しかしストーリーを見返すと想像よりもクックック言ってなかったことに驚いたじゃんね
とあるビルの一室、俺は人型の異形と向かい合うように座っていた。
異形は黒のスーツを身に纏い、その漆黒の顔から白くひび割れたような口を開き、こちらに歓迎の意を示す言葉を紡ぐ。
「お待ちしていました。お久しぶりですね、『憤怒のティフォン』」
その男、『黒服』は俺のことをティフォンと呼んでいる。
ティフォンとはギリシャ神話の神ゼウスと敵対し勝利したことのある巨大な怪物で、勝った際にゼウスの足の腱を奪うも別の神に取り返され、色々あってゼウスに負けて封印された経歴を持つ。
……俺ってば、ゼッツドライバーみたいに科学的な原理を理解しないまま作ることができちゃってるんだけど、その理由ってティフォンがゼウスの腱を奪ったことを拡大解釈して「ゼウスの力を奪ったことでゼウスの『何でもできる力』も使える」って扱いになっているから作れる……というよりも創れるようになってたりしない……?
というかゼウスって雷霆を操るんだろ?
雷霆……雷帝……いや、まさかな……。
閑話休題
しかし、黒服は小鳥遊ホシノのことを『暁のホルス』と呼ぶし、生徒のことを異名で呼ぶ癖でもあるのか?
「久しぶりだな黒服。だが、そのティフォン呼びはそろそろ止めてくれないか?流石に恥ずかしくなってきたぞ」
「おや、これは失礼。今まで拒否されていなかったので、気に入っているものだとばかり思っていましたよ」
「カッコいいものでカッコつけたい時期だっただけだ。言わせんな恥ずかしい」
「なるほど、中二病というものでしたか。微笑ましいですね」
「その口から中二病なんて言葉が出るとは思わなかったぞ……というか、人のことを異名で呼びたがるお前には言われたくねぇ」
軽口を言い合う。
俺たちは初めて会う訳ではない。
というのも、2年前に俺の神秘を研究したいとアプローチをかけてきたのが始まりで、ある契約を結んだ結果、今も交流があったりする。
「それで、用ってのはなんなんだ?」
「ええ、今回は2つの用件で呼ばせていただきました。まず1つ、あなたが制作した物についての契約を更新したいと思いまして」
「『ガヴ』か……」
黒服が俺の前に出したのは、見るも無惨な姿となった赤い機械の口。
それは2年前、俺が雷帝を倒す為に使った『仮面ライダーガヴ』……キヴォトスでの『仮面ライダーG2』になるためのベルトだった。
今はもう壊れて使い物にはならないし、かつての力も無いから作り直すこともできないけどね。
だから、当時の俺には不要な物だと判断して、金銭と引き換えに黒服に貸し出すことにしたというわけだ。
『ある契約』とはつまり、『黒服が対価を渡し、「俺以外の他者には俺に関する情報と研究の経過を共有せず、結果だけを伝えてもいい」という条件の下で俺の神秘を研究する』というものなのだ。
「こちらに込められた神秘と技術は我々でも理解することが困難な代物です。これ以上の成果を得る為にも他のサンプルが欲しくあります。どうでしょう……例えば、あなたの妹の血液などを提供していただくというのは」
──銃口を外道に向ける
「ぶっ殺されてえのか???」
冗談でもライン越えだぞ黒豆野郎が!!
「おっと、これは失礼しました。やはり、あなたにとって家族は大事なもののようですね」
「あ゛?……ああ、もちろん妹もだが、
銃口を向けられたことで両手を上げたものの、余裕のある態度で対話を試みる黒服。
相手が半分冗談半分本気で言っているのはなんとなく分かる。だからこそ、機会があれば狙うだろう。
こいつらゲマトリアは油断ならないから、しっかりと釘を刺しておかなければならなかった。
「……ったく。いらない労力を割かせるなよ」
「……クックックッ。いえ、あなたを相手にこういった冗句を述べることも研究の資料にできそうかと思いましてね。」
「服どころか腹の中まで真っ黒じゃねえか……」
「それも大人の嗜みというものです」
「やかましい」
頭が痛くなってきた。
油断したら契約の穴を突きまくって搾取されるだけの状況になりかねないから、気を張り続けなきゃいけないの面倒くさいんだけど……。
気を張った会話をするならまだリラックスできる分セイアの方が全然いいよ。
セイアが恋しくなってきたぞ僕はぁ……。
「話が逸れましたね。そろそろ本題に入りましょうか」
「お前が変なことを言うからだろうが」
「これは手厳しい。……契約内容と支払については、以前からの変更はありませんね」
「ああ、そっちが変なことをしない限りは変わらねえよ」
「分かりました。それでは、こちらが支払いの代金となります」
黒服は横に置いてあったアタッシュケースを俺に渡そうとするが、それを静止する。
「それを受け取る代わりに頼みを聞いてもらいたい」
「おや、こちらに頼みごととは珍しいですね。内容を聞いても?」
「詳しい経緯は話せないが、『予言者』や『セトの憤怒』以外で異形の存在が過去に現れた可能性がある。それを調べて欲しい」
「……いささか情報が足りませんが、まあいいでしょう。……クックックッ。『
「よろしくな」
これでヒマリに続いて黒服……下手したらゲマトリアが調べるだろう。
しかし『果報は寝て待て』か……もしかしてゼッツドライバーのことに気付いているのか?
