界。
少なくとも先生だけは守らないと、下手したらクロコ*3の世界線みたいにドミノ倒しが如くアビドスの生徒が全員死ぬかもしれないんだよなぁ……。
序盤でセリカが拐われたまま帰ってこなかったりとかの可能性も否定できないし、先生を迎えに行くか。
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「──で、アビドスに来たはいいけど、先生の居場所がよくわかってないんだよなぁ」
翌日、屋根の無いジープで捜索に来た俺は、どこで先生が彷徨うのか目星がついていないことに今更気付いた。
これじゃあ議員たちに格好付かないなと苦笑しながら、別の方法で捜索をする準備をしていた。
「ここで取り出しましたるはドローンでござーい」
砂漠の中ポツンと呟き取り出すは複数のドローン。
もっと別の方法で使う為のものだが、それについてはまたいつか披露するとして……。
とりあえずこれで事前に調べていたシロコの通学路を起点に虱潰しに探しますかぁ。
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……私のミスでした。
私の選択、そしてそれによって招かれたこの全ての状況。
結局、この結果にたどり着いて初めて、用心深くした方が正しかったことを悟るだなんて……。
……今更図々しいですが、お願いします。
誰か。
きっと私の言葉は誰にも聞こえないでしょうが、それでも構いません。
何も分からなくても、おそらく皆は同じ状況で、同じ選択をされるでしょうから……。
だから……大事なのは経験ではなく、選択。
“だから……水とコンパスをください……。”
『……あなたのミスでした。』
シッテムの箱と呼ばれるタブレットのメインOS「A.R.O.N.A」こと『アロナ』からの冷たい指摘に心が砕けそうになりながら、こうなった経緯を思い返してみた。
シャーレに就任してからしばらくして、とある学校からの要請が届いていたことを確認した。
その名前は『アビドス高等学校』
どうにも数々の悲運で物資が足りていない状況らしく、困っているとのこと。
生徒のためならばと四の五の言わずにシャーレから飛び出したのが運の尽き。
砂漠だからと水を持ってきたは良いけど、たかだかペットボトル1本じゃ足りず、手にした地図も古い物だったようで地理も分からず。
数日後の現在、私はアビドス自治区の砂漠で彷徨っていた。
ここはどこ。私はどこ。歩く体力はそこら辺に落としてきた。
歩く気力も無くし、とうとう膝をついてしまう。
意識も朦朧としてきた。これはマズい……!
本格的に私が危ないからなのか、それとも砂漠で起こるという蜃気楼なのか、車がこちらに向かってくる幻が見えてきた……。
『先生!誰か来ましたよ!気をしっかり持ってください!!』
アロナも見えているので本物だったらしい。
よかった……これで助かるかもしれない……!
そう思って車の方に注意を向けると、運転しているであろう誰かが歌っているみたいだった。
「誰かが起たねばならぬ時
誰かが行かねばならぬ時
今この平和を壊しちゃいけない
皆の未来を壊しちゃいけない
獅子の瞳が輝いてー」
悲哀を込めたヒロイックな歌を歌っているのは、シャーレに就任した初日に劇的な出会いをした生徒、空崎ジョウだった。
今日は以前見た服装に加えて、黄色のシールドを付けた銀のオープンフェイスヘルメットを被っている。*4
そんな彼がこちらに気づいたのか、車を止めシールドを上げると私に尋ねてきた。
「……あれ?先生じゃないか。奇遇だね。どうしたの?」
“実は……水も何も無いまま遭難しちゃって……。”
「……そっか
がんばってね」
私の今の状況を軽く説明すると軽い激励の言葉をかけ、そのまま立ち去ろうとするジョウ……って待って?!
“まって?!”
彼がアクセルを踏み始めようとしたので、咄嗟に声を出した。
「あはは……さすがに冗談だよ。ほら、目的地まで送り届けるから乗ってくれ」
“……ありがとう。”
少し洒落にならない冗談に不満を感じるけど、お言葉に甘えさせてもらおう。
“じゃあ、アビドス高等学校までお願いね。”
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ジョウの車……ジープだったかな。
それに乗せてもらい、用意してくれた水を飲んで落ち着いたので、気掛かりだったことを聴くことにした。
“そういえば、ジョウはなんであんな場所にいたの?”
「…………先生がこの自治区に行くって話を聞いたからね。前に先生に無理言ってシャーレに急遽入れてもらったから、その借りを返したくて来た」
“そんなに私って頼りないかな……。”
実際に彷徨ってはいたから彼の行動は正しかったんだけど……。
“借りのことも、気にしなくてもいいのに。”
「いいや、気にするね。俺は貸しは作りたいけど借りは作りたくないんだ。だから、俺に貸しを作ったら遠慮なく頼ってくれ。議長という身分で気軽に動くのは難しいけど、できる限り早く返しに行くからさ」
“……分かった。そこ時は頼りにさせてもらうよ。”
どうやら彼には彼なりのポリシーがあるようだ。
だけど、『借りを作りたくなく、貸しを作りたい』
人としてよくあると思う欲望。
そういった所に彼の心の脆さを感じ取れた気がした。
『何もできなかったことを後悔している』
まるで、そんな出来事があったかのような……シールドでこちらからは見えない眼は、何を物語っているのだろうか、私には分からない。
「さて……アビドス高校にそろそろ着くよ、先生」
“あれが……。”
その言葉で先を見ると、確かに学校の校舎らしき影が見えてきた。
あれが要請のあったアビドス高等学校。
困っている生徒の為に、私が向かうべきと思った場所だった。
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「それじゃあ先生、俺はこれで」
“うん。送ってくれてありがとう。”
案の定彷徨っていた先生を無事に送り届けた*5俺は、次の目的地へと向かう為にジープを走らせた。
あれでも立派な大人だ。少なくとも、砂漠で彷徨うなんていう危険な行為は二度としないだろう。
同じ過ちを繰り返すのはシャーレでの書類仕事くらいか。
……また溜め込んでそうだなぁ。
容易に想像できるイメージに苦笑しながら、若干行きたくないという思いを堪えて次の目的地へと向かう。
今回はあのビルにいるのか。
懐から、ある物を取り出した。
アイツの住所が書かれた、