【書籍発売中】転生宰相のダンジョン魔改造録 ~ポンコツ魔王様に頼られたので、壊滅した魔王軍を再建します~   作:パンダプリン

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第112話 「他種族もいるのなら、もっと早くに蘇生させないか」

「というわけで、今回もレイががんばってくれました。蘇生の時間です」

 

「誰にするか決めたんですか~?」

 

 魔族たちを集めたフィオナ様が、俺の手柄を褒めてくれるとみんなの前で蘇生を始めることにしたようだ。

 マギレマさんの質問に、フィオナ様は不敵な……小癪(こしゃく)な笑みを浮かべる。

 似合ってないなあ。魔王っぽいしぐさ。

 

「ふっふっふ……すでに考えてあります」

 

 その様子を四天王たちは微笑ましそうに見つめていた。

 マギレマさんはともかく、最近生き返った三人の魔族は、まだフィオナ様のそんな姿に慣れていないようにも見える。

 

「今回はテラペイアを蘇生するつもりです」

 

「いい考えですね。私たちだけでなく、他種族の従業員も増えているので、腕の立つ医者がいると安心できます」

 

「そうでしょう! 私も我ながらいい考えだと思っているのです。レイ。褒めなさい」

 

「ええ、フィオナ様は毎回適切な蘇生対象を選定されて、素晴らしいと思います」

 

 なでたほうがいいの? なでないほうがいいよな?

 ディキティスさんとエピクレシとイピレティスもいるし、魔王様に気安い行動は避けたほうがいいと思う。

 ……なので、そんな不満そうな顔はやめていただきたい。

 

「まあいいでしょう。それでは、蘇りなさい。テラペイア!」

 

 大きいな……。馬鹿げたサイズとかってわけじゃないけど、ディキティスさんみたいに体格がよく身長が高い。

 引き締まった体には、ほどよく筋肉がついている。

 テラペイアさんが外科医かどうかは知らないが、手術って体力がいるらしいからな。

 屈強な戦士みたいな肉体なのは、そのためなのかもしれない。

 

 そして、最も特徴的なのは顔だ。彼の顔は……鳥なのだ。

 

「おや、どうやら死んでいたみたいですね。命を救うどころか、自分の命も守れないとはとんだ失態だ。魔王様、蘇生いただき感謝いたします」

 

「久しぶりですね。テラペイア。あなたはレイの力で蘇りました」

 

「レイ……記憶にない名前ですねえ。そちらの彼が?」

 

「あ、どうも。下っ端魔族のレイです」

 

 ぎょろりとした目がこちらを見つめる。

 なんか、若干おっかない雰囲気の魔族だな。

 ディキティスさんに近いが、極力こちらに関わろうとしない彼とはまた違ったタイプのようだ。

 

「ふむ……ガルーダのテラペイアだ。よろしく頼むよ」

 

「ええ、お医者さんってことなら、俺もお世話になると思いますので……」

 

「なに、蘇生薬を作れるってことは、君は私のはるか高みにいるってことだろう。こちらこそ、君の世話になると思うね」

 

 話してみると案外友好的だった。

 ただ、なんか見た目というか雰囲気というか、どこか怖いな。

 フィオナ様より威圧感があるんじゃないか?

 

 テラペイア 魔力:70 筋力:60 技術:89 頑強:69 敏捷:83

 

 ステータスは、マギレマさんたちと同じくらいか。

 医者なのに強いな……。

 

「……君、鑑定のような能力を持っているのかね?」

 

「あ、はい。すみません、不快でしたか?」

 

「いや、羨ましくはあるがね。患者の状態を正確に分析できる力なんて、実に便利そうじゃないか」

 

「俺の場合、名前と能力値しかわかりませんけどね」

 

「カルテを書くのには便利そうだ」

 

 彼なりの冗談か、緊張をほぐしてくれようとしているのか、雰囲気こそ怖いもののそんなに怖い魔族じゃなさそうだな。

 それにしても、ステータスを覗かれるのって案外わかるものなのだろうか。

 これからは断ってから使うべきか? いや、でもフィオナ様とかイドとか、強者にもばれてないっぽいんだよな。

 

「それにしても、まだそこまでの魔族は復活してないようで。私の仕事はあまりなさそうですね」

 

「いいえ、実は前とは事情が変わっています。今は手が足りないので、人間や獣人。ハーフリングにドワーフの従業員を抱えているのです」

 

「ほう。それはまた思い切ったことをなさった。つまり、私の仕事はそんな彼らのケアということですか」

 

「ええ、期待していますよ」

 

 怪我は回復薬で、状態異常はそれに対応した治療薬で治せる。

 しかし、テラペイアさんがいれば、そんな資源を使うことなく治療できるかもしれない。

 彼の領分がどこまでかはわからないが、メンタル面の面倒も見てくれるのなら、従業員にとっても働きやすい環境になるだろう。

 ……となると、病院がいるな。

 

「フィオナ様。俺、準備してきますね」

 

「なにをですか?」

 

「テラペイアさんの職場を作れないか試してきます」

 

「ああ……そういうことですか。ええ、よろしくお願いしますね」

 