後でセイアに注意するよう言っておくか。
「それでは、次の話に入りましょう。といっても、そう難しい話ではありません。最近、キヴォトスの外から来たと言われる『先生』なる人物。あなたから見たその『先生』の人物像を話していただきたいのです」
「……先生の話か」
子供である生徒とは違い、先生はゲマトリアの連中と同じ大人で、連邦生徒会長から誘われた特異な人物だ。黒服が興味を持つのも必然だろう。
なので、俺から見た先生の印象を今後に差し支えない範囲で話すことにする。
「そうだなぁ……ひと言で表すなら『頼れる大人』だな。普段はそう見えないんだが、有事の際には本当に頼れる迫力があった。……これでいいか?」
「ええ、十分参考になりました。ありがとうございます」
「そうかい」
これは原作通りにゲマトリアと協力させようとするための参考にしようとしてるのかねぇ。
未来を知っているから冷静に判断できるが、知らなかったら何考えてるか分からず不気味に思っただろうな。
「本日の用件は以上となります。お時間をいただき、ありがとうございました」
「別にいいよ。俺もさっきみたいな用事があったわけだしな」
という訳で契約の更新も済ませたし、今日の用事は全部終わった
……筈なんだが……。
「ところでお前、さっき俺の神秘を調べる話で『我々』って言ったけど、他のゲマトリア連中も俺のこと知ってるってことだよな?」
「……クックックッ」
「おい」
こいつ契約の穴を突きやがった。
────── ────── ──────
「今の状況をベアトリーチェには絶対に知られるなよ。面倒なことになりかねないからな」
「ええ、承知しました」
「じゃあな」
話が全て終わり、取引相手である『空崎ジョウ』なる人物が帰るためにドアから出るところを見送る。
……彼はゲマトリアのメンバーである『ベアトリーチェ』のことを知っていた。
彼女から接触してきたにしては言動がおかしいので、おそらく会ってはいないのだろう。
では何故知っているのか?
その方法が分からないが故に、やりようはあるが油断できない相手ではある。
しかし……
「彼は気付いていなかったようですね。彼が言う『怪物』というものが、彼自身の神秘から創り出されているという可能性に」
2年前に突如現れ、近くにいた当時のアビドス高等学校の生徒会長と『予言者』であるビナーを取り込んだ怪物がいた。
その怪物は生徒会長とビナーを取り込んだ直後に姿を消したのだ。
怪物は未だ行方知れずな上、まるで
後日、その存在が現れた場所にあった神秘の残滓を回収し解析した結果、空崎ジョウから借りていたガヴと同じ反応を示したのだ。
だが、彼自身は怪物を知らない様子だった。
おそらく、彼が物を制作した場合、件の怪物のような存在を生み出す可能性があるのだろう。
まるでティフォンが生み出したケルベロスが、かの英雄ヘラクレスの乗り越える試練となるかのように……。
「……クックックッ。かねてより行おうとしていた『暁のホルス』との契約。そして、『憤怒のティフォン』の戦闘データを手に入れる手段として、これは使えそうですね」
己の探究が進む予感を感じ取り、大人は嗤いながら歩み出す。
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「あ゛あ……疲れた」
厄介な大人相手に足元を掬われないよう気を張ってはいるが、どうにも知らない所で利用されてる気がしてならない。
悪い予感ばかりして気分が悪い。
「柴関ラーメン食ってとっとと帰って寝るか」
しばらくしたらと柴関ラーメンが物理的に潰れるし、なんとかしないとなぁ。
これからの出来事に想いを馳せ、子供は憂鬱になりながら砂漠を駆る。
元々は名前の語感と色々造れる能力で「ジョウ=ゼウス」の予定で書くつもりだったけど、雷帝と敵対した都合上、テュポーンことティフォンにした方がいいのではないかと思い変更したという裏話。
ちなみにゼウスのままだとジョウが賞金稼ぎの男スパイダーマッ!に変装してブラックマーットに蔓延る「自称ジョウの手下たち」を相手に奮闘する話が出る予定でした。
機会があったら書いてみようかな