 さて、幸いながら今日は魔力は消費していない。

 できれば、魔力が尽きるまでに出てくれるといいのだけど、それはさすがに無理だろう。

 俺程度の魔力の場合、回復薬を飲めばすぐに回復できるし、適当にリセマラを始めるとするか。

 

「彼はなにを……?」

 

「後でわかるぜ。レイくんがどれだけやばいやつかな」

 

「……あまり、とんでもないことをしでかさないでほしいのだが」

 

「無理だね~。たぶんとんでもないことが起きるよ」

 

    ◇

 

「よし、引けた」

 

 治療室作成:消費魔力 30

 

 さすがに病院は無理だったけれど、よさそうなものを引き当てることができた。

 さっそく作成してみるか……。治療室ってことで、ここの住人が使うわけだし、なるべくダンジョンの奥に作るとしよう。

 うん、悪くない。診察室みたいな場所に、なんかそれっぽい設備もついてきてくれた。

 これなら、テラペイアさんも問題なく仕事にはげめるだろう。

 

「なるほど……こういうことか」

 

 ちょうど本人も、ピルカヤに連れられてやってきたようだ。

 きっとピルカヤが、こちらの準備が終えるのを待ってくれていたのだろう。

 

「これなら、働けそうですかね?」

 

「十分だな。ああ、どうやら魔王様はとんでもない拾い物をしたようだ」

 

 なに? フィオナ様、俺がいないところで拾い食いでもしたの?

 だとしたら、さっそくテラペイアさんの本領を発揮できるわけだが……。

 最初の仕事がそれって、なんか嫌だなあ。

 

「改めてテラペイアだ。よろしく」

 

「ええ、よろしくお願いします」

 

「君、その言葉遣いは癖かい? たかだか下っ端の医者ごときに、敬語なんかいらないよ」

 

 それを言い出したら、俺なんてたかだか下っ端の道具なんですけど……。

 だけど、これはテラペイアさんがこちらに歩み寄ってくれているということだろうし、ありがたく申し入れを受けさせてもらおう。

 

「下っ端のレイだ。よろしく」

 

「くく……面白い冗談じゃないか」

 

 笑われてしまった。

 さて、こうしてのんびりしているわけにもいかない。

 拾い食いをして、お腹を痛めているらしいフィオナ様を迎えにいかないとな。

 

「たやすく死を克服するか……そんな力を持つ彼が下っ端を名乗るのなら、私たちどころか四天王の方々さえ下っ端だろうね。……いや、危険な力だとわかっているからこそ、あえて自分の力を低く見せているのか?」

 

    ◇

 

「フィオナ様が拾い食いをして、お腹を壊したって聞いたんですけど」

 

「誰ですか! そんな根も葉もない噂で魔王を陥れようとする輩は!」

 

 あれ、違ったのか?

 ぷんぷんと憤慨するフィオナ様は、とても元気で体調はすこぶるいいようだ。

 

「勇者じゃないですかねえ? カザマじゃないほうの」

 

「おのれ勇者! ついにそんな恐ろしい搦め手まで使うようになってくるとは!」

 

 まあ、元気そうでよかったんじゃないかな。

 

    ◆

 

『そこにいると邪魔だ。お前たちのせいで、こちらは片付けないといけない仕事が山ほどあってね』

 

「鳥!!」

 

「落ち着けって、集団じゃないからヒポグリフのときみたいにはならないだろ」

 

「治療してんのか? これ、ほうっておいたら敵が復活するんじゃね?」

 

「倒さないとやばいじゃん」

 

 友人の言葉に、慌てて操作キャラを動かす。

 こちらに背を向けて、仲間の魔族に治療らしき行為をしていた鳥男は無防備だ。

 ここで倒さなければ、敵が無限に復活するギミックなのだろうと、彼らはあたりをつける。

 

『治療の邪魔だ!』

 

「ええ!? ボス戦始まったんだけど!」

 

「まあ、雑魚キャラっぽくなかったもんな」

 

「飛ぶじゃん!!」

 

「翼生えてるしな」

 

「死んだんだけど!!」

 

「鳥の群れよりやべえ……」

 

 狭い空間だというのに、自在に空を飛んで猛スピードで攻撃をしかけてくる。

 こちらの射程距離から外れた場所から、刃物のようなものを投擲してくるその戦い方は、彼らが苦戦してきた大型の鳥モンスター以上に厄介だった。

 そも、鳥モンスターはあのコカトリスでさえ、直接攻撃をするためにこちらへと近づいてくる。

 なので、戦いにくくはあるが、攻撃チャンスというものが存在した。

 

 だが、この鳥頭の大男はそんなモンスターたちとは異なり、徹底的に操作キャラから離れてしまう。

 攻撃手段も武器の投擲なので、こちらから近づかない限りはチャンスなど存在しなかった。

 

「卑怯者! この卑怯者!」

 

「やっぱりイドで進めるか? あいつの遠距離攻撃なら、威力高いし倒せるだろ」

 

「イド好きじゃないから嫌だ!」

 

 プレイスタイルも使用キャラも、彼ら自身が決めたもの。

 だからこそ、文句は言いつつも彼らは何度も挑戦しては敗北し、それでも諦めることなくテラペイアを撃破するのだった。

 

    ◆

 

『ああ、くそっ……めちゃくちゃじゃないか。待ってろ。今治して……やるから…………』

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